老犬アルバムの思い出
Review
カテゴリー:エッセイ
作者:樫村 慧
老犬が大好きだ。
ゆっくりと、時にノロノロと、ヨロヨロと歩く老犬を愛おしいと思う。
しかし、はじめからそうだったわけではない。
自分で犬を飼いはじめた時、老犬の可愛さは分からなかった。目の前のいたずら盛りの子犬のことで精一杯で。散歩のお供で疲れ果てた。
やがてその子は7歳になって、世の中では老犬の部類に入るようになってもまだまだ元気で、そのときもまだ、周囲にいる老犬の存在は、ほとんど意識をすることもなかった。
10歳を過ぎてからだろうか。当たり前のことが、1つずつできなくなっていった。
愛犬が歳をとったことを実感した。
若くて、活き活きしていた愛犬を思い出して、少し悲しくなった。
しかし――
悲しいと思ったのはほんのわずかの間だった。それは愛犬の本当の可愛さに気が付く入り口だったんだ。愛犬はますます可愛くなっていった。それと同時に、よその老犬まで可愛くなっていった。
老犬ってそういうことなのかと、気が付いた。
――本話は――『老犬アルバムの思い出』の16話~20話をまとめたものです。
表紙は雷(ライ)さん(飼い主:雷のお家さん)です。
【目次】
老犬アルバムの思い出 16話~20話
16話|斑が魅力のぷち子さん
ぷち子、オスカー、はな、Mack
老犬さんがお空に旅立つ度に、大きな喪失感に襲われます。
どうしてそんなに感情移入するのか――
多分老犬さんに自分の愛犬を、飼い主さんに自分を重ねてしまうからです。
楽しかったことも、介護のことも――
今回は、No.44の、ぷちこさんの思い出から始まる4ワンです。
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17話|おしりがキュートなチャチャさん
チャチャ、ダイスケ閣下、くー、はな
老犬さんとの別れを経験するたびに、自分と愛犬の別れを思い出します。
もう3年になるので、思い出すくらいのことでは心は傷ついたりはしないのですが、まだ完全に塞がっていないだろう傷口が、シクシクと痛むのを感じます。
今回は、No.48の、チャチャさんの思い出から始まる4ワンです。
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18話|車椅子で爆走のマーチさん
マーチ、元(げん)、マックス、すかい
老犬さんと飼い主さんに、私が出来ることはないか?
そう考えた時に、#老犬アルバム がありました。
思い出を形に残そう。
私自身、友人達がずっと愛犬を覚えていてくれるのは、とても嬉しい事でした。
だからこそ――
今回は、No.52の、マーチさんの思い出から始まる4ワンです。
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19話|ニコニコのナツさん
ナツ、くぅーたん、雷(ライ)、ハナ
私の友人が言いました。死は二度あると――
1つは肉体的の死。もう1つは記憶から消える存在の死。
私は愛犬の命日に花をもらうととても嬉しい。存在が生きているから。
#老犬アルバム には同じ思いを託しています。
今回は、No.56の、ナツさんの思い出から始まる4ワンです。
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20話|あどけない顔のハッピーさん
ハッピー、まろん、ピースケ、ちくわん
老犬アルバムの中に、老犬さん達の思い出を残したい。
今頑張っている姿も、これまで頑張ってきた姿も覚えておきたい。そんな気持ち。
飼い主さんだけでなく、私だけでなく、見て下さった方々の心にも、ずっと残るといいな。
今回は、No.60の、ハッピーさんの思い出から始まる4ワンです。
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私にとっての老犬は
老犬さんとの出会いと別れ、そして老犬アルバム
私は老犬さんが好きで、いつもネットでその姿を追いかけていのですが、時々寂しい気持ちになることも時々あります。
特にそう思うのは、毎日のように見ていた老犬さんが、旅立ってしまった時です。
15年の平均寿命で、しかも老犬になってから知るのですから、別れがそう遠くないのは最初から分かっていますね。
しかしそう簡単に割り切れるものではありません。
思うに、私は老犬さんとその飼い主さんに対して、急速に感情移入してしまうようです。出会ってから1カ月ほどの老犬さんが、ゆっくりと、ときにはヨロヨロと歩く姿を見ると、もう何年もお付き合いしていた犬――例えば近くに住む友人の愛犬のような――親しみを感じてしまうのです。
だからこそ、その老犬さんの訃報に察すると、大きな喪失感に襲われるのだと思います。
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恐らく、私と同じように老犬さんが好きで、老犬さんを応援している方は、皆同じように老犬さんの訃報に接し、喪失感に襲われていると思います。
どうしてこんなに感情移入するのだろうかと考えてみたのですが、恐らく写真や動画で見る老犬さんに、老犬になった自分の愛犬を
重ねてしまうからなのでしょうね。そしてその老犬さんの飼い主さんに、自分が老いた愛犬を介護をしていた頃を重ねてしまうのだと思います。
大変なご苦労をされている飼い主さんに、不用意に「頑張って」という言葉はつかえませんよね。
それもまた、自分の当時を振り返ってしまうからです。
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私が愛犬の介護をしている当時は、我ながら必死で、色々な悩みや葛藤を、抱えていました。だから私は、「頑張って」という簡単な言葉では、励まされたくはありませんでした。もちろん、励まして下さる方には感謝をしましたけれど。
私は、老犬さんとの別れを経験するたびに、自分と愛犬の別れを思い出します。
もう3年になるので、思い出すくらいのことでは心は傷ついたりはしないのですが、まだ完全に塞がっていないだろう傷口が、シクシクと痛むのを感じます。
それでも私は、気になる老犬さんを探して、応援をします。
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私に出来ることは何かな?
