穀物と野菜は悪者なのか?(2/4)
ネット上にはスタンダードな(古くから愛用されている)ドッグフードを批判する記事(=プレミアムフードを推薦する記事)が沢山ありますが、それらには、妙な違和感を感じませんか?
なぜならばその多くには、ある一定の傾向が見受けられ、しかも自己矛盾が含まれているからです。今回はその内容ついて、具体的に触れたいと思います。
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本題に入る前に1つだけ、事前に申し上げておくべきことがあります。それは筆者が、ドッグフードに関して何らの指向性も主義も持っていないという事です。愛犬のために、中立かつ客観的にフード選びをしたいだけです。
そして、それをするためには、偏った情報を鵜呑みにしたくないのです。
筆者がこれから提示していく問題点に対して、もしも正確な情報をお持ちの方がいらっしゃったら、ぜひ教えていただきたいと思います。
そう願って、この記事を書いていきます。
【目次】
よく考えよう、ドッグフードの選び方
煎じ詰めていくと、批判記事に感じる違和感の正体は、ほとんど全ての記事が、ドッグフードにおける穀物は有害物質であるという固定概念の上に成り立ち、しかもそこに、まるで相手の存在価値を認めないような、強烈な論理が構築されていることです。
比較的冷静な(まだ科学的な臭いの残る)記事は、穀物や野菜は犬には不要であるという書き方をしていますが、少しエスカレートすると、犬の消化器に負担を掛けるので不適切という表現になり、やがて食べない方が良い、そしてついに危険物質となります。
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しかしこれらの記事は何故か、こんな大切なことを、こんな厳しい書き方をしているにも関わらず、その論拠が示されていません。
これっておかしくないですか?
普通に考えて、これだけのことを言うのであれば、その根拠となる論文や、科学誌の記事にリンクを張ってあるはずです。しかし、いくら批判記事を読んでも、そんなリンクのある記事は皆無。
たまにリンクがあっても、クリックすると他の批判記事に飛んでいくだけです。しかも結構同じ記事に飛んでいく。どう考えてもおかしいのです。
怪しげな記事に共通するキーワード
ドッグフードだけに限りませんが、筆者は調査の為に何かの記事を読んでいて、『これは怪しいな』、『これって鵜呑みにできないぞ』と感じる時に、共通するキーワード(危険信号)があります。
それは、
『最近の調査によると』或いは 『ある調査によると』
それから、
『既に常識となっていることですが』
『皆さんご存知と思いますが』
『専門家の間では』
というような書き出しで文章が始まることです。
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超古代文明とか、UFOとか、ネッシーとか、雪男とか、ネタとして読むには面白い、カルト記事にこんな書き出しが多いのですが、一連の既存ドッグフードの批判記事には、これらと同じ匂いがしてしまうのです。
ここから先は筆者の推論です。
きっと一番初めには、何らかの論拠を示した記事があったのだと思います。
誰かがそれを引用する。そしてまたそれを誰かが引用する。
それを繰り返しているうちに、出典元のデータが何だか分からなくなり、記事の内容も似て非なるものに変質してしまったのではないでしょうか?
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或いは、アフィリエイト記事のように、最初から何か特定の商品に誘導する為に、目的ありきで書かれた記事ということも考えられます。
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筆者が読んだ中には、専門家と目される獣医さんの記事も幾つもありました。
これは良い見識だなというものもありますが、残念ながらほとんどの記事は、やはり何の根拠も示していないものばかりでした。
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我々のような素人からすると、記事の筆名が獣医さんというだけで、なんだか裏付けがあるような気がしてしまいます。だから獣医さんの記事を起点に、また確証の取れない記事が拡散してしまうんです。
少なくとも専門家の肩書を背負う方は、記事を書く際には必ず出典元を明らかにする責任があるように思います。ぜひそうしていただきたいです。
何かと矛盾が多いフードの記事
フードの解説記事の多くは、幾つもの矛盾を含んでいます。
部分的な記述はしっかりしていて頷けるのに、全体の論理が破たんしていて、それでいて相手(一般的なフード)を非難するような強い語り口なので、読んでいるうちに何とも言えない気持ちの悪さが漂うのです。
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下記に、大きな矛盾を2つほど挙げてみましょう。
どちらも、ある1つのサイト内に、実際に書かれていた文章です。
(どのサイトかは、敢て名指しはしません。そのサイトを非難するのが目的ではなく、この種のサイトには、矛盾が多いことを示したいだけなので)
1つ目の矛盾
下記の3つの記述を順に読んでみてください。
(記述1)
最近では獣医師などの専門家は、犬の健康問題の主要な原因は穀類と炭水化物にあると提唱しています。
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(記述2)
今日、獣医は未だに穀類ベースの高炭水化物ドッグフード、キャットフードを推奨している。
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(記述3)適量のトウモロコシ、小麦、大豆、米は犬にとって有害ではない。しかし、このような原材料は犬が元来食べるものではない。穀類は肉食である犬にとって適切な栄養素ではない。
これは一目瞭然ですね。あたかも獣医師ら専門家の多くが、穀類と炭水化物に問題があると指摘しているように書いているにもかかわらず、獣医は未だに穀類ベースのフードを推薦していると記述されています。
一体獣医はどちらの立場なの?
