ペットが病気、ペットのお見舞い
我々は知り合いのペットが病気になった時、慰めの言葉や、励ましの言葉をかけてあげたくなりますね。しかしその病気が重い場合には、思わず言葉に詰まってしまうことがあります。軽はずみな言葉を発して、相手を傷つけるのではないかと、躊躇してしまうからです。
しかし――、何も言葉をかけない訳にはいかないし――
ペットを看取ったことがある方ほど、その思いは複雑であることでしょう。
この記事は、飼い主さんに掛けてあげる言葉について考えてみようと思います。
【目次】
- ペットが病気、ペットのお見舞い
- 「頑張れ」という言葉と「頑張らない」という選択
- 「頑張れ」に代わる言葉は何?
- とても感心した言葉があります
- ペットを亡くした飼い主さんにはどんな言葉が良い?
- こちらの記事も読んでみてください
「頑張れ」という言葉と「頑張らない」という選択
下記の記事をお読みになった読者の方から、とても貴重なコメントをいただきました。
それは、筆者が記事中に書いた、
『闘病や介護中の飼い主さんに対して、最も良く使われているであろう言葉「頑張れ」は、必ずしも励ましになっていないのではないか?』
という一文に対しての反応です。
本記事ではこの「頑張れ」を掘り下げていきたいと思います。
尚、ご意見をいただいた記事はこちらです。
(ご意見)私は「頑張れ!」という言葉は励みになった
まずは、上記の記事『頑張らないという選択』について概要を整理しておきます。
さてそれではここから、「頑張れ」について考えてみましょう。
「頑張れ」を考えることで、他の励ましの言葉も見えてくように思います。
「頑張れ!」という言葉を考える
「頑張れ!」という言葉は、それを受け取る側が置かれている心理状態で、随分と印象が違ってくるもののように思います。「頑張れ!」と言って下さる方は、例外なく飼い主さんの味方で、飼い主さんを励ますために言って下さっているのは明らかです。
しかし、だからこそ――、時にその言葉で、複雑な気持ちになることがあります。
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筆者の愛犬ピーチーの闘病中には、「頑張れ!」と沢山の方から励まされました、筆者はそれを、素直にありがたいと思いました。ですがそれは、ある程度の人生経験を積んだ今だからこそ言えることのように思います。ずっと以前、筆者がまだ若かった頃は、その言葉の捉え方が随分違っていました。
本論から逸れるので詳細には書きませんが、筆者の経験を1つだけお知らせします。それは筆者が20代の中頃の事。連日の看病の末、父親を看取った時のことです。
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その当時、筆者は夜は病院で父親に付き添い、朝になると母親に交代をして、その間に仕事をしていました。
その頃、「頑張れ!」言われても、素直に受け取れなかったことを思い出します。
「言われなくても、頑張ってるよ!」とか、
「これ以上、どう頑張ればいいの?!」と考えていました。
もちろん、そんな思いを口に出すことはありません。誰かに「頑張れ!」と言われる度に、「ありがとう」と愛想笑いをし、その数と同じ分だけ、心にひっかき傷を作っていたように思います。
「頑張れ!」を素直に受け止めるためには?
歳をとるに従って、「頑張れ!」は、素直に受け止められるようになりました。
しかし改めて思うと、それは次第に心が鍛えられて、「頑張って」という言葉に耐性がついたからだと思います。ようやくその言葉の底にある、励ましの気持ちだけを、素直に受け入れるようになったわけです。
もしもこれから先、自分の身に、過去に経験しなかったほどの深刻な出来事があり、「頑張れ!」と誰かに言われた時には、それを素直に聞けるのだろうか? とも考えてしまいます。
年齢を重ねた今でも、実は自信がなかったりします。
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励ましの言葉をどう受け取るのかというのは、やはり受け取る側の、気持ちの余裕次第なのではないかと思います。
前の記事で筆者が書いた事は、 「頑張れ!」と言われても、本当に頑張る必要なんてないんだという事です。何故ならば、ギリギリの状態で更に頑張ってしまうと、心の負担が限界を越えてしまうかもしれないからです。
「頑張れ!」の言葉に対し、本当に頑張るのかどうかは、本人に任されている。
そのように心得ておけば、どんな「頑張れ!」もきっと、素直な励ましの言葉になるように思います。
言葉はいつも悩みながら絞り出す
言葉というのは難しいものです。
自分の口から出た瞬間に、或いは文章にした瞬間に独り歩きを始めます。
相手がそれをどう感じるのかは、千差万別ですね。
励まされるかもしれないし、それとは逆に傷つけててしまうかもしれない。
そんな悩みを書いた記事を以下にご紹介します。
この記事の作者は、老犬の介護をして看取った経験があり、同時にご家族の障害とも向き合っています。
この記事を読むと、言葉の重みを感じずにはいられません。
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いつも悩みながら、絞り出す言葉
いつも迷います。でも、声を掛けずにはいられない。
だから、悩んで絞り出します。
本当に難しい言葉――
「自分の時はどうだった?」
「あの時の自分なら、どう思う?」
「傷つかないかな?」
――そんなことを思いながら。
皆さんはどうでしょう?
