犬を飼うということ

Withdog 犬と飼い主の絆について

【獣医師の無念】いちばん辛いこと ~助けられるのに、助けられない命のこと~

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ここは『ハナちゃんの動物病院』(犬版)です。

今日は、わたしのママのお話。何だか、とっても辛いことがあるんだって。

獣医さんは大変だなって思うんです。
病気の治療について、飼い主さんに色々とご提案をするのだけれど、最終的にどんな治療をするのかは、飼い主さんの判断になりますよね。

ときどき、とっても残念な選択をされてしまうことがあるんです……

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撮影&文|ハナちゃんママ この記事は2016年1月に執筆されたものです。
 

 私がいちばん辛いこと

私が仕事をしていて、いちばん辛いこと。
それは、助けられる命がいろいろな事情で助けられないこと。

そして、治療をすることを「かわいそうだ」と言われてしまうことです。

例えば、骨折しているペットに手術を勧めた時、
――かわいそうだからやりません。

重症のペットに入院を勧めた時、
――入院はかわいそうだから家でみます。

治療の注射を打った時、食欲のないペットに強制的に流動食を与える時、その他、いろんな時に飼い主さんから「かわいそう」と言われることが結構あります。

 

 獣医師は可哀そうなことをしているの?

私たちがやっていることは、飼い主さんからしたら、そんなイメージがあんだと、悲しくなります。

一生懸命治療しているときに、「かわいそう。やらなきゃダメですか?」と、言われると、一気に悲しく、がくっとなるんです。

今日も、朝一番の電話で言われました。
昨日から、糖尿病で入院しているワンちゃんの飼い主さんからです。

このワンちゃん、かなり水を飲むと来院しました。

調べてみると、血糖値が、振り切れるくらい高くなっています。Hiの表示です。
Hiの値がでるのは、血糖値が、600mg/dl以上の時です。  

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尿糖もでています。
ケトン体もでてきています。
脱水もあり、糖尿病が進行しています。

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インシュリン治療をしなくてはなりません。

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これからずっと、朝晩、毎日、インシュリンの注射を飼い主さんがやっていくことになります。

大変なことですが、やらなければ、確実に命にかかわります。

 

 どうかしっかり病気に向き合って欲しい

まだ、今は、食欲も元気もあるので、深刻さが理解できないのかもしれません。
かわいそうだからこそ、しっかり治療して、1日でも長く一緒に暮らしてもらいたいです。

もし、自分の息子さんや娘さんが病気になって、治療がかわいそうだから治療しないで見殺しにする親はいないでしょう?

ペットは、元気な時は、家族の一員だけど、病気になると突然、しかたなく飼った犬に変貌します。これまでに何度も体験した、辛い事です。

助けられる命が助けられない、もどかしい気持ちです。悔しいです。
でも、これが現実です。

飼い主さんにも、飼い主さんの事情があるのだから。

我々は今のペットの状態を説明して、ここから脱するには何が必要か、いろいろな選択肢を提示し、飼い主さんに選んでもらい、それに従うだけなのです。

飼い主さんが、治療を続ける気になってくれるといいのですが……

(追加報告)
結局、この日、このワンちゃんは、治療中止という飼い主さんの判断により退院となりました。

残念です……

 

 読者とのQ&A

■読者からのコメント:

ハナちゃんママさんのお言葉は、他でも聞きました

僕が一番信頼しているのは、うちの近所の獣医さん。
実は、主治医の先生とは別なんです。
(まだ開院して3年で、設備が十分でないので、主治医は近所で一番古くからやっている動物病院にしています)

この獣医さん、近所では結構評判が悪いんです。
それはずばずば言うからだそうです。勧めた治療を行わない飼い主さんには、「これやらなかったら、死にますよ」という感じ。

でも、本当に動物好きで、熱意があって、海外の論文も沢山読んでいるし、説明を求めたことには、分厚い文献を取り出して丁寧に答えてくれます。そして診たてを間違えた時も、取り繕う事はせず、「私が間違えた」と正直に言ってくれます。
だから大好きで、暇そうな時には雑談しに行ったりします。

実は先日、相性が合わない飼い主さんの犬は、どうしても助けられないって嘆いてました。
寂しいですね。
でも、相性の合う飼い主にとっては、愛犬の病気に正面から向き合ってくれる獣医さんは、何よりの支えです。

どうか頑張ってくださいね。
って、素人が言うのもおこがましいのですが。
■ハナちゃんママからの回答:
コメントありがとうございます。
愚痴ってしまいすみません。
いろいろありますけれど、今日も頑張って仕事しています。
明日も頑張ります。

 ●

■読者からのコメント:

ハナちゃんママさんの、お気持ち良くわかります。
私も、先代犬のコーギーを重責てんかんで、10才の誕生日に失いました。
6才から、突然てんかん発作を起こし、薬を飲みながら元気に生活してたのですが、9才過ぎから?発作を起こす間隔が短くなり、重責てんかんも度々起こすようになりました。いつもだと、重責てんかんを起こしても、病院で処置してもらい、夕方まで入院させると、元気になってたんです。でも、この日は、先生が処置をしてくださっても、てんかん発作が止まらず、厳しいですね!と、言われ入院させました。

