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【自己免疫不全】 獣医師の「お歳です」という言葉 ~免疫系は難しい。その実例と検証(3/3)~【闘病記】

ピーチーの闘病記:自己免疫不全 編(自己免疫疾患)
ピーチーの闘病記:自己免疫不全 編

撮影&文:高栖匡躬 

 

今回も自己免疫不全のお話し。3話連続の最終回です。
ピーチーの病気に関して、掛かり付けの主治医と、サードオピニオンをもらっていた別の獣医さんとの会話を中心にまとめます。

目次

 当時お世話になっていた動物病院は3つ

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ピーチーが自己免疫不全で診ていただいていたのは、主に2つの病院でした。

まずは主治医である『大倉山動物病院』。ここは生後6か月でピーチーがアレルギー性の皮膚炎を発症して以来のお付き合いで、毎月1回ずつ、14年も通い続けていました。

次が二次診療の『DVMs動物医療センター横浜』。ここは地域に高度医療を提供する病院で、主治医の手におえない病気を患った犬や猫たちが、遠方からも集まってきます。救命救急センターを抱えているので、通常の二次診療だけでなく、夜間の救急でも何度かお世話になりました。

実はこの2つの病院以外に、もう1つお世話になっている病院がありました。それが今回のお話の中心になる、ラクーン・アニマル・クリニックです。
この病院の院長である木佐貫先生は、オーストラリアとアメリカで長く臨床経験を積まれた方で、何を訊ねても、すぐに明快な答えが返ってくる気持ちの良い方です。次項でインタビューを掲載します。

複数の獣医師から意見を聞くメリット

3つの病院、獣医師と並行してお付き合いしたことが、結果的にピーチーの命を救う事になりました。見解の異なる意見を聞く事で、飼い主は冷静になれるのだと思います。

もしかすると、「えっ3つも?」と思われるかもしれませんね。しかし、重大な疾患になるほど、3つ意見が欲しくなるのです。2つでは足りないと―― 

 

 獣医師へのインタビュー

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当時、某メディア向けの記事を書くために、前述の木佐貫先生にインタビューをお願いしました。そしてそのインタビュー後に、自己免疫不全についても話題に上りました。その時の会話をお知らせしたいと思います。

Q.先生、うちのピーチーなんですけどね、ステロイドと免疫抑制剤の投薬をしていたら、何か聞こえなくなっていた耳が、聞こえ出したみたいなんですよ。

「良かったじゃないですか。きっと内耳炎も自己免疫性の疾患で、それもついでに治ったということですよ」

Q.そんな事って、あるんですか?

「自己免疫不全は何でもありだから、それが原因で体中、色んな所で悪さをしている可能性がある。逆にその原因が取り除かれたのなら、治っても不思議じゃないですね」

Q.ですが先生。聞こえなくなったのはもう2年も前。主治医からは『お歳だからしょうがないね』って言われてたんですよ。打つ手もないとの事で、もう諦めていたんです。

「病気にね、『お歳』っていう理由は無いんですよ。必ずそこには何かの原因、病変があるんです。『お歳』っていうのは、僕から言わせれば、医師の怠慢ですね」

Q.すると先生、ピーチー以外の子でも、『お歳』だって医者から言われて諦めていた体の不調が、治る可能性があるってことですか?

「もちろんそうですよ。要は原因を突き詰める気が医師にあるかどうかという事です。難しいかもしれないけれど、方法は沢山あるわけですからね。医師が諦めたらそれで終わりです」

Q.自己免疫不全は診断が難しいそうすね。ピーチーの場合は偶然にそこに行き当たったわけですが、もしかすると他の犬でも、実は自己免疫不全なのに、単なる老化で片づけられる子って、多いんじゃないでしょうか?

「多いでしょうね。相当な数がいると思いますよ。『老化』ならまだしも、まだ若いのに『原因不明』で片づけられちゃう子も多いでしょう」

『お歳』は理由にはならない

木佐貫先生との会話は以上のようなものでした。
『お歳』が原因の病気など無いという言葉が印象的でした。

思い返せばピーチーの場合、主治医からは、「多くの子が、だいたい13歳くらいで耳が聞こえなくなってくるんです。全く聞こえなくなる子も少なくありません。もうお歳だからしょうがないですね」と言われていました。

あの時もしも更に、難聴や耳の痒さの原因を追究していれば、自己免疫不全に行きついていたのでしょうか? そうであったかもしれませんし、そうでなかったかもしれません。

この後インタビューは、思わぬ方向に進んで行きました。

 

 そうは言うものの、『お歳』という言葉は……

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Q.先ほど先生は、病気には『お歳』という理由は無くて、必ず何か原因があると言われましたね? そして医師が原因の追究を諦めたところで終わりだと。

「その通りだと思います」

Q.それって、”医師が”というところを、”飼い主が”と言い換えることもできますよね。飼い主が諦めなければ、医師が諦めても終わりにならない。医師を代えることだってできるわけですからね?

「そうとも言えますね」

Q.でもそれは、飼い主にとってはものすごく負担ですね。愛犬の闘病は飼い主に、ものすごく大きなエネルギーを求めてきます。精神的な負荷もあるけれど、現実的に時間もお金も掛かる。

「難しい問題ですね、それは。しかし、獣医師は常に選択肢を持っていて、飼い主さんに提供し続けなければならないと思います。選ぶのは飼い主さんですが、最後まで選ばせてあげるのが獣医師の務めだと私は思うんですよ」

Q.先生、むしろ『お歳です』って、優しい言葉なんじゃないでしょうかね?

