こちら、オタ福診療所(仮)
今回は:癲癇(てんかん)

皆さんは動物のてんかんについて、どの程度ご存知でしょうか?
今回は動物のてんかんについてのお話しです。
てんかんは、なぜ起きるのか知りたい|てんかんにもタイプはあるのか?|治療法を知りたい
てんかんは脳の疾患ですが、現在は薬が多く開発されており、うまくコントロールすることも可能になっています。具体的にどのような病気なのか見ていきましょう。
うちの子は何の前触れもなく、てんかんの大発作を起こしました。寝ていたと思ったら急に身をよじってドタンドタンと暴れて。最初は寝ぼけていると思ったのですが。
てんかんは、初めて見た飼い主さはショックでしょうね。
目のまえでもう、死んでしまうと思いました。救命救急に電話をするときに、手が震えたのを覚えています。
てんかんで、すぐに命を奪われることはありません。落ち着いて対応することが肝心です。そのためにも、基礎知識が必要です。
てんかんって何?
てんかんを専門に診断ガイドラインを作っている、世界的に有名な組織『IVETF(世界獣医てんかん特別委員会)』がてんかんをこう定義しています。
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以下原著
Epilepsy is defined as a disease of the brain characterized by an enduring predisposition to generate epileptic seizures. This definition is usually practically applied as having at least two unprovoked epileptic seizures >24 h apart 引用文献:International veterinary epilepsy task force consensus report on epilepsy definition, classificationand terminology in companion animals.
ん?… 訳わからないですね笑
要は、
を言います。
ここでいう『てんかん』は病名で、『てんかん発作』は症状を意味しています。
何らかの原因で、脳内の神経が過剰に興奮してしまうことでてんかん発作は起きるのです。
てんかんは大きく分けて2種類ある
てんかんは大きくわけて2種類あります。分け方として、脳に構造的な変化があるかどうかです。
MRIなどの検査を行い、脳に明らかな病変が見つからない。けど、てんかん発作を繰り返しているという場合、"真性てんかん"と診断されます。
一方で、脳腫瘍があったり、脳炎、水頭症が起きていることで、てんかん発作を繰り返している場合は"症候性てんかん"と診断されます。
てんかんの症状とは
てんかんの症状で一般的なのは、『全般発作』と呼ばれるもので、全身の筋肉が突っ張った状態の強直期を経て、もがき泳ぐような間代期へと移行していきます。
飼い主さんはこの様子を見て、
「横に倒れて手足をビーンと突っ張っていて、しばらくすると泳ぐような動きして、その後ゆっくりを落ち着きました。」と仰られることが多いです。
あ、うちの子はまさにこれでした。
標準的なてんかんの場合、発作自体は1~2分程度で収まります。よだれが出たり、瞳孔が開いていたり、失禁などが見られますが、これは自律神経の乱れから起こっています。
そして、全般発作の他にあるのが『焦点性発作』です。
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全般性発作が脳全体の興奮によって起こり、意識を消失しているのに対し、焦点性発作は脳の一部が興奮しているため、本人に意識はあり、その部位に相応の症状が見られます。
例えば、顔面のけいれんや手がピクピクと上がってしまったりなど、本人は気にしているがそれを制御することはできません。
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けいれんを伴わない発作
その他にも、けいれんを伴わない発作があるのでそちらも注意しましょう。
・脱力発作:全身の力が抜け、崩れるように倒れている状態
それ本当にてんかんですか?
発作が起きているからと言って、全部が全部てんかんだとは言い切れません。同じように発作を起こす疾患をご紹介します。
失神
失神とは循環器疾患や脳血管障害などで脳への血流が一時的に遮断されることで起こります。
よく格闘技などで絞め技を入れられた選手が気を失っているシーンがありますよね?要はあれです。首を締められ、脳への血流が遮断されて起きています。
前庭疾患
前庭疾患ではどこが障害されるかによって症状は変わるのですが、水平/垂直感覚を失い、倒れてしまいます。
ナルコレプシー
もう人では有名な難治性疾患ですよね。急に眠気に襲われて、倒れるように寝てしまう病気です。あれ、実は犬でもあるんです。
食事や散歩に興味が湧かなくなり、急に寝落ちている犬ではナルコレプシーの可能性は否定できません。
てんかんの治し方
てんかんの治療はてんかん自体を抑える抗てんかん薬療法と、てんかんを引き起こしている原因疾患の治療を行うことで治していきます。
てんかんの原因疾患については疾患ごとの解説が必要となるので、ここでは抗てんかん薬療法についてのみお話しします。
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抗てんかん薬療法は2段階構えの治療法となっています。
1段階目で薬を選択し、その薬でてんかん発作をコントロールできなくなれば、第2段階へ移行するという流れです。
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第1段階で選ばれる抗てんかん薬で一番人気があるのは『ゾニサニド:エピレス錠®️』です。こちらは副作用が少なく、政府の認可を得ているオススメの薬です。
その他の薬としては薬価が安い『フェノバルビタール:フェノバール錠®️』などがありますが、副作用が若干強いため使用したくないという飼い主さんも多いです。
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詳しい薬の解説については、別の記事:2種類ある『犬猫のてんかんについて』で解説していますので、ご参考ください。
ゾニサミドはうちの子も処方されました。何だか仮面ライダーに出てくる、ショッカーの怪人みたいだと思っていました。すごい薬だなあと。
飲んでも戦闘員にされることはありませんので、ご安心を。
てんかんの闘病記です
以下はてんかんの闘病記です。
てんかんは激しい発作が起きるために、動顛される飼い主さんが多い事でしょう。
闘病記に書かれた、他の飼い主さんの経験は、とても役に立ちます。
どうか、活用なさってください。
今日から、きずあすかさんの愛犬、ろくすけ君の闘病記を連載します。
病名は癲癇。ある日突然に発症しました。
「あの病態は、飼い主の心を乱します」
その言葉に、経験者の方は皆うなずくことでしょう。
初回は、闘病記を残す理由です。
もっと詳しくお知りになりたい方へ
てんかんについてもっと知りたいという方は『オタ福の語り部屋』までいらっしゃってください。
『オタ福の語り部屋』では、ここでは書ききれていないてんかんの詳しい情報を載せています。
――こちら、オタ福診療所(仮)了――
文:オタ福
▶ 作者の一言
▶ オタ福:犬の記事 ご紹介
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――次話――
『表在性膿皮症』
一般には膿皮症と広い意味で言われますが、深在性と区別されます。
湿気の多い時期には発症が増えます。
皮膚病と軽視されがちですが、重症化することがあるので注意が必要です。
――前話――
『急性膵炎』
膵炎というのは早い話が膵臓(すいぞう)の炎症で、それが急性で発症したということです、激しい痛みを伴いますが、早く対処すれば治る可能性が高い病気です。
しかし対応を誤り、命を失う子もたくさんいます。
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この記事は、下記のまとめ読みでもご覧になれます。
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