闘病記の意義(1/2)
皆さんは愛犬家たちが書いた闘病記に、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
きっと愛犬が健康なうちは縁遠くて、あまり気に留めないものだと思います。
我が家でもそうでした。
愛犬が病気になり、しかもそれが深刻なものと分かると、飼い主は必死で情報を集め始めます。そしてそこで気付きます。
我が家の愛犬の病気に関する有用な情報は、ほとんどないことに――
【目次】
我が家に最適な情報は、みつからないもの
ネットの検索ですぐに見つかる情報は、まるで家庭の医学の本を読むように、概要的なことについてしか書かれておらず、病気についての大筋を知るには良いのですが、愛犬の病気にピタリとマッチするはずもなく、具体的に対処するものにはなかなかなりません。
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時々、学術的な論文にヒットすることもありますが、素人にはなかなかそれを読みこなすことができません。専門用語の意味が分からず、その意味を調べると、またそれを解説する難しい長い論文に行き当ることもしばしばです。ほとんどの方は途中で、投げ出してしまうのではないでしょうか?
そんな時に役に立つのが、同じ病気を経験した飼い主さんたちが書き残してくれた闘病記です。
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(こちらは、闘病記の一例です)
闘病記に込められた情報
闘病記のメリットは沢山あります。
1.
先ず一番に挙げられるメリットは、それが現実に起きたことであるということです。
具体的なイメージとしてそれが想起できるのです。
2.
次に挙げられるメリットは、獣医師の所見を垣間見ることができることです。
犬の場合は口が利けないので、問診ができません。獣医師は犬が、”痛い”のかどうかという、最も単純な事さえ、確実に確認することはできず、”痛そうだ”と察する事しかできません。どれくらい痛いかということなどは、もっと察することが難しくなります。
従って、犬の病気に関する見立てや治療法の選択は多岐にわたります。
多くの闘病記を読むことは、多くの獣医師の判断を知る事でもあるのです。
当然ながらそれは、良い獣医師選ぶ際の助け にもなります。
3.
3つ目のメリットは、最新の治療法 を知ることができる可能性です。
動物医療は日々進歩していて、数年前には治らなかった病気にも、治療の道が開けている場合があります。それは我が家でも経験したことです。
しかし、街の獣医師は先端医療に精通している訳ではありません。これらが行われているのは、大学病院や一部の先進的な動物病院であるからです。
闘病記の中には、そのような先端医療によって治療に成功した例も散見されます。
別の記事でケーススタディとして記すつもりの、我が家の愛犬ピーチーの闘病期もその一つです。
闘病記の最大のメリットは、失敗に学ぶこと
次に挙げる4つ目と5つ目は、恐らくは闘病記を読む最大のメリットです。
4.
飼い主の書いた闘病記には、失敗の事例が多く残されています。
そのほとんどが、どんなときに、どんな判断をして、失敗をしたのかという記述です。
医療情報に書かれた成功例はレアケースである場合も多く、また個々に条件が異なるので、ほとんどの場合が”うちの子”にはマッチしないものです。
しかしながら失敗例は、有り得るケースとして、”うちの子”に起きうるものとして参考んすることができます。
失敗は治療の選択だけではありません。
具合の悪い時に大好物の食べ物を与えてしまい、それ以降は大好物だったものが大嫌いになってしまったという、日々の失敗談もあります。
闘病では、選択肢が次々に狭まっていくことが多いものです。
何事にも転ばぬ先の杖で、悪いケース(或いは最悪のケース)を想定しておきたいものです。
5.
闘病記が語るのは、病気に対する知識や、治療の情報だけではありません。
それが医療情報や、獣医師が書いた病気の記事と大きく違う点です。
不幸にも病気が進行したとき、愛犬やその病気とどう向き合ったのか?
折れそうになる心を、どうやって立て直していったのか?
別れが避けられないと悟った時に、どうやって心の準備をしていったのか?
闘病で病気と闘うのは、愛犬だけではありません。
飼い主も闘っています。
孤独感に襲われがちな飼い主の心を、少しだけ先に同じ経験をしてくれた別の飼い主の言葉が救ってくれるのです。
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(追記)良質な闘病記を探すには――
膨大な量があるネット記事のなかから、良質な闘病記を探すのにはコツがあります。
こちらが参考になるはずです。
しかしながら闘病記は、読みこなすのが大変
飼い主さんたちの書いた闘病記は、ほとんどの場合が闘病ブログとしてネット上に散在しており、まずは探し当てるのが大変です。
そして闘病ブログは飽くまでブログであるために、病気治療の参考にしようとすると、読みにくいという側面があります。
日常の雑記として書かれている性質上、必ずしも病気の事ばかりに触れているわけではないからです。
時系列に沿って、病気に関わる部分を拾い読みするのは、意外に大変な作業になります。
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当サイト(WithdogとWithcat)では、闘病記を病気別に分類し、病状や治療の経過を軸にした再構成を行っています。
不要な情報を捨てるばかりではありません。
一見闘病には役に立たないような、日常の雑記(例えば、今日は何事もない良い一日でしたという記述)も、病気の経過全体を知るためにはとても大事だったりします。
治療の経過と同時に、飼い主の心の変化を追うのも、闘病期の重要なポイントです。
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そして最後に、とても重要なポイントがあります。
如何に大事な情報が書かれた闘病記であっても、読まれなければ意味がありません。
当サイトでは、闘病記も読み物として、編集およびリライトを行なっています。
それは、文章が読まれるためには、面白くなければならないという考え方でに立つものです。
(面白いという言い方は、もしかすると不謹慎に思われるかもしれませんが、読者が続きを読みたいと思ってくれなければ、その情報は無いに等しいのだと思うのです)
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該当する病気とは無関係の飼い主さんも、”読み物”として、小説やエッセイのように読める闘病記が、我々の目指すものす。
我々の試みが、1匹でも多くの犬たちの命を救う事になれば、これほど嬉しい事はありません。
次回は具体的な、闘病記のスタイルについて触れます。
――闘病記の意義(1/2)つづく――
文:高栖匡躬
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――次話――
犬や猫の闘病は、掛かりつけの獣医師に全てを委ねることになりがちです。
しかし、一旦立ち止まって、良く考えてみてください。
1つの病気には、色々な診立てがあり、治療法があります。
誰かが残してくれた闘病記を、ケーススタディとして捉えれば、選択肢は大きく広がっていくのです。
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この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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闘病は視点を変えて
視点を変えれば、闘病も変わる――
愛犬の闘病で悩む飼い主さんは多い。
それは見えない不安が、心にのしかかるから。
これからどうなる? いつまで続く? 医療費は?
見えないものは仕方ない。しかし、見えているものはある。
不安に怯えるのではく、どうか前向きに。
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臨床現場から見た、良い獣医師の選び方
”良い”獣医師選びは、飼い主の責任でもあります。
目的は常に動物の病気を治すこと。
そのために獣医師は何をすべきか?
そう考えると、自然に”良い獣医師”とは何かが分かってきます。
現場を知るからこそ出来るアドバイス。
獣医師選びの方法、教えます
動物病院は沢山あって、どこが良いか迷いますよね。
獣医師次第で治らないと思った病気が治ったり、治る病気が治らなかったり。
経験した方も多いはず。
どうやって選びます。
『オタ福の語り部屋』の主宰者、オタ福さんに聞きました。