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【表在性膿皮症】たかが皮膚病と軽視しないで ~重症化する可能性のある病気です~

こちら、オタ福診療所(仮) 
今回は:表在性膿皮症
膿皮症_扉

文|オタ福
 
はじめに

こんにちは、オタ福です。
皆さんは「表在性膿皮症」という病気をご存知ですか?

表在性膿皮症とは皮膚の常在菌が皮膚表面や毛穴で増殖し、かゆみや抜け毛ができる病気です。特にキャバリアなどの毛の長い犬種では蒸れやすく、発生率が高いです。

今回はそんな表在性膿皮症についてのお話です。
 
 
【目次】 

膿皮症は良く聞く皮膚病ですが、軽視できないのはご存知でしたか?

確かに良く聞く病気です。アトピー性皮膚炎の、症状の酷い時を言うのかと思っていましたが違うのでしょうか?

アレルギーは原因の1つではありますが、それが全てではありません。患者さん側だけでなく、意外に獣医師側も誤解をしていることがあります。

重症化するのですか?

間違った治療をすると、重症化することもあるので注意が必要です。素人判断で、抗生物質を肌に塗るなどはしないでくださいね。それと、獣医師の対応も気を付けて見ておいてください。本記事に注意点を解説しています。

 

 表在性と深在性

病気の説明

膿皮症というのは、表在性と深在性の2つがあります。
細菌感染が表皮で起きているか、真皮や深部で起きているかの違いで区別されます。

見た目上の違いは、深在性の方が皮膚の荒れ具合がやや重度だというくらいです。
よって普通に獣医さんを受診する際は、よほど悪化した症例でない限り、現場ですぐに区別がつきませんので、まずは『膿皮症』という判断をしてから、ある程度治療をして様子を見ながら、表在性であるか、深在性であるかの判断をしていきます。

深在性の場合は、外用薬やシャンプーが効きませんので、治療は少々厄介です。
この病気は対処方法を誤ると重症化するので、注意が必要です。

表在性膿皮症の方が多いので、今回はそちらに絞ってご説明をしていきます。

 

 表在性膿皮症はどうやって起こるのか?

病気の説明

原因細菌について

表在性膿皮症は細菌感染による炎症が主な原因です。ではその原因となる細菌は一体どのようなものなのでしょうか?

表在性膿皮症を引き起こす原因菌で一番有名なのが、Staphylococcus pseudintermedius(スタフィロコッカス シュードインターメディウス)というブドウ球菌の一種で、普段でも皮膚や毛包、粘膜に存在する皮膚常在菌です。

他の原因菌としてはS.schleiferiやS.aureusなどがあります。

これらの細菌は病原因子と呼ばれる皮膚に悪影響を与える物質を産生しています。

病原因子として、

・コアグラーゼ:血液凝固作用(血を固める作用)を持つ
・プロテインA:免疫反応をかわす術を持つ
・表皮剥脱毒素(ET):皮膚の細胞が剥がれてしまう毒素
・エンテロトキシン:細菌が産生する毒素で様々な病変に関与

こういった細菌が出す物質によって、犬の体では様々な症状が現れてしまうのです。

 

 どんな時に注意が必要?

病気の説明

表在性膿皮症が、常在菌の異常増殖によって起こることはお分かりいただけましか?
次にどのような犬や状況、が表在性膿皮症を発症しやすいのか考えていきましょう。

通常、人の体でもそうですが、常在菌と宿主免疫(自分の免疫力)は一進一退の攻防戦を繰り返しています。

何らかの原因で、常在菌の勢いに押されてしまうことがあり、それが発症のきっかけになります。

、常在菌と宿主免疫の攻防戦

 

 では発症の原因は?

