”今の食” が "将来の食” を決める(2/4)-我儘は躾ける編
ネット上には【食べムラ(我儘)】に対して、「食べるように躾なさい」という記事は幾つもあるのですが、ほとんどの場合は、なぜそうするのかと言う理由が説明されていません。『贅沢になるから駄目』という理由が書かれている場合もありますが、なぜ贅沢になってはだめなのかについて、明確に書かれていないのです。
”贅沢”が、お金がかかるという意味であるならば、経済的に余裕のある飼い主さんならば、問題ないということになってしまいますよね。
どうなのでしょう? 贅沢?――
【目次】
- ”今の食” が "将来の食” を決める(2/4)-我儘は躾ける編
- 我儘からの食べムラは、躾けるのが愛情です
- 食べ物の大切さを実感するのが、闘病のとき
- やがて介護の時がくる
- まとめ - フードは最後(最期)の時を俯瞰して選ぶべき
- フードの常識、疑ってみよう
我儘からの食べムラは、躾けるのが愛情です
犬にとっての食事の贅沢は是か非か?
答えから言うと、贅沢はやはり駄目なんだと思います。
その理由は、今ではなくずっと先――愛犬が老犬(シニア犬)になり、闘病や介護の段階になってから――きっと身にしみてわかってくることでしょう。
筆者がそうであったようにです。
本記事では、筆者と筆者と親しい飼い主さんたちの体験を元に、躾の意味と意義――つまり何故【食べムラ(我儘)】を矯正すべきなのか――について、探っていきたいと思います。
この記事を読み終わる頃には、なるほどと思っていただけるはずです。
”今の食”は、”将来の食”のはじまり
意外に思われるかもしれませんが、あなたが今、愛犬のために選択したフードは、将来の愛犬のフードを左右するものになります。
どういうことか。順を追ってご説明します。
味覚(美味しさ)は慣れるもの――
味覚は相対的なものなので、美味しいものを食べ慣れていると、いまよりもおいしくない食べ物は、不味く感じてしまいます。
つまり今のフードが常に基準になる――
つまり、何かの理由でフードを変更する場合に、今のフードが基準になって、それよりも美味しいものを選んであげないと、犬の方は『ご飯が美味しくなくなった』『不味くなった』と感じるわけです。
もしも毎年フードの見直しをしたら――
仮に、もしも毎年フードの見直しをしたとしたらどうなるでしょうか?
3年後には、今のフードよりも3段階も美味しいフードを与えることになってしまいます。
もしも今、愛犬が1歳だったら?――
犬の平均寿命を15年としたとき、1歳の愛犬で毎年フードの見直しをしたら、15歳の老犬(シニア犬)になる頃には、今よりも14段階も美味しいフードを、食べえさせていることになります。
そんなフードなど、世の中にあるのでしょうか?
もちろんそれは、仮に毎年見直したらの話です――
毎年フードを見直す飼い主さんはいないでしょう。ほとんどの場合は、愛犬がそれを食べなくなるまで、同じフードを2年、3年と与えるに違いありません。
わが家の場合は、大食いだった愛犬ピーチーのために、低カロリーな肥満犬用のフード、ヒルズ『サイエンスダイエット(肥満犬用)』を多めに与えるようにしてやり、それが約10年も続きました。
何が言いたいかというと――
大切なことは、犬の一生を見通してのフードのプランをすることだと思います。
食べないからと言って、安易に美味しいものを食べさせていると、高齢犬になるまでに選択肢を使い果たしてしまいかねないのです。
今のフードが、将来のフードのスタートです。
愛犬の一生のうち、どのようなフードを与えていくか、計画的に考えておいてあげないと、「最後にはあげるものがなくなってしまうかもしれない」ということを良く考えた方が良いと思うのです。
だからこそのフードの疑問――
よくTVで、『食いつきの良いフード』のCMが流れます。
それを見る度に、「あんなフードを仔犬のころから与えて良いのだろうか?」と考えてしまうのです。
もしもTVのフードよりも『食いつきの良いフード』が世の中になければ、万が一愛犬がそれを食べなくなったときに、打つ手がなくなってしまいます。
食べ物の大切さを実感するのが、闘病のとき
フードをたべさせることの大変さを実感するのが、闘病のときです。
健康な時、食べ物の選択はそれほど難しいものではありません。
しかし、愛犬が病気になった時に、その状況は一変します。
内蔵系の疾患を得た場合、そこで処方されるのは療法食(又は療養食)です。
療法食は何かを制限するものです。
代表的なものは、糖分、塩分、油脂成分、タンパク質などが挙げられます。
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人間の療養食を想像してみれば良いでしょう。その療法食は、いつも食べていたフードに較べれば美味しくない可能性が高いです。
その証拠に、療法食を食べてくれない愛犬に悩む飼い主さんが大勢います。
しかしながら、病気によっては、療法食の選択肢が極端に限られます。
他の記事にも書きましたが、我が家の愛犬ピーチーは超低脂肪の食事を求められたために、フードとしてはスペシフィックの『CRD-1』と、ロイヤルカナンの『消化器サポート(低脂肪)』の2択でした。つまりそのどちらかが食べられなくなると、療法食としては、食べるものが無いということになります。
