うちの子がうちにくるまで|No.21
前作で愛猫 おいで を亡くした作者。
供養をした翌日、ふらりとペットショップに立ち寄ると、そこには[ただであげます]と張り紙された犬がいました。
犬との出会いは、飼い主と犬の数だけありますね。猫飼いから犬飼いに変わった作者。
やがて多頭飼いをすることになる作者の、最初の一匹のお話です。
(本作は、猫の『おいで』のお話 の、続編でもあります)
これまで猫しか飼ったことがない|犬を飼えるだろうか?|経験者の体験談を聞きたい
愛猫の供養をした日のこと
昔の話です。
1月28日に、私は可愛がっていた猫『おいで』を亡くしました。
本当に突然のことでした。
『おいで』の供養をしたのは、その翌日。
私は帰り道で、ペットショップに寄りました。
『おいで』のいない家には、まっすぐ帰りたくなかったからです。
そのペットショップの外には、ゲージが積み上げられていて、真冬なのにどのゲージにも雑種の子犬がいました。
ふと見ると、[ただであげます]という貼り紙があります。
ケージの1つを覗いてみると、そこには白いコロコロの子犬がいました。その子は私に向かって「出して~」っと、ちぎれんばかりに尻尾を振りました。
すぐに家族が見つかりそうなほど、愛嬌たっぷりの可愛い子でした。
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同じゲージの隅っこにはもう一頭、茶色の毛の長い子がうずくまっていました。
白い子の後ろで踏まれそうになりながら、身動きもせず、鳴きもせずに――
その子は、寂しそうな目で私を見つめていました。
――ビビビ――
昔、歌手が『ビビビっときた』と言って、ビビビ婚が流行語になりましたよね。
まさにそれでした――
亡くなった猫『おいで』の面影を探してペットショップによったのに、私はその茶色の子犬に、ビビビっとしてしまったのです。
私は猫が亡くなった翌日に、犬を家族に迎えることになりました。
その子が『ちょび』です。
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今思えば、あの時寒風の中に積み上げられたゲージには、敷物も入っていませんでした。10頭くらいは子犬がいたと思います。
「夜は店の中に入れてたのかしら?」
「あの可愛い白い子犬は、優しい家族に巡り会えたかしら?」
今頃になって、そんな心配をするのですが、当時の私はそれを見ても、それほど心を痛めることはありませんでした。
――無知だったからでしょうか?
――思いやりがなかったからでしょうか?
――鈍感だったからでしょうか?
――無関心だったからでしょうか?
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でも何故だかそんな私が、『ちょび』には心を魅かれたのでした。
私はその日のうちに、[ただであげます]の貼り紙をされた『ちょび』を連れて帰りました。リードと首輪、ドッグフードだけ買って。
『ちょび』は5ヵ月位になっていて、体重は7kgはありました。
どちらかと言えば大人しい子犬でしたが、やはりクンクン鳴いたり子犬らしくバタバタ走ります。
――困りました。
私の家は賃貸住宅の2階だったのです。猫なら隠れて飼っている人もいましたが、さすがに犬がいれば、近所から苦情があります。
嬉しくて走り回る『ちょび』をどうすることもできずに、洗濯カゴの中で伏せたこともあります。
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誰もいない家に『ちょび』だけ留守番させることも出来ません。
夫も私も仕事の日は職場の駐車場の車の中で仕事が終わるまで待たせました。新聞紙や敷物をした車の中はすぐに汚物まみれになりました。
冬でよかったと思います。
当時は必死でしたが、今思えばひどい話です。本当に可哀想なことをしました。
「やっぱり犬を飼うのは無理だ」
1週間過ぎた頃に、私はそう思いはじめました。そして『ちょび』を、ペットショップへ返しに行くことも考えました。
子供の頃、母に内緒で、捨て猫を廃車の中で飼っていたことがあります。
それから私は成長していなかったのですね。
私には動物を家族にすることの心構えも、準備も出来ていなかったのです。
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『ちょび』はそんな私を信じて、すがりつくような眼で見つめます。
――どうする?
そして私は、決心をするのです。
「家を買おう!」と――
当時はバブルが弾けた直後で、20代の私が犬と暮らせる家を買うのは大変でした。
それでも5月のころには、無事に引っ越しができました。
『おいで』がいなくなり、『ちょび』がやってきて、私の環境はアレヨ、アレヨという間に変わりました。遊びに行ったり、旅行へ行くこともなくなりましたが、夫と可愛い犬と一戸建ての家で、夢のような暮らしです。
寒空のケージにいた犬――
[ただであげます]と張り紙をされたその犬は、わが家で『ちょび』になり、やっとおちつける暖かい家と、家族を見つけたのです。
――『ちょび』がうちの子になったのは・おわり――
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――うちの子がうちにくるまで・次話――
出張先で、偶然目にした人だかり。
なんとその中心には、血統書付きで捨てられた可愛いコーギーがいたのでした。
「捨て犬なんです」
と言われたその可愛い犬は――
――うちの子がうちにくるまで・前話(3話構成)――
偶然に手に入れたマンション。
引っ越してからわかったのですが、なんとそのマンションは、当時にしては珍しい、ペット可の物件でした。
マンションがペット可とだ気が付いたのですが、すぐに犬を飼おうとはなりません。命を預かるのですから覚悟が大事です。最後まで面倒が見られるかな?
――まだまだ迷いがありました。
ペットショップからの電話で、予約していたアイパンチのブルテリアがお店に来たことを知った筆者。あまりにも突然で、心の準備がまるでありませんでした。
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この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――うちの子がうちにくるまで、第1話です――
昔からいつかはワンを飼いたいと、ずっと夢見ていたんです。
でも、夢と現実の差はでっかいですよね。結局はずっと、実現できずじまい。
――そんな夢を叶えた飼い主さんのお話。
犬との出会いは運命に似ています。
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猫の おいで のお話です(同じ作者の執筆記事です)
毎日、仕事帰りに、ニャーニャー鳴きながらついて来た子猫。
ある雨の日、濡れたその子猫を拾い上げました。
『おいで』と名付けたその子は、賢くて、生きる事を楽しんでいるようでした。
しかし……
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おすすめの、うちの子がうちにくるまで
片目を失った犬を、保険所から引き取ることにした夫婦。
犬との出会いはいろいろとあって、迎える時の葛藤も様々です。
犬にハンデがある場合は、特にその葛藤は大きいはず。普通ならば――
それをものともしない、優しい心を持った飼い主と犬とのお話です。
犬を飼おうと思ったことも無かった作者。
その作者を変えたのは、偶然に出会った散歩中のコーギーでした。
『世の中には、こんなに可愛い動物がいるの?』
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