穀物と野菜は悪者なのか?(1/4)
ネット上にはペットの食事に関する記事が沢山ありますね。
あまりにも膨大すぎて、何を信じてよいか分からない方も多いと思います。
幾つもの記事を読んでいるとやがて気づくのですが、ネットの記事には良いものが沢山ある一方で、根拠もない怪しげな記事も同じくらい沢山あるように感じます。うっかり信じると、健康被害につながりかねないようなものまで。
今回から4話で、既存のフードの記事を題材に、どこに気を付けて読むべきことを検証しながら、本当に必要な食べ物について考えてみたいと思います。
今まで、有害物質を食べていたの?
【目次】
愛犬が病気になると気になってくるドッグフード
愛犬が病気をすると、とたんに気になってくるのが食事のことです。
若くて元気なときには、何でも良く食べてくれたし、少々変なのもを食べさせても体を壊すこともありませんでした。ずっとドッグフードに頼りっきりで、時々肉とか野菜をトッピングしてあげて。それで何の問題も無いと思ってました。
きっと、大勢の飼い主さんが、似たようなものではないでしょうか?
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しかし、歳をとって病気をして、食が細って、時には食べないことがあると、とたんに気になってくるんのです。愛犬の食事のことが。
少ししか食べないし、好みも偏ってくる。だから飼い主としては、なるべく良いものを食べさせてやりたくなります。
我が家では手間がかかる手作り食はとても無理で、ドッグフードに何かをトッピングしてあげるのがせいぜいでした。だからベースになるドッグフードは、なるべく良いものを選んであげたいと思いました。
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――で、調べ始めたのですが。
そうしたら……
疑問が続出でした。
何がと言うと、ネット上にある食事関連の記事にです。
中には獣医さんが監修したというものもありましたが、そういう記事も含めて、読めば読むほど疑問は大きくなっていきました。
ドッグフード派の中にも派閥があるようだ
犬の食事に、ドッグフード派と手作り食派があることは以前から知っていました。
以前にはそれを掘り下げて、記事にもまとめたこともありました。
(この記事は、近日公開しようと思っています)
しかし今回取り上げるのは、ドッグフードです。
狭い範囲のことと思っていたら、調べてみると思っていた以上に色々な製品があるようです。主に海外のものですが、これまで聞いたこともなかった、高価なプレミアムフードが沢山ありました。
こんなことは、問題意識を持った飼い主さんにとっては、最早常識らしいですね。
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海外のフードといえば、筆者は以前はヒルズとサイエンスダイエットくらいしか思いつかず、しかもヒルズがメーカー名で、サイエンスダイエットはヒルズ社の商品の1つだったなんて、調べ始めるまで気付かずにいました。随分と勉強不足だったと当時反省したことを思い出します。
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で、そのドッグフードですが、世の中には実に幅広い考え方があって驚かされました。
特に驚いたのは、プレミアムフード推進派の方々がお書きになった記事です。
随分と通常のドッグフードを、批判していらっしゃるのです。まるで毒物のように書いているものまでありました。
本当かな? と思いながらも、幾つも記事を読んでいきました。
記事の感想はと言うと、最初は半信半疑でしたが、読み進めるとその理屈にはなるほどと頷くことが沢山ありました。
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「なるほど、分かったぞ。プレミアムフードの中から、ピーチーに会うものを選んでやれば良いということか」
「でも、ピーチーは今療養食だから、それに合うプレミアムフードが見つかるかな?」
最初は単純に、そんな風に考えました。
そう、最初のうちは――
ふむふむ、穀物と野菜は百害あって一利なしか……、え?