「優しい? どういうことですか?」

Q.その言葉の裏には、『これ以上突き詰めても飼い主さんが辛いだけです。ここらにしときましょう』という、医師の配慮もあるような気がします。長年、沢山の犬や飼い主さんを見続けてきた獣医さんの、優しさもあるのじゃないでしょうか?

「確かにそうかもしれませんね。先端医療が何から何まで良いわけじゃないというのは、人間と同じですからね。改めて考えると『お歳です』という言葉は、犬と人間の付き合い方の基準を、曖昧にぼかして、いい具合にしてくれているとも言えますね」

Q.飼い主からすると、そこで一区切りつけることができますよ。
『ここまで長生きしてくれたんだから、本望だ』と考えることもできるし、
『まだまだやれることはあるはずだから、先端医療のある病院に移って、徹底的に闘病する』という決心を固めることもできる。
考える切っ掛けを作ってくれる言葉のようにも思います。

「いままで考えたことなかったけど、『お歳です』って、意外に悪くないかもしれないね」

Q.きっとその一言で、沢山の飼い主さんが救われていますよ。

「『お歳です』か……」

Q.先生もこれから、その言葉、使います?

「私はどうかな……、使わないポリシーだしね」

木佐貫先生は以前に、「獣医は動物を救うのと同時に、飼い主さんの心も救わないといけない」と仰ったことがありました。木佐貫先生は今後も、『お歳です』という言葉は使われないかもしれませんが、きっとそれに代わる別の言葉で飼い主さんの心を救おうとするのでしょう。

獣医師と飼い主の相性

この話とは別に、以前にもう一つだけ、木佐貫先生が以前に仰ったことで、心に引っかかっていることがあります。
それは、「飼い主さんと獣医には相性がある」という言葉です。

いくら獣医師が一生懸命になっても、それがどうしても飼い主さんに伝わらない場合があり、結局その治療は、上手くいかないのだそうです。
逆の立場に立つと、獣医師との相性が悪いと感じたら、病院を変わるのは治療を成功させる、良い手段なのだろうと思います。

獣医師と飼い主の相性を突き詰めていくと……

飼い主の立場から考えると、獣医師から『お歳です』と言われて、素直にそれを受け止められるような先生と長く付き合うのが、一番良いのかもしれません。

何故ならば、そこまで信頼できる獣医師にだったら、愛犬が深刻な状態になったときに、こんな言葉も言えるのだと思います。

「先生、まだ諦めたくないので、先生ではなく別の病院で、先端医療に賭けることにします。でもそれが駄目なら、家で看取ってやりたいので、病院から連れて帰ります。そのときは先生、往診してくださいね」

実はこの言葉は、我が家が主治医である、大倉山動物病院の茂木院長に言った言葉です。そしてピーチーは最期のとき、茂木院長が我が家まで往診をして下さり、心臓の鼓動が止まる瞬間を確認してくださいました。

ピーチーはつくづく、病院にも医師にも恵まれていたのだなと思います。

 

――参考・2015年9月、当時のピーチーの様子です――
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大好きだった散歩も、
この頃はあまり好きではありませんでした。

 

――自己免疫不全の実例と検証(3/3)・おわり――

文:高栖匡躬
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――前話――

ピーチーは予断を許さない状況。
「深刻な状況です」
担当医の言葉を今も思い出します。
そのピーチーが、なぜ助かったか?
自己免疫不全に絞った治療に、賭けたからです。
なぜその選択ができたか?
そして、そもそもの診断が難しい理由を書きます。

まとめ読み|自己免疫不全に思うこと
この記事は、下記のまとめ読みでもご覧になれます。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――このシリーズ記事の第1話――

2015年のある日、我が家の愛犬ピーチーを病魔が襲いました。
最初は夏バテかなと思い、次に熱中症を疑いました。
かかりつけの獣医師も、熱中症との診たてでその治療を。

しかしピーチーの状態は悪化の一途。
ただならぬ状態に、未明の救命救急に飛び込み、そこで発覚したのが重度の肝炎でした。
結局後になって、それが自己免疫不全が引き起こしたと分かるのですが、まさか免疫の暴走が劇症肝炎を引き起こすなど、想像もしていませんでした。

 自己免疫不全による疾患と闘病記

劇症肝炎闘病記

筆者の愛犬ピーチーは2014年8月16日の早朝6時、救命救急に駆け込みました。
40度を越える高熱。ぐったりとして動けない。
ただごとではないと思いました。

振り返ると、異常を感じたのは8月10日の夜。
突然の体の震えと、食欲不振が恐らく前兆だったのでしょう。
このときは、掛かりつけの病院で、熱中症と診断。
その時には、肝臓の諸数値は正常値でした。

そして6日たち、16日の朝を迎えます。
この日から、命を賭けた闘病が始まったのでした。

低アルブミン血症闘病記

まだ7歳の、元気な愛犬だった――
ちょっとしたことで受診した動物病院。
そこで告げられたのは、深刻な病名と余命でした。
もの言わぬ愛犬の病気は、多くの場合、ある日突然に判明します。
その時の飼い主の動揺は、計り知れません。

非再生性免疫介在性貧血

この病気は、自己免疫不全で起きるもの。
自分の免疫が、自分の体を攻撃し始めるのです。
病原菌やウィルスが見つかるわけでもなく、CTやMRIにも病変が映りません。
だから、最初はそうだと分かりません。

なんとなく調子が悪い……
病院に行っても原因不明。
しかし、状況は悪化していく。
何故――

 

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