犬を飼うということ

Withdog 犬と飼い主の絆について

【ドッグフードの疑問】穀物と野菜は悪者なのか?(3/4)~本当に穀物と野菜は不要なのか?~

本当に穀物と野菜は不要なのか?
穀物と野菜は悪者なのか?

撮影&文|高栖匡躬
 
こんな方に
愛犬のフード選びで悩んでいる|ネットの情報は信じられるのか?|色々な情報が氾濫していて、何を信じていいか分からない|プレミアムフードはそんなにいいの?|穀物は体に悪いの?|野菜は体に悪いの?|情報を俯瞰した解説が欲しい

 

【目次】

 まずは本質を見極めたい

引き続き、ドッグフード選びに関する話の続きです。

前回はネット上のドッグフードを評価する情報には、プレミアムドッグフードを礼賛する商業目的の記事が多く、しかもそれらがあまりにも穀物と野菜をスポイルしすぎているのではないかとの問題提起をしました。

誤解の無いように申し上げますが、筆者はプレミアムフードを選択している飼い主さんを否定しているのではありません。またプレミアムフード自体を非難している訳でもありません。正確な根拠(出典など一次情報)を示さぬままで、善良な飼い主を特定のフードに誘導しようとする商売目的のサイト(性質の悪いアフィリエイトサイト)が蔓延していることを示し、注意を喚起しているだけです。

一般の飼い主にとっては、フードがプレミアムであろうがそうでなかろうが、愛犬の体に合い、愛犬の健康を守ってくれるのなら何でも良いのだと思います。しかし、それらの記事を鵜呑みにしてしまうと、穀物と野菜をろくな検証もせずに選択肢から外すことになります。

それでは、愛犬と飼い主にとって、食に対して選択肢を急激に狭めてしまうことになる。あまりにも勿体ないことです。

良くないものなら良くないで、切り捨てることに異論はありませんが、まずは本質の見極めをしましょうよ、というのが今回の趣旨です。

 

 肉食動物は、植物由来の栄養素は摂取していないのか?

ここで少々、我が家の体験談を。
以前に我が家のピーチーが、ステロイド剤の副作用で、筋肉が見る見る落ちはじめた時がありました。そのときにピーチーが食べていたのは、超低脂肪の療法食です。

あまりの筋肉の衰えを見かねて、信頼する獣医師に「ササミを中心とした、肉食中心にしたらどうだろうか」と、相談を持ちかけたことがありました。

その時の獣医師の回答は「お勧めしません」と言うものでした。

獣医師は、続けてこう言いました。
「野生動物は肉食中心でも生きられますが、それは獲物の肉だけを食べているのではなく、骨、内臓、皮、そして血と、あらゆる部位を食べることで、栄養バランスを保っているからなのですよ。スーパーで買える血抜きをした精肉を中心に据えたら、とても犬は十分な栄養素は補給できません」

言われてみれば確かにそうですね。

肉食というと、我々はタンパク源として肉をイメージがちですが、野生の肉食動物は肉(精肉)だけを選り分けて食べているわけがありません。

野生状態での捕食とはどういうことか?
或いは、野生の肉食動物が肉を食べるということが、どういうことか?
栄養とか、食物連鎖を意識して考えてると、下記のようになると思います。

・肉食動物が捕食するのは主に草食動物。
・草食動物の血や内臓には、草や木の実から接取した、栄養分やミネラルが含まれているはず。
・食道から腸にかけての消化器には、腸内細菌が処理中で、発酵した状態の植物も含まれているはず。
・それらのものを、余すことなく肉食動物は食べている。

つまりこれは、肉食動物は草食動物の消化機能を利用して、自らが消化できない植物の栄養素をも摂取していると言い換えることができるのだと思います。

更に想像をたくましくすると、肉食動物というものは、植物の消化という多大なエネルギーを必要とする行為を潔く捨て去り、他者(つまり草食動物)にそれを肩代わりさせて、効率よく生きることを選択した生物と言えるのかもしれませんね。

狼の捕食

狼の捕食

――補足――
肉食動物は獲物を仕留めると、胃や腸などの消化器官をまず先に食べるという研究もあり、それが定説になっているようです。しかしながら、筆者が読んだ資料の中には、消化器(特に胃)は避けられているという報告もありあました。
肉食動物が、草食動物の腸内の未消化の植物を、積極的に食べているというのは、もしかすると誤った認識であるかもしれません。したがって本記事では、それを大きくは取り扱っていません。
ただし、積極的ではないにせよ、草食動物を介して植物由来の必須栄養素をかくほしているのは、間違いないように思われます。

 

 そもそも論理の展開がおかしくありませんか?

