犬を飼うということ

いつまでも君と……

突然のインターフォン ~お盆に起きた奇跡:リンちゃんとの再会(1/3)~

f:id:masami_takasu:20180913234155j:plain文:樫村 慧

今年の夏は暑かった。かなりしんどい夏だった。

そんな酷暑の中、暑さも吹き飛ぶようなことが起きた。「こんなこと、あるんだなぁ…」そう呟いてしまうような奇跡があった。 

愛犬のラフが亡くなってから2年が過ぎた。その間に私は、ラフと暮らした日々のことをエッセイとして残してきた。
これからご紹介する”リンちゃん”は、その幾つもあるエッセイの1つに登場した、思い出の散歩仲間だ。

リンちゃんは、川に捨てられていたところを助けられ、心優しいご家族に引き取られた女の子。白いソックスを履いたような脚が印象的な子だった。
このように書くと、多くの方は華奢な小型犬、たとえばパピヨンとかチワワを思うのではないだろうか?

しかしそれは違う。
リンちゃんは(推定)土佐犬である。
可愛らしいイメージと対極にある、超大型犬。しかも闘犬のイメージが強い。

私も私の家族も、リンちゃんの事が大好きだった。
だから忘れられないのだ。

リンちゃんのことは、以前の記事『白いソックスを履いたリンちゃん』を読んでいただきたい。

 

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犬猫のサイトに携わることになって半年を過ぎた頃、たまたま本職(医療系)の先輩に、サイトの話をした事があった。それまではサイトに携わっている話を、職場の人に話すことはなかったのだが、なぜかその先輩にだけは伝えることになったのである。

私の記事を読んでもらうつもりなど、サラサラなかった。しかし、サイトに興味を持ってくれた先輩が、密かにサイトを訪問し私のエッセイを読んでくれたらしく、ある日こんなメールが届いた。

「土佐犬のリンちゃんって、もしかして◯◯さんのリンちゃん?私の友達だよ。長男の同級生のうちのリンちゃんのことだと思う」

犬友と言っても、犬のお散歩時に話をする程度で、リンちゃんの飼い主さんの苗字までは知らなかった。でも、「きっとあのリンちゃんのことだ」そう思うと胸の鼓動は加速した。

「リンちゃんは今でも元気にしていますか?」
そう書いた私の問いかけに、戻ってきた先輩からのメールには「亡くなったらしいんだよね。お母さんかなり落ち込んでたの」という文字。

ああ、ラフと同じようにリンちゃんまでも亡くなってしまったていたか……
そんな予感もあったが、一方で、リンちゃんだけでも元気で居て欲しい、という気持ちだった。

そんなメールでのやり取りの後、私たちはそのことについて話すこともなく日々は過ぎた。その先輩とは勤務のシフトが違っているので、私たちが職場で顔を合す機会はあまりないのだ。

 

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職場の夏休みが終わった次の週、私たちは久しぶりに同じシフトになった。
仕事中に先輩が、こっそり私に声を掛けてきた。

「ほら、あのリンちゃんの◯◯さんにこの間、久しぶりに会ったんだけどさぁ。記事のこと話したらすごく喜んでたよぉ。ラフちゃんのお母さんって、覚えてたし」

私は自分の記事を喜んでいただけたことを嬉しく思った。
勝手にリンちゃんを記事に書いたことで、不快な思いをされていないか心配をしていたからだ。先輩からの言葉に、心底ホッとした。

その日の仕事は、先輩のおかげでいつもよりも楽しく、あっという間だった。
仕事終わり、いつものように、お夕飯の買い物を少しだけして、帰宅すると、お盆中のため家には長男も二男も在宅。

さて、オヤツにしようとアイスを冷凍庫から出して食べ始めた瞬間のことだった。
――ピンポーン――
とインターフォンの音。

宅急便かな?
応答してみるとスピーカーからは、「◯◯ですが」
「⁇………‼︎」

 

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急いで玄関へと向かうと、見覚えのあるお顔が――
「リンちゃんの?」
そこには、いつもリンちゃんをお散歩させていたお父さんが立っていた。
「えっ、どういうこと?」
「何が起きているの?」
私の頭は混乱した。
お父さんの少し後からは、少し遅れてお母さんが花束を抱えてやってきた。

お母さんと顔を見合わすと、お互いに涙が出てきた。
何年振りだろう、お会いするのは。

「リンのことを書かれた記事を読んで。ラフちゃんのお父さんのことも書いてあって。どうしても会いに行きたいと思って」
と、ご夫婦。「お盆だし、お線香をあげさせてもらおうと」

――そうか、あの記事が引き合わせてくれたのか。
「とにかく、お上がり下さい」
そう私は言った。我が家は散らかり放題だったが、とにかく主人とラフの祭壇の前へご夫妻をご案内しようと思った。

「リンの話を読ませてもらって、びっくりして。そしたら、娘がサイトにラフちゃんの話もあるって見つけて。それを読んだら、もうどうしてもお線香あげに行こうってお父さんが言い出して。ラフちゃんとリンが会わせてくれたんだねぇ」
お母さんの言葉に、私も頷いた。

そこから懐かしい話へと移っていった。

――つづく――

文:樫村 慧

――次話――

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

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