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【自己免疫不全】 免疫機構の暴走で、免疫が自分の体を攻撃する 【闘病記】

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ピーチーの闘病記:自己免疫不全 編(自己免疫疾患)
ピーチーの闘病記:自己免疫不全 編

撮影&文:高栖匡躬 
自己免疫不全の実例と検証(1/3)

犬の病気というものは、愛犬がそれに罹って初めて、本当の姿を知りますね。それまでは、知識として知っていても、どうにも実感が湧かないのです。
しかしそれも当然の話ですね。自分が医者や研究者でも無い限り、自分に直接関係の無い病気に、一々興味を持っていたら身が持ちません。

今回から3回に分けて、3年前(2015年)に、我が家の愛犬ピーチーを襲った自己免疫不全について触れようと思います。

恐らくそれは、思った以上に多く発生しており、飼い主さんが最後までそれに気付かないものです。逆に言えばそれを疑う事で、愛犬の命を救うことが出来るものでもあります。

目次

 概要 - 罹って初めて知ること

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自己免疫不全という病変は、とても厄介な相手でした。何しろ、自分の免疫が、自分の体を攻撃するのですからね。

しかし実は、自己免疫不全は、皆さんの身近なところにもあります。例えばアレルギーだってその一つなのですですから。

ピーチーの当時の状況を鑑みると、自己免疫不全は犬たちの、原因が良くわからない病変の陰に、意外に多く潜んでいるのではないかという気がします。自己免疫不全は診断が非常に難しいために、見過ごされている場合が圧倒的に多いのです。

例えば劇症肝炎もその可能性が

ピーチーの命を奪おうとした病の一つは、劇症肝炎でした。

幸いにも当時ピーチーは、その病変の原因が自己免疫不全であることを探し当てることができました。しかしそれは、幾つもの幸運が重なった結果に過ぎません。

自己免疫不全は劇症肝炎以外にも、劇症性の病変を引き起こします。例えば急性の腎不全などです。このような深刻な病気は、大変に危険であり、治療に一刻をあらそうものです。発症した犬のほとんどは、その病気の原因にたどり着く前に亡くなっている可能性が高いと思われます。

 

 免疫不全と自己免疫不全の違い

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自己免疫不全は、免疫不全とは違います。言葉はそっくりなのですが。まずはその違いから説明します。

【免疫不全】

免疫不全は簡単に言うと、何らかの理由で免疫機能が著しく低下することを指します。
先天的なものと後天的なものがあり、後天的なものの代表が、HIVウィルスの感染で引き起こされるAIDsです。

【自己免疫不全】

自己免疫不全は、免疫機構がエラーを起こし、自分の体を攻撃し始めることを指します。これによって引き起こす病気としては、関節リュウマチなどはよく聞くもので、バセドウ病やクローン病も自己免疫不全が原因です。

 

 それでは自己免疫不全とは

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具体的に、自己免疫不全とはどういう状態を指すのでしょうか?

自己免疫不全は、免疫機構の暴走が原因で自分の体を攻撃するのですから、全身が等しくダメージを受けるはずです。しかしなぜか、免疫系が攻撃を仕掛ける個所は限定的なのです。多発性ではあっても、限定的です。

なぜそうなのかは、まだ理由が解明されていないそうです。

自己免疫不全はそれ自体が病名ではなく、免疫系から攻撃を受けた場所によって病名がついています。例えば以下のような分類です。

全身に多発的にダメージを与えるタイプ

膠原病。関節リュウマチはその中の1つです。

特定の臓器にだけダメージを与えるタイプ

バセドウ病、クローン病、溶血性貧血、ギランバレー症候群など多数。

ピーチーが受診した獣医師の言葉を借りれば、「自己免疫不全は、何でもあり」なので、体中のあらゆる場所で炎症が起き得ます。

もしも肝臓に炎症が起きた場合は、自己免疫性肝炎という病名が付いてきます。
特定の病名が付いているものには、確定診断ができる場合もありますが、ほとんどのものには病名が無かったり、病変部の組織(例えば内臓や悩)の採取に危険が伴うので、確定ができなかったりします。

 

 一例としての、ピーチーに起きた病変

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自己免疫不全によって引き起こされたピーチー病変は、多発的でした。

発症した病変は下記の5つです。

1.劇症肝炎
2.多発性関節炎(リュウマチではない)
3.内耳炎
4.外耳炎
5.てんかん(断定できないものの、非常に疑わしい状態)

表に現れていたものだけでこれだけあるのですが、当時は同時に、膵臓と脾臓と胆嚢にも腫れの兆候が確認されていましたので、これらも別のものと考えると、実に8つの病変となります。

6.膵臓の腫れ
7.脾臓の腫れ
8.胆嚢の腫れ

まさに病気のデパートです。

これだけのことが、自己免疫不全というたった一つの原因で起きるというのは、驚くべきことです。しかし、ずっとピーチーの病状の推移を追っていると、自己免疫不全というのは、特段変わったものではないのではないかという気になります。

過去の取材で、獣医師にインタビューをしましたが、その際に意見を求めたところ、その獣医師も同じくその可能性を指摘していました。

つまり自己免疫不全は、どの犬にも(比較的容易に)起きうることで、もしかするともう起きているかもしれないという事です。ピーチーほどの劇症でないために、気が付いていないだけかもしれないのです。

次回は、その自己免疫不全の診断について、ピーチーの事例を交えてご紹介したいと思います。

 

――参考・2015年9月、当時のピーチーの様子です―― f:id:masami_takasu:20171101152031j:plain

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※劇症肝炎からは生還したものの、食欲がない
※ステロイドの大量投与の副作用で筋肉の衰え。体重減

 

――自己免疫不全の実例と検証(1/3)・つづく――

文:高栖匡躬
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――次話――

ピーチーは予断を許さない状況。
「深刻な状況です」
担当医の言葉を今も思い出します。
そのピーチーが、なぜ助かったか?
自己免疫不全に絞った治療に、賭けたからです。
なぜその選択ができたか?
そして、そもそもの診断が難しい理由を書きます。

まとめ読み|自己免疫不全に思うこと
この記事は、下記のまとめ読みでもご覧になれます。

 自己免疫不全による疾患と闘病記

劇症肝炎闘病記

筆者の愛犬ピーチーは2014年8月16日の早朝6時、救命救急に駆け込みました。
40度を越える高熱。ぐったりとして動けない。
ただごとではないと思いました。

振り返ると、異常を感じたのは8月10日の夜。
突然の体の震えと、食欲不振が恐らく前兆だったのでしょう。
このときは、掛かりつけの病院で、熱中症と診断。
その時には、肝臓の諸数値は正常値でした。

そして6日たち、16日の朝を迎えます。
この日から、命を賭けた闘病が始まったのでした。

 

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