うちの子がうちにくるまで|No.49
子供の頃、家に川上犬(かわかみいぬ)がいた作者。
しかし結婚してからは、犬のいない生活が始まりました。
それから18年――、作者が離婚をして取り戻したのは、犬と暮らせる自由でした。
「よし!飼おう!」
一大決心をして探したのは、ずっと心に残っている日本犬。
作者は、柴犬を家に迎えることにしたのでした。
柴犬が好き|柴犬を飼ってみたい|柴犬ってどんな犬?|今まで犬を飼ったことがない|初めて飼うのが不安|皆さんどうやって飼うのを決めるの?|経験者の話が聞きたい
ずっと心には日本犬がいました
今日は我が家に思い出のワンコ、さくらが来るまでのお話をしたいと思います。
私と犬との出会いは、中学生の頃に溯ります。
ある日父が、川上犬(かわかみいぬ)を貰ってきて、飼い始めたのです。
川上犬はご存知ですか? ニホンオオカミの血が混ざっていると言われる日本犬です。
それから私の実家は、”当たり前に犬がいる家” になり、何匹かの犬を飼いました。
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やがて私は結婚して、家を出ました。
中学生以来初めての、犬がいない生活がそれから始まるのですが、当時は犬を外飼いするのが常識だった頃だったので、そんなに寂しいとは思っていませんでした。
主人は犬が嫌いではありませんでしたが、取り立てて犬好きというわけでもありませんでした。しかし嫁ぎ先の義母は犬嫌いでした。
なので犬を飼いたいという思いを胸に秘めつつ、義母に逆らうことも出来ずで、結局犬のいない生活は17年続くことになりました。
私に犬との生活が戻ってきたのは、18年目のことでした。
離婚です。17年の結婚生活に終止符をうちました。
犬がいない生活をしてみて実感したことは、私は犬好きなのだということ。
ずっと前、子供の頃から、私は犬が大好きだったのです。
離婚によって取り戻したものは、犬と暮らせる自由でもありました。
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息子との二人暮しが始まると、私は早速息子に「犬が飼いたいんだけど」と相談しました。当時息子は16歳。私ほどでは有りませんが犬好きです。
「良いんじゃない」
という一言が、その返事でした。
それから私の犬探しが始まりました。
とは言うものの、私が住んでいた場所は田舎ゆえに、ペットショップもありません。
しかし都合が良いことに、当時は近くのスーパーに月1くらいで、出張ペットショップが来ており、私はその度に覗いてました。
そこはペットショップと言っても、小動物屋さんのようなもので小鳥とかうさぎ、モルモットが中心です。仔犬は居ない時の方が多かったのですが、それでも何もないよりましでした。
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私が探していたのは柴犬です。柴犬の赤ちゃんは可愛くて、プリプリの巻き尾が大好きでした。また私が柴犬が好きだったのにはもう一つい理由がありました。私の頭の中には子供の頃に実家で飼った、川上犬がいつもいたのです。思い出の中のその子はとても綺麗で、目はブルーグリーンに光っていました。
しかし、川上犬にはとても手が出ません。川上犬にそっくりで、かつシングルの家計に負担にならない位の経費で飼えるとしたら、柴犬かなと考えました。
それからも私は、出張ペットショップに足を運びましたが、柴犬がやって来ることはありませんでした。しかしもっと積極的に探すという決断までは、できないでいました。
そんな私ですが、ある日突然に、どうしても犬を飼いたくなりました。
勤務先のお店(ガソリンスタンド)にお客さんが連れてくる、ワンちゃんがあまりにも可愛すぎて(笑)
「よし!飼おう!」
と一大決心をしたのです。
早速私は、出張ペットショップの業者さんに電話をして、希望の子を探してもらうことにしました。
「家の中で飼うので柴犬の女の子をお願いします」
と伝えました。
それからしばらくして、私の電話のベルが鳴りました。
相手は出張ペットショップの業者さん。それは待ちに待った電話でした。
「ご希望の子が見つかりました」
と先方は仰いました。
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後日、私たちは双方の中間地点で落ち合いました。
今も私は、その日の事を鮮明に覚えています。
――1999年12月15日――
その日は平日だったので、私が1人で車を運転して、現場に向かいました。
雪が降っていて、周りは少し白くなってました。
その仔犬はダンボールに入っていました。
少しだけ覗かせてもらうと、その子は枯れた声で鳴いてました。
聞けば親と離されて間もないそうで、鳴きすぎて声が枯れてしまったのだそうです。
その子の姿を見て、思わず「可愛い」と声が出てしまいました。
先方も「この子は良い子だよ」と言ってくださいました。私にはそれがとても嬉しかったです。
今思えば、その子ははじめから、家の子になるのが決まっていたように思います。
私は飼うとか、飼わないとか悩んだり、考えたりする以前に、もうその仔犬を当たり前のように受け入れていました。
そして当たり前のように、子犬は小さな段ボール箱に入ったまま私に手渡されました。