ドッグフードを調べようとネットで検索すると、比較サイト、評価サイト、専門家が書いたと思われるコラムや論評が沢山でてきます。それらの多くは、ペットショップや量販店で売られている一般的なドッグフードを批判しています。
以下はそれらの記事の言い分です。
一般のドッグフードはここがダメなんだって
穀物の含有量が多い
・穀物の消化には、内臓に過分な負荷がかかる。
(消化されないという極端な記述もあり)
・穀物は糖に分解されるだけ。血糖値を不安定にする害はあっても、犬の体に貢献は無い。
・穀物を与えていると、犬の体に重大な障害が現れる可能性あり。
※トウモロコシは穀類の中でもとりわけ批判の対象。
※野菜への批判も多いが、そのそも製品に野菜が含まれていないので、製品自体には批判が及んでいない。
※イモ類はあまり批判はされていないものの、野菜の中でもイモ類はましでしょうという表現はある。
※米はアレルギーが少ない分、穀類の中ではましという位置づけ。
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危険な薬剤が使われている
(保存料や酸化防止剤まみれという過剰な表現もあり)
・保存料や酸化防止剤には、発がん性物質がつかわれる可能性あり。
・要注意な薬剤は、ソルビンサ酸カリウム、BHA、BHT、没食脂酸プロビル
だからプレミアムフードを薦めるそうだ
一般のフードを批判する記事は、結論として上記のような問題の無い、プレミアムフードを推奨するという結論で結ばれています。
尚、上記の諸問題は、批判を箇条書きしただけに過ぎません。
記事を文章として読むと、その批判は鬼気迫るものがあり、これを食べているとすぐにでも愛犬が病気になりますよというくらいの勢いです。
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筆者は段々心配になってきて、当時ピーチーが食べているフードの袋を取り出しました。成分表示を見るためにです。
「これは獣医さんから勧められた療養食。まさか、これには変なものは含まれていないよね?」
そう思い、念のために見ただけ……
のつもりでした……
今、愛犬が食べているフードは粗悪品なのか?
当時ピーチーが食べていたドッグフードは、ロイヤルカナンの消化器サポート(低脂肪)でした。
もともとは医師の指定で、脂肪分を極限までカットしたスペシフィックのCRD-1を食べていたのですが、急にそれを食べなくなって以来、CRD-1の次に脂肪分の少ない消化器サポート(低脂肪)が、限られた選択肢の中で最良のものでした。
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消化器サポート(低脂肪)は、今はネット通販で買う事はできますが、通常は一般販売はされておらず、主に動物病院で販売される療養食です。筆者はかかりつけの主治医を信頼していたので、それまで何の疑いも無く与えていて、成分表示を読んだのはこの時が初めてでした。
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読み始めてビックリです。何と一番最初、のっけから、穀物である 米 が登場したのです。そして次の家禽(鶏、七面鳥)を挟んで、また穀物の 大麦と小麦 が続き、その次も比較サイトで危険性があると指摘されている、加水分解動物性タンパク が、その次もヒートパルプ、動物性油脂 と続きました。
止めは、保存料として ソルビン酸カリウム、酸化防止剤として BHAと没食子酸プロピル 。なんとこれは、危険物質のオンパレードではありませんか。
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下記がその成分の一覧です。
(赤字はネット上の情報で、危険物質と目されるもの)
ロイヤルカナン 消化器サポート(低脂肪) ドライ
米、家禽*肉、小麦、大麦、加水分解動物性タンパク、ビートパルプ、動物性油脂、酵母、フラクトオリゴ糖、サイリウム、魚油、酵母エキス(マンノオリゴ糖含有)、マリーゴールドエキス(ルテイン源)、アミノ酵母(DL-メチオニン、L-リジン、タウリン)、ゼオライト、ミネラル類(K、Ca、P、Zn、Mn、Fe、Cu、I、Se)、ビタミン類(コリン、E、C、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、B6、B1、A、B2、ビオチン、葉酸、B12、D3)、保存料(ソルビン酸カリウム)、酸化防止剤(BHA、没食子酸プロピル)*鶏、七面鳥
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慌てて、前に食べていたCRD-1の成分も見てみました。
因みにのCRD-1は、ピーチーが膵炎からの胆管閉塞で死の一歩手前まで行き、そこから奇跡的に回復した際に、入院していたJARMeC動物高度医療センターの担当医から、
「長生きをさせたければ、今後はこれ以外は食べては駄目」
とまで言われたフードです。
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これまた驚きですが、1番目の成分は 小麦、2つ置いて とうもろこし蛋白、えん麦 と続き、最後はBHAとBHT
こちらも成分の一覧を載せておきます。
スペシフィック CRD-1
小麦、魚粉、粉末セルロース、とうもろこし蛋白、えん麦、酵母、ヒートパルプ、鶏肉蛋白加水分解物、ジャガイモ蛋白、魚油、ミネラル類(Ca、Na、K、Cl、Fe、Zn、Cu、l)、ビタミン類(VA、VB1、VB2、VB6、VB12、ナイアシン、パントデン酸、ビオチン、VC、VD3、VE、VK、コリン)、サイリウム種皮、メチオニン、L-カルニン、酸化防止剤:BHA、BHT
さてどうしたものか?
