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【食欲不振】ペットに起きる急な食欲不振 ~獣医さんも意外に知らない対処法~

こちら、オタ福診療所(仮) 
今回は:ペットの食欲不振
食欲不振_扉

文|オタ福
 
はじめに

こんにちは、オタ福です。
今回扱うのはペットの食欲不振です。

食欲不振はペットの健康を左右しかねない変調です。しかしよほどひどくならない限り、我儘による偏食や食べムラと区別がつかないので、まじめに取り合ってくれない獣医さんも多いのだそうです。

だからこそ今回は、動物医療の観点からそれを、まじめに取り上げてみたいと思います。
 
【目次】 

ペットの食欲不振で悩んでいる飼い主さんは、とても多いようです。食欲不振から起きる現象は、偏食や食べムラ、食い渋りなど、色々な言葉で表現されます。

私の周囲にも、悩んでいる方が結構いらっしゃいますね。当事者になった飼い主さんにとっては、大きな悩み事です。

実際、ご相談が多いのです。しかし獣医大学では、フードや栄養学はカリキュラムではないので、その道に明るくない獣医さんは多いと思います。

うちの子は食いしん坊だったので、食欲不振は別の世界の話だと思っていました。しかし病気になり、食欲がなくなって愕然としました。どんな子にも、どんな飼い主さんにも無縁な話ではありませんね。

そうです。ペットを飼っている方は、いつか必ず行き当たることなんですね。 

 

 急に食べなくなった時に考えること

病気の説明

食欲不振は最終的には、医療(治療)として向き合うことになるのですが、それを行う前に、急に食べなくなった原因を調べないといけません。

食欲不振は非特異的な症状(つまり体調や気分によって変動し、「食欲不振→この病気」というものがないということ)なので、食欲不振に陥る原因はたくさんあります。

ここでは敢えて病名を出しません。なぜなら、非特異的な症状に対し、たかが数個の病名を並べるとかえって飼い主さんの混乱を生みかねないからです。

代わりに行うべき検査を書いておきます。

食欲不振の際、必ず行うべき最低限の検査

  • 触診、聴診などの身体検査
  • レントゲン検査
  • 超音波検査
  • 食べる意思の有無

異物や腫瘍、捻転による狭窄はないのか、膵炎、腸炎、胆管炎などの腹痛はないか、そして食べる気があるのか、これらを注意して除外診断を行なっていきます。

これらの検査を行い、異変が見つからず、食べる気がないという場合は精神的な疾患の可能性も考えられます。

 

 栄養状態の確認

病気の説明

ご飯を食べなくなると当たり前ですが、体重が減ってきます。しかし、見るべきポイントは体重だけではありません。

BCS(ボディコンディションスコア)や筋肉量の評価も大切です。

BCSに関しては『犬 BCS』や『犬 ボディコンディションスコア』などで検索すると詳しいやり方が解説されたサイトがたくさん見つかります。

筋肉量の評価としては、頭、肩、腰、お尻周りの筋肉が減少してきている場合は、状態としてあまり良くありません。

 

 自力で食べさせるには

病気の説明

最終的な手段としては、半強制的、強制的に食べさせる方法が幾つかあります。
でもそれは、最後の手段としてとっておきましょう。せっかくなら、自力で食べて欲しいですよね。

この項では、飼い主さんや獣医の頑張りで、何とかできる範囲の手札をご紹介します。
まずはこちらを試してみてください。

食事の工夫

 この記事を読まれている食欲不振のペットを持ちの飼い主さんは、すでに試行錯誤されている方がほとんどかもしれません。まだ試してない方法がないか見比べながら読んでもらえたらと思います。

食事の工夫の例
  • 温めてみる
  • 少々トッピングして匂いや風味を変えてみる
  • 高タンパク食をあげてみる(←腎臓や肝臓に負担がかかるので、原疾患がある場合は獣医師と要相談)
  • 少量ずつ手であげてみる
  • お皿を置く場所を変えてみる
  • 犬は甘い物好きなので、シロップや果物を加えてみる
  • 猫はグルメなので、食感にこだわる
  • 猫は匂いがないと食べない←根拠はないけどオタ福の経験より

これらを試して無理そうなら、次の手を使います。

食欲刺激薬

次の手とは食欲刺激薬です。これらの食欲刺激薬は副作用を利用したものがほとんど、あんまり効果的が期待できないため薬です。しかし、最近では有用性が証明されている薬もあります。今回はそれらを分けて、後者を中心にご紹介します。

