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【虹の橋・考察 】原文から意味を読み解く ~有名な詩なのに誤解が多い~

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文|高栖匡躬
犬や猫が天国の前に行くところ 飼い主を待っているところ

この記事は、有名な『虹の橋』の詩を考察するものです。
その詩に込められた意味について、原文を読み解いて解説してみようと思います。

『虹の橋』は愛犬、愛猫を失った多くの飼い主たちの、心の支えになっていることで、知られてます。しかしながら『虹の橋』 は、間違った使い方をされるケースが頻繁にあります。恐らくそれは、『虹の橋の詩』を読まないで、伝聞によってなんとなく理解した方が多いためなのでしょう。

『虹の橋』 はその詩を読み意味を理解することで、もっと味わいのあるものになります。今回の記事は『虹の橋』が好きな方が、もっと好きになるように。また『虹の橋』を誤解されていた方が理解を深める、良いきっかけになるように、解説を加えて書いて行きます。

 
この記事はこんな方に
言葉は知っているけれど、深く意味を考えてみたことはなかった|原文(英語の詩)があることを知らなかった|ペットが亡くなったとき、虹の橋を渡るのは間違い?|虹の橋の適切な使い方は?|虹の橋に違和感を感じるが、それは自分がおかしいのか?

 

【目次】

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下記が、『虹の橋』の原文です。
(すぐ後に、翻訳文があります)

―― 『虹の橋』(原文) (作者不詳) ――

Just this side of Heaven is a place called Rainbow Bridge.
When an animal dies that has been especially close to someone here,
that pet goes to Rainbow Bridge.

There are meadows and hills for all of our special friends
so they can run and play together.

There is plenty of food, water and sunshine and
our friends are warm and comfortable.

 

All the animals who had been ill and old are restored to health and vigor;
those who were hurt or maimed are made whole and strong again,
just as we remember them in our dreams of days and times gone by.

The animals are happy and content, except for one small thing:
they each miss someone very special, someone who was left behind.

They all run and play together,
but the day comes when one suddenly stops and looks into the distance.

His bright eyes are intent; his eager body begins to quiver.
Suddenly, he breaks from the group, flying over the green grass, faster and faster.

 

You have been spotted, and when you and your special friend finally meet,
you cling together in joyous reunion, never to be parted again.

The happy kisses rain upon your face; your hands again caress the beloved head,
and you look once more into those trusting eyes,
so long gone from your life, but never absent from your heart.

Then you cross the Rainbow Bridge together...

 

 虹の橋の日本語翻のご紹介

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『虹の橋』 の詩には、様々な翻訳文があります。
下記はそのうちの1つです。
(筆者が一番良いと思う和訳に、更に加筆してあります)

――翻訳文――

天国の、ほんの少し手前に「虹の橋」と呼ばれる場所があります。
この地上にいる、誰かと愛し合っていた動物はみな、死ぬとそこへ行くのです。
そこには草地や丘があり、彼らはみんなで走り回って遊びます。
食べ物も水もたっぷりあり、日が降り注ぎ、暖かくて幸せです。

病気だった子も年老いていた子も、みんな元気を取り戻し、
傷ついていたり、不自由な体になっていた子も、
元の元気なからだを取り戻すします。
まるで、過ぎた日の夢のように・・・

みんな幸せで満ち足りているのだけれど、ひとつだけ不満があります。
それは、自分にとっての特別な人が――、残してきてしまった人が――、
ここにいない寂しさ・・・

動物たちは、みんな一緒に走り回って遊んでいます。
でも、ある日、その中の1匹が突然立ち止まって、遠くを見つめます。
その瞳はきらきら輝いて、からだは喜びに震えはじめます。

突然その子はみんなから離れ、緑の草の上を走りはじめます。
速く、速く、飛ぶように。
そう、その子は、あなたを見つけたのです。
あなたとあなたの友は、再会の喜びに固く抱きあいます。
そしてもう二度と離れたりはしません。

幸福のキスがあなたの顔に降りそそぎ、
あなたの両手は、愛する友を優しく撫でます。
そしてあなたは、信頼にあふれる友の瞳をもう一度のぞき込みます。
あなたの人生から長い間失われていたけれど、
その心からは一日たりとも消えたことのなかったその瞳を。

それからあなたたちは、一緒に「虹の橋」を渡っていくのです・・・

 

 虹の橋でよくある誤解

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さて、『虹の橋』 の詩をお読みになって、どう感じられたでしょうか?

