犬を飼うということ

Withdog 犬と飼い主の絆について

【待たせたね】思い出の笑顔を見つけたよ ~きり がうちにくるまで~【迎えに来たよ】

もう一度、うちの子がうちにくるまで|No.4
うちの子がうちにくるまで_きり

撮影&文|はるくま
 
今日のお話は

最愛の先代犬、”はな”を失った作者。
悲しみと自責の気持ちが入り交じり、心の底に沈んでいました。
『これからは、はなに詫びつづけて生きる』
そう思いながらも流れていく、はなのいない日常。
そんな中で作者は一匹の犬と出会います。

「あっ……」
「はななの?」
その子の顔は、思い出のはなの写真と瓜二つでした。

こんな方に:
愛犬を亡くした|次の子を迎えるかどうか迷っている|すぐに迎えると、前の子に申し訳ない気がする|皆さんどうやって次の子を飼うのを決めるの?|経験者の話が聞きたい

 

我が家は2019年9月7日に、新しいワンコの ”きり” を迎えました。先住犬のはなが旅立ってから、49日目のことでした。

今日はその、きりを迎えるまでのお話をしたいと思います。

 

右が先住犬のはな。左は、はなよりも前に旅立った まっくす です。
 

私の最愛のはなは、2019年7月21日に天国へ旅立ちました。

――もっと一緒にいたかった。いるはずだった。
――どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
――私のせいだ。私がはなの命を縮めてしまったんだ。

それが私の偽らざる気持ちです。

悲しみと自責の気持ちがいり混じっていて、まるで重たい石となって心に沈んでいるようでした。
『これからは、はなに詫びつづけて生きる』
そんな心境でした。

 

けれども――
そこまで思い詰め、はなを失ったらそこで途切れるのだと思っていた私の時間は、私の予想に反して、普通に流れていきました。人は悲しみの底にいても、呼吸をし、食事をとって、仕事をして、日々の雑多なあれこれに絡めとられながら、生きていくのだと知りました。

はなのいない日常が始まりましたが、はなが心の中から消え去ることはありません。
贖罪の気持ちは、ふとした瞬間に心に蘇ります。ペットロスかと問われれば、恐らくそうだったのでしょう。この頃の夫もまた、はなを失った悲しみが大きく、ふとした拍子に思い出しては涙する日々でした。

犬好きの私なのですが、「また犬を飼いたい」という思いは全然ありませんでした。
かといって、その対極にある「もう犬は飼えない」という考えがあるわけでもありません。私はそんな思いの遥か手前にいて、犬について考えること自体がなくなっていたのでした。

 

そんな私にちょっとした変化が訪れたのは、はなが亡くなってから一週間後の、7月28日のことです。その日私と夫は、はなのお骨や写真を並べる棚を探しに、家から車で1時間ほどの所にあるショッピングモールに出かけました。

モールの駐車場に車を入れて、目的の棚のお店に向かっていた途中のことでした。
私はペットショップが目に入りました。全国展開をしている大型店です。丁度夫がお手洗いに行くというので、戻って来るのを待つ間に、ちょっとだけ覗いてみようかなという気持ちになりました。

「ただぼんやりと見るだけ」
そんなのつもりだったのです。

お店の中に入ってすぐに目に飛び込んで来たのは、横並びのガラスケースでした。その真ん中あたりには、柴の仔犬がいました。
「いるね、柴ちゃん。女の子だね。こんにちは」
はなを亡くしたばかりではあったけれど、やはり柴犬には惹かれます。

その子は隅で丸まって眠っていたので、顔はよくわかりませんでしたが、しばらくして目が覚めると私に気づき、ニカッと笑いながらこちらに近づいてきました。

 

「あっ……」
私はその仔犬の顔を見て、息を飲みました。
何故ならばその子の顔は、棚に並べてあげようと選んでいた、はなの写真と瓜二つだったからです。

「はななの?」
思わず私はその仔犬に話しかけました。

その時、夫はトイレに寄っていてその場にいなかったのですが、慌てて迎えに行って見てもらうとやはり「はなにそっくりだ」と言いました。

「可愛いね」
二人でしばらくその子を眺めました。
しかし、その日はそれだけでした。

 

その一週間後のことです。
私たちは棚のことで、また同じショッピングモールに出かけました。

「あの子どうしたかな?」
やはりあの仔犬が気になります。私たちはペットショップを覗いてみましたが、もういませんでした。

「ああ、家族が決まったんだな、よかったね…」
そう思いながらも、心のどこかでそれを残念に思う自分もいました。
私は近くにいたお店の人に、それとなくあの仔犬のことを尋ねてみました。
「先週までいたあの柴犬は?……」
「あの子は、成長してこの店のガラスケースでは飛び出してしまうので、他店舗に移ったんですよ」
それが返事でした。