私は、かわいそうでたまらず、先生に、安楽死も考えた方がいいですか?と、聞いてしまいました。先生は、頑張って治療続けてみましょう!と、おっしゃってくださって、治療をお願いしました。
残念ながら、その翌日に病院で亡くなってしまいましたが、私達には、やってあげれることは、全てやりきった!というおもいがありました。きっと、無理に連れてかえっていたら、後悔したと思います。ジ

病院にお迎えに行ったら、先生が、あと2~3年は、生きさせてあげたかった!と、無念そうにおっしゃったのが、今でも思い出します。
だから今の子は、具合が悪くなったときでも、先生と納得いくまで話し合い、先生が最善と思われる治療をしてもらっています。
ハナちゃんママさん、頑張って下さいね(^-^)応援しています。d=(^o^)=b
ハナちゃんママさんの、思いが飼い主さんの、心にきっと届く日が来ると思います(^^)
■ハナちゃんママからの回答:
コメントありがとうございます。
凹んでばかりいないで、これからも頑張っていきます。

 ●

■読者からのコメント:

わたしたち飼い主からすると、熱意を持って治療してくださるのはとてもありがたいことです。
うちの主治医の先生は、とても熱心で一生懸命できることをしてくださるのは方で、昨年からお世話になっています。
初診の際、先生にできる最善のことをしてほしいとお願いし、先生はそれに応えてくださいました。
なのでうちの子は、今元気に過ごせていると思っています。

病院に来院されている方を見ていると、いろんな方を見受けます。
中には治療をしないという方もいらっしゃいますが、それでも病院に連れてきているだけまだましなのかとも思います。
ハナちゃんママのように、家族を助けるために真剣に考え、治療してくださる先生がおられるから、長生きすることができます。
本当に感謝しています。
ハナちゃんママ、頑張ってください!
■ハナちゃんママからの回答:
コメントありがとうございます。
時々、こんな事で嘆いてしまうことがあります。
しょうがないのですが、悔しい思いが消せません。でも、前をみて頑張ります。
ありがとうございます。

ハナちゃんママからのアドバイス

飼い主さんのいろいろな事情により、治療が継続できない場合が時々あります

治療をすれば助かる病気なのに助けられない。
やっぱり辛いケースです。
時々、我々が耐えられず、低料金や無償で入院治療をする場合があります。
なんとか助けてあげたい、そう思ってのことですが、これにも限度があります。

ペットを飼い始めたら、病気や介護も覚悟して準備をしておいてもらいたいです。

【Withdogより】ここでご紹介したのは、病気を疑ってみる初歩的な知識です。もしもご家庭のワンちゃん、ネコちゃんに該当する症状があったら、すぐに動物病院を受診なさってください。

――いつもやさしい、ハナちゃんママの動物病院はこちら――
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 日光どうぶつ病院

ハナちゃんママが獣医さんになった理由は?
ハナちゃんが看板犬になった理由は?

こちらをどうぞ
【獣医師が犬を飼うということ】ハナがうちにうちにくるまで 

 ▶ハナちゃんママ:犬 の診察記のご紹介
 ▶ハナちゃんママ:猫 の診察記のご紹介

――次話――

【アトピー】【アレルギー検査】
カイカイが悪化しちゃったよ

今日から4話連続で、ハナちゃんのアトピーのお話です。
最近、ますますカイカイのハナちゃん。
検査をすることになりました。
前回の検査はもう7年前で、それから研究も検査方法も進歩しています。
さて、結果はどうなるでしょうか?

――前話――

【腫瘤】
うちのハナの腫瘤

なんとハナちゃんの乳頭に腫瘤(しこり)が見つかりました。
乳腺腫瘍でしょうか?
今日はその検査の過程をお知らせします。
因みにうちの子は避妊をしなかったので、何度も乳腺種ができました。
幸いどれも良性でした。

まとめ読み|【犬版】ハナちゃんの動物病院 ④
この記事は、まとめ読みでも読むことが出来ます。

 

――ハナちゃんの動物病院(犬)・初回の記事です――

【尿石症】
膀胱炎や、尿経路の結石による痛み

膀胱炎などの症状から、発覚します。
場合によっては手術が必要になり、命にかかわることもある怖い病気。
意外に多いし、予兆もあるので、気を付けてあげてください。

 ペットの闘病についてのヒント

臨床現場から見た、良い獣医師の選び方

”良い”獣医師選びは、飼い主の責任でもあります。
目的は常に動物の病気を治すこと。
そのために獣医師は何をすべきか?
そう考えると、自然に”良い獣医師”とは何かが分かってきます。
現場を知るからこそ出来るアドバイス。

 出典

※本記事は著作者の許可を得て、下記のブログを元に再構成されたものです。

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