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しかも、適量なら有害でないという記述まであるので、更に訳が分からなくなります。
適量なら有害でないものは、そもそも有害とは言いませんよね普通は。
大体、どんなに体に良いものでも、食べすぎたら体を壊します。ビタミン剤だってそうなのですから。
で、その後すぐに追っかけで、元来穀物は食べるものではない、適切な栄養素ではないと否定をしています。ご多分にもれず、その批判の根拠は何も示さないままに。
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全体的に一般フードを批判したいという熱意だけは分かりますが、ロジックが滅茶苦茶です。
しかし、一部だけを拾い読みすると納得させられる文章。
読者が記事をすべて読むなどとは、考えていないんでしょうね。
悪い意味で、上手い文章だと思います。
2つ目の矛盾
下記の例は、文章そのものはおかしくありませんが、前後関係で矛盾を生じているものです。
市販されているペットフードのほとんどが複数の穀類原材料を含み、またその使用量も原材料中40%から70%含まれています。
つまりこれを言い換えると、市販のペットフードのほとんどは、40%から70%は不適切な成分で出来ているということになります。客観的に考えて、そんなに粗悪なものばかりなら、そこら中の犬たちがバタバタと倒れて、病気の犬だらけで大問題になってしまいますよ。
不適切成分以外が全て有効成分だったとしても、フードの内容の30%から60%しか適切な栄養が入っていなければ、病気にならないまでも、栄養失調ですね、すぐに。
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そして、もしもこのパーセンテージが間違っておらず、特に健康被害で大騒ぎになっていない現状からすると、逆に穀物が犬の健康に貢献している証になってしまいます。
これもまたおかしな文章だと感じます。
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ちょっと話はそれますが、この論理のままでいくと、肉へのアレルギーが原因で、野菜と穀類中心の献立になっている犬たちは、どう説明するんでしょうね?
霞を食べて生きている仙人みたいな存在になるんでしょうか?
ネットには通販に連動した記事が多すぎる
一般フードを批判する記事には、信用できない部分があります。
そのような記事やサイトの多くには、プレミアムフード、ナチュラルフード、ハイエンドフードの販売サイトへのバナーが張られているのです。
自分のお薦めの商品を皆に紹介したいから、メーカーのホームページに行くのだろうと思いきや、これらは例外なく通販サイトにジャンプしてしまいます。
何だ、商売が目的で煽っていたのか。
ここにきてそう気づくわけです。
つまり、アフィリエイト記事、アフィリエイトサイトということです。
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アフィリエイトが悪いと言っているわけではありません。
節度を守り、有益な情報を提供するのであれば、むしろ大歓迎なのです。
問題はこれらのサイトが、リーズナブルなフードにはリンクさえ張られておらず、高額な商品にだけリンクが張られていることです。リンクを張らないどころか、さんざんにこき下ろしているのです。
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これでは客観評価などあったものではありません。
こちらは愛犬の命に関わる事で悩んでいて、真剣に読んだのに、使った時間を返してくれという気分になってしまいます。
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ドッグフード、キャットフードの比較記事を書かれている方に、ぜひお願いしたいのですが、まずは一旦、穀物は駄目なんて先入観は取っ払って、きちんとした論文や裏付けから論理を再構築して、安いフードもきちんと調べて評価していただきたいです。
比較したと書いてあるサイトもありますが、比較などしていません。
仲間内の、主観的な感想を聞いただけのものがほとんどです。
調査というのは、そんなことではないはずです。
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裏付けをきちんとさせたうえで、良いところは良い、悪いところは悪いと指摘して、コストとのバランスでフードを選べるサイトであれば、ショッピングサイトであっても、アフィリエイトサイトであっても信用するんですけどね。
中には役立つ情報もありました
色々な記事を読みながら『おかしいな』、『信用できないな』と思いながらも、それまで知らなかったドッグフードが沢山あることが分かったのは収穫でした。それに、沢山の記事の中には、納得できて参考になる記述もあったのは確かです。
2つご紹介しようと思います。
犬は狼由来の哺乳類
まず参考になったのは、下記の記述でした。
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文章の前半は言うまでもない事実ですね。
後半部分も経験上分かります。愛犬ピーチーに生の野菜を与えると、ほぼその形状のままでウ〇チとして排泄されましたので。以前にピーチーが、生のお米を食べてしまった時などは、そのまま排泄されてしまって、寄生虫でもいるのかと驚いた経験があります。
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しかし、火を通して柔らかくした場合はどうなのでしょうか?
