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【前庭疾患・闘病記】愛犬を襲った憎らしい病魔 ~大好きな歩みが奪われて~

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Mackの闘病記:前提疾患 編  
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撮影&文|奥村來未 (本記事は2017年9月に執筆されたものです)
 
こんな方に
愛犬が前提疾患と診断|獣医師も治るのかどうか分からないと言う|悪化するとどうなるのか?|経験者の話を聞きたい

 はじめに ー 発病 ―

今日は私の愛犬であり、弟でもあるMackが罹った病気、前庭疾患について書こうと思います。私は、私の大切なMackを歩けなくしてしまった、この病が本当に憎らしいです。

小学生の時にやってきたMack。その時からMackは私の大切な弟になりました。Mackと私は、とても仲良しの姉弟で、Mackは目が見えなくなる前は、私と追いかけっこをするのが大好きでした。そして目が見えなくなってからも、家中どこまでも私の後ろをついて歩く子でした。

2016年初夏、それは起こりました。

【目次】

 

 大切な弟から歩みを奪った憎い「病」 前庭疾患

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Mackが17歳になって、間もないある日。Mackは突然、真っすぐ歩けなくなりました。ヨタヨタとびっこを引いたように歩き、首をやや右へ傾げたような仕草をするようになったのです。がんばって歩いても、ヨタついたり、転んだり、クルクル回るようになりました。

ヘルニアを過去に二度やっていて、痛みがあった時は何かを訴えてくるような鳴き声をあげていましたが、そんなそぶりもないし、腰回りを触っても痛がったりするわけでもないので、ヘルニアとは違うということはすぐにわかりました。でも歳も歳だし、足の関節が痛むのだろうか?と思っていました。

その症状から何日か過ぎ、私はやはり病院に連れて行こうと思いました。そして通院日前日に、獣医師に症状をしっかり伝えたいと思い、インターネットで「老犬、首の傾き、歩行異常」と検索してみたところ、当時のMackの症状に近い病気が見つかりました。それは「前庭疾患」という聞き慣れないものでした。

 

 前庭疾患とは

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そもそも私は、「前庭」という言葉の意味を知りませんでした。その日はほとんど眠らずにインターネットで調べ、結局それが脳起因の疾患であることが分かってきました。

調べてみて分かった症状は、次のようなものです。

●突然症状がでる突発性の場合が多い
●首を片側に傾ける斜頸(捻転斜頸)になってまっすぐに歩けなくなる
●眼振
●食欲不振・嘔吐
●睡眠障害

すべてのことが、当時の私にとっては恐ろしく感じましたが、確かにその頃のMackの様子は、微かに目を回した時のように眼球が右へ左へ揺れる動き(これが眼振だった)や、眠りが浅く夜中に何度も起きる、眠いのに眠れないなど、歩行以外でも合致することばかりに思えました。

実際、かかりつけの医師からも「前庭疾患がみられる」との診断でした。しかし突発性前庭疾患の場合は軽度の場合、改善することもあると言われ、どうか改善してくれと願い続けました。

 

 病状が悪化したところに、急性膵炎

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私の願いもむなしく、Mackの状態は改善するばかりか、みるみる悪化していくばかりでした。更に悪い事は重なるもので、前提疾患の症状が一番酷くなって来た頃に、急性膵炎を発症してしまったのです。

Mackは約2週間集中治療室で、寝たきり入院生活を送ることに――
その結果、立つ・座る・歩く……すべての動きができなくなってしまいました。

歩けなくなり、寝たきりになってからはMackもストレスがとても大きかったようで、なかなか食事も受け付けてくれず、大きな涙をこぼして吠え続ける日々が、しばらく続きました。

急性膵炎の闘病記はこちらにあります。これも大変な病気でした。

歩けなくなったMackに、せめて少しでも動けるようにと車椅子を購入しました。Mackを車椅子に乗せてみましたが、Mackのストレスはなかなか改善されず、体の方は徐々に回復していても、心は折れたままのようでした。

しかし、こちらが介護に慣れてくると、Mackも自分の体の状態を徐々に受け入れたようでした。更には歩けないことを利用して、少しでも離れたら呼びつける・眠るときは絶対に身体のどこかを密着させないと眠らない等、今まで以上にうんと甘えてくるようになったのです。

 

 そしてMackは――

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家族全員で決めたことは、後ろ向きな事は考えないようにしようという事。とにかくMackができたこと、例えば「食べること」や「排泄」でさえも大げさに褒め、明るく接しすることにしたのです。

その結果Mackは、また座れるようになるまで回復。
これは本当にうれしかった……

現在はというと――
残念ながらMackの症状はもっと進みました。病魔はなかなか手加減をしてくれません。首の斜頸が酷くなり、また座れなくなってしまっています。

けれど私たち家族は諦めないで、Mackが調子のいい時には、車椅子に乗せるようにしています。また少しでも改善してくれたらいいなあと思いながら、みんなで見守っているのです。

 

 憎たらしい病魔

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しかし、いつも一生懸命に戦うMackを見ていると、ただ病を憎んでばかりでは行けないんだという気持ちになってきます。今では私も家族も、なんとかこの病とうまく付き合う方法を考えようと、日々模索しています。

何より、18歳になった今でも決して諦めず、病と闘うMackは、本当に逞しく、私自身も勇気や元気を貰う毎日です。

皆さんも、愛犬が病気になったとして、どうか諦めないでください。愛犬は前と少しもかわらず、いつまでも可愛いままでそこにいるのです。どうかあなたの心が先に、愛犬を見捨ててしまうことがありませんように。

 

 前庭疾患をもっと知るために 

特発性前庭疾患について

特発性前庭疾患とは

平衡感覚を司る前庭神経に異常が発生し、斜頸や眼振など前庭神経障害の症状が起こる病気の中で、原因が特定できないものを言います。
前庭神経は末梢神経系と中枢神経系に分けられ、耳の中(内耳)や耳と小脳や延髄をつなぐ前庭神経に異常があるものを末梢神経障害、延髄や小脳に異常があるものを中枢神経障害と呼びます。特発性前庭疾患は末梢神経障害(内耳や前庭神経の異常)で、弱りがある側に頭が傾き、眼振やふらつき、グルグルと回る行動などが見られます。
(以上、抜粋)

突発性と特発性

前庭疾患を説明する際に、よく用いられる用語が突発性と特発性です。
突発性は『急に発生する病気』を言い、特発性は『原因不明の病気』を言います。
突発性かつ特発性であつ場合が多いので、似て非なる用語の両方が用いられるということです。

他の症例(別の犬の闘病記)

前庭疾患は病名でもあるのですが、症状の名前でもあります。
この病気は原因がきちんと特定できないので(特発性ということ)、長引くことがほとんどのようです。
例えば下記は、『中耳・内耳炎による前庭症状を伴った顔面神経麻痺』と診断された事例の闘病記です。こうなるとどこまでが病名か分かりません。

(記事の内容)
突然元気をなくした”れん”。
心配で病院に行くと「顔が片方、下がっていますね」と。
診断は、内耳・中耳炎による顔面神経麻痺、それも前庭症状を伴う――
食いしん坊だったのに、痩せていくれん。
それは、6年に以上に渡る通院生活の始まりでした。

 

――了――

文:奥村 來未
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まとめ読み|Mackの闘病記 ~膿皮症、前庭疾患、急性膵炎~
この記事は、まとめ読みでも読むことが出来ます。

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突如この病気に襲われたMackの闘病記です。

 

 

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