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【食べムラ】【食欲不振】【拒食】【偏食】【小食】【食欲減退】言葉の意味にもムラがある ~言葉としての”食”を考える~

ペットの食事の記事の多くは、意味が曖昧です
ペットの食事_単語の意味

撮影&文|高栖 匡躬
 
はじめに

先日、【食べムラ】に関する記事を書こうとしたのですが、書き始めてすぐに考え込んでしまったことが有りました。何故かいうと、『食べムラって、一体何?』という疑問が湧いてきてしまったのです。

つまり根本である言葉の意味から、疑問を持ってしまったわけです。ペットの食べ物に関する記事は、用語がとても曖昧に思えます。書く方も、読む方も、ことばの解釈が曖昧なのです。これでは、記事の趣旨が正しく伝わらないのではないかという心配までしてしまいました。
この記事では、食べ物にまつわる用語について、もう一度考えてみようと思います。

 

ネットで検索をしても、【食べムラ】という言葉の意味はどこにも書かれておらず、人間の赤ちゃんや、犬猫に対しての、”食べムラ対策”や、”食べムラの相談”の記事が見つかるだけでした。

そこで、試みにツイッターで読者の皆さんに、意見を求めてみました。
すると、思った以上に多くの反響がありました。皆さん、この話題には、感心があるのですね。

 ●

【食べムラ】の解釈については、皆さんがほぼ同じ方向を向いているように思います。しかしながら、完全に一致しているかと言うと、そうでもありません。どうやら【食べムラ】は言葉の定義は曖昧で、解釈に幅があるようです。

今回は、大勢の方のご意見を一度に聞く機会をえたことで、混乱していた頭の中が、整理出来てきました。そこで本記事では【食べムラ】を単語として捉え、そこを掘り下げてみたいと思います。

【目次】

【食べムラ】と【食欲不振】の関係は?

【食べムラ】と【食欲不振】

一般的に【食べムラ】は、犬の気まぐれ(或いは我儘)で、フードを食べたり食べなかったりすることを指していると考えて良さそうです。これはご意見を寄せて下さった、多くの方がそう解釈をしていることからも分かります。

しかしながら、ネット上の記事を色々と読んでみると、それが統一見解というわけでもなさそうです。【食べムラ】の原因が気まぐれ(我儘)ではなく、【食欲不振】にある場合も、【食べムラ】と表現されているものが、少なからず見受けられるからです。

※因みに、食べムラという言葉は辞書には見つけられませんが、斑食い(むらぐい)という言葉は辞書には載っています。

これらをどちらも正しいとして、食べムラを現実的に理解すると、【食べムラ】は最後に現れる現象であり、その理由として、気まぐれ(我儘)の場合と、【食欲不振】があるとするのが妥当と思われます。

更にその理由が【食欲不振】である場合、そこには何らかの【原因】があるのだという考え方です。

【食べムラ】【食欲不振】
①食べムラは、食べたり食べなかったりする現象の事を指している。
②食べムラの理由は、気まぐれ(我儘)と、食欲不振の2つに大別される。

これらのことを図にすると、下記のようになります。

食べムラ_食欲不振_関係図

要するに、食べムラに対応しようとすると、大きくは下記の2つの方法が考えられることになるわけです。

①食べムラの原因が気まぐれ(我儘)である場合は、躾によって矯正する。
②食べムラの原因が食欲不振にある場合は、その原因を探って対処する。

食べムラの矯正に関しては、大切なことなので、別の記事にまとめたいと思います。
矯正の方法もさることながら、なぜ矯正をした方が良いのという理由が大切だと考えています。

またネット上の情報は、食べること、食べさせることにばかりに注目しており、
何故か、食べないメリットが置き去りです。
人間も動物も、具合が悪くなると食欲がなくなりますね。
それには理由があります。

それも別記事にまとめたいと思います。

 

 食べ物に関する言葉は、どれも意味が近くて曖昧

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食べ物に関する言葉は、【食べムラ】と【食欲不振】以外にも、沢山あります。
このことに関しても、ツイッター上で沢山のメッセージをいただきました。また実際に犬を飼っている方たちからも、直接意見を聞きました。

言葉の意味や、それが使われるシチュエーションを掘り下げてみると、それらを一括りに【食べムラ】で片付けられてしまうと、それを受け取る側で、解釈に誤解が生じるように感じました。

ここで、一度言葉を整理してきましょう。
主だったものは下記の6つのように思います。

【食べムラ】
【食欲不振】
【拒食】
【偏食】
【小食】
【食欲減退】

どうでしょうか? 
ここでちょっと考えてみてください。

これらはうっかりすると、【食べムラ】の一言で、片付けられてしまいそうに思いませんか?

まずはオンライン上の辞書サービス、コトバンク(※1)を使って意味を調べてみましょう。

【食べムラ】(斑食い)
毎回の食事量が一定でないこと。食べるときと食べないときの差があること。
※食べムラという言葉自体は無いので、斑食いで検索

【斑食い】(読み)むらぐい
毎回の食事量が一定でないこと。食べるときと食べないときの差があること。

【食欲不振】
食欲が起こらないか,異常に少ない症状。

【食欲不振】(読み)しょくよくふしん
食欲が起こらないか,異常に少ない症状

【拒食】
食べることを拒否する状態をいい、摂食障害ともいう。 

【拒食】(読み)きょしょく
食べることを拒否する状態をいい、摂食障害ともいう。

【偏食】
好き嫌いが激しく、特定の食品だけを食べること。

【偏食】(読み)へんしょく
好き嫌いが激しく、特定の食品だけを食べること。

【小食】
食べる食事の量が少ない・こと(さま)

