犬を飼うということ

Withdog 犬と飼い主の絆について

もう一度、犬を飼うということ ~そこには、初めてとは違う葛藤があって~

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初めてではないから、思うことがある
もう一度、犬を飼うということ

撮影&文|高栖匡躬
 
こんな方に
愛犬を亡くした|新しい犬を迎える決心がつかない|また辛い別れがくるのが怖い|今はペットロスかもしれない|経験者の話を聞きたい

 君が去ってから - ペットロスとは少し違って

我が家では、愛犬ピーチーが去って、3年が経ちました。
それから我が家は、次の子を迎えていません。

「次の子を迎えないの?」と、沢山の方から声を掛けていただきましたが、正直言ってそんな気にはなりませんでした。仲の良い獣医さんからも、「早く迎えた方が良いですよ」とも言われましたが、心は動きませんでした。

こういうケースでよく耳にするのは、愛犬との別れがあまりにも辛かったので、次の子は迎えられないというものです。
『また必ずやってくる別れが嫌だ』
『もう一度何て、耐えられそうにない』
という理由が多いですね。

我が家の場合は、どちらかというとその逆だったように思います。
うちではピーチーとの別れに、十分に満足をしていました。
だから別れた後も、気持ちは充実していました。

 

 寂しいけれど、悲しくはない

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今、ピーチーを思い出しても、悲しくはありません。
少し寂しさはあるのですが、その寂しさをむしろ楽しんでいたように思います。
思い出すたびに感じる寂しさは、良い思い出の裏返しで、寂しさだけでなく喜びや笑いも運んできました。

だから、どうしても次の子を迎えたいという気になりませんでした。

とは言え、次の子を飼いたくない訳ではありません。
いつかピンと来る子と出会ったら、迎えようと思っていました。
犬を飼うことが目的ではなくて、「この子だ!」と思える犬と暮らせたらいいなと思ったのです。

――自然な出会いがあるといいな。
――それが、運命の出会いならいいな。
そう思いました。

それまでは自然に過ごせば良い。
出会いが無ければ、それはそれで構わないとも思いました。

自分の気持ちを分析するとしたら、筆者はきっとピーチーで ”一生分の犬を飼う”を、満喫したのだと思います。きっと。

 

 保護犬を迎えるチャンスもありましたが

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幼いころのピーチー 1
 

これまでに、保護犬を迎えるチャンスが何度かありました。
どの子もとても可愛くて、「うちで幸せにしてあげたいな」と思いました。
そして毎回、「運命の子でなくてもいいじゃないか」と自分の中にいる、もうひとりの自分が言いました。
その都度、決心しそうになりました。
しかし――、結局――
迷いながらご辞退しました。

その保護犬のチャンスの1つは、こんな風でした。

上の記事にも書きましたが、どうしても心を縛るものがありました。

3年前にピーチーが去るときのことです。
筆者はピーチーに、『またうちにおいで』と声を掛けてあげました。
それは生まれ変わってくるピーチーを、探してあげるという約束です。

だから、もしも別の子を迎えるとしても、ピーチーが去って以降に生まれてきた子にしたかったのです。そうしなければ、生まれ変わりを探す約束を、破ってしまうことになります。

次の子が、ピーチーの生まれ変わりでなければ、絶対に嫌だというつもりはありません。 しかし、探してあげるという約束はだけは、守らなければならないと思いました。
探してみて「この子かな?」「この子だったらいいな」と思えたら、 きっと気が済むのです。そう思って迎えた子ならば、その子がピーチーでなくても、きっと全力で愛せるでしょう。

そんなことを考えながら、3年が過ぎたのでした。

 

 ある日、送られてきた写真

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幼いころのピーチー 2
 

先日、知り合いから1枚の写真が送られてきました。
生まれたばかりの仔犬で、扉の写真がそれです。
ピーチーと同じように、白い毛で、左目にだけ小さなアイパンチがありました。

ピーチーに似ているとは思いませんでした。
しかし――、ほんの少しだけ、アレ!っと思いました。これまでにも何度か写真が送られていましたが、そんな気持ちになったのは初めてでした。

聞けば、新生児は感染症に罹る恐れがあるので、会えるのは1か月後だそうです。
知り合いからは、「もしも迎えるつもりなら、早く決めた方がいいですよ」と言われました。

ネットの時代になってから、会わないで犬を決める方が増えているのだそうです。だから、もしも迎えるつもりがあるのならば、早く手を上げないと、よその子になるかもしれないよという忠告でした。決してこちらを煽るつもりの話ではありません。

確かに、ブリーダーさんが遠くにいると、会いに気いくだけで旅行になってしまいますから、ネットだけでワンコを決めるというのは、不思議ではありません。

しかし自分の場合は――
やはり、会わずに決めるのには抵抗がありました。
なにしろ、ピーチーの生まれ変わりが第一希望なのですから、簡単に済ませたくはありません。

色々と考えた末、次のように決めました。

生後一カ月になってから会いにいってみよう。そして、その場でその子にピンと来たら、そこで初めて迎えるかどうかを考えよう。

もしもその1カ月の間に、どこか余所の家の子になってしまったとしても、それはそれで運命です。きっとうちにくるご縁がなかったということです。うちの奥さんもそれが良いと言いました。

