誤解の多いステロイド剤(1/3)
今日から3回に渡って、ステロイド剤とその減薬について書こうと思います。
筆者の愛犬ピーチーの、経験に基づいたものです。
ステロイド剤は炎症系の疾患では、どの病院にいっても処方されるありふれた薬ですが、医師から間違った用法容量を示されて、症状が悪化するケースが度々あるようです。
また悪い処方例が独り歩きしたために、ステロイドは悪い薬、恐い薬と思っている飼い主さんのも沢山いらっしゃいます。
本記事では筆者の愛犬で用いた闘病経験を元に、ステロイドの誤解を解いていきたいと思います。
【目次】
ステロイドは昔も今も、情報が少ない
ステロイド剤の処方と、そのステロイド剤の減薬方法は、ネット上で探しても、資料がなかなか見当たりません。
以前筆者は愛犬ピーチーのステロイドの処方を、自分のブログに書き留めていたのですが、そのブログは今も読んでいただいているようで、忘れた頃に感謝のメッセージをポツポツといただきます。
それほど情報が少ないということです。
そして、獣医師も明解な答えを持っている方はあまりいません。
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本記事はピーチーがかつて取り組んだ、ステロイド剤の”断薬”を見据えた”減薬”について書いて行こうと思います。
経験された方は分かると思いますが、意外にもこれが難しいんです。
何故この記事を書こうと思ったか
ステロイド剤は今や特別な薬ではなく、アレルギーの症状を抑える薬として良く見かけるものです。この記事を読んでくださっている方の中にも、愛犬が使用しているという方は多いのではないでしょうか?
うちのピーチーの場合、生後6か月でアレルギー性皮膚炎を発症し、それから14年間ずっとお世話になりました。
それほど身近な薬です。
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特別なものでないがために、飼い主側に間違った理解も多いようです。
かくいう筆者も、大間違いをしていました。
経験してみて、失敗してみて、はじめて気付く事が多いのです。
だからこそ、ここでまとめておこうと思ったわけです。
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最初に申し上げると、ステロイド剤は沢山の使い方がある薬なので、用法について網羅することはできません。ここで主に書くのは、ステロイド剤を”減薬”する際に生じる課題についてです。
過去、ステロイド剤とどう付き合ってきたのか
ピーチーがステロイド剤を使い始めたのは、先にも書いたように生後6か月あたりから。目的はアレルギー性皮膚炎を抑えるためです。
今となってはうろ覚えですが、最初は確か何日かに1回、5mgの4分の1の投与でした。
頓服だったかもしれません。
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段々と体がステロイド剤に慣れてくるので、効きが悪くなり、それと同時に薬の量は増えていきました。一番多い時に毎日1日1錠ずつで、時には2錠与えましたが、幸いにもピーチーには、ステロイド剤による副作用は現れませんでした。
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主治医によれば、ピーチーくらいの体重(14kg)で、1日2錠以上飲む子もいるので、容量についてはそれほど心配しなくて良い。一生飲み続けても良いように、計画的に容量をコントロールしていけば良いのだとの事。
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しかし、そのまま容量が増え続けると、万が一別の病気になったときに、ステロイド剤に頼れなくなる恐れがあります。
そこで大学病院で診察を受け、専門医の指導で薬を調整していきました。
最終的にピーチーは、他の薬との組み合わせで処方量は減り、12歳になった頃には特に痒みが強いときに頓服で与えるだけになっていました。
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この頃までの、筆者のステロイド剤に対する印象は、単なる痒み止めくらいの理解です。
それで十分だったのです。
その時までは――
ステロイド剤の使い方が大きく変わった
ピーチーのステロイド剤との付き合い方が劇的に変わったのが、14歳の誕生日を目前にした、2014年の8月です。
突然の震えと発熱。熱中症だと思い主治医を受診。念のために血液検査をしたものの異常なし。しかし実はそれが、劇症肝炎の前触れでした。
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症状は瞬く間に悪化し、発症から僅か数日の間に、死が目前まで迫ったピーチーですが、治療法として選んだステロイド剤の大量投与が功を奏し、劇的な回復を見せて命拾いをします。
