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【体重差】【動物医療】体重ごとに違う治療法 ~犬の体重を意識したことがありますか?(医療編)~

f:id:masami_takasu:20181228021913j:plain文:オタ福

犬の体重差のお話。前回のフード選び編につづいて、今回は医療編。

4kgのミニチュアダックスと50kgのグレート・デン
どちらも犬ですが、本当に同じ犬として扱っていいのでしょうか?
――というお話です。

今回は、体重で分別される下記の3つの事柄を考えてみましょう。

・薬の用量
・発症率
・治療法

具体的な例を挙げながら、お話ししていこうと思います。

【目次】

 抗がん剤(アドリアシン®️)の用量

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動物医療で用いられる薬は、一般的に個体ごとの体重に応じて、『○mg/kg』という風に用量が決まるものです。

例えばプレドニゾロン(ステロイド剤)で免疫抑制をかけるときに必要な用量は2mg/kgなので、下記のような計算をします。

・5kgの犬では2mg/kg×5kg=10mgを投与
・15kgの犬では2mg/kg×15kg=30mgを投与

これに比べて抗がん剤は特殊です。
他の薬と違い、『体表面積』で薬の用量が変化するのです。
(体表面積は体を覆う皮膚の総面積ですが、1頭ごとに面積を計測するのは大変なので、統計データを元に、簡易的に体重から導き出します)

リンパ腫の治療などでよく使われるドキソルビシン(アドリアシン®️)という抗がん剤は、一般的に30mg/m2という用量で投与が行われています。しかし、この用量で小型犬に投与するとかなりの量になってしまうため、10kg以下の犬では『体表面積』を用いず、『体重』を基準として、1mg/kgの用量で投与します。

ややこしいので、具体例を用いて説明します。

20kgの犬がドキソルビシンを打つ場合
10kg以上の犬なので、用量は30mg/m2が適応されます。
20kgの犬の体表面積は体重から導き出され、0.744m2となります。
30mg/m2×0.744m2=22.32mgを投与します。
5kgの犬がドキソルビシンを打つ場合
10kg以下の犬なので、用量は1mg/kgが適応されます。
1mg/kg×5kg=5mgを投与します。

「じゃあ、10kgちょうどの犬ではどちらを使うの?」
当然この疑問が頭に浮かぶと思います。

体表面積による用量は→30mg/m2×0.469m2=14.07mg
体重による用量は→1mg/kg×10kg=10mg

ご覧のように、どちらの方針でいくかによって、約1.5倍も差が出ます。

実際に10kgの犬に対し、10mgを投与すると効果がイマイチということが多いです。

そのため、現場ではドキソルビシンの副作用である蓄積性心毒性、好中球減少症などをモニタリングしながら、体表面積による用量を使っていきます。

体重が前提では無い抗がん剤なのに、場合によっては体重別の用量があるということを紹介しました。

体重を意識する大切さの例の1つです。

 

 骨肉腫の発症率

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続いて、骨肉腫という骨にできる腫瘍についてお話ししていきます。
骨肉腫は四肢に発症することが多く、特に肩周りや手首、膝の周辺部に発症しやすいとされています。

そんな骨肉腫ですが、体重によって発症率が大きく異なることが分かっています。
アメリカやヨーロッパでは大型犬を飼育している方が多く、骨肉腫に関する研究が進んでいます。
骨肉腫の犬1,462匹を調べた大規模な研究では体重別で発症率が異なることが分かったのです。

40kg以上の犬での発症率 29%
15kg以下の犬での発症率 5%

つまり、小型〜中型犬の発症率は著しく低いということが示されています。

骨肉腫すなわち骨が腫瘍化する原因としては

・微小骨折:成長期や骨折時
・放射線:稀な話
・腫瘍抑制遺伝子の異常:Rb遺伝子、p53遺伝子

が考えられています。

大型犬ほど、子供から大人になるまでに骨が伸びる距離が長いので、骨肉腫になるリスクが上がるのではないかと僕は考えています。違うかもしれませんが(笑)

骨肉腫に関しては、僕のサイト『オタ福の語り部屋』の方で紹介している記事があるのでそちらをご参考下さい。

 

 前十字靭帯断裂の外科的治療法

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前十字靭帯断裂とは、膝関節内にある大腿骨(太ももの骨)と下腿骨(スネの骨)を繋ぐための靭帯が千切れてしまう疾患です。

前十字靭帯はとても太い靭帯なので切れることは稀ですが、加齢による靭帯の変性(劣化)や関節炎、自己免疫疾患などが原因で切れてしまうことがあります。

この疾患の特徴は外科的治療法が大型犬と小型犬で異なるということです。

一般的に大型犬ではTTA(脛骨粗面前方転移術)やTPLO(脛骨高平部水平化骨きり術)が適応となります。これは体重が重いと膝関節にかかる負荷も大きくなるので、しっかりと固定できるTTAやTPLOが大型犬では選ばれるというわけです。
一方で小型犬はラテラルスーチャーと呼ばれる術式が選ばれることが多いです。

つまり、体重別に治療法が違うと言う事です。

これらの術式を簡単に説明すると下記の3つになります。

TTA(脛骨粗面前方転移術)

TTAは文字通り脛骨粗面(スネのオモテ面?頭側)を一部切って、前方に出すことで力学的に膝関節を安定させる方法です。

TPLO(脛骨高平部水平化骨きり術)

脛骨高平部(膝の真下のスネあたり)を切開し、水平にして固定することで、脛骨の前方変異を抑え、膝関節を安定させる方法です。

ラテラルスーチャー

ラテラルスーチャー(関節外制動法)は脛骨が前方に変位しないように膝関節の外側に糸をかける方法です。

 

これらはGoogleで検索をすると、写真付きで詳しく解説してくれてるHPがたくさんあるので、そちらを見ていただければ、イメージが湧きやすいと思います。

 

 最後に

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体重が10倍以上異なる個体もいる犬の医療ではやはりその子その子に合わせた柔軟な対応が求められます。

今回は体重にスポットライトを当てて紹介しましたが、犬は体重だけでなく身体的特徴(垂れ耳、胸郭の形、足の長さ、短頭種、被毛など)によってなりやすい病気はたくさんあります。

自分の飼っているペットがどのような特徴を持っている犬なのかを把握し、罹りやすい疾患を予防するのも飼い主さんの責務です。
飼い主さんが病気について知ることは、救える命が増えることに繋がると信じています。
 

文:オタ福 
  

『オタ福の語り部屋』はこちら

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週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

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