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【ステロイド】【減薬】実は獣医師だって、そんなに詳しくない ~知っていれば怖がらなくて良い(2/3)~

f:id:masami_takasu:20180624105811j:plain撮影&文:高栖匡躬 

前回は、筆者の愛犬ピーチーを例にとって、ステロイド剤を処方する事になった経緯と、処方によって発現した副作用について書きました。

今回からは、本題である減薬について触れて行きます。
ステロイド剤は効き目は明らかなのですが、処方(服用)することによる副作用があり、またそれを止める、または減らす際にも、別の副作用があります。

この記事で扱うのは、止めるまたは減らす際の副作用で、その難しさや危険性について触れて行きます。

減薬は実質的な難しさと、情報量の少なさから来る難しさがあります。
混同されがちですが、なるべくそれを分けて語っていきます。

 

 なぜ減薬が大変なのか?

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減薬とは文字通り、薬の投与量を減らすことです。

ピーチーはステロイド剤の副作用が顕著なだけに、なるべく早く断薬をすべき状態でした。しかしステロイド剤は断薬に至るまでの減薬の過程で、離脱症状といわれる障害がでてきます。(離脱症状については次の項で説明します)

いきなり薬を断ったり、減らし方が”あまりに急”な場合は、この離脱症状で死に至る場合もあるのだそうです。

つまり、副作用のことを考えると、急いで薬の量を減らしたいという患者側の事情がありながら、その減らし方によっては、重篤な離脱症状を引き起こす可能性があるのです。

この二律背反が、減薬の難しさといえます。

またステロイド剤は病気の症状を取り除くだけの薬で、決して病気を根治する治療薬ではありません。

今症状が治まっているとしても、ステロイドを止めたら、また治療前の状態に戻ってしまう可能性があるため、本来の病気の根治が、なされているのかどうかを見極める必要もあります。

 

 離脱症状って何?

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ステロイドは本来は副腎皮質が生成しているホルモンの1つですが、何らかの病気の治療のためにステロイド剤を体外から取り込んだ場合、副腎は委縮してステロイドの生成を止めてしまいます。自らが作りだす必要がなくなるので、休んでしまうと考えれば分かりやすいです。

ステロイド剤の投与をやめると、また副腎は自らがステロイドの生成を始めますが、それが元に戻るまで3週間はかかるそうです。

つまり、減薬中は一時的に体内のステロイド不足を招くことになるのです。
離脱症状はそのステロイドの欠乏から起きる諸症状を指します。

【ステロイドの離脱症状】
発熱、悪寒、食欲減退、自律神経失調症など

文章に書くと大したことはなさそうですが、人間の場合はかなりきついらしいので、犬でも同様だとおもわれます。
また自律神経失調症は一口に言っても、関節痛から鬱病まで何でもありで、原因不明の不調の総称のようなものですから、どんな症状が出ても不思議でないように思います。

因みに、理屈の上では副腎のステロイド生成量の増加と、ステロイド剤の減薬量が上手くバランスが取れれば、離脱症状は無いのだろうと考えがちです。

確かにそうなのですが、副腎が活発に働き始める切っ掛けとして、まずはステロイドの不足状態がなければならないので、程度の差はあれ離脱症状は必ず生じます。
離脱状態があるから副腎が働きはじめる、という順番なのです。

離脱症状をなるべく少なくしようと思えば、減薬をゆっくりとやります。
しかし、ゆっくりやるという事は、ステロイド剤の副作用の期間を長引かせる事でもあり、また減薬の離脱症状を長引かせる事も意味しています。

現在のステロイド剤の治療は、初期に大量に投与して、投与期間を短くする方法が、少量を長期間与えるよりも良い方法とされているそうです。

また投与期間が短い場合は、減薬の期間も短く設定するようです。

 

 減薬に関する方法論

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ステロイド剤の減薬方法について調べてみると、医師によって考え方がまちまちで、統一した方法論は確立されていないことが良くわかります。

前の項にも書きましたが、減薬の方法は大きく分けて2つ。
副作用(体へのダメージ)回避に注目した早めの減薬と、離脱症状を緩和するためにゆっくりとした減薬です。

しかし、2つだけというわけでなく、その中間に幾つもの考え方があるようです。

ピーチーに関して言えば、通常の服薬ではなく、1日12錠(朝6錠、夜6錠)というステロイドの大量投与を行っていましたので、そこからの減薬はとりわけ難しいものでした。