なんと、筆者が単なる痒み止め程度に思っていたステロイド剤が、ピーチーの命を救ってくれたわけです。
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改めて調べてみて、なるほどと思いました。ステロイド剤は炎症系の疾患、自己免疫不全による疾患に、効果が高い薬だったのです。
つまり、ピーチーの劇症肝炎の原因は、自己免疫不全だったという事です。
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ステロイド剤の効果は他にもありました。
ピーチーを歩行困難にしていた、多発性関節炎が治ったばかりか、病気になる2年ほど前から、聞こえなくなっていた耳が聞こえるようになり、当時ひどくなっていた外耳炎さえも、すっかり治ってしまいました。
実はこれらの疾患も、自己免疫不全に由来していた可能性が強いということです。
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そればかりではありません。
前年の4月から発症したてんかんも、自己免疫不全に原因がある可能性が高いのです。
ずっと悩まされていたてんかんの発作は、免疫を抑制する治療と共に、おさまって行きました。
しかし、ピーチーは減薬をした
これほど劇的にピーチーを回復させてくれたステロイド剤なのですが、その後はその処方量を減らすために苦労しました。
何故かと言えば、病状が落ち着いてくると、薬から得られるメリットよりも、副作用によるデメリットの方が大きくなってしまうからです。
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急性疾患の短期決戦ではステロイド剤は有効ですが、長期に使い続けることはできないということです。その理由を書いてご説明します。
ステロイド剤の副作用とは
今ステロイド剤を使用されている方に誤解の無いように、予め申し上げておきますが、ステロイド剤は用法と用量が適切であれば、それほど副作用を心配をしなくて良い薬です。
よくステロイド剤を、さしたる理由もなく嫌うような意見を目にしますが、上手く使えば恐れる必要はないのです。
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ステロイド剤が副作用を心配しなければいけないのは、長期使用の場合と、大量投与の場合です。ピーチーの場合は後者にあたります。
因みに、下記がステロイド剤による代表的な副作用です。
食欲亢進、多飲多尿、腹部の増大、筋力の低下、糖尿病、肝障害、副腎の機能低下など
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ピーチーの場合はこの中で、筋力の低下が顕著で、筋量も著しく減退し、見た目で言えば激やせ状態です。更に糖尿病の疑いが出るようになりました。
回復後の血液検査では、幸いにもピーチーは肝臓の値はほぼ正常値に戻りました。
飼い主としては、ここに障害が現れる前に、減薬をしようとしたわけです。
次回は減薬の難しさにつて、具体的に触れて行こうと思います。
付録|ステロイド剤の使用例
以下はステロイド剤によって、死の一歩手前の劇症肝炎からわずか3日で回復した実例です。
以下は、自己免疫不全の事例です。免疫系疾患の闘病記としても読むことができます。
――誤解の多いステロイド剤(1/3)・つづく――
文:高栖匡躬
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――次話です――
作者の愛犬が行った治療法は、ステロイドの大量投与。
即効性がある反面で、副作用が顕著に出てきます。
薬を減らすときの『離脱症状』も、より大きなものです。
失敗もありました。
そこで分かったのは、医師も良く知らないんだということでした。
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この記事は、下記のまとめ読みでもご覧になれます。
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賢い獣医師選び、動物病院びの記事です
続:獣医師選びの方法教えます
”良い”獣医師選びは、飼い主の責任でもあります。
目的は常に動物の病気を治すこと。
そのために獣医師は何をすべきか?
そう考えると、自然に”良い獣医師”とは何かが分かってきます。
現場を知るからこそ出来るアドバイス。
獣医師選び|名医とヤブ医者
記事の編集で、多くの体験談に触れていると、名医がいる一方で、信じられないヤブ医者もいる事がわかります。
そもそも動物医療は、ヤブ医者を生みやすいのかもしれません。
時には医師だけでなく、飼い主の方が悪いこともある。
理由を知れば、対策もできるのでは?
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