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高度医療と言う選択肢 ~日進月歩の動物医療~【闘病の中にもある効率と戦略(3/3)】

闘病の中にもある効率と戦略(1/3)
治らないとはずの病気が治ることも

撮影&文|高栖 匡躬
 

筆者の愛犬ピーチーは、いつでも元気一杯で、病気の予感など一切感じさせない子でした。そのピーチーが生まれて始めた罹った大病が膵炎。それは胆管閉塞を併発し、遂にはピーチーを死の淵に立たせました。

主治医からは、まずは2つの選択肢が示されました。
1つ目は、痛み止めなどで、対処的に苦しみを和らげながら、自然な死(もちろん、奇跡的な回復を期待しながら)を迎えること。
2つ目は、安楽死によって、積極的に苦しみから解放することです。

そして最後に、3つ目の選択肢として提示されたのが、一時的に他の病院に転院して、”高度医療”を受けると言う、筆者が当時全く思いもしなかった方法でした。

【目次】

 高度医療と言う選択肢

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一口に”高度医療”と言っても、ピンと来ない方が多いと思います。
当時の筆者もそうでした。

”高度医療”の内容を言うと、分かりやすく(しかも乱暴に)言うと、人間ならば当たり前に行われている治療を、動物にも施そうということです。

CTスキャナーやMRIなどは、今ではちょっとした(人間の)総合病院ならどこにでも入っている機材を使って、きちんと動物の病変を確認し、まだ人間にしか使われていない(人間では当たり前の)薬や器具を使って、動物の治療に当たるのです。

人間ならば、今や怖くはなくなった病気でも、犬にとってはまだ死に至る病というものも多いのです。そこに人間用の治療を持ち込んだらどうかという発想です。

もちろん、それが全てではありません。
熱心な獣医師は、日ごろから海外の論文を読んできちんと勉強をしています。

視野を広げてみれば、動物医療は世界中の獣医師や研究者の総合力で、日進月歩で進化しているのです。

それらをいち早く取り入れることも、”高度医療”の重要な側面です。

 

(体験談)ピーチーの場合は

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例えば、ピーチーを襲った胆管閉塞は、人間であれば腸に侵入する内視鏡と、そこから90度方向に伸びるカテーテル用のアームを使って、割と簡単に外科的治療ができるもののようです。しかし犬の場合には、体のサイズに合う内視鏡もカテーテルも無いために、それができません。

普通ならばそこで諦めるところなのですが、”高度医療”の恩恵として、対案が示されました。人間用の医療器具を使って、胆嚢から腸へのバイパスを造る手術がそれです。

担当医からの治療方針の説明も、”高度医療”ならではの合理的で論理的なものでした。
「この術式の実施例は、国内で2例あります。1匹の場合は経過は~、もう1匹の経過は~」
というように、具体的に実例が示されるのです。

手術が失敗するリスクの説明はもちろんのこと、成功した場合の予後のリスクも、きちんと説明を受けました。一般的な動物病院では、とても出来ない対応です。

幸いにもこのときのピーチーは、もう一つ示された別の選択肢――、薬剤を使って胆管を拡張する方法で、辛くも難を逃れました。その薬剤名は失念をしてしまったのですが、通常の動物病院では使用していない、専門性の高い劇薬とのことでした。

 

 動物の高度医療と、人間の先端医療

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動物の”高度医療”というのは、人間の場合でいう”先端医療”とはちょっと意味合いが違うように思います。

人間の”先端医療”は、まだ研究の途上にあって、治療実績のあまりない未成熟な技術を使うイメージがありますが、動物の”高度医療”は、人間では既に豊富な実績のある方法を、犬や猫に転用するという意味合いが強いようです。

例えば抗がん剤は、動物用に開発されたものではなく、始めは例外なく人間用です。
薬剤だけでなく、その投与方法も人間で試されて実績があるものです。
現在、悪性リンパ腫で効果のある、UW25という投与プロトコルは、ウィスコンシン大学で開発されて、人間で成果を上げた後に、犬猫でも用いられるようになりました。

人間に効いたものが全て動物に効くとは限りません。しかし、それが適合した場合には、治療の大きな助けになることは容易に想像がつきます。

高度医療は実は難しそうに聞こえますが、とても現実的な選択肢なのです。

UW25による悪性リンパ腫の闘病記は、当サイトに掲載されていますので、ご興味があればご覧ください。
リンク:

【リンパ腫】わたしが、闘病の記録を残そうとおもった理由は ~はじめに~ - 猫の話をしようか

 

 高度医療の欠点

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動物の”高度医療”の欠点は、まずは何を置いても高額である事。次にそれが行える施設が限られることでしょう。

治療自体のコストもさることながら、もしも対応できる病院が近くに無ければ、通院や入院時の面会などにも、多くの時間と費用を要することになるでしょう。長期に仕事を休まなければならない場合もあるかもしれません。

ピーチーが入院した『JARMeC 日本動物高度医療センター』は、神奈川県川崎市にありましたが、駐車場にある車のナンバープレートは、山梨県、群馬県、静岡県など、他県からの受診者が半分以上を占めていました。

遠方から通院されている方々の心労は、さぞかしと思われました。

各家庭ごとに、それぞれの事情があるので、”高度医療”が常に最善の方法というわけではないでしょう。しかしながら、その道が選択肢としてあることを知るのは、とても重要なことのように思います。

 

 事例のご紹介

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ピーチーが高度医療によって辛くも命を拾った実例は2つあります。

 一例目は、『JARMeC 日本動物高度医療センター』での胆管閉塞との闘い。
 二例目は、『DVMs動物診療センター横浜』での、劇症肝炎との闘いです。

どちらも、高度医療が劇的に愛犬の命を救いましたが、どちらにもそこに至るまでに、苦渋の選択が待っていました。

一例目はコラム形式で書いた全4話です。
本シリーズ記事の補足資料として読んでいただけでば幸いです。

これから闘病をなさる飼い主さんたちの、参考になることを祈って。

 

――闘病の中にもある効率と戦略(3/3)・おわり――
――膵炎、胆管閉塞・闘病記へ――

文:高栖匡躬
 ▶プロフィール
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 ▶ 高栖 匡躬:犬の記事 ご紹介
 ▶ 高栖 匡躬:猫の記事 ご紹介

 

――前話――

街の獣医師の技術と経験には大きな差があります。知識にも差があります。
なぜなら街の獣医師は、内科医であり、外科医であり、犬や猫だけでなく、ネズミも鳥も診察するのが役割です。病気ごとの専門医ではないのです。

セカンドオピニオンと二次診療は、街の獣医師の足りない部分を埋める、重要な手段と言えます。

まとめ読み|闘病記の意義と、闘病の視点
この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――本連載の1話目です――

闘病記を読むと、奇跡的に治るという表現に時々出会います。
しかし奇跡は、待っていて起きるものではありません。
奇跡が起きる確率は、努力で上げることができます。

医師まかせにせず、とにかく情報を集めて分析する事です。
その中に、もしかすると答えがあるかもしれません。

 事例の記事はこちらです

高度医療による成功例(闘病記)――

ある日突然、我が家のピーチーを襲ったのは急性膵炎
危険な状態でしたが、幾つも幸運が重なって無事回復しました。
「良かった」と胸を撫でおろす飼い主。
――しかし、そうではありませんでした。
それは本当の闘病の始まりだったのです。

筆者の愛犬ピーチーは2014年8月16日の早朝6時、救命救急に駆け込みました。
40度を越える高熱。ぐったりとして動けない。
ただごとではないと思いました。

振り返ると、異常を感じたのは8月10日の夜。
突然の体の震えと、食欲不振が恐らく前兆だったのでしょう。
このときは、掛かりつけの病院で、熱中症と診断。
その時には、肝臓の諸数値は正常値でした。

そして6日たち、16日の朝を迎えます。
この日から、命を賭けた闘病が始まったのでした。

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闘病記を読む意義について――

犬が病気になった時、幾ら探しても、役に立つ医療情報が見つかりませんでした。
通り一辺倒だったり、逆に専門的過ぎたり。
どれもこれも、現実的ではないのです。
そんな中、飼い主が書いた闘病記に行き当りました。
動物医療の専門家ではない、普通の飼い主が書いた闘病記です。
そこからは、本当に色々な事を教わりました。

臨床現場から見た、良い獣医師の選び方

”良い”獣医師選びは、飼い主の責任でもあります。
目的は常に動物の病気を治すこと。
そのために獣医師は何をすべきか?
そう考えると、自然に”良い獣医師”とは何かが分かってきます。
現場を知るからこそ出来るアドバイス。

 

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