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【グレインフリー神話の崩壊?】常識はいつも覆される ~基本は自己責任~

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フードの常識、疑ってみよう

撮影&文|高栖匡躬
ドッグフードの常識を疑ってみよう(3/3)

これまで2話に渡って、ドッグフードにまつわる常識を検証してきました。
本シリーズ記事も今回で最終話です。今回はシリーズのまとめを行うと共に、記事を書く発端となった、『グレインフリーのフードに対する懸念』を取り上げます。

ほんの少し前まで、絶賛されていたグレインフリーですが、米国FDAが心臓疾患に関する懸念を表明してから、少し雲行きが怪しいです。

しかし、懸念される状況であるにも関わらず、それらグレインフリーフードの推奨記事が何も動いていません。検証も反論もせずに、相変わらずフードを推奨している状態です。これって良い事なのでしょうか?

せめて懸念が生じたことくらい、公表すればいいのに――

 
こんな方に
愛犬のフード選びで悩んでいる|ネットの情報は信じられるのか?|色々な情報が氾濫していて、何を信じていいか分からない|プレミアムフードはそんなにいいの?|穀物は体に悪いの?|野菜は体に悪いの?|グレインフリーのフードの本当の評価は?|情報を俯瞰した解説が欲しい

 

【目次】

リーズナブルなフードは、本当に良くないものか?

ネット記事の中では、安価なフードはほとんどが最低な評価を受けています。
例えば先に挙げた『ビタワン』や『愛犬元気』などがそうです。

しかし、その理由を読むと、穀物を使っているとか、ミール・ミートを使っているとか、4Dミートを使っているとかで、根拠を示す出典もデータもありません。
まるで毒物であるかのように、『安全性に問題がある』とか、『健康を害する懸念がある』とまで書いているのにも関わらずです。

リーズナブルなフードには、プレミアムフードにはないメリットがあります。
それは”安価”ということです。

平均寿命15年の犬に毎日食べさせる食事ですから、”安価” はとても大きな ”機能” と言えます。

因みに、比較記事を見ると、”コストパフォーマンス”という訳の分からない言葉が使われています。コストは誰が見ても明らかな客観的な指標です。しかし、パフォーマンスは恣意的に変わるもので、明確な基準がありません。つまり評価者の気分のようなものです。”コストパフォーマンス”と書かれると、なんとなくごまかされたように気になってしまします。

前項にも書きましたが、時間の評価を受けた安全性も、客観的な事実ですね。
もしもフードの評価記事や、ランキング記事に、”長期ランニングコスト”とか”客観的事実に基づく長期安全性”のような指標があれば、フードに関するイメージは、がらりと変わるような気がします。

尚、筆者は決して『ビタワン』や『愛犬元気』をアピールしている訳ではありません。
筆者の愛犬ピーチーは、子犬の頃から安価なフードから順に、かなりの数を試してきました。『ビタワン』も『愛犬元気』ももちろん試しました。
軟便になったり、下痢をしたり、体中に発疹が出たフードもありました。

結局、体に合ったのは、ヒルズのサイエンスダイエットでした。
大食いな子だったので、最終的には肥満犬用のカロリーの低い商品を、1.5倍量与えるようになって安定しました。

 

 グレインフリーフードに警鐘

先日筆者は、驚くべき記事を目にしました。
それは『米国のFDAが、グレインフリー(穀物不使用)フート16ブランドと、ペットの心臓疾患との因果関係について警鐘を鳴らした』とするNBCニュースの記事です。 

以下、参考までに出展記事をリンクしますが、英語の部分は読み飛ばしていただいても概要が分かるように書いていきます。

元の記事(英文)はこちらです。

『FDA names 16 brands of dog food linked to canine heart disease』
FDAは、犬の心臓病に関連するとみられるドッグフード16ブランドを挙げました

この記事が引用している一次情報は、FDAのレポートです。

『FDA Investigation into Potential Link between Certain Diets and Canine Dilated Cardiomyopathy』
FDA|特定の食事と犬の拡張型心筋症の潜在的な関連性に関する調査

www.fda.gov

FDAはアメリカ食品医薬品局の略称で、食品、医薬品、化粧品などの安全性の検査、許可、摘発を行う政府機関です。これらの分野で仕事をした方(特に貿易関係)はご存知と思いますが、非常に大きな権限と、厳しい評価基準を持つことで知られています。

