うちの子がうちにくるまで|No.40
犬と暮らしたことが無かった作者。
ブルテリアという犬種は闘犬のイメージが強くて、怖い犬だとばかり思っていました。
しかし作者は友人の愛犬ボブを見て、すっかりに虜に。
とにかく可愛くて、従順で――
そのボブに子供が生まれたと聞き、作者はすぐに会いに行きました。
思い思いに歩き回る仔犬たち。
ふと気づくと、作者の足元には、ずっと作者について来る子がいました。
抱き上げてみた作者――
その子は、優しい目でじーっと作者の顔を見たのでした。
ブルテリアってどんな犬?|昔は闘犬だった犬と聞いている|怖い犬なの?性格は?|初めて飼うのが不安|家には小さな子供がいるんだけど|経験者の話が聞きたい
今日は我が家の愛犬、ブルテリアのチャベスが来るまでのお話をしたいと思います。
少々お付き合いください。
チャベスは私にとって、生れて初めての犬でした。
もともと私は犬が大好きで、小学生の頃から捨て犬を持ち帰っては、親に叱られていました。マンションだったので、家では犬を飼うことができなかったのです。
因みに私は戌年生まれでして、前世は犬だったと信じております(^^;
チャベスとの出会いの前に、チャベスのお父さん、ボブとの出合がありました。
それは、ブルテリアという犬種との出合いでもあります。
私は今、京都に住んでいるのですが、ボブは同じ京都で友人が飼っていた雄のワンコでした。私はボブと出会ってから、ブルテリアの印象がすっかり変わりました。
以前は闘犬のイメージが強くて、怖い犬だと思い込んでいたのです。しかしボブはお母さんに忠実で、とにかく可愛い子でした。私は印象が変わったどころか、ブルテリアという犬種に一目惚れをしてしまったのです。
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しかしその友人はしばらくして、遠く宮崎に引っ越してしまいました。
「もうボブには会えないのか」
縁遠くなってしまったブルテリア。しかしそうではありませんでした。実はその引っ越しが、チェベストの出会いに繋がっていくのです。
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ボブは宮崎に行ってから、リンダというお嫁さんを迎えました。
リンダが二回目の出産をしたときのことです。友人から出産の連絡がきて、私は生まれてきた子たちに会いに行こうと思いました。
ボブの子を、うちに迎えたいと思ったのです。
主人に相談したら、すぐに「いいよ」と言ってくれました。
私達夫婦は結婚してから、なかなか子供がきなかったので、きっと主人が私のことを気遣ってくれたのだろうと思います。
宮崎には新幹線とレンタカーで、2人でいきました。
もうすっかり、うちの子にするのが前提でしたから、会ってから決めようというのではなくて、どの子にするかを決めに行く感じです。
現地に着くと、早速ベビーたちに対面です。
友人のお宅は宮崎の田舎のほうでしたので、友人はわざわざ市内まで、車で出てきてくれました。待ち合わせたのは、公園の駐車場です。
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お父さん犬のボブと、お母さん犬のリンダ、それともう家族が決まってる2匹の子はお留守番でした。やってきたのは4匹の子犬たち。
車から次々と下ろされると、皆思い思いによちよち歩きました。
どの子も分かりやすいように、首には色違いのリボンを巻いていました。
まだリンダのお乳をもらっている頃なので、月齢は1カ月くらいでしょう。
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私は女の子を家族に迎えたいと思っていましたので、ピンクのリボンを付けた女の子を真っ先に抱っこしました。
「この子を家族にしよう」
そう決めかけたときでした。ふと足元を見たら、黄色いリボンの男の子が私の足元にいて、離れようとしないのです。
ちょっと足を動かしてみると、その子はちょこちょこと、私に付いてきました。
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私はピンクの子を主人に預け、黄色の子を抱き上げました。
「なんて優しい目をしているの」
それが私の第一印象でした。
その子はその優しい目で、じーっと私の顔を見て、じーっと黙って抱かれてました。
今もその時の写真は、大事に飾っています。
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『もう離れたくないよ』
そんな気持ちが私の心の中で、どんどん大きくなっていきました。『この子にしよう』と決めるまではきっと一瞬です。あの時のことは、今でもはっきり覚えています。
「この子に決めた」
私は自分の思いを友人に伝えました。主人も反対しませんでした。
その瞬間に、その子はうちの子になりました。
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本当はそのまま連れて帰りたいくらいでした。しかしまだまだ、お母さんや兄弟と過ごさなければならない大事な時期です。
私は名残惜しい気持ちを我慢して、子犬を友人の手に戻しました。
京都への帰りの飛行機では、主人とあの子につけてあげる名前の話でもちきりです。宮崎に行く時にも少しは考えていたのですが、女の子想定の名前ばかりです。
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結局名前は、主人が『チャベス』と決めました。
主人は趣味でボクシングをやっていたんですが、ボクサーでロペスとチャベスという強い選手がいるのだそうです。強い仔に育ってほしいという願いを込めた名前です。
もちろん私は、反対しませんでした。
チャベスをうちの子に選んだのは私。そのチャベスに名前つけたのは主人です。
チャベスが本当にうちにやってきたのは、それから1か月後ほど経ってからです。
母親のお乳を卒業して、離乳食になって、予防接種などが終わってから、友人が飛行機で連れてきてくれました。
家にはケージを用意して待っていたのですが、チャベスは結局そこに一度も入らずで、チョコチョコ動いていました。親元離れて心細いのではないかと心配していたのですが、家にもすぐに慣れてくれました。