困ったことになりました。ネットの記事が本当だとすると、重大な健康被害があるとされる危険な物質満載のフードを、あろうことか病気のピーチーの療養食として、3年以上も与えていたことになるのですから。
獣医さんが薦める低脂肪の処方食は、残すはヒルズのi/d Low Fatしかありません。しかしその成分を調べてみると、いきなり、米、コーンスターチ、小麦、コーングルテンと4連続で危険物質です。これにはもう開いた口が塞がらない状態。
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「大至急、手を打たなきゃ」
「でも、いったいこれからピーチーに何を上げたらよいの?」
「プレミアムフードの中から、出来るだけ低脂肪のものを選べば良いのか?」
そんなことを考えながら、更にネットの情報を読み進めたのですが、やがてなんとも言えない違和感を感じるようになりました。正体のわからない不思議な違和感。
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やがて「アレッ」と、あることに気付きました。
批判記事は別々の人が、別々に書いたものであるはずなのに、全体的にある一定の傾向があるのです。更に読み込んでいくと、一見理路整然と書かれている記事中に、多くの自己矛盾を含んでいることにも気づきました。
「何だかおかしいな」
そんな目で改めて批判記事を見直し始めると、アラ不思議!
冒頭に書いた、疑問続出という状態です。
今日はここまでにします。
次回はドッグフードの記事の疑問点、矛盾点、問題点などを具体的に示します。
フードよりも、記事に問題あり!
――穀物と野菜は悪者なのか?(1/4)つづく――
文:高栖匡躬
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――次話――
ネット上のフードの記事は、一見まともですが、少し視点を引いてみると矛盾点が沢山。アフィリエイト自体が悪いわけではないけれど、良い記事でないと意味が無い。
どこに気を付けて読めば良いかをまとめました。
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(この記事は、以下のまとめ読みでもご覧になれます)
ドッグフードをどのように選んでいますか?
ネットで検索すると、
どの記事も似たような内容ばかり。
食べちゃいけない成分が満載。
そして、見たことも無いフードが妙に高評価。
――何故?
妙な違和感を覚えて調べ始めたら、驚いた!
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食べムラ・偏食に関するまとめ読み
~基礎・原因編~
愛犬の食事に関するトラブルの中は様々
用語の定義と、食べムラ・偏食に陥る原因をわかりやすくまとめました。
色々な原因で食べムラ・偏食は発生します。
まさかのときの準備のためにどうぞ。
~予防・対応編~
食べムラ・偏食の予防は、犬の一生を組み立てる長期的な意味があります。
一生食べる楽しみを残すために、今やることは?
そして、もしも起きてしまったら、どうやって対応したらいいのか?
~治療・まとめ編~
食欲不振の理由は様々ですが、過度な偏食に発展すると健康に影響があり、時に命を左右します。
飼い主さんの努力で改善できない場合は、医療としての対応が必要です。
投薬治療と、栄養療法を
――それと、食べないことの意義についても考えます。