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【動物の先端医療】リニアックをご紹介しましょう ~目の前にある、次の医療技術~

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文:オタ福

今回は動物の先端医療についてのお話です。
医療と言うのは日進月歩。かつては不治の病として恐れられていたものが、今では普通に治療可能なものが沢山あります。

不治という言葉は、本当に治療不可能なのではなく、まだ治療法が見つかっていないだけなのだと考えれば、全ての病気に治癒の可能性があるわけです。

ある病気に対する新しい治療方は、まずは実験的なものから始まり、試験(実証)段階に入って、やがて裾野が広がって万人に行き渡るのですが。その最初の段階は、よく先端医療と呼ばれます。

さて、それではその例に触れて行きましょう。

【目次】

 先端医療って?

f:id:masami_takasu:20181224124418j:plain写真:放射線治療装置|放射線治療部|がん研有明病院

今現在、何が先端で何が時代遅れなのか、正確には分かりません。
常識が目まぐるしく変わるからです。

例えば現時点の人医療では、以下のようなものが先端といわれるようです。

・アデノウイルスやレトロウイルスを使ったDNAワクチン
・最近有名になったPD−1抗体などを用いた腫瘍免疫療法
・放射性同位体を用いたアイソトープ療法
・原因分子だけをターゲットにした分子標的薬
 など

しかし1年後、2年後にこれらは、さすがに時代遅れと言う事はないでしょうが、もう先端ではなくなっているかもしれません。

ここで、動物の話に戻ります。
獣医療は人医療と比べ、若干遅れがあります。
実用化されているもの限定で、獣医療の先端技術を垣間見てきましょう。

今回お話しする内容は「もう、知ってるよ!」なんて言われることもあるかもしれませんが、獣医療というフィールドで僕が「新しいな」と思ったものを紹介させてもらいます。

 

 定位放射線治療

f:id:masami_takasu:20181224123901j:plain写真:リニアック 東北大学病院 放射線治療科

定位放射線治療とはいろんな方向から放射線を照射し、病巣にのみ放射線を集中させる方法です。

クルクルと機械が回転し、病巣へ向けて放射線を照射します。
この機械の名は『リニアック』と言います。
リニアックから目には見えない放射線が放出され、治療を重ねるごとにみるみると腫瘍が小さくなっていく様子を見れば、誰もが近未来的な治療法だと感じることでしょう。

タイムマシンができたら、リニアックを昔の人に見せてやりたいなと思っています(笑)

従来というか、今でも使われてはいますが、オルソボルテージという機械があります。
これは一方向からしか放射線を照射できません。ほとんどの放射線は体表などで吸収されてしまうため、副作用も大きく、人医療ではもう使われていないほどです。
ただ、設備費用が安いので、獣医療ではまだ使われています。

 

 先端医療は良い事ばかりではない

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話をリニアックに戻しましょう。
リニアックは多方向から照射できるという利点から、オルソボルテージと比べて強い線量の放射線を照射することが可能になりました。これにより、治療成績も上がりました。科学の力は凄いです。

「リニアックって良い事しかないやん!」
と思われた方、実はそんなことはないのです。

定位放射線治療の弱点その①

『とにかく設備費用が高い』
設備費用はとにかくかかります。リニアック自体もめちゃくちゃ高いのですが、それよりも高く、煩雑なのが、リニアック室。
通常のレントゲン室やCT室で扱う放射線よりはるかに高線量の放射線を扱うため、核シェルターのような分厚い鉛の壁で作られています。
この部屋を準備するのが大変で、法律の遵守も忘れてはいけません。
設備を作るだけでも、かなり億劫になります。

定位放射線治療の弱点その②

『治療費が高い』
これも設備費用や煩雑さゆえに治療費がかなりかかります。
大体50~70万円ほどかかります。
獣医療は自由診療なので、人みたいにリーズナブルな値段で治療を受けることができません。

定位放射線治療の弱点その③

『利用可能な施設が限られている』
僕の中ではこれが一番の弱点だと思っています。
リニアックは先ほども説明したように頑丈な部屋を作るためにかなりの制約が存在します。
そのため、リニアックを置ける施設は大学病院や川崎市にある日本動物高度医療センターなど、限られます。

● ● ●

リニアックを受ける必要がある動物は脳腫瘍持ちの子が多く、いつ呼吸が止まるか、いつ発作を起こすか、ハラハラドキドキ状態の子ばかりです。
この子たちがリニアックを利用するために車で何時間もかけて移動するのはなかなか無理のあることだと思います。
利用できる施設が遠いという理由でリニアックの利用を諦めている飼い主さんは多いです。

もっと身近でこういった設備を利用できる施設ができれば、良いのになぁと思います。

 

 最後に

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今回は最新の獣医療ということで、リニアックを用いた定位放射線治療についてお話しさせて頂きました。

いかがでしたでしょうか?

放射線治療は外科切除、抗がん剤に次ぐ『第三のがん治療』として、長い間支持されてきました。しかし、放射線治療にも副作用があり、利用には制限がありました。

新たな治療機器として登場したリニアックは多方向から高線量の放射線を照射でき、副作用もオルソボルテージと比較して少ないため、積極的な利用が期待されています。
ただ、そのリニアックも良い事ばかりではなく、“法律の遵守”や“高額な治療費”、“利用可能施設の制限”など、まだまだ課題は残されています。

こういった課題をうまく乗り越え、もっと身近にリニアックが利用できる日が来ることを願うばかりです。

 

――目の前にある、次の医療技術――

文:オタ福
  

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週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

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