穀物、野菜の必要性に限らず、そもそもこの種の議論(その食物が生物にとって必要なのか、不要なのかということ)は難しいのです。それは複数の視点と論点が絡み合う、複雑なものだからです。

複雑なことなので、複雑に議論しなければならないのに、それをあまりにも画一的に、単純に片付けようとしているので、フードの比較記事や批判記事はおかしな話になっているのだと思われます。 

 

まずは言葉の定義が曖昧でしょう

まず最初に、この種のフードの記事に頻出する ”必要”という言葉。
これだけにも2つの意味があります。

① 生命活動のために不可欠という意味
② 健康のためには摂取した方が良いという意味

対極の ”不要” という言葉の方には、”必要” よりももっと広い意味を含みます。

① 生命や健康に危険が及ぶので、摂取してはいけないという意味
② 毒にも薬にもならないので摂取の意味が無いという意味
③ 食物自体には意味があるが、他のもので十分摂取できているので、敢てその食物で摂る必要がないという意味

評価記事や批判記事は、この ”必要””不要” のという言葉を、巧妙に使いわけて読者をミスリードさせているので要注意です。

 

穀物って、一体何だ?

次に ”穀物” について考えてみます。

理解しやすいように、人間にとっての米を例にとりましょう。
炊いた米と、精米されただけの状態のものでは、機能に天と地の開きがあります。
炊いた米は食べることができ、消化して栄養素に代えることができますが、精米はそれができません。

でもこれは、健常者にとっての話。
衰弱しきった病人に炊き立てのご飯を上げても、消化器に負担を掛けるだけで、マイナス効果です。

では、病人にとって米は不要かというとそうではありませんね。柔らかく煮たおかゆや重湯ならば立派な療養食です。

更に突っ込んで考えます。

穀物の主成分は生物の3大栄養素の1つである炭水化物です。
しかし、炭水化物以外にも沢山の栄養素を含んでいます。

穀物=炭水化物として扱われがちですが、穀物を否定するということは、炭水化物と共に穀物に含まれる、それ以外の栄養素まで否定してしまうことになります。

更に掘り下げると、穀物の主成分の炭水化物は、糖と食物繊維に分解されるものです。
糖は言うまでもなく、生命活動のエネルギー源、食物繊維は腸内環境を整えます。

一口に穀物と言うのではなく、どんな状態の穀物なのかを定義しないと、全く論点がかみ合わないことになってしまいます。

 

野菜については、触れるだけにしておきます

更に ”野菜” とは――、と行きたいところですが、野菜で語らなくてはならない事があまりにも多岐にわたり、書き始めるときりがありません。よって本記事で深堀りすることはやめておきます。

簡単に言うと野菜は、3大栄養素以外に必要な、微量栄養素のビタミンとミネラルの補給源です。5大栄養素というくくり方で言うと、3大栄養素でカバーされない残りの2つということになります。

生命維持には微量で事足りるので、野菜以外からも摂取できるものがほとんどです。
しかし、それをもって野菜が不要という意味になるのでしょうか?

野菜からならば容易に摂取できても、それ以外の補給源からは、摂取しにくいものもあるのではないでしょうか?

そんな風に考えると、野菜は不要という考え方が拙速というように思えてきます。

 

犬には本当に、穀物と野菜は不要なのか?

ここまで読んでいただけたら分かると思います。
犬にとって穀物と野菜が必要なのか、不要なのかは、食材の処理状態によって答えが変わるのです。

見出しの『犬にとって、本当に穀物と野菜は不要なのか?』を、もっと分かりやすく、質問として書くと、こうなるはずです。

質問.
ここに、犬が消化可能なまでに前処理された穀物と野菜があるとします。
この穀物と野菜は、犬にとって良いものでしょうか? 
それとも悪いものでしょうか?