そんなことを聞くと、気になってしまいます。
「新天地であの子はどうしているだろう?」

 

翌週、私と夫はその移動先へ向かってみました。その移動先もやはり、郊外のショッピングモールの中にある店舗です。

あの子は確かにちょっと大きくなって、値段は下げられていました。
切ないけれど、それが現実だと思いました。そして、手の届きやすい値段になったという思いも一方ではありました。

それからというもの、私の心の内には「あの子を飼いたい…」という気持ちが徐々に芽生えてきました。
しかしその一方では、まだはなの最初の月命日も迎えていないことが、私の心を縛っていました。「はなに申し訳ない」という気持ちが、どうしても拭えません。

『もしかしてあの子が、はなが出会わせてくれた子だったとしたらどうだろう?』
とも考えました。
『もしそうなら、あの子を飼わなくちゃ』
と思う自分に、もう一人の自分が厳しい言葉を投げてきます。

『いやいや、違うでしょ。そんなの虫のいい思い込みでしょ?』
『はなが亡くなったばかりで何考えてんの?』
『薄情すぎない? 詫びて生きるんじゃなかったの?』

私の心の中では、毎日2つの思いが交錯していました。

 

迷いの日々はどちらとも結論が出ないまま、過ぎていきました。
やっぱり私には、最初にあの子が見せてくれた、はなそっくりの笑顔が忘れられません。
「あの子に、家族が決まったのかしら?」
と、お店のサイトを見て確認する毎日です。
そしてここでもまた、もう一人の自分が声を掛けてきます。
『そんなふうに、浮ついた気持ちであの子を気にする状態こそ、はなに申し訳ないのでは?』と――

 ただ、そうやって自然に次の犬を意識するようになれたことは、少し嬉しかったです。「あの子に他の家族が決まってもいい」
「またいつかもう一度、『この子!』と感じられる犬に出会おう」
そう思えるようになりました。

私たち夫婦は、自分たちの年齢や住環境、犬を飼うことのいろいろについて、何度も話し合いました。そして、決めました。
『はなの四十九日が来たら、あの子を迎えに行こう』
――と。

もしもあの子が、本当にはなが出会わせてくれた子なら、私たちが迎えに行くまで待ってくれるはずです。だから、運命に全てを託してみようと思ったのです。

それからも毎日私は、サイトを確認していました。
その時の夫婦の会話です。

私「あの子を待たせてるけど、いいのかな」
夫「だって、あの子はうちの子になると決まってるわけじゃないから、いいんだよ。まだ誰のものでもないんだから」
私「ああ、そうだよね…」

 

――9月7日、運命の日――

はなの四十九日であるこの日、私たちはまだお店にいたあの子を迎えに行きました。

実は前日の夜、店の閉店間際に、「明日あの子を迎えに行きます!」と電話していたので、他に家族が決まってしまうという焦りはもうありません。
それでもお店に急ぐ私の心は、そわそわどきどきしていました。
そして――、正直なところちょっとだけ、子犬を育てることへの自信の揺らぎもありました。

仔犬の名前はもう決まっていました。『きり』です。
迎えかどうかを迷っている時から、いつしか自然にその名前になっていました。

由来は2016年に放送された大河ドラマ『真田丸』の登場人物の名前です。
主人公を一途に想い、支え続けたヒロインで、快活で可愛らしいところがとても好きでした。(長澤まさみさんが演じていました)

 

「きり、きり、迎えに来たよ」
お店に着くなり、私はきりに声を掛けました。
きりは飛びまわり、跳ねまわりました。

店員さんから手渡されたきりは、尻尾をぶんぶん振りまわして、私の顔をなめ、髪の毛を噛み、大暴れでした。

「待たせたね、よしよし、ありがとうね」
きりは落ち着いて座るということが、全くありませんでした。

こうしてきりは、うちの子になりました。

家に着いたきりは、ちょこちょこ歩いてはおそるおそる匂いを嗅いで…という動作を、ひたすら続けていました。それまでのほとんどの時間を、お店のガラスケースの中で過ごしてきたのですから、きっと何もかもが、驚きの連続だったでしょうね。

 

うちに来て、もうすぐ2ヵ月。最近はここが自分の住まいと分かってきたようで、我が家の間取りはすっかり把握したようです。

サークルにクレートを置いてあげていて、留守番の時などは基本的にそこが きりの居場所ですが、それ以外はソファにいたり(上っても降りれないので、おろしてやります)、窓際にいたり、だんだん好きな場所が決まってきています。

よく遊び、よく走ります。
狭いところで、よく壁や家具にぶつからないなと思います。

目を離すと食糞します。私に見つかると、「何もしてませんけど~」という顔をするのが本当に可笑しくて可愛いです。いけないことはいけないとわかっているみたいで、頭がいいのかもしれません(親バカ?)。