副作用を利用した有効性の低い薬
  • ジアゼパム(猫)
  • シプロヘプタジン
  • プレドニゾロン

これらの薬は有効性が低い上に、副作用を利用したものなので、当然ながら主作用の影響も受けます。このような理由から、あんまり使われません。

効果が認められている食欲刺激薬
  • ミルタザピン
  • カプロモレリン

この2つについては、次の項で説明します。

 

 効果が認められる食欲刺激薬のご紹介

病気の説明

ミルタザピン

ミルタザピンは抗うつ薬として使用されている薬なのですが、犬猫では食欲刺激薬としての有用性が証明されています。

特に猫で有効であるのは分かっていて、慢性腎臓病を持つ猫でミルタザピンを用いた研究があります。

 Compared to placebo, mirtazapine administration resulted in a statistically significant increase in appetite (P=0.02) and activity (P=0.02) and a statistically significant decrease in vomiting (P=0.047), as determined by Wilcoxon matched pairs analysis. Cats treated with mirtazapine also gained significant bodyweight compared with placebo-treated cats (P=0.002) as determined by linear mixed model analysis.
引用文献:Mirtazapine as an appetite stimulant and anti-emetic in cats with chronic kidney disease: a masked placebo-controlled crossover clinical trial.

カプロモレリン(ENTYCE®︎)

このカプロモレリンは胃から分泌されるグレリンと同じような役割をする薬です。
人の肥満話でも結構お話に出てくるのですが、グレリンは視床下部から直接作用し、食欲を刺激するホルモンとして有名です。

それと同様の役割をする薬であり、食欲刺激薬としての効果があります。

Capromorelin treatment improved appetite compared to placebo (68.6% and 44.6% treatment successes with 95% CI 59.7, 76.3 and 32.2, 57.8, respectively, P = .008). Mean body weight in capromorelin-treated dogs increased compared to placebo-treated dogs (1.8% with 95% CI 1.3, 2.3, and 0.1% with 95% CI 0.9, 1.1, respectively, P < .001). Adverse reactions occurring in >5% of either group were diarrhea and vomiting.
引用文献:A Prospective, Randomized, Masked, Placebo-Controlled Clinical Study of Capromorelin in Dogs with Reduced Appetite.

 

 最後に

大事なこと

今回は食欲不振に陥った犬猫がどのような検査を受けるべきなのか、そして栄養状態の把握の仕方、ご飯を食べてもらうための工夫についてお話ししました。

次回は強制的・半強制的に栄養摂取させる方法をご紹介します。

どうしてもご飯を食べてくれず、体調に不具合をきたす場合には半ば強制にでも栄養を与える必要があります。

次回は最終手段の強行作戦についてお話ししたいと思います。

 

 参考のために

大事なこと

食欲不振にならない工夫

以下の記事では、食欲不振に陥る前段階での工夫を解説しています。
食欲不振はなってからの対処も大事なのですが、そうならないような対策もできるものです。

どんな犬でも、病気をきっかけに食欲不振に陥る可能性があります。

将来、食欲不振に陥らないように、愛犬が若く元気なうちから躾けをすることが大事です。今の食べているもの(フードなど)が、将来の食べ物を決めることになるのです。

愛犬が歳をとり、介護の段階になると、必ず食欲不振の記事がやってきます。そんなときの選択肢を失わないために、今から心がけておけることがあります。

 

『オタ福の語り部屋』について

『オタ福の語り部屋』では、獣医さんではなかなか聞けない病気の解説をしています。医学資料では理解が難しいことや、資料が見つけにくいことを解説していますのでご参考になさってください。

――こちら、オタ福診療所(仮)つづく――

文:オタ福
 ▶ 作者の一言
 ▶ オタ福:犬の記事 ご紹介
 ▶ オタ福:猫の記事 ご紹介
  

――次話――

『栄養療法』
何かの理由(主に病気)で、ペットが自力で食べられない場合に、
強制的に消化管で栄養を摂取させる方法です。
具体的にはチューブを使って、食事を胃や腸に送り込みます。
ペットの命を救うための医療としての給餌です。

――前話――

『表在性膿皮症』
一般には膿皮症と広い意味で言われますが、深在性と区別されます。
湿気の多い時期には発症が増えます。
皮膚病と軽視されがちですが、重症化することがあるので注意が必要です。

まとめ読み|こちらオタ福診療所(仮)①
この記事は、下記のまとめ読みでもご覧になれます。

まとめ読み|侮れないペットの偏食
この記事は、下記のまとめ読みでもご覧になれます。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――連載の1話目です――

『急性膵炎』
膵炎というのは早い話が膵臓(すいぞう)の炎症で、それが急性で発症したということです、激しい痛みを伴いますが、早く対処すれば治る可能性が高い病気です。
しかし対応を誤り、命を失う子もたくさんいます。

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