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【胆管閉塞】手術か? 内科的治療か? ~飼い主、運命の決断~ 

ピーチーの闘病記:急性膵炎+胆管閉塞編(3/4)  f:id:masami_takasu:20180303232419j:plain

撮影&文|高栖 匡躬
 
当時を振り返り

JARMeC』の集中治療室には入れたものの、依然として予断を許さぬ状況です。対蹠的な治療は行われていましたが、胆管閉塞の根治治療はまだ始まっていません。胆嚢破裂の危険は全く去っていないのです。

病院には大勢の付き添いの飼い主さんたちが、専用の待機室におり、皆一様に黙りこくっています。よどんだ空気は、そこにいる皆が、重篤な状態の愛犬、愛猫に、一縷の望みを託してそこに来ているからです。そのことが余計に、ピーチーの身に降りかかった不幸を実感させました。

 

さて、ここで8つ目の幸運が訪れます。

担当医となったY崎先生が、過去に犬の胆管閉塞の症例を、幾つも経験されていた方だったのです。過去の症例を聞くと、中には亡くなった子もいれば、手術で何とか持ち直した子もいました。 

Y先生によれば、助かる可能性が高いのは、胆嚢から腸への胆汁のバイパス手術だそうです。リスクは通常の手術のリスクに加え、手術が成功したとしても、腸からの食物の逆流があるので、感染症の恐れがつきまとい、その後もずっと食物制限と運動制限が必要との事。

もしも手術をするとしても、手術の予約はすぐには取れないし、飼い主が覚悟を決める時間も必要だとY先生は仰いました。

【目次】

 主治医が不在 - 最後に訪れた幸運

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待てる時間は2、3日が限度。
その間はダメもとで、胆管を拡張する作用のある薬(劇薬との事)を使用してみましょうと言われました。(残念ながら薬名は忘れました。当時のカルテには書いてあるはずですが、素人には解読できません)

僕はその日から、毎日報告されるデータのうち、総ビリルビンの値をエクセルに入力し始めました。この総ビリルビンが胆管閉塞の状態を示すのです。

ピーチーの膵炎のときの総ビリルビンは1.50。基準値は0.1~0.5です。
入院時の事前検査では8.10。僅か5日後には、それが9.40まで上がります。
一刻の猶予もないのは明らかでした。

総ビリルビンの5日間での上昇
8.10 → 9.40(基準値0.1~0.5)

ピーチーの黄疸はますますひどくなっていきました、歯茎も眼球の白目の部分までもう黄色です。それを見た僕と奥さんは、迷うことなく手術を選択しました。

そしてその時、9つ目の幸運がやってきます。

手術の意思を伝えにいったとき、Y先生は出張中で不在でした。
「なんだよ、こんな大事な時に」と僕は思いました。
代理の先生に手術の意思を伝えたところ、やはり最終の判断は担当医でなければできないとの事。

決断の日に主治医がいないとは、なんという不運――
そう思いました。しかし今振り返れば、それこそが9つ目の幸運だったのです。

 

 手術を諦める - 飼い主の決断

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その日、病院を出る前に、その日の朝の検査データが僕に手渡されました。
それを見ると、総ビリルビンの値は8.30。少しだけ下がったなと思いながらエクセルに入力し、そしてグラフ化。

そこで僕はあることに気が付きました。
グラフの数値が、綺麗な下降カーブを描きそうなのです。
本来であれば翌日には、出張から戻った担当医に手術の意思を伝え、翌々日には緊急手術だというタイミングでした。

翌日僕と奥さんは、担当医の元を訪れました。
「先生、今日は手術の意思を伝えるつもりで来たのですが、やっぱり決断できません」
そう言って、素人の作ったエクセルのグラフを見せました。

僕の予想通りならば、その日の検査結果では、総ビリルビンが6前後。その翌日は3前後に落ちるはずです。
検査結果が出るのは、朝の採血が終わってからしばらく時間が経ってから。しかしそれを待っていると、手術の予約時間を過ぎてしまいます。

「先生、明日の手術は諦めます」
と僕は言いました。

それは賭けでした。しかし根拠のない賭けではなく、自分で探し出した可能性に賭けたのです。

そして、ここで遂に奇跡が起きます。

 

