犬を飼うということ

いつまでも君と……

【決めた、犬を飼おう!】手荷物でうちにやってきたんだよ ~れん がうちの子になったのは(後編)~

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文:かっぱ太郎、撮影:F.zin

~うちの子がうちにくるまで No.28 - 2~

”うちの子がうちにくるまで”とは
愛犬を家に迎えるまでの葛藤を、飼い主自身が、自分の言葉で綴ったエッセイのシリーズです。

ペットショップの若い女性店員さんは、とても丁寧に、その元気な子いぬを渡してくれました。

しかし私は、その子の痩せた姿がどうにも気にかかって仕方がありません。
「きっとこの人にはもう会うことはないだろうな」
心の中では、そう呟いたのでした。

 

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ちぃと出会った別の店では、ちぃを渡してくれた『なかざわさん』に、しばらくしてから挨拶に行って、夫と二人で、ちぃが元気でいることを報告したのでが、その時とは違う感情でした。

その時『なかざわさん』は私たちを見るなり、「ぶぶちゃんは元気ですか?」と声をかけてくれました。

売り物の子いぬに名前をつけると情が移るので、「ぶぶちゃん」みたいな適当な名前で呼んでいたそうですが、ちぃのことをちゃんと覚えているなかざわさんは、幼かったちぃにたっぷり愛情をそそいでいたに違いありません。

 

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新しい子いぬ入りの小さな箱を抱いて、札幌駅に着いた私は愕然としました。事故で電車が随分遅れているのです。

なにもこんな日に…と思いましたが、家の最寄り駅に車を置いてあるので、地下鉄で帰るわけにもいかず、窓口で子いぬ入りの箱に「手荷物」のシールを貼ってもらい、ホームへ上ってみることにしました。

ホームには電車が来ていましたが、待ちかねた乗客で、デッキまでぎゅうぎゅう詰めです。

どうしてよいか分からず、戸惑う私――
そのとき、デッキにいたひとりのご婦人が「こちらにおいで」と手招きをして下さいました。『手荷物』を抱えて一人うろうろする私を見かねて、声を掛けてくださったのです。

 

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ご婦人は荷物置き用の低い棚を指差すと、「ここにそれを置きなさい」と言ってくださいました。

ご婦人の隣には旦那様がいらっしゃり、「子いぬかい?」と微笑みかけてくださいました。 聞けばご夫婦はご自分たちも、犬を2匹飼っているのだそうです。

「シーズーの兄弟でね、ペットショップで、2匹一緒に居たのよ。それでね、引き離すことができなくて、2匹とも飼うことにしたの」
「オスの犬はね、かわいいわよ。人間と同じで、いつまでも子どもで」

通路もデッキも人でごったがえす中、ご婦人と旦那様に囲まれたわずかなスペースは、なんとも居心地の良い場所でした。

 

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デッキと客席の間の、腰の高さにパイプを並べた荷物棚の上で、箱の中の子いぬはじっとおとなしくしています

旦那様は、奥様の話をうんうん、とうなずきながら聞いていましたが、
「…フレンチブルドッグか、見たいなあ!」
と、子どものように目を輝かせて言いました。けれども奥様は、
「こんなところで箱を開けたら、子いぬがびっくりしちゃうでしょ。だめ、だめ。」
と、たしなめるように言いました。

確かに、ぎゅうぎゅう詰めの車内で子いぬがキャンと鳴いたりすれば、乗客たちの苛々がいっそう募ってしまうに違いありません。

私は、子いぬの顔を見せてあげたいのを我慢して、私よりもひとつ手前の駅で降りるお二人にお礼を言い、車窓から見送りました。

偶然出会ったご夫婦の温かい言葉のおかげで、夜にひとりで子いぬを連れて帰る不安も、こんなにひどい満員電車に子いぬを乗せてしまった後ろめたさも、どこかへ吹き飛んでいました。

上野幌駅で電車を降り、車の助手席に子いぬの箱をシートベルトでくくりつけ、家へと急ぎました。子いぬは、箱にあけられた小さな空気穴からときどき、外を覗いているようでした。

 

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私が家に帰ると――
「ねえ、お母さんたら、本当に買ってきちゃったよ!」
と夫は、あきれたと言わんばかりの口調で娘の部屋に向って叫びましたが、目が輝いていました。

「えぇっ、本当に!?」
娘はびっくりして部屋から飛び出し、私が抱えていた箱の中を覗き込みました。

娘はちぃがうちに来た当時は犬を怖がっていたのですが、その頃にはもう、ちぃと仲良しになっていいて、新しい子いぬを恐れたりはせず、歓迎してくれました。

 

――れんがうちの子になったのは(後編)おわり――

~うちの子がうちにくるまで No.28-2~
犬の名前:れん
犬種:フレンチ・ブルドッグ
飼主:かっぱ太郎、F.zin

~犬や猫と暮らすあなたへ~

『うちで飼えるかな?』
『きちんと面倒を見られるかな?』

犬や猫を、”はじめて”飼う時、ほとんどの方はこう思ったことでしょう。平均年齢でいえば15年も生きる小さな命を預かるのだから当然ですね。その葛藤を乗り越えて、我々は犬や猫と暮らします。

毎日が楽しいですか?
――きっと楽しいですよね。
だって、犬を飼うこと、猫を飼うことは、喜びに満ちていることだから。

どうか忘れないでほしいのです。その楽しさを手に入れる前に、我々はものすごく大きな決心をしたのだということを。

そして、どうか自信を持ってほしいのです。
その決心が、ずっと我々を支え続けてくれるのだと。
いつか、その子を送るときが来たとしても。

【飼えるかなより

――うちの子がうちにくるまで・次話――

――うちの子がうちにくるまで・前話――

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

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――出典――

※本記事は著作者の許可を得て、下記のエッセイを元に再構成されたものです。