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さて帰路ですが、私は箱の中が気になって気になって、覗いてみたくて仕方がありませんでした。しかし運転中にそんなことはできませんし、途中で車を停めるよりも一刻も早く家に連れて帰りたい気持ちです。ろうじてその誘惑を抑えながら、家路を急いだのでした。
家に着いて箱を開けると、子犬が顔を出しました。
「やっぱり可愛い!」
しかし、あまりにも犬臭い。
私は速攻シャンプーをしてしまいました。
そして肝心の名前なのですが、近所の友人が『殿』という名のシーズーを飼っていたので、最初は『姫』にしようと思いましたが、途中で気が変わり、和風な名前のなかから『さくら』としました。
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こうして私は念願の、犬と暮らす生活を手に入れたのでした。
自分で責任を持って飼う犬としては、さくらが初めてです。
さくらはお利口さんで、すぐになつきました。
私はもう嬉しくて仕方なくて、夜鳴きするさくらをベットに入れてヨシヨシしながら一緒に寝ました。
本当にさくらは美人で、無駄吠えもしない良い子でした。
ここだけの話ですが、ペット禁止の住宅だったので、その意味でも助かりました。
息子は――
仔犬ゆえに、髪や足の指に噛み付くので苦戦していましたね。
さくらが来る前には、犬と暮らすための道具類が全くなかった我が家。
最初は業者さんがつけてくれたケージがるだけでしたが、後から少しづつ揃えていきました。
こんな風にゆっくりゆっくり始まった、私の犬との生活ですが、さくらのお陰でとても幸せな日々でした。
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さて、私に幸せを運んできてくれたさくらですが、いまはもうここにはいません。
18年18日の犬寿を全うし、さくらは2017年11月20日に、虹の橋に旅立ちました。
いつの間にか、犬を想い続けた結婚生活よりも、離婚してからさくらと暮らした時間の方が長くなっていました。
――さくらへ――
今回改めて、さくらとの日々を思い出しました。
いなくなってから、もうすぐ2年も過ぎるのに、貴方の存在はとても大きくて――、大き過ぎて、涙が出ちゃうよ😢
いつも2人で過ごしたよね。
そして新しい家族のお嫁ちゃんと、3人の孫っちとの楽しい日々も思い出すよ。
孫っちが成長すると、一人ずつとお散歩デビューもしたよね。
貴方は最初、チビたちを引き連れて歩いていたけれど、1番下のチビがデビューする頃には、おばあちゃん。それまでとは逆に引っ張られて歩いたんだよね。
16歳を過ぎて少しずつ出来ない事が増えていったけど、おばあちゃんになったさくらはとっても愛しかった。私が家に帰ると毎日お迎えをしてくれてたのに、耳が遠くなって気が付かなくなって、クルクルと徘徊したり、夜鳴きをしたり、オムツをしたりって、赤ちゃんにかえっていったね。
寝たきりになっての3ヶ月も、毎日お母さんの帰りを待ってたよね。
寂しかったよねゴメンね……
ご飯が食べれなくなって3日ほどしてからだった。
その日は会議があったから、どうしても休めなくて、
「明日はお休みするからね」
と声掛けて仕事に出かけたんだった。
帰った時には、さくらは1人で虹の橋に旅立ってしまっていたね。
1人にしてゴメンね、お母さんの1番の後悔です。
私が虹の橋に行ったら――、抱きしめ足りなかった分、たくさんたくさん抱きしめてあげるよ。
貴方がいない悲しい日々――
だけどね――
お母さんは少しずつ元気になって、新しい赤ちゃんを迎えたよ。
紅ってヤンチャな女の子だよ。
毎日さくらの事を思い出しながら、楽しい日々を過ごす事が出来るようになったよ。
引きこもりしてたけど、紅と一緒にいつもの散歩道歩いてるよ。
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こんにちは
紅です
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さくら、本当に楽しい日々をありがとう。
お母さんはもう還暦になるから、紅が最後の子です。
後悔しないように、楽しい日々を過ごすからね。
虹の橋に行くまで待っててね。愛してるよ💕
――さくらがうちにくるまで|おしまい――
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――うちの子がうちにくるまで・次話――
愛犬の名は、菅原文太さんに因んだもの。
体調を崩した私を励まそうと、家族に迎えた犬でした。
ちんくしゃだった小さなトイプードルは、やがて名前通りの犬に育っていきました。
頑固で短気で喧嘩ぱやいのですが、女房のさくらには優しい犬に。
――うちの子がうちにくるまで・前話――
出会いは突然でした。
1年前に飼い始めたぶん太で、トイプードルの魅力にはまってしまった私。おやつを買おうと入ったペットショップに、その子はいました。
レッドカラーの女の子。美人系でなくてかわいい系の――
私の心はもうメロメロでした。
――うちの子がうちにくるまで、第1話です――
昔からいつかはワンを飼いたいと、ずっと夢見ていたんです。
でも、夢と現実の差はでっかいですよね。結局はずっと、実現できずじまい。
――そんな夢を叶えた飼い主さんのお話。
犬との出会いは運命に似ています。
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うちの子がうちに来るまで
我が家が犬を迎えるまでの話