ピーチーの闘病記:劇症肝炎編
前日の面会では、ピーチーの劇症肝炎は、劇的に改善されたように見えました。
しかし、まだ安心はできません。
なにしろ、一昨日の夜までは、ピーチーは死の縁をさまよっていたのですから。
ブログで応援をしてくれた仲間達に、歓びの声を伝えたいと言う気持ちが半分と、そこに喜んでしまうと、足元をすくわれそうな不安が半分同居していました。
一晩かけて、起きたことをきちんと頭で整理しました。
少なくとも、危機的な状態は回避している。それは確かです。
しかし――、やはり心からは喜べない。
喜ぶのが怖いと言うのが、正直な気持ちでした。
こんな方に:愛犬が劇症肝炎|愛犬が急性の炎症性疾患|免疫疾患の可能性もある|治療方針の決断を迫られている|選択肢が乏しい|かかりつけの医師に任せるのが良いのか?|経験者の体験談を聞いてみたい
8月19日、早朝 活力が戻って来た
もう昨日の出来事になってしまいますが、ピーチーの病状の変化をまとめたく思います。
面会をしたピーチーは、明らかに前日と違っていました。見違えるほど活力が戻ってきています。自分で立ち上がろうとし、よろけながらも歩く。数歩でへたり込みますが、また立とうとする。そして時折、しっぽを振る。
ピーチーは僕と奥さんをはっきりと認識をしており、じっとこちらを見つめています。
そして、僕が指を差し出すと――
その指をぺロリと舐めました。これは昨日までは無かった仕草です。
たったこれだけですが、大した進歩です。
食欲と排泄、どちらも大切なこと
ピーチーは、食事はまだ自分からは食べようとしませんが、口に入れてやると食べるそうです。便と尿は、まだ自分ではできず、ドレーンが入っています。
治療前と治療開始後の血液検査の結果は下記に記しますが、1つの事を除いては、際立った変化は見られません。ただ、その1つが大きく、総ビリルビンが5.3から2.8に下がっています。
これは3年前にピーチーが胆管閉塞を起こした時、僕が毎日気にしていた数値です。
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つまりこれは、胆管の状態がとても良くなってきていることを示します。具体的には、目前で僕が最も恐れていた、胆嚢破裂の危機が去ったという事。
そしてそれは同時に、食欲の改善が期待できます。
血液検査の諸数値を整理
以前の胆管閉塞の際の経験と知識では、総ビリルビンの値は、食欲に大きく影響をもたらし、その値が下がると共に食欲が回復してきました。
そして、もしかするとこの変化は、昨日から合併的に発症していた膵炎も改善していることをも示しているかもしれません。何故ならば、今回の胆管閉塞が、膵臓の炎症が胆管を圧迫した結果だと仮定すると。胆管閉塞が改善されたということは、膵臓の炎症が治まってきているからかもしれないからです。
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さらに、期待通りに膵炎が改善されたということであれば、膵炎のよってもたらされている激痛が、緩和されていることも意味します。
むろんこれはら推測の域をでず、我々は経過を見守る以外にありません。
ここまでの血液検査の結果を、日付順に整理しておきます。
GLU 血糖値 86 (基準値75~128)
GOT/AST 243 (基準値17~44)
GPT/ALT 421 (基準値17~78)
ALP アルカリフォスターゼ >3500 (基準値47~254)
※測定器の上限値を超えたため、計測不能
TBil 総ビリルビン 5.5 (基準値0.1~0.5)
Na ナトリウム 147 (基準値141.0~152.0)
K カリウム 3.4 (基準値3.80~5.00)
Cl クロール 168 (基準値102~117)
C-反応性蛋白 >20.00 (基準値0.00~1.00)
※測定器の上限値を超えたため、計測不能
※偶然ですが、発症前の14日にも検査をしており、その時にはどれも正常値。
※ALPのみは1040で高値でしたが、一過性のものであろうとの判断でした。
BUN 尿素窒素 17.0 (基準値7.0~27.0)
CRE クレアチニン 0.8 (基準値0.5~1.8)
TCho 総コレステロール 339 (基準値110~320)
GLU 血糖値 88 (基準値70~143)
GPT/ALT 315 (基準値10~125)
ALP アルカリフォスターゼ 1887 (基準値23~212)
ALB アルブミン 2.1 (基準値2.2~3.9)
TP 総蛋白 5.7 (基準値5.2~8.2)
P リン 4.9 (基準値2.5~6.8)
Ca カルシウム 9.6 (基準値7.9~12.0)
TBil 総ビリルビン 5.3 (基準値0.1~0.9)
GGT 34.0 (基準値0.0~0.7)
Na ナトリウム 160 (基準値144~160)
K カリウム 3.6 (基準値3.5~5.8)
Cl クロール 122 (基準値109~122)
C-反応性蛋白 >20.00 (基準値0.00~1.00) ※上限値を超え測定不能
GLOB グロブリン 3.6 (基準値2.5~4.5)
BUN 尿素窒素 13.0 (基準値7.0~27.0)
CRE クレアチニン 0.6 (基準値0.5~1.8)
TCho 総コレステロール 344 (基準値110~320)
GLU 血糖値 106 (基準値70~143)