『虹の橋』 という言葉はよく知られていますが、その割に元の詩を、初めて読んだという方も多いのではないかと思います。

この詩を理解すると、多くの方が愛犬が旅立った際に用いていらっしゃる 、『虹の橋を渡る』という言葉は、間違った用法であることがお分かりになるかと思います。

愛犬は『虹の橋に行く』 のであって、まだ渡ってはいません。
飼い主がくるのをずっとそこで待っていて、飼い主と一緒に『虹の橋』を渡って天国に行くのです。

待っている場所が、虹の橋のたもとなのか、虹の橋の上なのかは分かりませんが、大事なのは、愛犬は自分が先に天国に行くのではなく、ずっとそこで待っているのだと言う事です。

ほんのちょっとだけの差ですが、それだけでこの 『虹の橋』 の味わいは変わってきますよね。

つまり『虹の橋』 は、ペットを亡くして失意の底にいる飼い主に、『永遠の別れ』慰めるものではなく、『死は一時の別離』だと励ますことを意図しているわけです。慰めると励ます、似ているようで随分違います。

もっとかみ砕けば、飼い主たちに、失ったペットと ”必ずまた会える” ことを約束する詩が、『虹の橋』ということになります。

ですからもし、虹の橋を励ましの言葉として使う場合は、

『また必ず、虹の橋で会えるね』
『虹の橋で待っていてくれるよ』

という表現になるはずなのです。

 

 ペットを亡くした方を励ます時は、気を付けて!

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もうお分かりだと思いますが、『虹の橋の詩』を理解していないと、『虹の橋』という言葉を使う際に、大きなミスマッチ(誤解やすれ違い)が生じる可能性があります。

愛犬を失った飼い主さんが『虹の橋』 の詩を十分に理解していている場合は、心の中ではこう思っているはずです。

「いつかあの子とは虹の橋で会って、一緒に天国に行くんだ。 ”だから” 元気をださなきゃ」

ところが、声を掛ける側が『虹の橋を渡った』 と表現してしまうと、次のような意味を伝えることになるのです。

「あの子は先に天国に行ってしまったね。 ”だけど” 天国で会えるんだから、元気をだしてね」

”だから” ”だけど” の違いです。

慰める側が、好意や善意で言ってくれていることは確かなので、聞く側の気持ちはとても微妙ですよね。

繰り返すようですが、『虹の橋』は、失意の底にいる友人や知人を励ます大切な言葉。詩の意味を汲んで用いてあげる方が、より真意が相手に伝わると思います。

ただし、言われる側が『虹の橋の詩』を理解していないことも多いので、実際にはミスマッチはそれほど起きていないのかもしれません。

 

 虹の橋には2話と3話もあるけれど

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さて、この 『虹の橋』 の詩ですが、2話と3話もあるようです。
歌詞でいうならば、2番、3番という位置づけです。どちらも原文に感化されて、他の作者の方が付け足したものだそうです。

探して読んでみたら、2話は飼い主の愛に恵まれなかった犬たちを慰める詩で、3話は飼い主があまりに悲しんでいると、亡くなった犬が浮かばれないよと諭す詩でした。

これは好みの問題かもしれませんが、筆者は2話と3話は、あまり良いとは思いませんでした。それはこの2つの話があまりにも説明調で、原文(1話)とテイストが違うからです。これでは原文を元にして後で誰かが創作を加えたのだということが、はっきり分かってしまいます。

