撮影&文|奥村來未 (本記事は2017年9月に執筆されたものです)
今月で1年になった、我が家の愛犬Mackの介護。
最近、わたし自身の心境が大きく変わってきているなと感じます。
今回は、Mackの介護が始まった経緯について書こうと思います。
立てなくなってしまったきっかけ
2016年9月26日から、Mackの介護がはじまりました。その頃からふらつきが出始め、転倒が多くなり、歩くときは手を添えてやるようになっていました。オシッコやウンチをする時はシートの上で足が滑るので、ほぼ抱える体勢で出るまで支えなければならず。
この頃から、Mackは夜に眠らなくなりました。
夜中に何度も起きては夜鳴きをするMackーー
10月に入り、それまでお座りの体勢で乗っていたバギーにも、寝たままの体勢で乗るようになり、更に歩けなくなっていきました。
そして11月。急性膵炎で入院。
それ以降は歩けないどころか、立てなくなってしまい、ついに完全介護になりました。
生活リズムの変化と夜鳴きの悩み
Mackは寝たきりになり、排泄の方法も変わりました。オシッコは圧迫排尿。便も絞らなくては出なくなりました。
次に、睡眠リズムが崩れ、夜中にワンワンと鳴くことが多くなりました。
わたしはアパートに住んでいたので、Mackが鳴くと近所迷惑になってしまいます。
何とか夜に寝かせたいと、薬による睡眠コントロールを始めました。
それでなんとか寝るようになりましたが、少しずつ薬の耐性がついて効かなくなっていきました。Mackは夜中に目を覚まして、急に興奮してしまうことも――
吠えるとご近所に迷惑になるからと、私はMackを連れて車で出かけ、うるさくしても大丈夫な田んぼのど真ん中に行ったりしました。
愛犬のマイナスの変化はとても悲しくなるものです。
特に夜に寝てくれないのは困ります。わたしもMackに合わせて夜起きていたので、ほとんど眠れず毎日睡眠不足になりました。
それまでは普通に過ごしていたのに、この急な生活リズムの変化は、わたしにとって、とても大きなストレスでした。
介護疲れのイライラからの脱却
Mackの介護が始まった当初は、このまま死んじゃうんじゃないかとか、もう長くないんだとか、毎日そんなことばかり考えていました。すべてに悲観的になり、自分を責めてばかりいる日々……
自分がMackの飼い主じゃなかったら、もしかしたら寝たきりにならずに歩けてたかもしれない。Mackより年上のわんちゃんでも歩いたり走ったりできているのに、わたしのせいだ!と自分を責めてばかりいました。
夜になればMackの夜鳴きが始まるかもしれないと眠れずにイライラしていました。唯一のストレス発散は個人ブログ。ぶつける場所のないイライラをブログに書き、ボヤくことで発散していました。
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悲観からの心境の変化は、ほぼ開き直りでした。
Mackが寝ないことに対して大きなストレスを感じていましたが、「もういいや、もう夜に寝なくても良いよ!」と、ある時突然思ったのです。
おそらくわたしももずっと続く不眠状態で、ハイにでもなっていたんだと思います。
でも不思議と、開き直ることでそれまで感じていた介護のストレスが大幅に減りました。それまでは自分の用事を優先していましたが、その頃から自分が何をしていても、Mackが寝そうなら手を止めて、Mackと一緒に寝てしまうことにしました。
これはきっとわたしが専業主婦だからできたことだと思います。仕事をしながらの介護なら、全然違っていたことでしょう。
Mackの寝る時間に合わせて睡眠をとるようになると、徐々にイライラが治まってきて、少しずつ気持ちに余裕が出てきました。
「天から与えられた時間は、どうせ決まってる。今は、あの膵炎の時の危険をのり越えたMackが、神様からもらったボーナスタイム。だから介護を精一杯楽しまなきゃ!」
気持ちが切り替わり、その時にふと思いついてはじめたのが寝相アートでした。
「老い」を楽しむ
体の自由がうばわれ、要求吠えをするようになってしまったMack。
でも寝相アートをやりだしてからの私は、Mackが吠えないように抱っこしながら部屋中歩き回ってる間、次の祝日やイベントデーに、どんな写真を撮ろうかな♫なんて考えています。そしてそれが、いい気分転換になっています。
それでも、イライラがなくなったわけではありません。介護が始まってから出始めた食い渋り。そしておびただしい薬の量。
凄くいやそうな顔をして薬を飲むMack。それでも飲ませなきゃいけないわたし。
ああ、わたしが飼い主じゃなかったらと――
でも最近は、こう思ってるんです。
きっとわたしがMackのことをこの世で一番理解していて、Mackのことをこの世で一番考えてる人間はわたし。だからわたし以外にMackの飼い主はいない!
