犬を飼うということ

Withdog 犬と飼い主の絆について

【花のアジソン病】さよなら風、さよなら花 ~花と風の闘病記(3/3)~【闘病|看取り】

【関連コンテンツ】

花と風の闘病記:花のアジソン病 後半
花のアジソン病_看取り

撮影&文|karaage
 
この作品は

愛犬、風が亡くなり、悲しみの底にいた作者。自分を責める毎日です。
幸いもう一匹の愛犬の花は、アジソン病による命の危機を何度も乗り越え小康状態を得て、作者の心を支えていました。
その花が、突然に体調を崩しました。
花は、膵臓と腎臓が悪くなっていたのです。

こんな方に:
愛犬がアジソン病を発症した|アジソン病の経過はどうなる?|愛犬が闘病中、または介護中|闘病について知りたい|飼い主さんはどう対応しているのか?

 

愛犬、風がリンパ腫で亡くなってしまいました。
14歳になったばかりのことでした。
その時の気持ちは、悲しいとか寂しいとかの言葉では表せません。

きっと同じ経験をなさった飼い主さんなら、誰でもそうだと思いますが、私はしばらく涙が止まらない日々を過ごしていました。
そして自分を責める毎日――
何で手遅れになるまで気がつかなかったのか?
もっとやれる事があったんじゃないか?
――何度も何度も考えました。

それから、毎日取りつかれたように写真をプリントしては、飾る所が無いくらいフォトフレームを買ってきて写真をセットして――、

気持ちが落ち着くまでは、暫くかかりました。
3ヶ月位は、そうしてたと思います。

 

f:id:masami_takasu:20190917170358j:plain

その間、もう1匹の愛犬、花はとても寂しそうにしてました。
花は風とは本当の姉妹ではなかったけれど、いつもくっついていました。
その風が、もうご飯食べる時も、寝る時もいないのです。

犬は飼い主の悲しみを察するのだといいます。
だから花はあの頃、風がいなくなった寂しさと同時に、私の気持ちが沈んでいることまでも気遣わなければならなかったのです。

花は3歳の頃にアジソン病に罹っていましたが、何度も命の危険を乗り越えて、この頃は小康状態を得ていました。寛解と言う訳ではありませんが、処方された薬のおかげで、10年以上も健康な時と変わらない生活が送れていました。

風が去ってから、花が私を支えてくれていました。

年が変わってから、花にはちょっとした変化がありました。
散歩の時に転ぶ事があったのです。同じ日に2回転んだこともありました。

当時はそれが大事だとは思っていませんでした。
転ぶこと以外には、具合が悪いようには見えず、ご飯(尿結石のフードと普通のオヤツ)も普通に食べていましたし、散歩を嫌がることもありませんでした。

 

f:id:masami_takasu:20190917170446j:plain

4月の終わり頃になって、花はあまり歩かなくなりました。そして4月末になると、目に見えて元気が無くなりました。

これはおかしい――
そして、次の日に病院へ――
検査を受けると、花は膵臓と腎臓が悪くなっていました。

今思えば、花が転んだあの日には、既に花の体には異変がおきていたのでしょうか?
じわじわと悪くなっていて、気がつかなかっただけだったのかもしれません。

その後も、花の状態は悪くなる一方でした。

時々歩かなくなる。転ぶ。
そして次第に苦しそうになり、やがて花は声を出せなくなってしまいました。
病院に連れて行くと、医師は気管を広げる薬を入れてくれました。
次の日――
花は一声だけ「ワン!」鳴きました。
それは、久しぶりに聞いた花の声でした。

この時の花の状態は、もう多臓器不全に陥っていました。

医師はアジソン病の薬を止めないと、他の薬は使えないのだと言いました。しかしその薬は花の命を繋ぐ薬。10年以上花の命を繋いでくれたものでもあります

医師は花の状態がどんなに悪くても、入院とは言いませんでした。
治療の方法が無かったからです。
もうアジソン病の薬を飲み続けるしかありません。
医師からは「何も出来ない」と言われました。

