自己免疫不全に思うこと
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カテゴリー:コラム
作者:高栖 匡躬
自己免疫不全って、ご存知ですか?
免疫不全と混同しがちですね。どちらも免疫機構の障害です。
(免疫不全)
免疫力が極端に落ちて、普通なら罹らないような、色々な病気を発症してしまうこと。
(自己免疫不全)
自分の免疫が、間違って自分を攻撃してしまうこと。
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自己免疫不全は、言葉は難しいのですが、割と一般的です。
例えば、アトピーなどがそうです。
他にもリュウマチや、バセドウ病、膠原病などがあります。
自己免疫疾患と呼んだり、免疫介在性(病名)と呼んだりします。
免疫介在性貧血は、犬や猫でよく耳にする難病です。
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実は自己免疫不全は、何でもありで、何でも起きてしまいます。
病名の付いていない病気も沢山あります。
わが家の愛犬ピーチーは、次の病気になりました。
劇症肝炎、多発性関節炎、てんかん、難聴
もともと肌が弱かったのですが、きっとそれも自己免疫不全だったのでしょう。
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このコラムは、我が家のピーチーに起きたことをまとめたものです。
原因不明といわれる病気のいくつかは、自己免疫不全が引き起こしている可能性があります。そして、もしもそうであるならば、治る可能性があります。
そのことを、ぜひ知っていただきたく思います。
【目次】
自己免疫不全/自己免疫疾患
第1話|実は既に、身近で起きていることかも
2015年のある日、我が家の愛犬ピーチーを病魔が襲いました。
最初は夏バテかなと思い、次に熱中症を疑いました。
かかりつけの獣医師も、熱中症との診たてでその治療を。
しかしピーチーの状態は悪化の一途。
ただならぬ状態に、未明の救命救急に飛び込み、そこで発覚したのが重度の肝炎でした。
結局後になって、それが自己免疫不全が引き起こしたと分かるのですが、まさか免疫の暴走が劇症肝炎を引き起こすなど、想像もしていませんでした。
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第2話|自己免疫不全の診断について
ピーチーは予断を許さない状況。
「深刻な状況です」
担当医の言葉を今も思い出します。
そのピーチーが、なぜ助かったか?
自己免疫不全に絞った治療に、賭けたからです。
なぜその選択ができたか?
そして、そもそもの診断が難しい理由を書きます。
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第3話|「お歳です」の言葉ってどうなんだろう?
老犬は、”耳が遠くなる”、”足腰が弱くなる”など、色々問題が……
獣医師は「お歳ですから」という言葉をよく使います。
しかしそれ、本当に「お歳」だから?
「病気には、お歳ですって理由は無いんですよ」
そう語る獣医師へのインタビューです。
自己免疫不全から発症する病気と、その闘病記
劇症肝炎(自己免疫性)
ピーチーの闘病記|劇症肝炎編|全18話
愛犬ピーチーは2014年8月16日の早朝6時、救命救急に駆け込みました。
40度を越える高熱。ぐったりとして動けない。
ただごとではないと思いました。
振り返ると、異常を感じたのはその6日前
突然の体の震えと、食欲不振
恐らくそれが前兆だったのでしょう。
ここから、命を賭けた闘病が始まったのでした。
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非再生性免疫介在性貧血
チョコラッの闘病記①|病名が分かるまで(全3話)
らぶプーさんの愛犬チョコラッの、『非再生性免疫介在性貧血』の闘病記。
この病気は、自己免疫不全で起きるもの。
だから診断が難しく、最初はそうだと分かりませんでした。
なんとなく調子が悪い……
そこから始まったことでした。
まずは病名が確定するまでのお話から。
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チョコラッの闘病記②|最終検査結果まで(全6話)
チョコラッははじめ『免疫介在性溶血性貧血』と診断されます。
抗核抗体検査は陽性だったからです。
しかし、その病気の典型的症状が出ません。
治療を開始しながら、最終検査の結果待ち。