NBCは言わずと知れた、全米三大ネットワークの1つ。

記事はリンダ・キャロルという執筆者の署名記事で、FDAの上記レポートに、独自の取材を加えて書かれたものでした。リンダ・キャロル氏は、NBCニュースの健康記事のレギュラー執筆者で、ロイター・ヘルスにも寄稿しているようです。

Linda Carroll
Linda Carroll is a regular health contributor to NBC News and Reuters Health. She is coauthor of "The Concussion Crisis: Anatomy of a Silent Epidemic" and "Out of the Clouds: The Unlikely Horseman and the Unwanted Colt Who Conquered the Sport of Kings."

話を元に戻します。
筆者は健康系(特にドッグフード)のニュースは疑り深く読むのですが、本記事は発信元と情報源がしっかりしていたので、安心して読み始めました。
そして読み進めて驚きました。
なぜ驚いたかと言うと、16ブランドものフードをFDAが名指ししていたことです。

続けて読んでみて、もっと驚きました。
はじめのうちは、政府機関が名指ししたということなので、その16ブランドは心臓疾患との因果関係が確定したのだろうと思ってました。
しかし記事を読んでみるとそうではなく、まだ ”疑わしい” という段階のようでした。
ここで更に驚いたわけです。

疑わしい段階でも名指しをするというのは、恐らくそれがクロである確率が高いものであり、しかも緊急に消費者に警鐘をならさねばならないものだということです。

記事に書かれた16ブランドを、そのまま記載しておきます。
幾つかは筆者の知っているブランドで、日本に代理店があるものです。
詳細までわかりませんので、個々には言及しません。そのままで記載します。

(尚、FDAは500以上の報告を調査しており、上から順に報告例が多いものです。リストの下に、FDAが公開したグラフも添付しておきます)

Acana
Zignature
Taste of the Wild
4Health
Earthborn Holistic
Blue Buffalo
Nature’s Domain
Fromm
Merrick
California Natural
Natural Balance
Orijen
Nature’s Variety
NutriSource
Nutro
Rachael Ray Nutrish

FDAが名前を公表したドッグフード

心臓疾患との因果関係で、豊国の多いフード

リンダ・キャロル氏は、FDAの見解について、複数の専門家に意見を求めています。

ポイントだけを書くと、まだ断言はできないものの、グレインフリーのフードで、穀物に代替するものとして使われている、エンドウ豆、ひよこ豆、レンズ豆が共通しており、成分として問題がある可能性があるということ。
これはFDAの見解と合致しています。

記事の最後でリンダ・キャロル氏は、コーネル大学獣医学部、臨床科学科の獣医心臓病専門医である、ブルース・コーンライヒ博士が、慎重な言い回しをした上で、ペットの飼い主たちに「長年の歴史を持つ会社が生産するブランド」に切り替えることを提案していると語ります。

恐らくはそれが、行きついた結論なのではないかと思います。

リンダ・キャロル氏の記事より抜粋

Kornreich suggests pet owners switch to a brand “produced by a company with a long-standing history.”

前記事でも指摘したのですが、この16種類のフードのうちの幾つかは、ネットにあるドッグフードのランキング記事の多くが推奨してきたものです。日本にも多くのユーザーがいると思われます。

気になってそれらの記事を見てみましたが、当該ニュースには何ら触れることなく、相変わらずランキングの上位に君臨していました。

日本代理店のサイトは、全てを見たわけではありませんが、やはり何も触れていませんでした。

尚、FDAが指摘しているのはグレインフリーのフードであり、それ以外のものには言及がありません。リストのトップにあるアカナのブランドは、グレインフリーのラインナップは多いのですが、それ以外(グレインフリーでない)のラインもあるようです。

 

 結局フードは、どうすればいいのか?