 

f:id:masami_takasu:20190917170532j:plain

それからの花は家で過ごしました。
確かに、何も治療ができないのならば、家で家族と過ごした方が、花にとっては良かったのかもしれません。

そして、夜中に目がぐるぐる回って痙攣を起こした花――
次の日の朝一番に、上の娘二人と共に病院に行きました。

先生は「注射をしましょう」と言いました。
もう治療の術が無い以上、栄養剤か沈静剤だったのだと思います。
「もう1本打ちましょうね」
医師が2本目の注射をしてくれたその後、花は静かに息を引き取りました。

2015年5月22日、花、永眠――
3歳で発症したアジソン病を抱えながら、15歳まで生きてくれました。
風との別れから、1年後の旅立ちでした。

今振り返ると、私は風も花も、最期を苦しませてしまったように思います。

大好きだった風と花だったのに――
私は生活のために仕事を掛け持ちしてたので、風と花の異変に気がつくのが、遅くなってしまいました。

二匹とも、もう少し裕福で片親じゃない家庭に来ていたらこんな事にならなかったのかもしれないと、後悔ばかりが残りました。
それからの私は、生きている事が辛くて辛くて――
ホントに死にたかった――

 

f:id:masami_takasu:20190917092943j:plain

今我が家には、花が去ってから3ヶ月後に迎えた心(ここ)がいます。
触ることもできない、狂暴な子だった心――
問題を抱えた心を家に迎え、何度も噛まれながら向き合うことで、私は風と花への贖罪をしてきたのかもしれません。

次第に心を開き、本当の家族になってきた心の先に、私は風と花の笑顔を見ているような気がします。

――花へ――

花、あなたは小さい時から、風のお母さん役だったし、お姉ちゃんでもあった。
お母さんに甘えたいのに、甘えられない時もあっただろうね。ゴメンよ。
お母さんは花がうちの子になってくれたから、頑張ってこれた。
ありがとう、花。
何度生まれ変わってもお母さんは花と一緒やで。

 

――花と風の闘病記(3/3)おしまい――

作:karaage
  

――前話――

愛犬、花のアジソン病が落ち着いてきた頃。
今度は妹の風が体調を崩しました。嘔吐とフラつき――
病院で告げられた病名は、受け入れがたいものでした。
「風さんはリンパ腫です。余命は3ヶ月……」
帰り道、泣きながら自転車をこいだことを思い出します。

――このお話の第1話――

愛犬、花と風を迎えてから、我が家は楽しい日々を過ごしていました。
しかし、ある夏の日のこと――
いつも元気な花の体調が良くありません。
色々な検査の結果、花はアジソン病と診断されました。
この時、花は命に関わるほどの状態だったのです。

 花がうちにくるまで

本話の主人公、花さんを家に迎えるまでのお話です。

犬を飼おうと思ったことも無かった作者。
その作者を変えたのは、偶然に出会った散歩中のコーギーでした。
『世の中には、こんなに可愛い動物がいるの?』

 同じ作者の記事です

噛み癖のある問題犬、心(ここ)を迎え入れ、次第に家族になっていくお話です。

 愛犬との別れを考える

別れは特別なものではない――

我々は、看取りの内容に囚われてしまいがちです。
良く看取れたのか? そうでなかったのか?
別れのあとも、ずっとそれを考えてしまいうのです。

別れは特別なものではなくて、生き物には必ず訪れる自然なものです。
必要以上に重要に考えないことが、大切なように思います。

看取りをもっと積極的に捉えられるように、このコラムを書きました。

終末期を楽しむという選択

飼い主にとって、愛犬との別れが近い時期は、肌でそれを感じるものです。
では、その時をどう過ごすか? それを考えた記事です。
今は苦しいかもしれないけれど、愛犬が去った未来に振り返ると、今は幸せの真っ只中にいるのです。
だから、どうか楽しんで欲しいと思うのです。
今を――

© 2017 Peachy All rights reserved.