こちら、オタ福診療所(仮)
今回は:エチレングルコールによる中毒です。

こんにちは、オタ福です。
今回は『エチレングリコールによる中毒』についてお話ししていきたいと思います。「エチレングリコール」犬や猫が舐めてしまい亡くなったという事故・事件が絶えません。
エチレングリコールは甘い味がして、犬や猫はついつい舐めてしまう様です。
この習性を利用し、動物嫌いの人が道端に撒いて、誤食した犬が亡くなったという事件もありました。
そんなタイムリーな「エチレングリコールによる中毒」についてのお話です。
ペットの毒殺がニュースになっている|散歩のときに、拾い食いをしてしまった|万が一のときにどうすればいいのか?
地域猫やペットが毒殺される事件が絶えませんね。
嫌なニュースです。
使われているのは、誰でも手に入れられる不凍液のエチレングリコールですから、真似をする人がでてくるのが怖いです。
万が一のとき、対処する方法はあるのですか?
あります。時間勝負になるので、事前の知識として覚えておいてください。
エチレングリコールの怖さ
毒性の強さ
エチレングリコールは犬や猫が誤食してしまうと大変危険です。というのもエチレングリコールはわずかな量で動物を死に至らしめることが可能だからです。
エチレングリコールの最小致死量
・猫:約1.4mL/kg
最小致死量とは動物を殺すことができる最小量のことを言います。その量の少なさには恐怖すら覚えます。
チワワやトイプードルぐらいの犬であれば大さじ1杯程度で命を落とします。
猫ではもっと少ない小さじ1杯程度。とても怖いですね。
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さらにエチレングリコールは急性腎障害(AKI)を起こすことでも有名です。エチレングリコールを摂取すると体内で代謝され、グリコアルデヒド→グリコール酸→シュウ酸へと変換され、シュウ酸カルシウム結晶が作られ、急性に腎臓を障害します。
身近にある怖さ
エチレングリコールは不凍液という車の冷却水として利用される液体で多く含まれます。そのほかにもフロントガラスの凍結防止剤であったり、モーターオイルであったり、様々な身近なものに含まれているというのが事故になりやすい原因なのでしょう。
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カーショップに行けば簡単に手に入ってしまいます。
アメリカなどでよく見られる大きなガレージをもつ住宅ではこういった不凍液を常備している家庭が多く、誤ってペットが舐めてしまったという事故が多いみたいです。
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これがエチレングリコール
普通にamazon の通販で売っています
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悪意のない場合もある
エチレングリコールは、殺鼠剤としても使われています。また畑ではネズミ以外にも害獣被害を防ぐために、使われていることも多いようです。
つまり、動物虐待の悪意の無い毒餌もあるということです。
人がいない場所や私有地であっても、ノーリードで犬を遊ばせるときは要注意です。
また、外との出入りを自由にしている猫も気を付けてください。
3ステージで病気(中毒)が進行する
ステージ1:30分~12時間後
最初に見られる病変はアルコール中毒に似た症状です。
具体的には運動麻痺や流涎、嘔吐、痙攣、多飲多尿など。
この病変は誤食後、30分〜12時間以内に発生します。
ステージ2:12~24時間後
一瞬症状が改善したかの様に見える時期です。しかしこれは見せかけであり、水面下では脱水、心拍数の増加、呼吸促迫などが見られます。
この病変は誤食後、12~24時間後に発生します。
ステージ3:36~72時間後
シュウ酸カルシウム結晶尿に続発する重度の急性腎障害(AKI)が見られます。猫では12~24時間後にこの病変が見られます。
そのほかにも食欲不振や虚脱、流涎、昏睡、嘔吐、痙攣など、いかにも中毒をイメージさせる症状が多数見られます。
ペットがエチレングリコールを飲んでしまったら
早急に病院へ
ペットがエチレングリコールを飲んでしまったかもしれないと感じたら、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
動物病院では解毒剤や輸液療法、制吐薬などで中毒症状を抑える様な治療が行われます。
エチレングリコール中毒の解毒剤
エチレングリコールの解毒剤として有効性が示されている薬にホメピゾールという薬があります。この薬をエチレングリコールの誤食が疑われる時間から、犬なら8~12時間以内、猫なら3時間以内に投与してあげることで生存率を有意に伸ばすことができるとされています。
・猫:3時間以内
最後に:ペットの異変に気付いた時点から勝負
今回、エチレングリコールの誤植についてお話ししてきました、一通り読んで頂いてどの様に感じたでしょうか?
身近にあるエチレングリコールの誤食を避けることはもちろんのこと、病変に気付いてからいかに早く治療を開始できるかが生存率や回復率の大きな指標となります。
エチレングリコール中毒に限らず、「普段とは何か様子が変だ」という"異常"へのセンサーを常に張り巡られておくことがとても大切です。
「様子が違う=何かがあった」ということを留意しておきましょう。
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『オタ福の語り部屋』について
『オタ福の語り部屋』では、獣医さんではなかなか聞けない病気の解説をしています。医学資料では理解が難しいことや、資料が見つけにくいことを解説していますのでご参考になさってください。
――こちら、オタ福診療所(仮)つづく――
文:オタ福
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――次話――
記事の準備中です
――前話――
『ペットの肺がん』
この病気は激しい咳や、血痰を想像しがちですが、実はそれほど顕著な症状がでないことが多いようです。
ほんのちょっと息が粗い程度の場合もあります。
気になったら動物病院へ。
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この記事は、下記のまとめ読みでもご覧になれます。
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――連載の1話目です――
『急性膵炎』
膵炎というのは早い話が膵臓(すいぞう)の炎症で、それが急性で発症したということです、激しい痛みを伴いますが、早く対処すれば治る可能性が高い病気です。
しかし対応を誤り、命を失う子もたくさんいます。
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