ピーチーの闘病記:癲癇(てんかん)編

MRI検査の結果をまとめました。
ピーチーの病状はあらゆるものが1つの結果を指していました。脳腫瘍です。
しかし、検査の結果はそうではありませんでした。脳には異常が認められなかったのです。
ホッとする半面、別の疑問が湧き上がります。
「なぜ癲癇の発作が起きるのか?」
「癲癇以外の異常(視覚障害など)はなぜ起きるのか?」
実はここでの疑問は、後にピーチーに生じる別の病気(劇症肝炎)で、その原因を探り当て、命を救うことに繋がっていくのですが、それはもうちょっと後のことになります。
当時のブログより
※文体は執筆当時のままです。
15時が過ぎたところで、DVMsから電話が来ました。
突然だったので、ピーチーに何あったのかと、ドキリ!
しかしそれは『ピーチーちゃんが、無事に麻酔から覚めましたよ』という連絡でした。親切ですよね、麻酔のことは本当に心配をしていたので。
とりあえずのところでは、ピーチーは一つハードルを越えてくれました。その場で、ピーチはどうだったのか聞こうとしたのだけれど、聞きたくないという思いが勝って、何も言えませんでした。
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獣医さんとの面会予定の18:30までの間は、なるべく予備知識を得ようと、犬の脳腫瘍の記事、データ、経験された飼い主さんの体験談を読んでいました。今までもネットで調べてはいましたが、それはてんかんという病気全般についての、広く浅い知識を得るためでしかありません。朝の獣医さんとのやりとりで、脳腫瘍に可能性がほぼ絞られてくると、そこだけに集中して掘り下げていくことができました。
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病気の記事はとれも内容ほぼ同じだったので、正直言って、2つ3つ読めば十分という印象でした。データはどれも同じでしたので、出典となる論文や定説があって、それが鵜呑みにされて、情報が更新されていないようです。やはり最新の医療事情は、医師に聞くしかないとの思いを強くしました。
その一方で、飼い主さんの体験談はとても参考になりました。情報が乏しい中を手探りで、少しでも愛犬に気持ちの良い思いをさせようとしている方々が、沢山いらっしゃいました。
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愛犬の病気で飼い主が不安になるのは、病気そのものに対してよりも、先の見えない不安の方が大きいと僕は思います。先が見えれば覚悟も決まりますし、戦い方も見えてきます。いくつもの体験談を読ませていただきながら、僕には自分なりの対処の仕方が段々を像を結んでいきました。
うちの奥さんは自分の部屋にこもって、自分の仕事に集中していました。おそらく、ピーチーが脳腫瘍を告知されると、その後は仕事にならないと思ったのでしょう。ショックを受ける前に、済ませられるものは済ませておこうという気持ちだったのだと思います。
僕も奥さんも、それぞれがそれぞれの方法で、ピーチーの病気と向き合う覚悟を決め、心の準備をしていったのです。
とうとう担当医との面談
18:30にDVMsに行くと、待合室からは朝の混雑が嘘のように無くなっていました。担当の獣医さんは、急患がはいったらしくて、まだそちらの子とみていらっしゃるようです。
30分ほど待って、ようやく診察室からお呼びがかかりました。
部屋に入ると、正面の2台のモニターには、左側にはピーチーのものらしい頭部のMRI画像が、右側には体の側面ののレントゲン画像が映し出されていました。
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「まず、結論から言いましょう」
いきなり獣医さんが口を開きました。僕は息をのみました。
僕の後ろでは僕の奥さんも同様です。
「脳には全く病変がありませんでした」
想像もしなかった言葉に、僕は呆然としました。もちろん、嬉しさのあまりにです。
獣医さんが続けて言うには、脳は病気が引き起こす変形などは一切なく、きれいな形をしている。炎症も認められない。血液に造影剤を入れて確認したがそれも以上なし。髄液を分析したところ、炎症性のものもウイルス性のものも一切見当たらないとの事。
続けて獣医さんはこういいました。
「では、なぜてんかの発作が出るのかというと、それは理由はわかりません」
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それではなぜ脳腫瘍が強く疑われたかというと、特発性のてんかん(明らかな脳の病変が認められない癲癇)は小さいうちから症状がでるものであり、ピーチーのように高齢になって初発のケースはほとんどないからということのようです。
更にそれに加えて、ピーチーには脳腫瘍を想起させる、視覚障害、運動障害、意識障害が発症しており、偶然にも今回は、それらが同時に起きたというのが結論のようです。
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脳腫瘍でないと分かってしまえば、それぞれの機能障害などは大したことはありません。むしろ高齢犬としては軽い方だともいえます。
てんかんの治療は発作の発生を上手に制御し、月2回以内に止めることができれば成功なのだそうです。今後はその方法について、主治医である大倉山動物病院さんと共に、DVMsの脳神経科も加わっていただけるということになります。
まさに、ビーチ―に医師団が付いたという感じです。
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とはいえ、てんかんも舐められたものではありません。それで命を奪われる子もいるし、対応を誤ると重大な脳障害が出て、別の意味で大変な介護に突入します。
2つの病院への通院や変則的な投薬は、きっとこの先結構大変だろうなと思います。もちろん経済的な負担も。
しかし、ピーチーのためなのだから、なんとかやるしかないでしょう。
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最後に、ピーチーがDVMsから家に変える際、獣医さんから「髄液を採取するために、頭の後ろの毛を少し刈りました」と言われました。見ると頭の後ろには、四角く刈り上げられた跡がありました。
思わず僕は、声をだして笑ってしまいました。
まるで遊園地によくある、コインで動く遊具みたいです。
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これが刈り上げられた後頭部
コインの投入口でも書いてやろうかな
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さすがピーチー。
どんな厳しい状況でもきちんとオチが付くあたりは、陽気なブルテリアの面目躍如。
笑いの壺を押さえています。
――癲癇闘病記・発作は嫌いよ(12/31)つづく――
文:高栖匡躬
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――次話――
発作は嫌いよ|13/31
ピーチーの癲癇には、イーケプラという新薬が良く効いてくれました。
当時は犬用のものがまだなくて、人間用の薬を飲んでいました。
欠点は正確に8時間置きに飲ませる必要があり、それが大変。そして薬価が高かった。
今はもう、犬用のものが出ています。
――前話――
発作は嫌いよ|11/31
「症状を総合すると、脳の中に何かがあるというのはまず間違いないでしょう」
MRI検査の前に、担当医が言った言葉です。
何かあるとすれば、脳腫瘍以外に思いつきません。
高齢犬なので、麻酔のリスクもあります。
それでもやはり検査に踏み切りました。
――この記事の初回です――
発作は嫌いよ|1/31
我が家の愛犬、ピーチーの癲癇闘病記です。
それはある日突然の発作からはじまりました。
予備知識もなく駆け込んだ救急病院。
発作は1回限りのものかもしれず、まずは様子見だそうです。
――僅かな希望
しかし、発作はその後も繰り返し襲ってきました。
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最初は夏バテかなと思い、次に熱中症を疑いました。
かかりつけの獣医師も、熱中症との診たてでその治療を。
しかしピーチーの状態は悪化の一途。
ただならぬ状態に、未明の救命救急に飛び込み、そこで発覚したのが重度の肝炎でした。
結局後になって、それが自己免疫不全が引き起こしたと分かるのですが、まさか免疫の暴走が劇症肝炎を引き起こすなど、想像もしていませんでした。
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