うちの子がうちにくるまで|No.20 - 3
ピーチーがうちに来るまでのお話、最終話です。
ピーチーが旅だってしまってから、ピーチーがうちに来るまでの話をするのは不思議な感覚です。一緒に暮らしていた時とは、随分と感じ方が違うのです。まるでつい昨日のことのように思い出せるのに、ピーチーはもういないのですから。
しかしそれは、悲しさとは全然別のもので、むしろ楽しかった思い出だけが、瞬時に胸いっぱいに広がるのです。いなくなってから、『うちの子がうちにくるまで』を振り返るのも、良いもんだな~と思います。
さて、ここからが前話の続きです。
こんな方へ:
ブルテリアってどんな犬?|闘犬だったらしいけど、凶暴なの?|飼いにくい犬種と聞いているけれど実際はどうなの?
ペットショップでの出会い
ペットショップからの電話で、週末にその店を訪れた筆者は驚きました。
何にかって?
まだ名前も付いていない、生後1か月にも満たない小さなブルテリアの幼犬にです。
とにかく可愛かったんです。
(当時は生まれて間もない子犬が店頭におかれることが、当たり前のように行われていました)
その子は、両手に少しだけ余るくらいのちっちゃな体で、真ん丸な目で僕と、うちの奥さんを興味深そうに見上げていました。
「どうぞ、抱いてみてください」
店員さんにそう言われて、まずは奥さんがその子を抱いてみました。
これがその時の写真です。
その子はちょっとだけ不安そうに見えましたが、怖がってはおらず、その証拠に少しも震えていませんでした。じっとしていて、時折首を振って、筆者と奥さんに交互に視線を送って来ます。僕が頭をなでてやると、気持ちよさそうに目を半分閉じました。
「何て可愛いんだろう……」
それは、予想を遥かに上回る可愛さでした。
奥さんは筆者にも抱いてみろと、その子を差し出しました。
その子は、その時も少しも怖がらず、そればかりか勢いよく尻尾を振ってくれまた。
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初めてその幼犬を抱いた時の手の感触は、今でも忘れられません。柔らかくて、ふわふわで、ぬいぐるみみたいで、でも確かに生きていて、暖かい。初めて会うのに、筆者を信頼し切っていて、筆者の手に全身を委ねている感じです。顔を良く見ようと、目の前まで持ち上げると、その子は勢いよく尻尾を振りました。
「この子は、高いところが好きなのか」
筆者は人間の赤ちゃんにするように、『高い、高い』をやってみました。するとその子は、先程よりもより激しく尻尾を振りました。
面白いので、何度も『高い、高い』をすると、その度にその子は同じ仕草を繰り返しました。
「どうなさいますか?」
そう、店員さんに訊かれました。
正直言って筆者は、ペットショップに来る前は、6対4で買わないかなと思っていました。だって、希望していた男の子ではありませんでしたし、その時はまだ、犬を飼う覚悟も十分にはできていませんからね。しかし、実際に姿を見てしまったらもう勝負ありです。
うちの奥さんの顔を見ると、「好きにしたら」と言ってくれました。
「この子にします」
その返事を聞いた店員さんは、「良かったね~、家族が決まったよ~」と言いました。
そうです、その瞬間にその子は、うちの家族になったのです。
「お迎えは一週間後になります」
と、店員さんは言いました。これからワクチンを打つとお腹が緩くなるので、それが安定してからの引渡しだそうです。
筆者と奥さんはそのペットショップで、これから家族を迎え入れるための、色々な物(首輪とか、リードとか、ご飯の器とか・・・)を買い込みました。大きなコンビニ袋2つが、一杯になりました。
下の写真が、その時に買った一番最初の首輪です。
猫用なので、金色の鈴がついていました。
そう言えばそのペットショップから家に帰る道すがら、筆者は「思ったよりも可愛かった~」と言ったのだそうです。本人は覚えていないのですが、奥さんはそれが印象深かったらしく、今でも時々筆者にその事を言います。
家に帰ると筆者と奥さんはすぐに、その子の名前を考えました。
筆者は『ニッケ』にしたいと言いました。ニッケは筆者の田舎の方言で、シナモンのことです。肉桂から転じた言葉なのでしょう。筆者が子供の頃に飼った3匹の子は、どれも『チビ』でした。『ニッケ』は、今度犬を飼うことがあったら違う名前にしようと思い、子供の頃からずっと温めていた名です。
奥さんは、「女の子だからもっと可愛い名前が良い」と言いました。例えばモモとか、桃子とか、ピンキーとかです。何しろ、見た目が桃色でしたからね。
筆者も、そう言われれば確かにそうだなと思いました。結局『ピーチ』に落ち着きかけたのですが、最後の最後、もうひとひねりして『ピーチー』になりました。『ピーチ』は名詞で桃ですが、『ピーチー』は形容詞で、桃みたいに可愛いという意味です。
待ちに待った1週間が過ぎ、筆者と奥さんは『ピーチー』を車で迎えに行きました。
そして『ピーチー』は、段ボールの箱に入れられて、筆者に手渡されました。
まるで物みたいなので、一瞬「えっ」と思いましたが、実はそれが移動の際に一番安全なのだそうです。
今でもその箱は、大事に取ってあります。
ピーチーはね――
あの日――
小さな小さな箱に入って、うちに来たんだよ。
――ピーチーがうちに子になったのは(3/3)・おしまい――
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当時の状況はこの記事に書きました。
そしてピーチーは我が家に来てすぐに、警察犬の学校に行くことになります。
どうしてかって?
それはこちらの記事に――
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犬種:ミニチュア・ブルテリア
飼主:高栖匡躬 ・ピーチーパパ
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――うちの子がうちにくるまで・次話――
冬のある日、家への帰り道、ふと立ち寄ったペットショップには、外にケージが積み上げられていていました。中には雑種の子たちがいて、そこには[ただであげます]という紙が貼られていました。
――うちの子がうちにくるまで・前話――
マンションがペット可とだ気が付いたのですが、すぐに犬を飼おうとはなりません。命を預かるのですから覚悟が大事です。最後まで面倒が見られるかな?
――まだまだ迷いがありました。
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この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――うちの子がうちにくるまで、第1話です――
昔からいつかはワンを飼いたいと、ずっと夢見ていたんです。
でも、夢と現実の差はでっかいですよね。結局はずっと、実現できずじまい。
――そんな夢を叶えた飼い主さんのお話。
犬との出会いは運命に似ています。
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愛すべきブルテリアたち
うちの子がうちにくるまで(ブルテリア編)――
ペットショップで心を奪われて……
それは犬を飼う時の動機の中では、かなり上位に位置します。
本話の飼い主もその一人でした。
しかしその犬はよりにもよって、先住犬ジャックラッセルテリアと最も相性が悪いとされるブルテリアでした。
3匹の犬、ちょび、ごはん、おかずを、同じ年に亡くしてしまった作者。
やがて作者は、その年生まれの子犬を見つけます。
「生まれ変わりだったら嬉しいな」
それが、花ちゃんとの出会いでした。