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チャベスは良い子でしたが、しつけには苦労しました。
最初のうちは、本当にトイレなどが大変で――
しかも、そうこう言ってる間に私が出産したので、とにかくバタバタでした。
1週間の入院生活でしたが、初めてチャベスと離れて過ごし、私は子供を産んだのにも関わらず、寂しくて泣いたことを思い出します。
主人が動画を送ってくれてたのですが、なんとそれはチャベスが、私が履いていたスリッパを抱いて眠っている姿でした。
病院から戻ったときのことも書いておきましょう。
私はチャベスが飛びついてきて、「おかえり!」と言ってくれるのを期待していたのですが、残念ながらチャベスは寝ていました(^^;
な~んだ!と拍子抜けしたのを覚えてますが、それもまたブルテリアらしいです。
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チャベスは初めて見る人間の赤ちゃんの匂いを、ずっと嗅いでました。
当初は、子供への授乳のとき、昼寝のときは、チャベスが一階(階段を上がれなかった)で、子供は2階と別にしてたんですが、チャベスが階段の2段目辺りで、クンクンと毎日泣き続けるので、思い切って授乳も昼寝も、1階にしてみようと思いました
試してみるとチャベスは――
何の心配もなく、母乳のときは大人しくして、子供が昼寝したときは添い寝してくれてました。
子供が1歳の時、チャベスにもたれかかり寝てしまったことがありました。
チャベスもゴロンと横になりたかったでしょうが、もたれてる子供が起きないようにと、チャベスはじっと我慢をして、座りながらウトウトしてました
犬は飼い主に子供が生まれると、赤ちゃんに母親を私を奪われた嫉妬することがあると聞いたことがあります。しかし、チャベスにそれを感じたことは、一度もありませんでした。
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チャベスは楽しい子だったので、ご近所の皆さんにも沢山可愛がってもらってました。
そうそう、子供が1歳になった頃にこんな事もありました。
チャベスを連れてベビーカー押しながら散歩に出かけたときのことです。大きな野良犬が、こちらに向かってきたんのですが、チャベスがその犬に向かっていったんです。首輪がスポッと抜けて走って行ってしまって――
気が気じゃなかったのですが、その野良犬のお尻をかぶりと噛んで、チャベスだけ戻ってきました。 チャベスが噛んだのは、そのときが最初で最後でした。 あの頃は、チャベスがまだ2歳にもなっていない頃です。
勇気を出して、子供を守ってくれたんだと思いました。
その後我が家には、次男が誕生しました。
チャベスと子供たちのことは、私も私のまわりの者も、三兄弟のように思っていました。でも、チャベスはどう感じていたのでしょうね?
兄弟というよりも、まるで母親のような立場で、2人の息子を慈しんでいるように感じました。同時に私の夫のような気分でいたのかもしれません。
一度夫が、私の肩もみをしてくれていたときのことですが、滅多に吠えないチャベスが、夫に吠えてましたからね(^^;
そんな人間臭いチャベスですが、2年前の4月1日に、沢山の思い出を置いて、お空に行ってしまいました。
その時のことを思い出すと、私は今でも胸が絞めつけられます。
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その頃チャベスは、病気の痛みで苦しんでいて、緩和のために入院をしていました。
私と夫は悩んだ末に安楽死を決意し、”その時” までは家にいさせてあげようと、迎えに行きました。
そしてチャベスを車に乗せて、2分ほどしたときの事でした。
チャベスは私の膝の上で、一度だけ吠えて、旅立ってしまったのです。
開いたままの目は、じっと私を見つめてました。
それはまるで「家に帰りたかった」「家族皆に会いたかった」というような目でした。
火葬場でのこと――
私はお別れがとてもつらかかったです。でもそんなとき、予期せぬことに次男がワンワンと大泣きをしました。もうそれをなだめるのに必死で、私は泣けませんでした。
それがチャベスとの、最後のお別れでした。
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チャベスは
子供たちにされるがままでした
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チャベスを想うと、伝えたいことがたくさんあります。後悔していることもあります。もう一度会いたいです。
どうかチャベス――
私がお空に行くまで、待っていてね。
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私が大好きな写真です
――チャベスがうちにくるまで|おしまい――
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――うちの子がうちにくるまで・次話――
猫のペルが10歳で去った時、我が家の悲しみは大変なものでした。
5年が過ぎた頃――
「いつかワンちゃんと暮らせるといいね」
が、夫婦の会話になっていました。
ある日私は夫に、
「ちょっとペットショップに行ってみようよ!」と声を掛けてみました。
――うちの子がうちにくるまで・前話――
夫婦共に柴犬が好きでした。先住犬もとても可愛いかったのですが、もしも2匹目を飼うことがあれば、柴犬にしたいと思っていました。未来の夢として――
ある日のこと、2人は偶然に、柴犬専門店をみつけました。
中に入ってみると――
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――うちの子がうちにくるまで、第1話です――
昔からいつかはワンを飼いたいと、ずっと夢見ていたんです。
でも、夢と現実の差はでっかいですよね。結局はずっと、実現できずじまい。
――そんな夢を叶えた飼い主さんのお話。
犬との出会いは運命に似ています。
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うちの子がうちに来るまで
我が家が犬を迎えるまでの話