行間に込める思いが1話に較べて軽いように感じられるし、文章の質が原文と違っているようにも思います。

筆者の意見(好み)として言うならば、『虹の橋』 の詩は、1話だけで終わった方が良いように思います。

恵まれない子も救われて欲しいという願いも、悲観する飼い主さんに『悲しみ過ぎは良くないよ』と伝えたい思いも、どちらも犬を愛する方々の心情であることはよく分かります。

しかし敢えて思うのです。全てのことを文章で表現する必要は無く、後のことは読み手が心で察すれば良いのではないかと。

だって、それが詩というものだから。

 

 もう少し意味を深読みをしてみると

結局、『虹の橋』 をどう捉えるかは、飼い主の死生観なのだと思います。

死んでしまった愛犬に、天国に行く前に待っていて欲しいのか、それとも先に天国に行って欲しいかの差です。

どちらも、飼い主が犬を愛する気持ちの発露――
暖かい気持ちの、表れなのだと思います。

筆者は愛犬ピーチーが旅立つ時、虹の橋で待つことなく、先に天国に行ってほしいと思いました。だからその思いを以前に、『ピーチーは虹の橋を渡らない』 という記事に書きました。

しかし、虹の橋を否定している訳ではないのです。
うちには似合わないよと思うだけ。

でも、もしも筆者が死を迎えた時に、ピーチーが天国に行かないで、虹の橋で待っていたとしたら――
そして、まっすぐに筆者に駆け寄ってきたとしたら――

それはものすごく嬉しいでしょうね。

「何だよ、お前らしくないな~」
そう言って、きっと、強く抱きしめることでしょう。

 

ペットと人間の関係 3部作
この記事は、犬と人間の関係について語られる、3つの事柄(虹の橋、犬の十戒、ペットは天国に行けるか)を扱った3部作のうちの1つです。3部作で扱う事柄は、どれもが犬の命に触れるもの。特に虹の橋と犬の十戒は、好きな方が多い反面で、違和感を持つ方も見かけます。
虹の橋|原文から意味を考察する(本記事)
犬の十戒・考察|犬と私の10の約束との違い
犬の十戒・原文と解釈|実はブリーダーの心情
ペット(犬や猫)は天国に行けるのか?
意外な事実も見つかるかもしれません。読んでみてくださいね。

 

――虹の橋|原文から意味を考察する・了――

文:高栖匡躬
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 ▶ 高栖 匡躬:猫の記事 ご紹介

 犬や猫は天国に行ってもいいの?

さて、そもそもの話になるのですが、犬や猫は天国にいけるのでしょうかね?
日本人の恐らく大半は、何の疑いもなく行けると思っていると思います。
しかし――、世界的に見るとそれはどうでしょう?

以下はそんなことを考えてみた記事です。
良かったら、こちらも読んでみてください。
もしかすると、皆さんの『虹の橋』に対する感覚が、変わって来るかもしれません。

 犬の十戒を考察してみる

こちらは、『虹の橋』と並んで有名な『犬の十戒』について考察した記事です。
良かったらこちらもどうぞ。
実は、筆者は『犬の十戒』はあまり好きではありませんでした。
筆者だけでなく、アンチ『犬の十戒』派は結構いるのです。
でも、じっくり考えてみたらそうではなかったという記事です。
好き派の方も、アンチ派の方も、ちょっと『犬の十戒』への見方が変わると思います。

まとめ読み|『虹の橋』と『犬の十戒』そして『天国』
この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。

 ペットの介護と別れ

”死”という言葉は、ある種の衝撃を伴うものです。避けて通りたいことばであったりします。しかし、その死はそんなに悪いものなのか? もしかすると、死は救いでもあるのではないか? そんな風に考えてみると、ペットとの別れが違って見えてくるものです。

ペットは死の床にある時、そこから目を背けるべきか?
別れの言葉を考えてみてはどうでしょう? 実は別れの言葉は、ネガティブなものではないのかもしれませんよ。

筆者の体験談としての別れの言葉です。
愛犬が去るときに備えて、筆者は言葉を用意していました。縁起でもないと思われる方がいるかもしれませんね。しかし、その言葉を探すとき、飼い主と愛犬の絆が見えて来たりするのです。

 

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