ピーチーの闘病記:劇症肝炎編
段々と調子が良くなっていくピーチー。
気持ちが落ち着いてくると、今回起きたことを振り返る余裕ができてきました。
この日のブログで触れている、自己免疫疾患(自己免疫不全)と言う言葉を初めて聞いたのは、今回の闘病の少し前のことです。ピーチーが癲癇の発作を起こし、脳腫瘍は強く疑われたときに、担当医から別の可能性として示唆されたものでした。
一つ一つのことを改めて考えると、自己免疫疾患は多くのことを引き起こした元凶のように思えます。そしておそらくそれは、ピーチーだけでなく、他の子(犬猫に関わらず)起きているものと思われます。
この時の印象の強さから、自己免疫疾患については自分なりに調べて、それに絞って別の記事を書きました。
こんな方に:愛犬が劇症肝炎|愛犬が急性の炎症性疾患|免疫疾患の可能性もある|治療方針の決断を迫られている|選択肢が乏しい|かかりつけの医師に任せるのが良いのか?|経験者の体験談を聞いてみたい
8月20日、早朝 奇跡の回復
ピーチーはこの2日ほどで、驚くような回復を見せています。
なんと4日前には立つこともできず、食べることもできず、排尿も排便もできずに、死のふちに立っていた子が、今や自力で立ち上がり、今にも小走りをしそうなのです。
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僕たちが選択した、自己免疫疾患に絞った治療が功を奏していることはほぼ間違いなく、今後は既に体が受けてしまったダメージからの回復が、全身症状の悪化に追いつけるかどうかに掛かってくるわけです。
ただ、これからまた悪化することも十分に考えられるので、冷や汗ものではありますが。
(自己免疫疾患の呼称は、これまではDVMs《どうぶつ医療センター横浜》の医師が用いる用語をそのまま使って、自己免疫不全と書いてきましたが、どうやら一般的には自己免疫疾患と称されることの方が多そうなので、今後はなるべく後者を使います。しかし、既に自己免疫不全で慣れてしまったので、混じってしまったらごめんなさい)
自己免疫疾患(自己免疫不全)と、ピーチーに起きたこと
調べてみると自己免疫疾患は、本来ならば体を守ってくれるはずの免疫機能が暴走して、自分の正常な細胞や組織に攻撃を加えるものだそうです。
リウマチやクローン病、膠原病、バセドウ病も自己免疫疾患なのですね。
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自分の免疫が自分を攻撃するのですから、病名が付いているものだけでなく、体中のあらゆるところが炎症を起こす可能性があり、それこそ”何でもあり”の状態なわけです。
そして、炎症が起きる場所によって、命が掛かってくる。
恐ろしい病変だと思います。
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ピーチーの場合は、まだ完全に診断が確定した訳ではありませんが、少なくとも3つの事が短期間に起きました。
2.死の一歩手前だった、劇症肝炎
更に言えば、併発していた膵炎、胆管閉塞、脾臓の異常
3.歩けないほど重症の、多発性関節炎
これだけだって、大したものなのですが、実は、昨日面会した際に、もう一つ自己免疫疾患を疑う現象を発見してしまいました。
なんと難聴まで改善?
ピーチーは2年ほど前から、段々と耳が遠くなり、昨年にはほぼ何も聞こえない状態になっていました。当時気付いて、すぐに主治医に相談したのですが、そのときの回答は、「ほとんどのワンちゃんが13歳頃には難聴が始まり、全く聞こえなくなる子も多いのです」との事。
「老化現象なので、手の打ちようが無い」
かかりつけの主治医からはそう言われ、うちでは諦めていました。
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そのピーチーが面会中、奥の部屋の物音に反応したのです。僕と奥さんは驚いて顔を見合わせました。もしやと思い、耳元で指をパチンと鳴らしてみると、弱いながらも反応が返ってきます。目の端で指の動きが見えているのではないかと思い、完全に死角になる方向で試すと、またも反応。
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家に帰って調べてみると、自己免疫性内耳障害という病気もあるようです。
本当にピーチーが音に反応しているのかどうかは、昨日は担当医が不在のために確認ができませんでした。今日の面会で聞いてみたいと思っています。
自己免疫疾患(自己免疫不全)は診断が難しい
ところでこの自己免疫疾患ですが、そのもの自体の診断方法は無いのだそうです。
起きた病変を、まずは一番オーソドックスな方法で治療し、効果が無ければ次の治療、また次の治療と進み、選択肢を1つずつつぶして行って、最後に残るのが自己免疫疾患という呼称。
たまたまピーチーは、無関係に思われる病変が同時多発的に生じたために、結論にいたる時間が短かったわけですが、そうでなく、もしも1つだけ発症していたら、今でもその原因を追いかけて右往左往していたはずです。
特に劇症肝炎は、オーソドックスな治療を試している間に、ピーチーの命を奪っていたことでしょう。
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免疫に対しては、「お前、悪さするなよ。しっかりピーチーを守ってくれよ」と言いたくなってしまいます。
僕の身の回りでも、自己免疫疾患と闘っている方(人間です)が何人かいらっしゃいます。闘う相手が自分の体だなんて、きっとやるせない思いなんだろうなと思います。
家族であるピーチーが病に直面し、初めて実感したことです。
罪な病気ですよね。自己免疫疾患って。
――【劇症肝炎】闘病記・つづく――
文:高栖匡躬
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――次話は以下です――
愛犬が危機から生還するときは、何か特別な力が働いているように感じます。
症状が現れるタイミングや、検査の順番や、データの読み取り方など、ちょっとしたことで医師の診立ては変わってきます。
助かるのか? それとも助からないのか?
それを分けるのは、ほんの些細な出来事のように思えます。
――前話は以下です――
奇跡的に命を拾ったかに見えるピーチー。
快方に向かうのかどうか、確信が持てないまま、また一日が終わろうとしていました。
まだ、素直に喜ぶことはできませんでした。
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この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――本連載の第1話です――
この日早朝6時、愛犬ピーチーは救命救急に駆け込みました。
40度を越える高熱。ぐったりとして動けない。
主治医からは、安楽死を勧められるほどの状態。
この日から、命を賭けた闘病が始まったのでした。
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ペットの闘病についてのヒント
闘病の奇跡は呼び込むもの
闘病記を読むと、奇跡的に治るという表現に時々出会います。
しかし奇跡は、待っていて起きるものではありません。
奇跡が起きる確率は、努力で上げることができます。
医師まかせにせず、とにかく情報を集めて分析する事です。
その中に、もしかすると答えがあるかもしれません。
セカンドオピニオンと二次診療
街の獣医師の技術と経験には大きな差があります。知識にも差があります。
なぜなら街の獣医師は、内科医であり、外科医であり、犬や猫だけでなく、ネズミも鳥も診察するのが役割です。病気ごとの専門医ではないのです。
セカンドオピニオンと二次診療は、街の獣医師の足りない部分を埋める、重要な手段と言えます。
高度医療という選択肢
動物にも高度医療があります。
それは人間で実績のある治療を、いち早く動物医療に転用するものです。
医療は日進月歩。昨日治らなかった病気が、今日は直るかもしれません。
高度医療は病気を治す手段としては有効な選択肢です。