ピーチーの場合、茹でた野菜はまだ形を残して排出されますが、全く消化されていないわけでもありませんでした。炊いたご飯の場合は、2回、3回と続けるとウ〇チが柔らかくなりましたが、きちんと消化はされているように思いました。
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ここで重要なのは、犬の消化器が穀物や野菜向けにできていないというのは、確かに事実であるように思います。しかしそれをもって不要とするのは早計のように思います。
自然の中にいる犬と、人間社会にいる犬では、食性が変わって然るべきと思うのです。
これについては、次回以降の記事でもう少し掘り下げます。
哺乳類なら犬も人も必要な栄養素はそう変わらない
もう一つ納得できる記述が下記です。
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これは実に良くわかります。生きる事が、タンパク質を維持する生体反応なのだと位置づけると、必要な養分は似たようなものになるはずですね。
ただし、過剰に摂取した場合の内臓の処理能力が人間と犬とで違うので、当然ながら個々の成分の許容量は違うでしょう。また似て非なる話ですが、不要物に関する内臓の処理能力(代謝能力)も違うので、摂取してはいけない成分は当然違ってくると思います。
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さて、上記に示した2つの太字を念頭に、ドッグフード関連の記事を読み返してみると、色々なことが見え始めます。
今回は、ネット上のフード記事への不満がほとんどになってしまいました。
次回は本題である、穀物と野菜に少し軌道修正をしていきます。
――穀物と野菜は悪者なのか?(2/4)つづく――
文:高栖匡躬
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――次話――
野生の肉食動物が捕食するのは、主に草食動物。
血液には植物由来のビタミン、ミネラルが含まれ、内臓には消化過程の発酵した植物が残っています。植物を食べなくても、栄養素は接取できるわけです。
では、それを犬に置き換えるとどうなる?
――前話――
ネット上にはドッグフードの記事が沢山ありますね。
穀物は有害? 野菜は有害? 本当に?
全部真に受けたら、食べるものが無くなるんだけど。
記事が推薦するフードは、愛犬に良いものなのか?
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(この記事は、以下のまとめ読みでもご覧になれます)
ドッグフードをどのように選んでいますか?
ネットで検索すると、
どの記事も似たような内容ばかり。
食べちゃいけない成分が満載。
そして、見たことも無いフードが妙に高評価。
――何故?
妙な違和感を覚えて調べ始めたら、驚いた!
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食べムラ・偏食に関するまとめ読み
~基礎・原因編~
愛犬の食事に関するトラブルの中は様々
用語の定義と、食べムラ・偏食に陥る原因をわかりやすくまとめました。
色々な原因で食べムラ・偏食は発生します。
まさかのときの準備のためにどうぞ。
~予防・対応編~
食べムラ・偏食の予防は、犬の一生を組み立てる長期的な意味があります。
一生食べる楽しみを残すために、今やることは?
そして、もしも起きてしまったら、どうやって対応したらいいのか?
~治療・まとめ編~
食欲不振の理由は様々ですが、過度な偏食に発展すると健康に影響があり、時に命を左右します。
飼い主さんの努力で改善できない場合は、医療としての対応が必要です。
投薬治療と、栄養療法を
――それと、食べないことの意義についても考えます。