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【犬が飼い主を育てる】アットホームな父親 ~混合ワクチンにまつわるお話(1/3)~

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アットホームな父親f:id:masami_takasu:20181108090948j:plain

文:かっぱ太郎、撮影:F.zin

 毎年秋は混合ワクチンの季節

我が家は毎年秋になると、2匹の愛犬”ちぃ”と”れん”に、犬用の混合ワクチンを打ってもらいに、車で僅か数分の距離にある動物病院へ行きます。

"わずか数分の距離"――
普通なら、近いと思いますよね。
ところが我が家の犬たちにとっては、これが結構大事件なのです。

弟犬のれんが、車(正確に言えば、車に乗せるためのクレート)が苦手ということもあって、普段私たちは、犬たちを車に乗せることはほとんどありません。
なので車での移動に慣れていない2匹ににとっては、この数分間の移動がスペクタクル・アドベンチャーといっても過言ではない、冒険の旅なのです。

そして――
今年もまた、その冒険の時がやってきました。

 

 今日は私が運転します

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2匹を車に乗せる時は、いつもは夫が車を運転して、私は興奮してちょろちょろと動き回る2匹を、抱っこしたりなだめたりするのが役割分担です。

しかし、この日は勝手が違いました。
夫が娘を連れて、はるばる釧路へ『勝手丼』を食べに行くというので、私がひとりで、犬たちを病院へ連れて行かなければならなくなったのです。

夫は出発の用意をしながら、「予防接種って、どのくらい時間かかるの?」と気にかけてくれました。どうやら釧路へ行く前に、病院に付き合ってくれるつもりのようです。

しかし私は、自分一人で2匹を連れていこうと考えていました。
なぜかと言うと、あまり出たがりではない娘がめずらしく、夫と二人でドライブに行く気になっていたからです。折角その気になっているというのに、病院で時間を取られてしまうのは気の毒です。

もしも待たせている間に娘の気が変わって、「やっぱり、行きたくない」などと言い出しでもしたら、夫ががっかりしてしまいますからね。

それに夫は、この春に中古で買ったばかりで、いつもピカピカに磨いているフェアレディZに、娘を乗せて遠出するのを楽しみにしていました。

 

 1匹ずつ連れて行きなさい

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「注射の前に検査もあるし、2匹分だからきっと、時間かかるよ。ひとりで大丈夫だから、早く釧路に行きなよ」
私は夫にそう言いました。内心では少し不安でしたけれども――
家ではおとなしいちぃとれんが、車で豹変しでもすると、私ひとりでは押さえきれないかもしれませんからね。

娘は娘で前日の夜、「お母さん、ひとりで寂しくない?」と私に声を掛けてきました。
2人だけで美味しいものを食べに行くのが、気になったのかもしれません。
しかし車酔いのため長距離ドライブが苦手で、助手席に座るとたいてい寝てしまう私にとっては、一緒に釧路に行く方が大変です。

「ちぃとれんがいるんだから、寂しいわけないじゃない!せっかく帯広を通るんだから、おじいちゃんちに泊めてもらえば? お父さんも、日帰りで釧路まで行くより、そのほうが運転が楽だと思うよ」

結局そう言って、二人を送り出しました。

夫は「2匹いっぺんにじゃなくて、1匹ずつ連れて行きなさい。危ないから」と言い残し、娘と釧路へ出発しました。

夫と娘が、泊りがけで出かけるのは初めてのことなので、ちぃとれんは寂しかったのかもしれません。2匹並んでベランダに座り、夫と娘の乗った車を見送っていました。

 

 人というのは変わるもの

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若いころ夫は『子育てをする、アットホームな父親像』を、自分が演じるのは格好悪いと思っていたようです。幼い子どもたちを病院へ連れて行くのも、息子の野球の送り迎えも私の仕事で、付き合ってくれたことなどありませんでした。

しかし、人というのは随分と変わるものです。
息子がやんちゃな中学生になり、私では手に負えないことが多くなったころから、夫はだんだん父親らしくなっていきました。

その当時の私は、システムの設計技師をしていました。
この業界の悪癖だと思いますが、納期が迫ると何か月間も残業が続き、家に帰るといつも夜中になります。

長時間のパソコン作業のせいで、居間の蛍光灯の光やテレビの音が、疲れた目の奥に突き刺さるような、ひどい偏頭痛と吐き気に悩まされ、家に帰っても子どもの話をまともに聞いてやることもできず、横になってばかりいました。

自営業の夫は、「家事もしないで毎晩、ダラダラと会社にいるなよ。もっと早く帰ってこい!」と、腹を立てながらも、子どもたちの夕食のおかずを何品も作り、食べさせてくれていました。

 

  夫を育てたのは誰?

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さて、そんな夫ですが、ちぃやれんが家族になってからは更に頼れる存在に――

2匹の夕食は、夫が食べさせてくれました。
そして、息子や娘のオムツに触れたこともない人なのに、私の留守中にはちゃんと犬たちのトイレの掃除まで、引き受けてくれるようになったのです。

子どもが親を育てるのだと良く言いますよね。
もしかすると犬も、飼い主を育てているのかもしれません。

夫は自分で頼れる存在になったのか?
それとも、ちぃとれんが、夫を頼れる人に育てたのでしょうか?

 

 漫画もどうぞ

(おまけ)
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――混合ワクチンにまつわるお話(1/3)つづく――

作:かっぱ太郎、F.zin
 ▶ 作者の一言
 ▶かっぱ太郎、F zin:犬の記事のご紹介

――次話――

1匹ずつの混合ワクチンは、まずは”ちぃ”からです。
寂しがりの弟、”れん”に気付かれないようにそっと外に出て――
その”ちぃ”は病院で、いつも興奮し暴れます。
おやつで気を引きながら、やっと注射を――
たかが予防注射?
色々事情があるのです。 

――前話|前話は単独の関連記事です――

誰にも苦手なものがありますが、それが大嫌いのレベルになると、思わぬ問題が起きたりします。
フレブルのちぃちゃんは、爪切りが大嫌い。
家族は「爪切り」の発言もできません。
弟のれん君は、クレートが嫌い。
だから、遠出ができないのです。

まとめ読み|ちぃとれんのエッセイ集 
この記事は、下記のまとめ読みでもご覧になれます。

 

 ちぃ と れん を迎えたときのお話

ちぃがうちにくるまで

本当は犬が苦手だった作者。
その作者が偶然、びっくりするほど大きな顔の犬を目撃しました。
哲学者のような振る舞いの犬――
月日がたたち、作者はその不思議な犬の置物に遭遇します。

れんがうちにくるまで

先住犬の”ちぃ”は、どうもよその子に受けが悪い。
このまま犬の友達はできないの?
そんなとき、小さな白い犬を見かけたのです。
「ねえ、友達になってくれる?」

ちぃがうちにきてすぐ

念願の犬は『ちぃ』と命名。
好奇心旺盛で、何でも口に入れるちぃ。
骨付きチキンを飲み込んだ時は、夜間病院へ――
やがて犬が、口で気持ちを伝えることを知る飼い主。
そうやって段々と、お互いが分かり合っていく。
ようこそ、我が家へ、ちぃ

れんがうちにきてすぐ

先住犬『ちぃ』に続いてやってきた子犬。
名前は『れん』になりました。
『ちぃ』がやきもちを焼かないように、出会いを慎重に進めた家族。
その甲斐あって、『ちぃ』は『れん』に優しく接するようになります。
家族が願った通り、『ちぃ』には ”友達” ができたのでした。

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 出典

※本記事は著作者の許可を得て、下記のエッセイを元に再構成されたものです。

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