【小食】(読み)しょうしょく
食べる食事の量が少ない・こと(さま)。こしょく。しょうじき。⇔大食

【食欲減退】はネット上の辞書には載っていませんでしたが、意味的には食欲不振とほぼ同じと言って良いでしょう。ただし完全に同じではありません。

”加齢による食欲減退”と、少し言葉を長くして状況を限定すると、それが”加齢による食欲不振”とは違うニュアンスであることが分かります。

”加齢による食欲減退”は自然現象であり、対策しなければならない問題とまでは言えないように思います。一方、”加齢による食欲不振”は、栄養不良のような言葉を想起させます。
(※1 ) コトバンク
朝日新聞、朝日新聞出版、講談社、小学館などの辞書から、用語を一度に検索できるサービスです。

 

【食べムラ】と【食欲不振】以外の言葉

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上記には【食べムラ】と【食欲不振】の関係を説明しましたが、それ以外の言葉についても掘り下げておきましょう。

【拒食】

拒食はもしかすると、病名と言っても良いかもしれません。
体に病変が認められない場合も、愛犬が精神的なダメージも受けていることも考えられます。

精神的な拒食であれば、行動診療科(人間で言うところの心療内科)を受診した方が良いかもしれません。

拒食_関係図

【偏食】

偏食は原因によって、2つの意味があるように思います。

1つ目は、嗜好による偏食です。

ご飯を食べないでおやつばかりを欲しがるような偏食は、現象としては【食べムラ】に近いもので、それまでの躾に、問題があった可能性が高いでしょう。甘やかしていた場合は、もう一度躾をし直すのが良いと思います。

偏食_関係図

筆者が【偏食】【食べムラ】を無くすようにお薦めするのは、今のためではなく、将来のためです。愛犬が介護の状態になったときに、お互いが幸せに暮らせるように、ぜひ矯正を試みられるのが良いと思います。

2つ目は、病気など引き金となって起きる偏食です。

苦しい発作や、不味い治療薬などは、容易に食べ物に結び付きます。主食を食べなく(食べられなく)なったために、結果的に食べられるものに偏りがでる偏食もあるわけです。

体力の落ちている状態での躾は、現実的には出来ないので、強制給餌などの方法が必要になってきます。あまり無理強いをすると、食べられないものがますます増えていくので、注意が必要です。

こちらの記事をごらんください。

【小食】

拒食と言う程でなく、痩せていないのならば、それほど気にしなくても良いように思いますが、シニア犬の用の高カロリーのフードを与えるなど、少量でも栄養が確保できる工夫は沢山あるように思います。

カロリー計算を一度してみると、どれくらい不足しているかが分かると思います。

【食欲減退】

老犬(シニア犬)になってからの食欲減退は、どの子にも必ず起きる事です。
歳をとると消費カロリーが減るので、無理に食べさせると肥満や、それによる成人病の心配が出てきます。

老犬(シニア犬)になったら、まずは健康のチェックをして、問題が無いようならば、【小食】と同じようにカロリー計算をし、適切なフードと量を選んであげるのが良いと思います。

小食_食欲減退_関係図

――次回は――

過去の記事中にも少し触れたことですが、食べムラ(気まぐれによるもの)を矯正する方法と、その意義について踏み込んで書こうと思います。

わが家の愛犬ピーチーは、食べムラを経験したことがありませんでした。
それが幸いして、介護の段階に入った時にはとても助かりました。
多くの方と同じように、食事では困りましたが、幸いにも困り果てるところまではいかず、最後まで楽しく過ごすことができました。

あれはお互いにとって幸せなことだったと、今も思っています。

 

――言葉としての”食”を考える・おしまい――

――食に関する、別の連載に続きます――

文:高栖匡躬
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 ▶ 高栖 匡躬:犬の記事 ご紹介
 ▶ 高栖 匡躬:猫の記事 ご紹介

――次話(別シリーズの初話です)――

既存の食べムラ対策の記事には、不満を感じます。
なぜ食べさせるのか? その理由が書かれていないからです。
そして、時間の視点も欠けています。

将来の食を決めるのは、今の食なのです。

――前話(前連載の最終話)――

3話連載の、一番重要なポイント。
大好物を守るには、大好きなご飯と、大嫌いな薬を切り分ける必要があります。その具体的な方法とポリシーを、体験を元に書きました。

まとめよみ|犬と猫の食べ物を語ろう
この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――シリーズ記事全体(全8話)の1話目です――

大好物の大切さを、真面目に記事化しました。
介護は、食べ物と一緒に過ごすことでもあります。
我々は、愛犬愛猫を――
僅かに残された大好物で喜ばせてやりながら、最後まで見送ることになります。

 ペットの食べものについての記事です

糖尿病の猫に療法食を食べさせる工夫

 

ストルバイト結晶の療法食を手作りで

 食べムラ関連の記事のガイドブック

~基礎・原因編~
愛犬の食事に関するトラブルの中は様々
用語の定義と、食べムラ・偏食に陥る原因をわかりやすくまとめました。
色々な原因で食べムラ・偏食は発生します。
まさかのときの準備のためにどうぞ。

~予防・対応編~
食べムラ・偏食の予防は、犬の一生を組み立てる長期的な意味があります。
一生食べる楽しみを残すために、今やることは?
そして、もしも起きてしまったら、どうやって対応したらいいのか?

~治療・まとめ編~
食欲不振の理由は様々ですが、過度な偏食に発展すると健康に影響があり、時に命を左右します。
飼い主さんの努力で改善できない場合は、医療としての対応が必要です。
投薬治療と、栄養療法を
――それと、食べないことの意義についても考えます。

 

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