色々とドッグフードの課題や、フードの紹介記事、ランキング記事の抱える問題点を指摘してきました。ではどうするのかということを最後にまとめます。

飼い主が肝に銘じておかなければならないのは、結局のところ、誰も正解を知らないのだということです。ドッグフードを開発しているメーカーの専門家も、獣医師たちも、問題が起きてからそれを知るのです。

専門科がそうなのですから、素人には分かる訳がありません。
そこを出発点として、それならばどうやって素人が、愛犬や愛猫の健康を守れるのかという考え方をしていけば、自ずと答えは出てくるように思います。

何度も書いているように、フードローテーションが素人でもできる、有効にリスクを減らす手段だと思います。しかし、そのやり方には工夫が必要です。
幅広い視野を、そのローテーションに取り入れることです。

例えば、グレインフリーを基準にして、その種のフードばかりでローテーションをしてしまうと、リスクは減らないのです。

それから、ネットのランキング記事は、商品を調べる時の参考にはしても、当てにするのはやめた方が良いでしょう。フードの記事を書いているライターのほとんどは素人のようですから、聞きかじった情報や、果ては仲間内の口コミ情報(ただの主観での感想)だけでランキングが出来上がっているものが多いです。
結局、我々の知識と、そう変りは無いのです。

そして、フードローテーションの1つには、長年(少なくとも犬猫の平均寿命である15年以上)販売されているフードを取り入れるのが良いと思います。

これは長期の安全性という観点からです。歴史的な評価を受けているフードは、最高のものではないかもしれませんが、長く食べても大丈夫と言う、とても大切なことが実証されていると考えれば良いと思います。

 

 基本は自己責任 - 誰かの考えを鵜呑みにしないで!

フード選びには、健康面以外でも考えておくべきことがあります。
それは入手性です。

最近では災害が多発しています。万が一の災害時の避難生活でも手に入る、ありふれたフードにも慣れさせておくと良いと思います。

これらを具体的に考えると、例えば以下のようなコンセプトで、3つのフードのローテーションをさせるのも1つの手ですね。

健康→長期安全→入手性

もっと健康面を大事にと言う場合は、つぎのような組み合わせも考えられます。

健康A→長期安全→健康B→入手性→健康C

健康A、健康B、健康Cのフードは同じものでも良いし、違っても良い。
こんな風に考えていくと、組み合わせは無限に広がります。実際に与えてみて、愛犬の体に合うものを選択していけば良いと思います。

本当は本記事を、『我が家だったらこうする』というようなまとめ方をしたいところですが、それはやめておきます。筆者の考え方に沿っても、それが失敗する可能性があるからです。

それでも参考までに、たった1つだけ。

我が家の先代犬のピーチーは、『白いご飯に水をかけて、茹でたささみをトッピング』というご飯も時々食べさせていました。それは警察犬訓練学校に通わせたときに、訓練士の方から薦められたものです。手作り食とはとても言えないような、そんなお手軽なものも、ローテーションの一角に入り得るのです。

とにかく、無限に組み合わせがあるのです。
どうか、皆さん独自で、我が家の方法を見つけ出してくださいね。

 

――ドッグフードの常識を疑ってみよう(3/3)おしまい――

文:高栖匡躬
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 ▶ 高栖 匡躬:猫の記事 ご紹介

――前話――

フードの記事では、一般人の知らない言葉が常識的だったりしますね。
防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤などは、初めからまるで毒物扱いです。
対極にヒューマングレードのように、盲信されるものもある。
それって本当なの?

――本連載の1話目です――

ネット情報が伝えるフードの情報は、落ち着いて考えると矛盾だらけ。
一体何が正しいのか分からないですね。
常識として語られていることを、一つ一つ疑問点として取り上げてみます。

――前シリーズ記事の1話目です――

ドッグフードの疑問|穀物と野菜は不要な食物か?

まとめ読み|ドッグフードの常識、本当?
(この記事は、以下のまとめ読みでもご覧になれます)
ドッグフードをどのように選んでいますか?
ネットで検索すると、
どの記事も似たような内容ばかり。
食べちゃいけない成分が満載。
そして、見たことも無いフードが妙に高評価。
――何故?
妙な違和感を覚えて調べ始めたら、驚いた!

www.withdog.site

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