まずは掛かりつけの病院の副院長先生から「3日で2錠ずつ減らすように」と指示を受けました。しかし1日に2錠まで減ったところで、明らかに調子が悪くなったので、今度は院長先生に相談すると、「3日に2錠減らすのは急すぎる。一週間で2錠減らすのが妥当」との事。

1つの病院内でさえ意見が違っているのです。

親しくしている近所の動物病院で、セカンドオピニオンを求めたところ、
「私ならもっとゆっくりやる」
とのこと。しかしピーチーの副作用の酷さを伝えると、
「そういう事情があるのなら、急いで減薬するのもやむなし」
との意見。

なぜそんなに意見が分かれるのか訊ねたところ、
「減薬は色々な条件が絡むので難しく、100人の医師がいれば100通りの方法がある」
との回答でした。

因みに、インターネットで調べた例では、2~3週間で10%ずつ減らすというのが、一番緩やかな減らし方でした。
(ただし、これは人間での処方例で、犬に対してのものではありません)

ここで重要なポイントは、どの減らし方も素人の考えた思いつきではなく、専門家が何らかの理由に基づいて出した意見だということです。

専門家でも意見が食い違うのですから、本当に色々あるということです。

 

 一番の問題は、情報不足

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実は減薬には、先に書いた二律背反(副作用と離脱症状のトレードオフ)以外にも、その対応を難しくしている原因が一つあります。
実はそちらの方が大きな問題なのかもしれません。

それが何かというと、ステロイドの減薬方法について情報量があまりにも少なすぎるという事です。

これは我々飼い主側にとって、得られる情報が少ないと言う意味だけではありません。獣医師が持っている情報も少ないのです。情報の少なさは、経験の少なさと言い換えることもできると思います。

獣医師はよく、”様子を見ながらやっていきましょう” という言葉を使います。
それでは、その ”様子” というのは何なのでしょうか?

言うまでもなく、日々の様子を見るのは獣医師ではなく、飼い主の役割です。
飼い主が愛犬の状態見て、調子が良いとか、調子が悪いとかを判断するわけです。
異常を感じ取った場合は、どうおかしいのかをきちんと理解し、それを獣医師に報告し、指示を仰ぐことになります。

しかしことステロイド剤の減薬に関しては、どういう状態が正常で、どういう状態が異常なのか、飼い主は事前に知らされることはありせん。

当たり前です。獣医も知らないのです。

高熱が出た。ぐったりとしていて動けない。意識が無い――
そんな、誰でも一大事と気づく異変があれば、明らかにそれは異常です。

しかし、例えば微熱が続いているとか、なんとなく元気が無いとか、食欲が無い、体が震えているという状態は、獣医師にも異常かどうかの判断がつかないのが、実情だと思います。

念のために申し上げると、筆者は獣医師を責めているわけではありません。

例えば我々人間を例にとると、人間というただ1種類の動物を診察するのでさえ、内科、外科、消化器科、循環器科など幾つもの科が細分化されて、それぞれにスペシャリストを揃えなければ、正確な判断ができないのです。

しかもそれで万全とはとても言えない事は、多くの誤診や医療過誤で明らかです。

獣医師は外科と内科を兼務して、しかも犬や猫だけでなく、ウサギや鳥や亀やトカゲまで診ているのですから、ステロイド剤の減薬と言う、全体から見れば針の孔のような狭い分野に、専門性を求めるのは土台無理というものです。

やはり飼い主自身が情報を集めて、自分で理解し、分析し、獣医師に相談しながら最後は自分で判断をしなければならないのだと実感します。

しかし、誰にでもそれが出来る訳ではありません。
それを助けてくれるのが、他の飼い主さんが書いた体験談だったり、闘病記だと思うのです。特に命に係わる病気では、他の方の失敗談は、絶対に参考にすべきです。

今回はここまでにします。
次回はケーススタディとして、ピーチーの減薬の経過をまとめようと思います。

 

――ステロイド/知っていれば怖がらなくて良い(2/3)・つづく――

文:高栖匡躬
 

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