もう一度、うちの子がうちにくるまで|No.4
作者はシベリアンハスキーの愛犬ハッシーを失いました。ハッシーは作者にとって生活の全てで、天使だと思っていた犬でした。
「もう犬とは一緒に暮らせない」
そう考えていた作者はある日、偶然に訪れたペットショップで、不思議なオーラを放つ子犬に巡り合います。
「一緒に暮らして、最後まで責任を果たすことができるのか?」
自問する作者のもとに、子犬はやってくるのでしょうか?
黒柴ってどんな犬?|先住犬を亡くしてしまた|次の子を飼うのが不安|皆さんどうやって飼う決心をするの?|経験者の話が聞きたい
今日は、我が家の愛犬、哲を迎えた時のお話をしたいと思います。
哲は迎えたのはもう17年も前のこと。それは不思議な巡り合わせでした。
ある日、たまたま夫婦で訪れたペットショップに、不思議なオーラを放つ子犬がいたのです。小さな黒柴の幼犬。私はその子に心を奪われてしまいました。
●
ここで話は、更に少し溯ります。
哲を迎える半年前に、我が家には哲のお兄さんにあたるワンコがいました。
シベリアンハスキーでハッシーという名前です。
ハッシーは私にとって天使でした。
脳の疾患で犬生の半分は闘病していて、最後の一年は寝たきりでしたが、それでもハッシーは天使――。切ないくらいに白い天使でした。
ハッシーは10歳でこの世を去りました。
その当時、私は仕事がとても忙しい時期で、その忙しさに紛れて、深刻なペットロスの経験はしないで済みました。しかしハッシーは、それまでの私の生活の総てでしたので、何をしてもどこにいっても、ハッシーのことを思い出しました。
あまりにも思いが強かったので、私はもう二度と、犬と一緒には暮らせないと思っていたほどです。
ハッシーを失って6ヶ月が過ぎた頃のことです。
私と夫は、たまたま休みの日が重なった平日に、外食をしに二人で外出をしました。
そしてその帰り道、私たちは国道沿いの、大きなペットショップの前を通りかかりました。
特に何か理由があったわけでもないのですが、私たちは何故か引き寄せられるようにそのショップに入りました。
●
店内はどこにでもあるような光景です。
透明なショーケースが沢山ならんでいて、その中には子犬や子猫たちがいました。
いえ――、いたはずです。
というのも、私の目はすぐに1匹の仔犬に釘付けになって、他のものが見えなくなってしまったのです。それをさせたのが冒頭に書いた、不思議なオーラです。
信じられないかもしれませんが、クリーム色の光がその仔犬をベールのように包み込んでいて、確かに私の目にはそれが見えたのです。
「このコは来たばかりなんですよ」
店員さんが、私に声を掛けてくれました。
そして「抱いてみますか」と言って、その仔犬を出してくれました。
●
仔犬は、私の手の中で私の顔をジッと見て「えへっ」と微笑みました。
その瞬間です。私の心の中は、何か温かいもので満たされていきました。
ハッシーを失ってからも、ペットロスにはなってないと思っていた私の心の隙間に、その温かいものがどんどん染みわたっていったのです。
私からその仔犬を受け取った主人も、仔犬と見つめ合って、顔をくしゃくしゃにしました。
さて、それでそのまま私たちが、その仔犬を連れ帰ったのかと言うとそうではありません。家に帰って私たちは家族会議をしました。どんなに劇的な出会いであっても、一時の高揚感だけで命を預かって良いとは思いませんでした。
『一緒に暮らして、最後まで責任を果たす事ができるのか?』
私たちは何日も話し合い、確認し合いました。そして『最後までしっかり命をまもる』と決心するまでに、1週間かかりました。
●
もちろんその1週間のうちに、その仔犬はよその子になってしまうかもしれません。
しかし私は、何故だか焦りはありませんでした。
なんとなく――、なんとなくですが、あの子は私を待っていてくれるような気がしていたのです。
一方主人はというと、決めたら決めたで、「あのコと暮らしたい」としつこく言い始めました。面白いものですね。
再び訪れたペットショップ――
あの子はまだいるのか?
私はすぐに寝ているあの仔犬を見つけました。
「一緒にお家にかえりましょうね」
そう話しかける私の側で、主人が何度も頷いていました。
私の声は、届いていたのでしょうか?