病気の説明

発症の原因は大きく分けて2つあります。
それは『犬側の問題』か『環境的な問題』かです。

1.犬側の問題

犬は人間と比べ皮膚が薄く、分泌腺も豊富にあるため、表在性膿皮症を発症しやすいのではないかという噂があります。←根拠はなく、あくまで噂レベル

アトピーなどの皮膚疾患があると、皮膚バリアが崩壊しており、常在菌に負けてしまいます。

その他、免疫を抑制する薬(ステロイドや抗がん剤)を使用している場合も同じく、常在菌と戦える力が弱っているので、表在性膿皮症になりやすいと言えます。

2.環境的な問題

かゆみで以外でも、何らかの刺激によって皮膚が傷ついている場合があれば、それも発症のリスクを上げます。擦り傷や火傷などがあったり、首輪で皮膚がこすれていたりする場合は注意しましょう。

もう1つは季節です。相手が細菌なだけにジメジメしている季節は細菌の増殖が盛んになります。梅雨の時期は室内の換気に注意しましょう。

 

 症状について

病気の説明

表在性膿皮症の症状としてあるのは

・かゆみ
・ニキビのような膿
・虫食い状の脱毛

があります。かゆみの程度は個体差があります。

ニキビのような膿は毛穴に一致しているものとそうでないものがあります。この違いは感染が成立した場所の違いです。

毛穴に一致しているものは毛包内で細菌感染が成立し、炎症が起きています。
一方で一致しないものは皮下で感染が成立し、膿が溜まっています。

 

治療法について

病気の説明

表在性膿皮症の治療戦略としては大きく分けて3方向からアプローチしていきます。

①原因疾患の管理

表在性膿皮症が起こっている時は何らかの原因で、細菌に体が負けてしまっている状況がほとんどです。その原因については上述しています。

なぜ負けているのかをしっかりと検査し、対策を立てるべきです。

②外用抗菌薬の使用

どのような細菌に感染しており、どの抗菌薬が有効なのかを検査で調べたあと、抗菌薬を使って、細菌の増殖を抑えてあげます。

この時絶対行って欲しい検査が、細菌同定と薬物耐性試験です。これを行わずに、あの抗菌薬は効かないからこっち使ってみようと、何個も何個も抗菌薬を変えて使用することは耐性菌を作ってしまう原因になります。

注意しましょう。

③皮膚バリアの回復

アトピー持ちや表在性膿皮症による痒みによって、皮膚がボロボロになっている場合があります。皮膚というものはよくできていて、あらゆる病原体から身体を守っています。これを皮膚バリアとも言うのですが、その皮膚バリアを回復するために、シャンプーを行ったり、保湿をしたりとスキンケアを行います。

以上の3方向から、表在性膿皮症と戦っていきます。
具体的かつ一般的な治療の手順は下記にまとめます。

 

具体的な治療の手順

病気の説明

先に述べた通り、膿皮症に表在性と深在性があり、現場でどちらかを区別することはことはできません。

対処方法は重複している部分が多いので、まずは両方を視野に入れながら治療がスタートします。

①外用抗菌薬とシャンプーを処方する。
 同時に薬物感受性試験も外注検査しておく
   
②数日後に様子を見せにきてもらう 
   
③患部の状態(推移)を見て、治療方針の決定(下記)

③により、対応が2つに分かれます。

回復している場合(外用薬が効いた)

表在性膿皮症の可能性が高いので、外用薬とシャンプーを続行してもらう。
この段階での内服薬は使用は避けます。耐性菌発生のリスクがあるからです。

回復していない場合(外用薬で治りが悪い)

まずは膿皮症以外に考えられる原因疾患を除外し、その後、深在性膿皮症を疑い、内服抗菌薬を投与していていきます。このとき、上記①で外注検査を出していた薬物感受性試験の結果をもとに、処方する薬を選択します。

この手順を踏まないで内服薬が処方された場合は、注意が必要です。

 

 膿皮症の闘病記です(深在性膿皮症の場合)

大事なこと

重症化した深在性膿皮症の闘病記はこちらにあります。
参考になさってください。

 

 最後に(気を付ける時期など)

大事なこと

今回は表在性膿皮症について解説しました。

表在性膿皮症は梅雨の時期から夏にかけて発症が多く、アレルギー性皮膚炎持ちの子や免疫抑制剤・抗がん剤を使用している子での発生率が高い傾向にあります。

こういった状況に該当される方は、普段から注意深く皮膚の様子をみてあげることをオススメします。

僕の運営している『オタ福の語り部屋』では、表在性膿皮症についてよく詳しく解説していますので、そちらもあわせてご覧ください。

その他、アトピー性皮膚炎やステロイド、抗がん剤の副作用についても、なかなか理解が難しいことや、資料が見つけにくいことを解説していますのでご参考になさってください。

――こちら、オタ福診療所(仮)つづく――

文:オタ福
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次話はペットの偏食です。悩んでいる飼い主さんが多いですね。

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週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

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