 検査の数値 - 驚きの改善、内科的治療へ

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そのまま僕と奥さんは『JARMEC』の待合室に座り、検査結果が出るのをまちました。そして3時間くらいそこにいて、ようやく僕たちは検査結果を受け取りました。

何と、総ビリルビン値は6.40。
予想していた通りです。
自分で予想しておいて言うのもなんですが、鳥肌が立つ思いでした。

そして、その翌日には総ビリルビン値が3.50に落ちました。

これが当時予想をしたエクセルのグラフ
当時予想をしたエクセルのグラフ

Y先生に面会すると、先生は「良かったですね。今後は内科的治療で決まりですね」と言ってくださいました。

それは、ピーチーと奥さんと僕が、賭けに勝った瞬間でした。

最初の出来事から考えると、針の穴ほどもない確率だと思います。
いやむしろ、穴の無い針に何故か糸が通ったというべきかもしれません。
この日ほど、ピーチーの強運を確信した日はありません。

ピーチーが『JARMeC』に入院したのが、まだ残暑も厳しい9月10日。毎日欠かさずに面会に行って、退院したときにはもう秋の気配でした。

『JARMeC』は病院の性質上、元気な姿で退院できる子はとても少ないそうです。しかしピーチーは、尻尾を振りながら、駆け足でその病院を後にしたのです。

Y先生にとっては、同じ病気で完治に成功した、最初の症例との事でした。

 

――闘病の奇跡、強運の正体(3/4)・つづく――
――次話はまとめです――

 膵炎をもっと知るために

急性膵炎の詳しい解説記事は、下記をご覧ください。
専門性はありながら、分かりやすく書かれた記事です。

下記の急性膵炎闘病記も参考になります。
突如発症した急性膵炎。入院した愛犬を待つ家族の気持ちは?

文:高栖匡躬
 ▶プロフィール
 ▶ 作者の一言
 ▶ 高栖 匡躬:犬の記事 ご紹介
 ▶ 高栖 匡躬:猫の記事 ご紹介

――次話――

闘病を振り返ると、飼い主はただ選択肢を増やしていただけ。
しかし、それが重要なのだと思います。
例えれば、”ハズレ”しか入っていないクジの中に、”アタリ”の札を仕込むようなもの。
闘病というのは、そんなものなのかもしれません。

――前話――

急性膵炎の炎症は、胆嚢と胆管にダメージを与えていました。
胆管閉塞を併発していたのです。
主治医は安楽死を仄めかしました。
しかし、そこからが本当の闘いです。
対応できそうな病院は、どこも予約が一杯。
さて、どうするかーー

まとめ読み|急性膵炎・胆管閉塞 闘病記
この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。

 

――本闘病記の第1話です――

ある日突然、我が家のピーチーを襲ったのは急性膵炎
危険な状態でしたが、幾つも幸運が重なって無事回復しました。
「良かった」と胸を撫でおろす飼い主。
――しかし、そうではありませんでした。
それは本当の闘病の始まりだったのです。

 闘病に関する心構え

努力は、奇跡の確率を上げるもの

闘病記を読むと、奇跡的に治るという表現に時々出会います。
しかし奇跡は、待っていて起きるものではありません。
奇跡が起きる確率は、努力で上げることができます。

医師まかせにせず、とにかく情報を集めて分析する事です。
その中に、もしかすると答えがあるかもしれません。

考え方を変えれば、飼い主が愛犬や愛猫の闘病で出来ることは、それ以外には無いのかもしれません。

医学書や論文を読むよりも現実的な情報源

犬が病気になった時、幾ら探しても、役に立つ医療情報が見つかりませんでした。
通り一辺倒だったり、逆に専門的過ぎたり。
どれもこれも、現実的ではないのです。
そんな中、飼い主が書いた闘病記に行き当りました。
動物医療の専門家ではない、普通の飼い主が書いた闘病記です。
そこからは、本当に色々な事を教わりました。

 ピーチーの他の闘病記です

肺がん闘病記

いつも元気一杯だったピーチー。
大病をしてから、体調に浮き沈み。
この数日も「ちょっと変」と思い、「”多分”、いつものこと」とも思っていた。
”多分”は段々と弱々しくなり、少しだけ嫌な予感も。
「今日は病院だな」と思ったのがこの日。

 

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