 

この質問で初めて、まともな議論が成立します。
多分、回答はこんな感じになると思います。そもそもが、明確に答えることができないものなのです。

回答.
それは犬の現在の状態によりますね。
与える食材にもよると思います。

もしも良識ある回答者なら、質問者に対して更にこう助言するかもしれません。

「その犬が肥満傾向だったら、穀物はなるべく控えた方が良いと思います。健康な子ならば、与えてみて様子を見たらどうですか?」
「野菜は種類によります。例えば貧血気味な子にならホウレンソウやニンジンは、きっと良いと思いますよ。他の野菜のことは、今の体調について詳しく聞かないと、何とも言えません」

 

 ひとまずのまとめ

要するに食に関するあらゆる議論は、それぞれの個体とその状態で違うのです。

特定の犬が、その時点でどのような栄養素を必要としているのか? という個別化した問い掛けの上に成立し、回答も当然ながら、その特定の犬が必要としている栄養素を、どのような食材で与えるのが一番効率的なのか? という個別化したものになっていくのが自然なのだと思います。

総論としては、『犬にとって穀物と野菜は必要なのか?』という大ざっぱな問いに対しては、『必要な場合もあり、不必要な場合もある』という回答以外はありえないのだと思います。

少なくとも『犬には穀物や野菜は必要ない』と言う短絡的で偏った意見は、愛犬と飼い主の利益につながらないと思いますし、とりわけネット上に山ほど散らばっている、穀物と野菜が犬にとっての危険物質という偏見は、不利益を生んでいるように感じます。

繰り返しになりますが、筆者は一般的な(グレインフリーでない普通の)ドッグフードを擁護しているのではありません。

偏った意見を中立に戻し、その上で建設的な議論がしたいというだけです。

今回は、理屈っぽくなって申し訳ありません。
次回の記事で、まとめにしたいと思います。

 

――穀物と野菜は悪者なのか?(3/4)つづく――

文:高栖匡躬
 ▶プロフィール
 ▶ 作者の一言
 ▶ 高栖 匡躬:犬の記事 ご紹介
 ▶ 高栖 匡躬:猫の記事 ご紹介

――次話――

犬は狼由来なので肉食動物。それって本当?
人に飼われ何千年もかけて雑食してきた犬を、肉食だと言うの?
肉、野菜、穀物で分けるのではなく、栄養素の視点で考えたらどうだろう?
どうやって必要な栄養を補給するかと考えたら、食べ方も変わるのでは?

――前話――

ネット上のフードの記事は、一見まともですが、少し視点を引いてみると矛盾点が沢山。アフィリエイト自体が悪いわけではないけれど、良い記事でないと意味が無い。
どこに気を付けて読めば良いかをまとめました。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

本サイトは、Teitterで毎日情報配信をしています。
※Teitterに登録しなくても読むことができます。 ツイッターマガジンへ

――この連載記事の1話目です――

ネット上にはドッグフードの記事が沢山ありますね。
穀物は有害? 野菜は有害? 本当に?
全部真に受けたら、食べるものが無くなるんだけど。
記事が推薦するフードは、愛犬に良いものなのか?

 食べムラ・偏食に関するまとめ読み

~基礎・原因編~
愛犬の食事に関するトラブルの中は様々
用語の定義と、食べムラ・偏食に陥る原因をわかりやすくまとめました。
色々な原因で食べムラ・偏食は発生します。
まさかのときの準備のためにどうぞ。

~予防・対応編~
食べムラ・偏食の予防は、犬の一生を組み立てる長期的な意味があります。
一生食べる楽しみを残すために、今やることは?
そして、もしも起きてしまったら、どうやって対応したらいいのか?

~治療・まとめ編~
食欲不振の理由は様々ですが、過度な偏食に発展すると健康に影響があり、時に命を左右します。
飼い主さんの努力で改善できない場合は、医療としての対応が必要です。
投薬治療と、栄養療法を
――それと、食べないことの意義についても考えます。

 ペットの食事、関連の記事です

ストルバイト結石の治療の為に、手作り食で対応された飼い主の記事です。

ストルバイト結石の、実際の手作り療法食をご紹介します。

 

© 2017 Peachy All rights reserved.