GPT/ALT 302 (基準値10~125)
ALP アルカリフォスターゼ >2000 (基準値23~212)
ALB アルブミン 2.2 (基準値2.2~3.9)
TP 総蛋白 5.9 (基準値5.2~8.2)
P リン 4.5 (基準値2.5~6.8)
Ca カルシウム 9.6 (基準値7.9~12.0)
TBil 総ビリルビン 2.8 (基準値0.1~0.9)
GGT 34.0 (基準値0.0~0.7)
Na ナトリウム 156 (基準値144~160)
K カリウム 3.6 (基準値3.5~5.8)
Cl クロール 119 (基準値109~122)
GLOB グロブリン 3.7 (基準値2.5~4.5)
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僕たちの目の前には、まだうっすらとですが、光が差してきたように感じます。
しかしまだ油断はできません。何しろピーチーの体の値は、依然としてピーチーが危機的な状態にあることを示しているのですから。
感心したこと - 愛想も闘病では大事
今日、僕と奥さんが、ピーチーに感心したことがあります。
ピーチーは山○先生が処置室にいらっしゃった際に、気力を振り絞って立ち上がり、ヨタヨタと歩いて、山○先生に愛想をしにいったのです。
体を摺り寄せ、飛びつこうとする仕草をするだけです。たったそれだけなのですが、ピーチーが全身で先生に感謝を伝えているのが分かります。
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実はピーチーは、これをどの病院でもやります。
痛い針を刺した先生、苦い薬を飲ませた看護師さん。その皆さんに一人ずつ。必ず愛想を振りまくのです。
以前に別の病気で、麻布獣医大学に行ったピーチーは、皮膚科の世界的な権威である、○形先生にもそれをやりました。周囲からは強面で知られている○形先生。周囲にいる看護婦さんも研修医もピリピリとしています。
しかし、その瞬間に仏頂面の○形先生の顔は破顔しました。
それを境に、病院に行くたびに○形先生は、エビスさんのような笑顔でピーチーを迎えてくれるようになりました。
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数か月前に瞼にできた腫瘍を取った際もそうです。全身麻酔を避けるため、体をマットに縛りつけて、軽い局所麻酔しただけで手術をしたときにも、手術のすぐ後に、執刀医に真っ先に駆け寄って愛想をしたのです。先生はビックリしていました。
ピーチーはどの病院でも、飼い主が知らない間に病院中のアイドルになっていて、そこを卒業する時には、皆さんが声を掛けてくれるのです。中には、わざわざ仕事を中断して、ピーチーを見送りに来てくれた看護師さんもいたほどでした。
小さいことだけれど大きい事。こんなことがきっと、これまでピーチーを救ってくれていたんだと思います。
きっと今度も大丈夫だから、しっかり愛想を振りまいとけよ。ピーチー!
――【劇症肝炎】闘病記・つづく――
文:高栖匡躬
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――次話――
奇跡的に命を拾ったかに見えるピーチー。
快方に向かうのかどうか、確信が持てないまま、また一日が終わろうとしていました。
まだ、素直に喜ぶことはできませんでした。
――前話――
一夜が明けて面会に行くと、どうやらステロイドは効いているようです。
ピーチーはグッタリとしている状態ですが、それでも歩こうとします。
数歩歩いてへたりこみますが、それでも強い意志を感じるのです。
これは光明なのだろうか?
僅かに光が射したように思えました。
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この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――本連載の第1話です――
この日早朝6時、愛犬ピーチーは救命救急に駆け込みました。
40度を越える高熱。ぐったりとして動けない。
主治医からは、安楽死を勧められるほどの状態。
この日から、命を賭けた闘病が始まったのでした。
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ペットの闘病についてのヒント
闘病の奇跡は呼び込むもの
闘病記を読むと、奇跡的に治るという表現に時々出会います。
しかし奇跡は、待っていて起きるものではありません。
奇跡が起きる確率は、努力で上げることができます。
医師まかせにせず、とにかく情報を集めて分析する事です。
その中に、もしかすると答えがあるかもしれません。
セカンドオピニオンと二次診療
街の獣医師の技術と経験には大きな差があります。知識にも差があります。
なぜなら街の獣医師は、内科医であり、外科医であり、犬や猫だけでなく、ネズミも鳥も診察するのが役割です。病気ごとの専門医ではないのです。
セカンドオピニオンと二次診療は、街の獣医師の足りない部分を埋める、重要な手段と言えます。
高度医療という選択肢
動物にも高度医療があります。
それは人間で実績のある治療を、いち早く動物医療に転用するものです。
医療は日進月歩。昨日治らなかった病気が、今日は直るかもしれません。
高度医療は病気を治す手段としては有効な選択肢です。