うちの子がうちにくるまで|No.8 - 1
今回は、片目を失った犬を、保険所から引き取ることにした夫婦のお話です。
犬との出会いはいろいろとあって、迎える時の葛藤も様々ですね。
犬にハンデがある場合は、特にその葛藤は大きいはずです。普通ならば――
それをものともしなかった、優しい心を持った飼い主と、犬とのお話。
本話は、2話構成の前編です。
保護犬を迎えたい|ハンデ(障害)のある犬と暮らせるか?|経験者の話を聞きたい
ハンデのある犬との出会い
それまであたしは、旦那のたけしと、5匹の可愛い小型犬に囲まれて、楽しく暮らしていた。
『なぜ5匹も?』と、思われるかもしれないね。
あたしは昔からとにかく犬が好きで、実家にも犬がいたの。その実家で産まれた子を3匹、いとこの家に産まれた子に、ブリーダーさんのところの子を譲ってもらっていたら、あれよあれよと5匹になってしまった。
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それでも懲りない犬大好きなあたしは「もう1匹くらい迎えてもいいなぁ」と、ぼんやり思うようになっていた。
そんな時、たまたまたけしの作業服を買いに、大村(長崎)まで行くことになったの。そしたら、そのお店の近くに保健所があると聞いて「保健所ってどんなとこなんだろう?ちょっと行ってみようか」と軽いノリで寄ってみた。
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何年かやってるTwitterには、保健所の公示が載ってて、そこに可哀想な犬や猫がいると知っていたし、どんな所なのか興味もあった。でも、好奇心だけで初めて行ってみたそこは、異様な臭いと犬の悲しそうな声で溢れていた。あたしは、正直その雰囲気にちょっとたじろいでしまって……
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「子犬はそっちにいますよ」
保健所の女の職員さんからそう言われて、指された方を覗いたら、10匹くらいの小さな犬達が居た。そしてその中の、毛がふわふわした1匹の子犬が、なぜかずっとあたしのことを見つめてきた。
あたしの実家には、生まれつき片目盲犬の《タモさん》がいるから、はじめてこの子を見た時、すぐに気づいた。
「あっ、この子、目がない」って。
隣にいるたけしに「この子、目がないね」って言ったら、たけしは「そうやねぇ」と言っただけで、ちっとも驚いてなかった。
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その10匹は可愛い子ばかりだったけど、見つめてきたその子だけにあたしは釘付けで、今思うとその子に一目惚れだったんだよね。
その時には既に、「この子を連れて帰りたい」って心の中で強く思っていた。
でも、5匹も先住犬がいるし、現実的に飼うのは無理かなって、諦めモードにも入ってしまった。
実は前に、ブリーダーさんから成犬を迎えてみたことがあって。その成犬は、先住犬との相性が悪く、一緒に暮らすことが出来なかった。今は、その成犬の子も、新しい里親さんのところで幸せになっているけれど、あの時のように、またすぐ手放すことになるのが怖くて、踏ん切りがつかなかったの。
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「いろいろと考えてから、また来ます」
保健所の職員さんにそう言って、帰ろうとした時だった。
「キャンキャン」
突然その子だけが、あたしたちの方を見て2回吠えた。
「ダメダメ、後ろを向いたらダメ」
その子のその切ない声に、振り向きたい気持ちをグッ押さえて、私は必死に前だけ向いて、車に乗った。
――旅人の話・後編につづく――
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犬種:ミックス
飼主:asuka
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――うちの子がうちにくるまで・次話です――
夫婦はその犬を、旅人(たびと)と名付けた。
もう旅をしなくて良いと、思いを込めて。
犬というのは逞しい生き物だ。
体がどこかおかしくても、ちゃんと適応して生きてくれる。
楽しそうな笑顔だ。屈託のない笑顔だ。
飼い主と共に、生を楽しむ、溢れ出すような笑顔だ。
――うちの子がうちにくるまで・前話です――
初めての犬が大型犬
振り返ってみると、犬はまるで運命のように家にやってくる。
その子が産まれる確率は? 出会う確率は? 家族は賛成? 経済的な余裕は?
掛け算をしたら、とんでもなく低い確率だ。
みんな、奇跡の子と、一緒に住んでいるんだよ。
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この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――うちの子がうちにくるまで、第1話です――
昔からいつかはワンを飼いたいと、ずっと夢見ていたんです。
でも、夢と現実の差はでっかいですよね。結局はずっと、実現できずじまい。
――そんな夢を叶えた飼い主さんのお話。
犬との出会いは運命に似ています。
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保護犬たちの、うちの子がうちにくるまで
犬は必ずしも。家族全員に歓迎されて家に迎えられるわけではありません。
保護犬の場合は、特にそうでしょう。
“飼いたい!”から始まる愛情もあれば、飼ってから芽生える愛情もあります。
先代犬を亡くし、ペットロスだった飼い主。
しかし――、ある日のこと――
「家に帰ったら、子犬がいた」
さて、その犬とは?
愛猫を亡くした作者。
供養をした翌日、ふらりとペットショップに立ち寄ると、そこには[ただであげます]と張り紙された犬がいました。