「頑張れ」に代わる言葉は何?
応援をしたい気持ちを言葉にするのは難しいものです。
予めそれを考えておかない限り、とっさに口を突いて出るてくるのは、「頑張って」という、月並みな言葉になってしまうことでしょう。
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それでは、「頑張れ!」に代わる言葉は何があるでしょうか?
筆者の経験の中で、素直に受け入れられた言葉は「頑張っていますね」と、「頑張りすぎないで下さい」という言葉でした。
なぜそうだったのか?
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理由:応援をしているから
突き詰めて考えると、「頑張れ!」という”応援”は、強い言葉のくせに、相手の気持ちがその場限りで、時間と共に消えていくように感じました。スポーツの応援と同じことです。きっとそのように言って下さる方の本心は、そうではないんのでしょうが――
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理由:承認と労いだから
それに対して、「頑張っていますね」と「頑張りすぎないで下さい」という言葉は、応援ではなく”承認”であり、”労い”です。「頑張れ!」ほど力強くは無いけれど、ずっと続いていくイメージがあります。
この2つの言葉を、やや説明調に言い換えると、「頑張っていますね」は、『ずっとあなたを見ていたけれど、いつも頑張ってますね』となり、 「頑張りすぎないで下さい」は、『頑張っているあなたのことが心配です。自分のことを大切にしてください』 という意味になるでしょう。
とても感心した言葉があります
「頑張れ!」に代わる言葉について、もう一つだけ。
愛犬ピーチーの闘病中に、獣医さんから掛けられた言葉で感心したものがありました。それは、 「いっしょに頑張りましょう」という一言です。
この「いっしょに頑張りましょう」も、前の2つの言葉「頑張っていますね」「頑張りすぎないで下さい」とはニュアンスが違っていて、やはり応援ではありません。分類するならばきっと”同意”ですね。だから素直に聞けるのかもしれません。
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そう言えば、(人間を診察する)良い医師は患者に対して、「頑張ってください」とは言わないのだそうです。最近では医学部の授業の中で、そんなレクチャーもあるのだとか。
もしかしたら、根本は同じ理由なのかもしれませんね。
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(追伸)
最後に少しだけ追記です。最近、大切な仲間が愛犬を失くしました。
今はペットロスの時期にあります。
その仲間が、素直に受け入れられた言葉が、
「お大事に」
だそうです。良い言葉ですね。
言葉にできない100の想いがあることが、一言で伝わる気がします。
ペットを亡くした飼い主さんにはどんな言葉が良い?
ペットを亡くした飼い主さんに掛けてあげる言葉
闘病のときだけでなく、ペットを亡くした飼い主さんへの言葉にも迷うものです。
大往生とか、誰かのペットよりも長く生きたとか、なぐさめているつもりでも、相手を傷つけてしまう言葉があるのです。
筆者の体験談としての別れの言葉です。
愛犬が去るときに備えて、筆者は言葉を用意していました。縁起でもないと思われる方がいるかもしれませんね。しかし、その言葉を探すとき、飼い主と愛犬の絆が見えて来たりするのです。
ペットロスの方に掛ける言葉で、気を付けたいこと
ペットを亡くした飼い主さんに、「虹の橋を渡った」という言葉が良く使われます。しかしその使い方は正しいのでしょうか?
虹の橋の詩を理解している方に対しては、「虹の橋を渡った」の言葉は、逆に相手を傷つけてしまうこともあるのです。
以下は虹の橋について考察した記事。
虹の橋には行くものであって、渡るものではないのです。
以下の記事は、ペットロスについて考えた全4話のシリーズです。
慰めは一時しのぎの言葉ではあってはならないと思います。
ペットを亡くした後に訪れるペットロスについて知ることで、飼い主さんに掛けてあげる言葉も変わってきます。
――了――
文:高栖匡躬
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こちらの記事も読んでみてください
闘病に対する見方が変われば、掛ける言葉も違ってきます。
以下は、闘病に対する視点について書いた全5話のシリーズ記事です。
それは限られた時間を刻むこと
愛犬の闘病で悩む飼い主さんは多いですね。
それは、見えない不安が、心にのしかかるから。
これからどうなる? いつまで続く? 医療費は?
見えないものは仕方ない。しかし見えているものもあるはずです。
不安に怯えるのではく、どうか前向きに。
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ペットとの別れ対しても、見方が変われば、掛ける言葉も違ってくるように思います。
以下は、ペットとの別れについての記事です。
ペットとの別れは特別なものではない――
我々は、看取りの内容に囚われてしまいがちです。
良く看取れたのか? そうでなかったのか?
別れのあとも、ずっとそれを考えてしまいうのです。
別れは特別なものではなくて、生き物には必ず訪れる自然なものです。
必要以上に重要に考えないことが、大切なように思います。
看取りをもっと積極的に捉えられるように、このコラムを書きました。