わたしはMackのお姉ちゃんなんだからと。
嫌なこともしなきゃいけない。たまにはイライラすることもあるさ。
だけど、わたしはいつもニコニコ笑う。そしてMackの老いを受け入れ、出来ないことを認める。そして、今出来ることをやる。
子育てと同じように、介護も時間が経てば慣れてくるし、時短テクやうまい手の抜き方とかをだんだん習得してくるんですよね。
わたしの気持ちの余裕というか、わたしがイライラしていないことが、Mackにも良い影響を与えているのだと思います。Mackはそんなわたしの気持ちをきっとわかっいて、頑張ってくれているのです。
介護の時間は自分の成長の時間
お別れの時がいつ来るのかはわからない。そう遠くないと思うし、きっとその時はこの世の終わりのように深く深く悲しいだろうけど、Mackは今わたしの目の前に居るのだから、精一杯楽しまなきゃって思ってます。
私の精神を鍛えて育ててくれてるんだと思います、Mackは。
わたしの人生に彼は必要だった。
きっと彼にとってもわたしは必要だった。
だからめぐりあった。
わたしの成長と結婚、出産、そして娘の成長まで見守ってくれているMackですからね。今は家族みんなでMackを見守っています。
Mackと暮らし始めた頃はそんなに犬が好きじゃなかった夫も、どんどん犬好きに染まり、基本外で犬を見つけてはニヤニヤし、先日は『Mackって手触りだけで可愛い』ってわたしが言いそうなことを言うまでになりました(笑)
介護をしている飼い主さんに伝えたいこと
夫が犬好きになってくれたのもMackのおかげ。
娘が獣医志望なのもMackのおかげ。
きっと介護の日常が家族に与えてる影響は、とても大きいとおもいます。
そして、それはいい影響なんだとおもいます。
介護は始まってすぐの頃って、困惑することが多いと思います。
今、介護に疲れている飼い主さん、つい夜眠れなくてイライラしてしまう飼い主さんにに、自分が経験して感じたことをお伝えします。
介護の時間は、もしかしたら愛犬からのメッセージなのかもしれません。
わたしもMackの介護が始まってから、困惑して眠れなくてずっと苦しかったけど、Mackがわたしに何か伝えたいことがあるのかも、と思うようになり、介護を楽しめるようになりました。
どうかひとりで苦しまないでください。
わたしは、そんな飼い主さんを心から応援しています。
――了――
文:奥村 來未
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まとめ読み|老犬が私たちに運ぶ幸せこの記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。
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奥村來未さんの記事 - 老犬の介護を始める方へ(3部作)
老犬の可愛さを知っていますか?
子犬のように可愛い、老犬の可愛さを――
それに気が付くかどうかで、愛犬との関わりは変わります。
介護は苦しいの? それとも楽しいの?
可愛い老犬の介護は、可愛い子犬のお世話ととても似ています。
みんな気が付いたらいいのにね。楽しいんだから。
犬が元気一杯の時期から老犬で寝たきりになるまでは、平均寿命で考えると、僅か14年程しかありません。
急に衰えた自分に、犬は困惑します。
楽々飛び越えた段差につまづくようになり、大好きなソファーに飛び乗れなくなり。
自信を無くした顔を、今も忘れません。
そんな気持ちを、分かってあげたいですね。
老犬の可愛さを感じるには、ある種の気付きがいるように思います。
それまで出来たことが、ある日急にできなくなる。
階段を下りるように――
しかし、それを心配し、嘆くのは飼い主だけ。
犬は全てを受け入れて、前向きに生きる。
ありのままで良い、一緒に生きよう――
そう思った時にはじめて、視界が開けるような気がします。
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出典
※本記事は、下記のブログを元に再構成されたものです。