初めて会ったとき、「はなに似ている」と思ったきりですが、散歩が好きで人懐こい性格とか、目が少し離れているところは、まっくすの方に似ていて、そんなところも嬉しいです。

 

きりを迎えて、私たちは本当によく笑うようになりました。
迎えた直後は、とにかくよく足もとを噛まれたものです。

私「こっちが反応するから面白がって噛むんだよ」
夫「じゃ、噛まれても無反応だね?!」
きり「ガブッ!」
夫「痛ってえ!」
私、夫「だめだよ~、あっはっはっは…」

そんな感じの毎日でした。
夫がとにかく可愛がっていて、楽しそうで、よかったなって思います。
もちろん、きりも楽しそうです。

やんちゃなきりが可笑しくて、笑えば笑うほど、はなへの思いがこみ上げて、はなが恋しくなって、涙がこぼれます。
「はな、私は今、こんなに笑ってるよ。思いもしなかったことだよ」
「あなたがプレゼントしてくれたのかな?……」

答えはわかりません。
そんなことを思うのは、私のエゴかもしれません。

 

――はな へ――

きりは、はなが会わせてくれたの?
本当のことはわからないけど、そう信じていいかな?
二人できりを大切にするよ。
でもね、はな――
私の心の中のはなの居場所は、これからもずっと変わらないよ。
毎日、あなたを思って祈るよ。

ごめんね。そして、ありがとうね。
縁をつないでくれて、本当にありがとう。

――きり へ――

きり、ガラス越しの最初の出会いを覚えてる?
私は時々あの時のことを思い出して、涙が出ちゃうんだ。

待たせちゃったね。うちに来てくれて、本当にありがとう。

これからどんなことが待っているかな?
ゆっくりと家族になっていこうね。
あなたを守り続けることを誓うよ。

 

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――きりがうちにくるまで|おしまい――

もう一度、うちの子がうちにくるまで|No.4
犬の名前:きり
犬種:柴犬
飼主:はるくま
 
もう一度、うちの子がうちにくるまで、とは
愛猫を失った飼い主が、さまざまな葛藤を乗り越えて、もう一度猫を迎えようとするまでを、自分の言葉で綴ったエッセイのシリーズです。
こんな効果もあります:愛犬、愛猫を今すぐ100倍可愛くできる、最も簡単な方法
 
犬や猫と暮らすあなたへ

『うちで飼えるかな?』
『きちんと面倒を見られるかな?』

犬や猫を、”はじめて”飼う時、ほとんどの方はこう思ったことでしょう。
平均年齢でいえば、15年も生きる小さな命を預かるのだから当然ですね。
我々はそこで大きな決心をし、葛藤を乗り越えたからこそ、今、犬や猫と暮らしています。

どうかその思いを、忘れないでください。
その時の思いがあれば、我々はどんな時でも犬や猫と暮らしていけます。

【飼えるかなより

――もう一度、うちの子がうちにくるまで・次話――

記事の準備中です
皆様の投稿をお待ちしています。

――もう一度、うちの子がうちにくるまで・前話――

私はシベリアンハスキーの先住犬ハッシーを失いました。
ハッシーは生活の全てで、天使だと思っていた犬でした。
「もう犬とは一緒に暮らせない」
そう考えていた私はある日、偶然に訪れたペットショップで、不思議なオーラを放つ子犬に巡り合いました。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――もう一度、うちの子がうちにくるまで、第1話です――

一見屈強で男の中の男と言うイメージの作者。
しかし作者は、先代犬のバーディーを亡くし、毎日泣いて暮らしていました。
そんな作者に、新しい出会いの時がやってきます。
さて、新しい子は、どのようにやってきたのでしょう?

 先代犬の まっくす と はな がうちにくるまで

まっくすは、夫が独身時代から飼っていたケアンテリア。
元気MAXでやんちゃな犬。
私達は結婚して、まっくすと私は家族になりました。
私の子供の頃からの夢は、大好きな犬との生活。
リードを持っての散歩の時、私はいつもワクワクしていました。

夫婦共に柴犬が好きでした。先住犬もとても可愛いかったのですが、もしも2匹目を飼うことがあれば、柴犬にしたいと思っていました。未来の夢として――
ある日のこと、2人は偶然に、柴犬専門店をみつけました。
中に入ってみると――

 ごめんね、はな - 君を送る日

私が愛犬はなを迎えたのは、15年も前のことでした。
小さな幼犬だったはなは、やがて老犬になり次々と病気を抱えました。
1つ1つ困難を乗り越えてくれたはな。
しかし、とうとう介護の時がやってきます。
一生の締めくくりのその時期、私たちはある選択をしました。

 

 

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