うちの子がうちにくるまで|No.9
犬を飼うきっかけはひとそれぞれ。
本話の主人公は、たまたま遭遇した事故で人助けをしたために、大怪我を負ってしまいます。リハビリで始めた散歩。その散歩のお供で迎えたのが、超大型犬・グレートピレニーズのバーディーでした。
子犬だったバーディーは、最高のパートナーとなっていくのですが、やがて……
こんな方に:
グレートピレニーズってどんな犬?|超大型犬と暮らしてみたい
お前は運命の子
私は小学生の頃、捨て犬の子犬を拾って来て、家で飼おうとした事がありました。しかし家では猛反対でした。
親は、居たところに戻してこいと言いました。
でも私は、家の外で隠れて飼おうとしたんです。
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次の日の朝の事でした。
隠し場所にいったら……、その子犬は死んでました。
寒い朝でした。
私は落ち込んで一日中泣いていました。
それから40年間、犬を飼おうとも思いませんでした。
そんな私に変化が起きたのは、ある日、突発的な事故(横転した車からお母さんと2姉妹を救出)で、右膝の内側側靭帯を断裂、後十字靭帯剥離骨折、半月板損傷という大怪我をして手術をしたことがきっかけです。
退院して長いリハビリが始まる頃でした。私は、犬を飼って散歩すれば否応なしにリハビリをするんじゃないかと思い立ち、小さなペットショップに行ったんです。
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そこで見かけたのが、生後2ヶ月のピレネー犬。
その子こそが、私のバーディでした。
目が可愛いくって、小さいのに足が太くて、可愛らしい仕草で、私を連れて行ってと言わんばかりにこちらを見る目線に、私は釘付けになりました。静岡の掛川市で生まれたこの子が、なぜ札幌ではなく道東の小さなペットショップにいたのかはわかりません。
きっとそういう出会いを、運命と言うのでしょう。
私は、ペットショップで一目惚れしたその子を、うちの家族として迎えることにしました。バーディという名前は、その頃好きだったゴルフ(ハンディ6)にちなんだものです。
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そうそう、バーディがうちに来る直前には、一波乱がありました。
ペットショップから電話があり、この子はもしかしたらパルボウィルスに感染しているかもしれないと言われました。もしかしたら死んでしまうかもしれない。その場合は代犬を準備するとも。
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せっかく出会えたのに……
しかし、幸いにもバーディは、感染していませんでした。
胃腸の弱い子だったんですね。
ペットショップからは、それでも良いなら迎えに来て欲しいと言われました。もちろん迎えに行きましたよ。
こうして大型犬のグレートピレネーのバーディは、予定より1週間遅れでうちに来て、うちの子になりました。我が家にとってバーディは、初めての犬でした。
バーディは食欲は旺盛なのに胃腸が弱いので、当初は大変でした。あっちこっちでうんPをチビ、チビっとね。だから、小さい頃のバーディは、いつも紙オムツをしていたんです。
でも、フローリングの床を滑りながら、私達に甘えてくる姿は本当に可愛かったなあ。
それから9年間、バーディは私のリハビリに付き合ってくれました。
当初ニプレスをつけて始まった散歩は、やがてそれが装具にかわり、サポーターにかわりながら、雨の日も、雪の日も続きました。
おかげで、手術しても45度しか曲がらないと言われた足は、正座ができるまでに回復する事ができました。
そして9年が過ぎた4月14日の午後、バーディは自分の役目を果たしたかのように、静かにお空に旅立ちました。
「もう私がいなくても、お父さん大丈夫でしょう!」
バーディは、きっとそう思ったんじゃないのかな。
最後は眠るように、優しいお顔でした。
バーディが旅立ってしまってからの事。なんと驚いたことに、バーディは私が怪我をした日に生まれた事が判明しました。私にはバーディが、まるで私のリハビリの為に生まれて来て、9年間寄り添ってくれたように思えてなりませんでした。
そして私は不思議な糸の繋がりと、その強さに、感激と感謝の気持ちで身体が震え、涙が止まりませんでした。
私は、泣きました。
声をだして、何度も何度も泣きました。
今たくさんの人達がワンコを飼っています。
可愛いから? 犬を飼うのが夢だったから?
犬を飼う動機は様々です。
犬を飼っていらっしゃる方は、どうか一度考えて見てください。
うちの子が、うちの子になるには、必ず必然という糸が存在する事を。
私はこの糸に導かれ、バーディからたくさんの癒し、励まし、そして幸せをもらいました。きっとその糸は、今でもバーディに繋がっています。
ありがとう!
バーディ!
――バーディーがうちにくるまで|おしまい――
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犬種:グレート・ピレニーズ
飼主:角田鶴瓶
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――うちの子がうちにくるまで、次話――
初めはウサギが欲しかった。そんな娘さんとの約束事。
しかしその約束は、いつの間にか犬を飼うという話に――
動物を飼うことに消極的だったお父さんは、約束を守れるのか?
――うちの子がうちにくるまで、前話(2話構成です)――
片目を失った犬を、保険所から引き取ることにした夫婦。
犬との出会いはいろいろとあって、迎える時の葛藤も様々です。
犬にハンデがある場合は、特にその葛藤は大きいはず。普通ならば――
それをものともしない、優しい心を持った飼い主と犬とのお話です。
夫婦はその犬を、旅人(たびと)と名付けた。
もう旅をしなくて良いと、思いを込めて。
犬というのは逞しい生き物だ。
体がどこかおかしくても、ちゃんと適応して生きてくれる。
楽しそうな笑顔だ。屈託のない笑顔だ。
飼い主と共に、生を楽しむ、溢れ出すような笑顔だ。
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この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。
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――うちの子がうちにくるまで、第1話です――
昔からいつかはワンを飼いたいと、ずっと夢見ていたんです。
でも、夢と現実の差はでっかいですよね。結局はずっと、実現できずじまい。
――そんな夢を叶えた飼い主さんのお話。
犬との出会いは運命に似ています。
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一見屈強で男の中の男と言うイメージの作者。
しかし作者は、先代犬のバーディーを亡くし、毎日泣いて暮らしていました。
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さて、新しい子は、どのようにやってきたのでしょう?
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うちの子がうちにくるまで――
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出典
※本記事は著作者の許可を得て、下記のブログを元に再構成されたものです。