と考えた時、老犬アルバムがありました。
人間年齢60歳を越えた老犬さんにエールを送るという企画ですが、実はそれ以外に想ったことがあります。
忘れないように、形を残して差し上げられるという気持ちです。
私のことを少しお話しましょう。
とてもありがたいことに、今も愛犬を覚えていてくれるお友達から、命日には花が届きます。お線香をあげに来てくださったお散歩仲間もいました。
最初は思わなかったけれど、愛犬が忘れ去られないというのは、結構――、いえ、かなり嬉しいことです。
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愛犬は、飼い主の記憶からは消えることはありませんよね。
私ももちろん、永遠に忘れることは無いでしょう。
前話で私が、お友達から花をいただくのが嬉しいと書きました。
花をもらうこと自体とても嬉しいのですが、それよりも私が嬉しく思うのは、私以外の誰かが、私の愛犬のことを覚えてくれているということです。
先日、私の友人が言いました。死は二度あるといういことを――
1つめは言うまでもなく、肉体的な死。もう一つは記憶の中から消えていく、存在の死です。
だから自分の心の中だけでなく、誰かの心に生きていてくれるということが、嬉しくてたまらないのです。
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私が老犬アルバムをはじめたときに思ったこと――
私はアルバムの中に老犬さんたちの思い出を、形として残すことが出来れば、飼い主さんの記憶だけでなく、誰かの心の中にも、生きた証が残せるのではないかと思いました。
元気なうちは老犬さんたちを応援して、エールを送り、お空に行ってからは、お作りしたカードが、飼い主さんの救いになればいいなと思いました。
もしもワンコがお空に行ってしまったとしても、時々皆さんでアルバムを開いてみて、「ああ、あの子だ」と思うことが出来たら良いだろうなと思ったのです。そんな思いも込めながら、私は老犬アルバムを続けています。
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記事にも一度書いたことですが、老犬アルバムには別の効果もありました。
私たちは老犬アルバムで制作したお写真を、折に触れて記事の扉や、告知で使わせていただくようにしています。なるべくたくさん使わせていただくように心がけいるのです。
すると何が起きるか――
飼い主さんが意識していないとき、不意に愛犬との再会があるのです。
実際に私は、何度か感謝のメッセージをいただきました。
飼い主さんにとっては、サプライズで、新しい思い出がそこでできた気持ちになるそうです。
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飼い主さんへのサプライズ。それって――
お空に行ってしまって、もう思い出が増えないと思っていた愛犬と、新しい思い出が作れるということでもありますね。
そんなことも、私のやりがいになっています。
色んなことを考えながら、今日もまた私老犬さんに出会います。
「今日の調子はどう?」
そういって、ツイッターの海の中を巡ります。
「ああ、今日は元気だね」「今日は具合が悪いの? 心配だね」
そんな風に声を掛けながら。
嬉しいときもあって、時々寂しい思いをしながら、それでも――
私は老犬さんが好きです。
――樫村 慧――●
作:樫村 慧
▶ 作者の一言
▶ 樫村 慧:犬の記事 ご紹介
▶ 樫村 慧:猫の記事 ご紹介
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解説:樫村 慧
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――次回の老犬アルバムの思い出|まとめ――
記事の編集中です。
――前回の老犬アルバムの思い出|まとめ――
前回は思い出の11話~15話をまとめました。
登場するのは、
No.28の大ちゃんから順に、(以下敬称略)空、(猫の)ボス、ジョン、ちぃ、シュウ、ちょび、ごはん、おかず、ちゃくら、ピーチー、ジェニ、ドミノ、ジーター、ココ、スー、小次郎
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――初回の老犬アルバムの思い出|まとめ――
初回は #老犬アルバム を始めたきっかけから、始めた直後、初期のあれこれについての思い出です。
登場するのは、開始前のタフィさん、もなかさん。
No.1のハリーさんから順に、(以下敬称略)ラフ、かん太、テツ、ゆうすけ、ハル、鼻、チョコラッ、ぴい助、まろん、けん太、そして猫のボス
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老犬アルバムVol.4
老猫アルバムVol.1
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樫村慧さんの記事です
愛犬を看取る、家族のお話。
ペットと暮らす者なら誰もが通る道だけれど、少しずつ違う道。
色々な選択肢があって、正解は一つではない。
わが家なりの送り方って何?
『ラフと歩く日々』の続編です。
犬は群れの動物だと言われます。
家族にも、群れとしての序列をつけるのだそうです。
それは時に、弱いものを守るためであったりします。