闘病の中にもある効率と戦略(2/3)
犬の闘病で、とりわけ知っていただきたいことは、愛犬が病気と闘う方法が、決して一つだけでないということです。飼い主側が選択肢を増やすことによって、愛犬の闘病は、随分とその様相が変わっていくのです。
通常の場合、愛犬の治療方法は、主治医の診立てから示される2つか3つがせいぜいでしょう。多くの飼い主さんはその選択肢の中から、乏しい知識の中で、たった1つの治療に賭けることになります。
筆者がお薦めするのは、ここで一度立ち止まってみることです。
獣医師というのは、いつもお世話になっている主治医だけではないのですから――
【目次】
専門医という選択肢
人間の場合を考えてみてください。人間には病気に応じて内科が有り、外科が有ります。耳鼻科や眼科などもそうです。
更に臓器の働きどとに、消化器系と循環器系に分かれていき、ついには臓器ごとに心臓外科や、肝臓外科のように細かく枝分かれをします。
犬の場合はどうでしょう? お腹をこわして下痢をした子も、心臓に先天的な障害を持った子も、どちらも街の動物病院という、ごく限られた枠に閉じ込められてしまいがちです。
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街の動物病院の獣医師は、小型犬から大型犬まで、幅広い犬を診察しなければなりません。超小型犬も超大型犬もです。
体重1キロほどのチワワと、体重100キロを越えるセントバーナードは、同じ犬の分類でありながら、内臓の動きが全く違います。別の動物と言っても良いくらいなのに、一人の獣医師がそれら全てに対応するのです。
犬だけではありません。
猫も診察すれば、フェレットやカワウソも診ます。
哺乳類だけでなく、カメなどの両生類や、鳥も診察の対象です。
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分かるでしょうか?
街の動物病院に対してどんな動物の、どんな病気にも、最高の成果を求めることの方に無理があるのです。
街の動物病院はゼネラリストで、あらゆる動物のあらゆる病気に対応してくれるが、難しい病気の専門性まで求めるのは、始めから無理があるのです。
セカンドオピニオンの重要性
愛犬に重大な病変が発見された場合には、ぜひとも別の獣医を受診され、セカンドオピニオンを取られることをお薦めします。それも納得がいかない場合は、、サードオピニオンも。たったそれだけで、愛犬と飼い主の選択肢は何倍にも広がるはずです。
セカンドオピニオン、サードオピニオンは、大学病院や高度医療センターのような、専門性の高い病院が良いのですが、近隣にそのような病院が無い場合も、他の動物病院で診てもらうことをお薦めします。
常識的に考えれば、街の動物病院の獣医師の中にも、内科的処方が上手い医師と、手術が上手い医師は絶対にいるはずです。そして人間の医師と同様に、獣医師の経験とスキルには、幅があって当たり前です。
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人間の場合でもそうですが、患者が主治医以外の医師に意見を求めることは、今も患者側が二の足を踏む行為です。主治医との信頼関係を壊すことを恐れるからです。
しかしながら、その信頼関係と天秤に掛かっているのが、大切な愛犬の命であることを忘れないでください。
人間の場合に照らせば、主治医に他院でのセカンドオピニオンを願い出た場合、それに難色を示す主治医は、今や患者に配慮が欠ける医師と目されています。動物の場合も早晩、同じように考えられる時代が来るに違いありません。
二次診療と高度医療
セカンドオピニオンと同様に重要なのが、二次診療です。
二次診療とは、主治医が診ている犬の病状が、最早自分の手には負えないと判断した場合に、大学病院や先端医療センターのような、高度な医療技術を備えた病院を紹介することです。
二次診療に自院の患者(犬)を送ってしまうことは、主治医にとっては大きな利益機会の損失でもあります。重大な疾患は高額な医療を提供できる、チャンスでもあるからです。
にもかかわらず、積極的に二次診療対応を行う獣医師は、恐らくは自身の利益よりも、犬の命を救う事の方に力点を置いていると考える事が出来ます。
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愛犬が重大な病気に罹る前から、何かのついでに、
現在の主治医に対して二次診療をどう思っているのか?
積極的に進めているのか?
既に提携済の二次診療センターがあるのか?
などの質問を投げてみると良いかもしれません。
案外とそれは、良い医師を選ぶための指針になるのではないかと思います。
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筆者も最初から、このような考えを持っていたわけではありません。このような考えに至ったのは、愛犬ピーチーの闘病に際し主治医自身から、二次診療の進言があったことがきっかけでした。
その話は、具体的な闘病記に書こうと思っています。
――闘病の中にもある効率と戦略(2/3)・つづく――
文:高栖匡躬
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――次話――
動物にも高度医療があります。
それは人間で実績のある治療を、いち早く動物医療に転用するものです。
医療は日進月歩。昨日治らなかった病気が、今日は直るかもしれません。
高度医療は病気を治す手段としては有効な選択肢です。
――前話――
闘病記を読むと、奇跡的に治るという表現に時々出会います。
しかし奇跡は、待っていて起きるものではありません。
奇跡が起きる確率は、努力で上げることができます。
医師まかせにせず、とにかく情報を集めて分析する事です。
その中に、もしかすると答えがあるかもしれません。
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この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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闘病の意義について考える(前シリーズ記事)
犬が病気になった時、幾ら探しても、役に立つ医療情報が見つかりませんでした。
通り一辺倒だったり、逆に専門的過ぎたり。
どれもこれも、現実的ではないのです。
そんな中、飼い主が書いた闘病記に行き当りました。
動物医療の専門家ではない、普通の飼い主が書いた闘病記です。
そこからは、本当に色々な事を教わりました。
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本記事の内容を含む闘病記
ある日突然、我が家のピーチーを襲ったのは急性膵炎
危険な状態でしたが、幾つも幸運が重なって無事回復しました。
「良かった」と胸を撫でおろす飼い主。
――しかし、そうではありませんでした。
それは本当の闘病の始まりだったのです。