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【噛み癖|保護犬】噛まれる度に心が通った ~凶暴な犬、心の話をしましょう(3/3)~

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凶暴な犬、心の話をしましょう
凶暴な犬、心

撮影&文|karaage
 

初めてリードを付けた、心(ココ)。 
思わぬことで、うちの子になって初めての病院です。

そのままだと噛みついて、診察が出来ないので、まずは看護師さんが口輪を付けてくれました。

口輪の写真は前回も載せました
凶暴な犬、心
もう一度

その後、ソーセージがどうだったかというと、やはり金具が付いていたので胃洗浄をすることになりました。心には可哀想な事をしてしまいましたが、こんな経緯があったことで、期せずして心には、リードが付けられるようになったのでした。

尚、この診察以降、心は病院では口輪を付けることになります。
最初の頃は看護師さんが付けて下さって、慣れてきたら私も付けられるようになりました。シャンプーも病院にお願いしてましたので、その時も口輪でした。

 

ガウガウから始まった心との生活。

心が初めて外に出たのは、当然ながらリードが付けられるようになったからですので、家にきてから2週間も過ぎてからです。散歩の様子はと言うと、心はただ真っすぐ走ることしかできませんでした。きっとこれまで、散歩をしたことが無かったんでしょうね。

散歩の仕方も知らず、オモチャの遊び方も知らず、人間からの愛情の受け方も知らない犬。それが心でした。

こうやって心は慣れていくのかと言うと、そう甘くはありませんでした。
心が凶暴性の本領を発揮するのは、この直後のことです。

何度目かの散歩のときでした。家に帰ってから、心の足を洗おうとお風呂場に入ったときのことです。娘が私と心の後から、自分の足を洗おうと入って来たのですが、心がそれに驚いて、私の足を噛んだのです。きっと私に何かされると思ったんでしょう。

噛んだのは1か所だけではありません。足の甲とふくらはぎを、何ヵ所も噛みました。
あまりの攻撃に激しさに、私は風呂のフタの上に飛び乗って逃げました。

幸い娘は噛まれませんでしたが、その場で固まって、じっと見ていることしかできませんでした。

 

噛んだ直後の心は、ものすごく興奮してました。おそらく「蹴られる!怖い!」って気持ちだったのだと思います。その後がどうなったかというと、実は私もよく覚えていません。衝撃が大きすぎて。

でも、ひとしきり噛んだ後の心は、大人しくなったように思います。
この後心は、時間をかけて、家族からは蹴られることはないと、学習をしていくことになるわけです。

私の怪我は自宅で手当てをしましたが、大怪我だったと思います。何ヵ所も噛まれたので、足の甲は倍に腫れ上がってしまいました。ふくらはぎも同じです。あんなに痛いケガは生まれて初めてでした。

前にも書きましたが、心の犬歯は上下4本が切られています。
もしもそうでなければ、大変なことになるところでした。

心は分かりやすく言うと、バイオハザードの犬みたいでした。
何かのきっかけで、凶暴性のスイッチがはいるのです。そうなるともう、手が付けられません。きっと叩かれたり蹴られてたんでしょうね。手足が動くと噛みついてきてました。噛み方も1度だけ噛むのではなく5、6回連続で噛まれるんです。犬歯が切られていても、顎の力が凄いので、本当に大変な毎日でした。

心は私だけでなく、家族も何回も噛みました。

娘に泣きながら「なんで連れてきたの?」と言われた事もありました。
しかし私は途方にくれた事は無かったです。心のこれまでの生活を思うと、なんとしても我が家で幸せにしてあげたかったから。

私は粘り強く心に接し、愛情を注ぎました。
そのうちに心は、痛がってる私達を見て、悲しい顔をするようになってきました。
そしてその頃から、心が噛む回数が減って来ました。

1年位たった頃には、少々ぎこちないのですが、抱っこもさせてくれるようになりました。痛い思いをしましたが、噛まれる度にお互い近づいていったんだと私は思います。

 

かかりつけの動物病院には、とても感謝しています。

心があまりにも手が付けられないので、院長先生が心を診察するのを嫌がっている様子が見え隠れしていました。心は1度も院長の事を噛んだ事は無いのですけれどね。
ですが今は、別の女医先生が心を診てくれています。因みにこの病院は院長だけが男性で、後は全員女性です。

特に感謝しているのは、あの看護師さんです。
心は病院でシャンプーしてもらっていたのですが、暫くして看護師さんから、「もう出来ない」と言われてしまったのです。

その言葉を聞いたときには、とてもショックだったのですが、今思えばあれは看護師さんの配慮でした。私ならもう出来ると、背中を押してくれたんです。

心の噛み癖がひどかったのは、丸3年位でしょうか。いつ馴染んできたのかは、あまり覚えていません。今では随分と”うちの子”になりました。

しかしまだ、私の方から触る事はできません。こちらから手を出すとビクッとするのです。だから刺激をしないように、まだ触るのは避けているのです。

今は心が自分から来た時に触っています。しつこいとウーって言うのでそれが出たらすぐにやめます。最近は怒るタイミングが分かってきました。

今年の8月になると、心がうちにきて丸4年です。
それでも噛み癖は簡単には治りません。

自分からお腹を見せてくれるくれるくせに、キッチンで料理をしてる私の太ももに、急に飛び付いて来たりするのです。きっと自分ではどうにもならないのでしょうね。

虐待されてた心のキズは、簡単には癒えないんだと思います。

心は噛んだ後、飛び付いて来て、悲しい顔しています。
その姿を見ると、心が痛みます。

 

噛まれt柱

心が噛んだ柱です
 
この写真を見てください。トイレの近くの柱の写真です。
心が私達を攻撃したり噛む回数が減った証がこの柱です。

今、心は怒るとこの場所にきて、柱をを噛んで怒りを納めてます。人を噛んではいけないと分かってきたんですね。心は心なりに、努力をしているのです。

今、我が家の二階のトイレは、ドアストッパーで固定したままです。
そこは、心の部屋ですもんね。

そうそう、トイレの中には今、おもちゃのボールも転がってます

私は心のような子でも、変われるという事を知ってもらいたくて、Twitterを始めました。そして今回、この記事を書きました。

人間の勝手で凶暴になって、噛むようになる子がいるのです。
楽しいことが何も無いままで、処分される子がいるのです。

そんな子が、少しでも減ると良いなと願いながら。 

 

――おしまい――

作:karaage
   

――前話――

うちに来たばかりの心(ここ)は、怯えて声も出しませんでした。
数日は様子見――
オモチャを出しても遊びません。”遊び”自体を知らないようです。
やがて――
心は、本領を発揮し始めました。
我が家で初め出した声は、何と威嚇のガウガウでした――

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週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――この連載の1話目です――

心(ここ)を迎えた時、私はペットロスの中にいました。
酷い精神状態の中、その犬に出会ったのです。
保護センターから「譲渡はできません」とまで言われる犬
じっとその犬を見つめるうち――
「迎えに来るから待っててね」
と言葉が口を衝きました。

 うちの子がうちに来るまで

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