そして最終的に確定した病名は、当初の診立ての『免疫介在性溶血性貧血』ではなく、『非再生性免疫介在性貧血』ということに。
確定するまでに、実に1ヶ月近く。
病気の難しさを物語ります。
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低アルブミン血症
ルイの闘病記(低アルブミン血症)|全3話
まだ7歳の、元気な愛犬でした――
ちょっとしたことで受診した、動物病院。
そこで告げられたのは、受け入れがたい深刻な病名と余命でした――
もの言わぬ愛犬の病気は、多くの場合、ある日突然に判明します。
その時の飼い主の動揺は、計り知れません。
ここから、飼い主のまるさんと、大切な愛犬ルイの闘病が始まります。
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アジソン病
花と風の闘病記|全3話
愛犬、花と風を迎えてから、我が家は楽しい日々を過ごしていました。
しかし、ある夏の日のこと――
いつも元気な花の体調が良くありません。
色々な検査の結果、花はアジソン病と診断されました。
この時、花は命に関わるほどの状態だったのです。
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あとがき
自己免疫不全について
自己免疫不全の診断は、なかなかできません。
そのもの自体を、明確には確定できないのです。
病気の原因を探って、1つ1つ可能性を潰していって、最後に自己免疫不全の可能性が残るわけです。
慢性の疾患ならばまだ良いのですが、急性の重篤な症状を発症した場合は大変です。その原因を探し当てるまでに亡くなってしまう可能性が高いのです。
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わが家のピーチーは、この急性の重篤な症状を呈しました。
病名で言えば、劇症肝炎です。
幸い自己免疫不全を探し当てて、間一髪で死の手前で戻ってきました。
探し当てたといっても、自己免疫不全可能性が高いとみて、それに掛けて一発勝負に出たのでした。
ピーチーの治療で行なったのは、ステロイドの大量投与。
読みが当れば治る。
しかし外れたら、その治療自体が命に止めを刺すというものでした。
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幸いにもピーチーは賭けに勝ちました。
事が過ぎて思ったのは「本当に自己免疫不全は、何でもありなんだ」ということ。
処方された免疫抑制剤のお蔭で、なんと! 肝臓とは関係ないはずの内耳炎も治って、耳が聞こえるようになりました。
何が言いたいのかというと。
炎症系の急性疾患で亡くなる犬猫には、実は自己免疫不全は多いのではないか?
ということです。
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医師の経験不足で、自己免疫不全を疑うことをせず、それによって最適な治療を行うチャンスを失って、原因不明で亡くなる犬猫は多いのではないか?
ピーチーは、今日にも死んでしまうほどの重篤な状態から、わずか4日で歩いて退院しました。
医師は「原因不明」と言う前に、疑うことがあるのでは?
他の方の闘病記や体験談を見て、思うことがあるのです。
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獣医師側に想像力がなければ、最後の可能性に賭けるチャンスも無くすかもしれませんよね。
「先生、自己免疫不全の可能性はありませんか?」
患者側からのその一言で、もしかすると違う景色が見えるかも。
そんなことを考えながらコラムです。
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作:高栖匡躬
解説:高栖匡躬
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自己免疫不全関連のまとめ読みです
ステロイドと減薬|まとめ読み
ステロイドはありふれた薬。
よく効く反面、副作用があるために嫌っている方が大勢います。
しかしこの薬――
使い方を誤らなければ、一生飲み続けることだってできます。
愛犬ピーチーは14年間使い続けました。
必要以上に恐れなくていいのです。
免疫抑制剤に思う|ステロイドからの切替
愛犬ピーチーは、ステロイドの大量投与で命を拾いました。
しかし副作用が無視できず、免疫抑制剤に切り替えを――
そのときの苦労や失敗談を、コラムにしました。
こういう情報は、獣医さんも知りませんでした。
何故かって?
――経験していないから。