マイクロチップの装着|動物愛護法改正
ニュースでも多く伝えられたので、愛犬家、愛猫家の皆さんは既にご存知だと思いますが、今年は何年かごとに改正される、“動物の愛護及び管理に関する法律(俗にいう動物愛護法)”の改正の年でした。そして元号も変わった6月にマイクロチップが義務化などを柱にした、改正愛護法が可決されました。
周囲からはマイクロチップに関する不安の声も聞こえてきます。今回はこのマイクロチップについて考えます。
こんな方に:マイクロチップを入れるのは心配|健康面は大丈夫だろうか?|費用は?|既に利用している飼い主さんの感想が聞きたい
【目次】
はじめに
皆さんは愛犬、愛猫にマイクロチップ装着していらっしゃいますか?
まだ装着をされていない方々の中には、身体の中にチップ(異物)入れるのが恐いと考えていらっしゃる方も多いと思います。
しかし動物愛護法改正でマイクロチップが義務化になれば、したい/したくないに関わらず、やらざるを得えない状況になると思われます。何も予備知識がない方からすれば、不安は多いことでしょう。
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多くの経験者から体験談を聞くと、筆者の周辺ではトラブルのあった飼い主さんは皆無でした。それどころか、法制化が遅すぎるとされる方も大勢います。
筆者自身は現在は犬を飼ってはいませんが、次に飼う際には、必ずマイクロチップを装着しようと考えています。
よくある疑問
マイクロチップというと、よく耳にする疑問(不安)は以下の3つです。
どうやってやるの?
費用は?
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マイクロチップが脚光を浴びたのは2011年のことでした。その年でハッとされる方は多いと思います。東日本大震災の年です。当時は、迷子になってしまった犬や猫たちがたくさんいました。
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被災地域では多くの方々が避難生活を余儀なくされ、愛犬は連れて行けず取り残されて、そのまま放浪生活となることもよくあったようです。運よく保護されても、飼い主がわからないケースがほとんどでした。
筆者の知る人物は医学博士でしたが、身を挺して放射線量の高かった現地に飛び込みました。その人物は人間を救うのが目的でしたが、周囲には動物を救うボランティアも沢山いたそうです。
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飼い主側が必死に探していたとしても、膨大な数の犬猫の保護情報から、自分の愛犬や愛猫を探すということは困難です。それはドキュメンタリーになって放送されたこともありました。悲しい体験談を聞く度に、他人事には思えず胸が痛んだことを思い出します。
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迷子札がついていない場合(付いていても、外れる場合があります)、犬猫が飼い主を覚えていたとしたら、飼い主との関係を示すものは何もありません。何しろ災害に見舞われた非常事態です。
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そういう時の確認方法は何か?
そう考えた飼い主さんが増えたのが、2011年のことでした。
どのように装着するか?
マイクロチップは犬猫の身体に、飼い主の情報を入れたカプセル状のICチップを埋め込みます。具体的には注射器に似た器具を背中に刺して、カプセルを体内に挿入することになります。
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痛みは皮下注射程度とされているので、局部麻酔の必要もありません。
更に背中の分厚い皮膚の部分に入るので、恐らく痛みはもっと少ないでしょう。これは動物になってみないと分かりませんが、処置した獣医師の感想としても、痛みはほとんどないだろうとのことです。
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ペットショップやブリーダーによっては、飼い主が決まる前に装着をして、飼い主が決まると情報を変える様にと指示されるケースもあるそうます。
どのように飼い主を証明するか?
情報の登録はチップを埋め込んだ後に、飼い主が日本獣医師会に氏名や住所、電話番号などの情報を記載した申込書を送付します。その情報は、日本動物愛護協会、日本動物福祉協会、日本愛玩動物協会、日本獣医師会により構成される「AIPO(動物ID普及推進会議)」のデータベースに登録され、動物病院や動物愛護センターから照会することができます。
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チップの読み込みは、専用の読み込みリーダーで行います。かつてと違い、機器はもう特殊なものではありません。現在は個人用に通販などで購入も可能なほどです。
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登録が終わるとどうなるか?
登録後は、登録した協会からハガキが送られて来ます。
これだけで登録は完了です。簡単ですね。
はがき表面に個別番号も書かれていますので、もしも登録内容に異動があった場合は、メールで必要事項と変更内容を書いて協会に送信するだけで変更可能です。
ご注意:
住所や所有者が変わった際は、そのつど登録内容を変更をしておかないと、いざというときに確認手段を失いますので、お気をつけください。
費用は?
費用は施術場所により異なりますが、数千〜1万円程度です。
今後マイクロチップが義務化されれば、国からの費用補助が受けられるかもしれません。
既に自治体によっては助成金などを設けている場合あるようなので、保健所などに確認なさると良いと思います。
安全性は?
気になる安全性ですが、エコーやレントゲンを撮っても支障はありません。耐久性は30年ほどとされており、犬の平均寿命から考えたら充分でしょう。
海外では粗悪品の事例が報告されていますが、日本国内で処置される場合は問題はないと思われます。
日本獣医師会のホームページを一部引用します。
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マイクロチップの安全性
マイクロチップの装着による動物への障害はほとんどありません。日本国内で、動物の体内に装着したマイクロチップの副作用、ショック症状等についての報告は、今までに1件も寄せられておりません。諸外国の機関 (WASAVAやBASAVA) では副作用の症例を調べていますが、これまでに腫瘍が認められたという症例はほとんどなく、ワクチン摂取によるアナフィラキシーショック等と比較しても、安全性は高いと言えるでしょう。
迷子札との併用を
因みに、マイクロチップの不良を理由に、迷子札の方が有効との意見も散見されますが、迷子対策をマイクロチップと迷子札の2択にする議論の方がおかしいと思います。
それぞれにメリットとデメリットがあるのですから、両方を併用するべきです。
まさかの時の対策であることを忘れてはなりません。
震災時のペット、事例と体験談
東日本大震災。震災からだいぶ月日は経ちましたが、あの日のことを我々は忘れてはならないと思います。
今後は台風や豪雨など、気象災害が更に増えると予想もされており、準備の大切さを痛感します。
まとめ
大きな災害の際などでは、迷子札や首輪自体を失くしてしまうシチュエーションは、容易に想像ができます。もしもそうなった場合、保護された犬の所有者を識別する方法はマイクロチップくらいしかありません。
マイクロチップを装着する際の健康リスクと、愛犬が迷子になって見つからなくなるリスクのどちらを回避するかは、飼い主さん個々の考え方次第です。
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マイクロチップには、是非の議論がまだあるようです。
しかしそこには、”愛犬を迷子にしたくない”という愛犬家の目線と、”個人的な選択を法律に縛られたくない”という社会的な目線(あるは社会活動的な目線)があり、少々論点がずれているように感じられます。
私は一飼い主の考え方として、万が一にも愛犬を迷子にしたくないので、マイクロチップを使うことには賛成です。しかしそれをもって、義務化に賛成という立場ではありません。
今後の動物愛護法の推移を、注意深く見守ろうと思っています。
――おわり――
文:高栖匡躬
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