仔犬は眠そうに薄目を開けました。
●
仔犬を連れて帰ったのは、その日のうちです。
かつてハッシーのために揃えた道具類は、友人に譲ったりしましたので、もう家にはほとんどありませんでした。残っていたのはパピーの時の首輪とお皿と、ハウスの組み立て柵くらいです。私たちは昔に戻って、また犬を飼うために必要なあれこれを、そのお店で買い揃えました。
家に着くと、その子は「ここはどこ?」っていう顔で、キョトンとしていました。
私たちは、まだ名前もないその子にご挨拶をしました。
「良く来てくれたね。わんぱくでいいから元気に育ってね」
――と。
名前を付けたのは、我が家に迎えてから5日目でした。
人間に振り回されない賢いコに育って欲しいとの願いから、哲(てつ)と名付けました。
哲は明るく活発なコで、すぐにうちには慣れてくれました。
賢くて、総てが好奇心のかたまりで――、人間の真似をしてレンジをチンした時はびっくりしました。
●
あの頃の哲は――
好奇心のかたまりでした
●
先代のハッシーは体が弱かったから、私はそれがとても切なくて……
でも哲は、いつも明るくて、天真爛漫でした。
私たちは哲が何をしても、褒めて褒めて褒めまくりました。
哲には躾らしい事は何もしていません。
けれども哲は不思議な事に、何も教えていないのに、誰も傷つけない優しい子に育ちました。虫や小動物などを、決して殺生をしない心があったのです。
巣から落ちてしまったツバメのヒナとか、道路を渡りきれなかったミミズとか――
私たち飼い主が助けてあげるまで、哲はその場に立ち止まって、動こうとしませんでした。
私たちと哲の時間は、あっという間に過ぎていきました。
優しい哲は、我が家に14年間一緒にいてくれて、2017年6月29日に14歳7ヶ月で旅立っていったのです。
今振り返っても、哲は不思議な魂の輝きがあるコでした。
哲との暮らしは、まるで神様がくれたご褒美のようです。
私たちは哲を大事に育てて、神様にお返ししたような誇らしい気持ちで一杯です。
哲と暮らした14年を、光栄に思っています。
哲が去ってから半年後、我が家には保護犬の円(まどか)がやってきました。
円は人気のないシニア犬で、フィラリア陽性――
でも円は、哲が見つけてくれたのだと思っているのです。
●
あれは昨年の暮れのこと――
私は哲の故郷をひと目見たくて生家を訪れました。
その翌日、私は不思議な夢を見たのです。
哲が駆け寄って、抱き上げたらとても軽いのです。驚いて顔を見ようとした瞬間に目が覚めました。
――哲、私に何か伝えようとしているの?
私はその夢が気になって、必死で探しました。
哲の面影を――、哲が伝えようとしていたことが何だったのかを――
そして、千葉県にある保護団体『ちばわん』で、円と出逢いました。
抱き上げてみて驚きました。
「この重さ!」
夢の感触と全く同じだったのです。
振り返ると、主人が何度も頷いていました。
●
最後に、円の名前の由来を付け加えておきます。
ちばわんの預かりさん(2ヶ月お世話になりました)がこの子を見て、穏やかで円(まる)ーいコだとイメージし、円ちゃんと名付けてくださったそうです。
ぴったりの名前だったので、そのまま使わせて頂いています。
私たちは円を神様にお返しするその日まで、大事に育てていくつもりです。
●
これが円です
哲に導かれるように、
我が家にやってきてくれました
●
――哲ちゃんへ――
哲ちゃん…ちゃんと見つけたよ。ありがとう。
夢でまた逢いましょうね。
――哲がうちにくるまで|おしまい――
●
こんな効果もあります:愛犬、愛猫を今すぐ100倍可愛くできる、最も簡単な方法
●
――もう一度、うちの子がうちにくるまで・次話――
最愛の先代犬、”はな” を失った私。
悲しみと自責の気持ちを胸の底に沈めながらも、はなのいない日常は流れていきました。そんなある日、私は一匹の子犬と出会いました。
「はななの?」
なんとその子の顔は、思い出の はな の写真と瓜二つでした。
――もう一度、うちの子がうちにくるまで・前話――
(前話は、2話構成です)
同じ年に家族になった『ちょび、ごはん、おかず』が、同じ年に天使に――
やがて作者は、その年生まれの子犬を見つけます。
「生まれ変わりだったら嬉しいな」
額に皺をよせて困った顔の子。
それが、花ちゃんとの出会いでした。
うちに来た日の花ちゃんは、一人で段ボール箱の中で寝ました。
心配で眠れない夜。
しかし、翌日からは楽しくて、楽しくて。
額に皺をよせて困った顔の子。
それが、花ちゃんとの出会いでした。
●
――もう一度、うちの子がうちにくるまで、第1話です――
一見屈強で男の中の男と言うイメージの作者。
しかし作者は、先代犬のバーディーを亡くし、毎日泣いて暮らしていました。
そんな作者に、新しい出会いの時がやってきます。
さて、新しい子は、どのようにやってきたのでしょう?
●
うちの子がうちに来るまで - 黒柴を迎えました
初めはウサギが欲しかった。そんな娘さんとの約束事。
しかしその約束は、いつの間にか犬を飼うという話に――
動物を飼うことに消極的だったお父さんは、約束を守れるのか?
結婚7年目の夫婦。
犬が大好きなのに、妻は自分の病気のために、飼うことは諦めていました。
ある日、夫が「犬を飼おう」と提案します。
夫婦は、犬を飼うことができるのか?