 

 ブリーダーさんに会いに行こう

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幼いころのピーチー 3
 

そんな風にして10日ほどが過ぎたのですが、何故だかあの子の写真が、妙に頭にちらついて仕方がありません。1カ月後に会いに行くと自分で決めたくせに、どうにも気になってしまうのです。

そこで、無理を承知で、1つ賭けをしてみることにしました。
そして写真を送ってくれた知り合いに、「子犬には会えなくていいので、せめてブリーダーさんと話したい」と伝えたのでした。

少し話が変わります。
皆さんは『犬の十戒』ご存知でしょうか?
「犬と私の10の約束」として紹介された、有名な詩です。犬と飼い主の適切な関係について記されたものですが、実は原典はノルウェーのブリーダーが残したもので、元々は犬を送り出す側の心情です。

大切な子犬を、この人に託して良いだろうのか?
この人はきちんと最後まで、子犬の面倒を見てくれるのか?
ブリーダーのそんな思いを綴ったものが、『犬の十戒』なのです。

このことを知ってから、筆者はいつか犬を迎える日が来たら、そんなブリーダーから、迎えたいものだと思っていました。だからまずは、ブリーダーさんだけにでも会っておきたく思いました。

 

 ブリーダーさん訪問の朝に起きた、不思議な出来事

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ブリーダーさんに抱かれる仔犬
 

ブリーダーさんとは、数日後にアポイントがとれました。

犬舎は埼玉で、我が家は横浜なので、片道2時間半ほどの道のりです。
『子犬には会わせることはできない』と、もう一度念をおされましたが、「それで結構です」と返事をしました。

さて、ブリーダーさんに会う日のことです。
ちょっとだけ不思議なことが起きました。
家を出る時の出来事です。

玄関に続く廊下の真ん中に、ピーチーの毛が1本落ちていたのです。
去ってから3年。もう毛を見つけることはほとんどなくなっていたのに。
「何か言いたいのか、ピーチー?」
そう思いながら、玄関の扉を開きました。

 

 思いもしなかったこと

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生まれたばかりの仔犬は、目も耳も開いていない
 

ブリーダーさんと会ったのは、犬舎ではなくてご自宅でした。
犬舎には菌が持ち込まれるのが怖いので、原則見学も行えないのだそうです。

さて、いよいよブリーダーさんとの面会です。
当然ながらその方もブルテリア好きの方で、女性でした。

お父様が獣医さんで、一族でブリーダーをなさっているそうです。
約束の1時間を過ぎて話し込みました。
犬が好きなんだなあと思い、良い方だなあと思いました。

そして――
実はこの日――、思いもかけなかった出来事がありました。

何とあれほど会えない念を押されていた子犬に、会わせてもらえうことができたのです。

目の前に連れてこられたその子は、まだ生後2週間程で、目も耳も開いていません。
ブリーダーさんが大切に毛布にくるんで抱いていて、当然、触ることはできません。
弱々しい――
でも、しっかり生きていました。

 

 その日の夜に、もう一度不思議なことが

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君はピーチーかい?
その子を見て、”ピンと来る”という経験をしたかったのですが、それはありませんでした。
でも、その子にすることにしました。
ピンと来るのは、もっと後かもしれませんし、ずっとピンとこないかもしれません。
それでも良いと思いました。

ブリーダーさんに会えて、腑に落ちた感じがしました。

家に帰ってから、また不思議なことがまた起きました。
その仔犬を迎えると決めて、ブリーダーさんにメールを書いている最中のことです。
ふと気が付いたら、キーボードにまたピーチーの毛がくっ付いていたのです。
「いいんだね、ピーチー?」
そう思いながら、送信ボタンを押しました。

 

――もう一度、犬を飼うということ――

文:高栖匡躬
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まとめ読み|ようこそペットロス
この記事は、下記のまとめ読みでもご覧になれます。

 

 我が家がピーチーを迎えたときのこと

偶然に手に入れたマンション。
引っ越してからわかったのですが、なんとそのマンションは、当時にしては珍しい、ペット可の物件でした。

マンションがペット可とだ気が付いたのですが、すぐに犬を飼おうとはなりません。命を預かるのですから覚悟が大事です。最後まで面倒が見られるかな?
――まだまだ迷いがありました。

ペットショップからの電話で、予約していたアイパンチのブルテリアがお店に来たことを知った筆者。あまりにも突然で、心の準備がまるでありませんでした。

 犬を飼うということ

サイト名なのですが、記事として書いたことがありませんでした。
沢山の意味を込めた名です。同名のTV番組が有名なのですが、それはそれ。
出会いから別れ、喜びも悲しみも、全部詰まっている言葉ですね。
その昔、谷口ジロー氏の『犬を飼う』のように、犬を愛そうと思っていました。
そしてピーチーがきました。

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