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ここで先程の話に戻ります。
美味しいフードに慣れさせていると、療法食への変更はとても難しくなります。
ピーチーの場合は【食べムラ(我儘)】の経験が一度もなく、しかも子犬の頃から粗食でした。それは子犬の頃に預けた警察犬の学校で、トレーナーさんから厳しく言われて実践していたことでした。
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実は筆者は、ピーチーの闘病では、食べ物で決定的に悩むという事はありませんでした。その時にはそれが当然と思っていましたが、後になって、食事で悩む飼い主さんが多い事を知り、食事の組み立てがいかに大事なのかを実感したのです。
やがて介護の時がくる
前項では、闘病ので食べ物の大切さを知ると書きましたが、実はそれにはもう一つ先の話があります。
闘病で病気が回復すれば良いのですが、そうでなかった場合は、その先には介護の段階が待っています。病気から発展しなくても、老犬(シニア犬)になればいつかは介護を必要とする時期はやってきます。
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介護の時の食事の考え方は、それまでとは違います――
まずは、”食べなけれな躾ける”という、健康時の段階はとうに過ぎています。
もう回復は望めない中で、現状維持をしながら、なるべく長く穏やかな時を過ごさせたいというのが介護です。
基本的に、体の状態は下降線をたどります――
食べない事はバイタルの低下に繋がり、また消化器系の働きを衰えさせます。
よって、消化器系に疾患が無い限り、食べられるものを探すと言う状況になっていきます。
更に終末期に向かうと――
介護も終末期に向かうにつれて、愛犬は段々と、嗜好性の高い食べ物でないと受け付けなくなっていきます。
最後には人間の食べ物を――
わが家ではまず、人間用のケーキを与えました。
健康な時には、絶対に与えなかったものが切札です。
そして、一番最後に食べたものは、最後まで温存していた大好物のウニでした。
美味しそうに食べてくれました。
これがどういうことか分かるでしょうか?――
闘病の時期を過ぎ、介護の時期に入ると、嗜好性の高いフードの選択肢は、つぎつぎと減って行きます。
スタートの段階ですでに嗜好性の高いフードに慣れていると、あっという間に残された選択肢が尽きてしまうのです。
愛家に最後の最後まで、口からものを食べる楽しみを残してやろうとするならば、スタートのレベルを低くしてやるしかないのです。
まとめ - フードは最後(最期)の時を俯瞰して選ぶべき
本記事のまとめをすると、次のようになります。
②フード選びの大切さを知るのは、闘病の時
③介護の時期は、フードの選択肢をあっというまに使い果たす。
些か極論にはなりますが、筆者はこうアドバイスをしたいと思います。
【食べムラ(我儘)】程度で、愛犬のフードの嗜好性を上げていたら、最期のときまでとても持ちませんよ。
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――次回は――
筆者はかつて、愛犬ピーチーを警察犬訓練学校に預けましたことがあります。
そこでは、トレーナーさんから粗食の大切さを教えられました。
次回はそのことに触れようと思います。
―― ”今の食” が "将来の食” を決める(2/4)つづく――
文:高栖匡躬
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――次話――
食べムラを防ぎ、将来の闘病、介護の食事を楽しいままにするには、
【粗食】をキープすることが大切です。
”食べれば良い”というものではありません。
”食”は、犬の一生を通して、飼い主が設計するものです。
――前話――
既存の食べムラ対策の記事には、不満を感じます。
なぜ食べさせるのか? その理由が書かれていないからです。
そして、時間の視点も欠けています。
将来の食を決めるのは、今の食なのです。
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この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。
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――前シリーズの1話目です――
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フードの常識、疑ってみよう
ドッグフードの疑問
ネット上にはドッグフードの記事が沢山ありますね。
穀物は有害? 野菜は有害? 本当に?
全部真に受けたら、食べるものが無くなるんだけど。
記事が推薦するフードは、愛犬に良いものなの?
ドッグフード記事は矛盾だらけ
ネット情報が伝えるフードの情報は、落ち着いて考えると矛盾だらけ。
一体何が正しいのか分からないですね。
常識として語られていることを、一つ一つ疑問点として取り上げてみようと思います。『フードの疑問』の補足編(全3話)です。