ピーチーの闘病記:劇症肝炎編
前日の朝、面会したピーチーは、死を免れたように思われました。
しかし、その前があまりにも悪く、危機的な状況であったために、飼い主としてはまだ素直に喜ぶことができませんでした。
いつ病状が急変するか、わからないからです。
この日も面会に行きました。
具合は良くなっているのか? それとも悪くなったか?
期待が半分、怖れが半分。
面会の順番が来て、名前を呼ばれたときのことを、今も覚えています。
こんな方に:愛犬が劇症肝炎|愛犬が急性の炎症性疾患|免疫疾患の可能性もある|治療方針の決断を迫られている|選択肢が乏しい|かかりつけの医師に任せるのが良いのか?|経験者の体験談を聞いてみたい
8月19日、夕方 面会、復活のピーチー
先ほど、ピーチーの面会から帰ってきました。
おかげさまで、ピーチーは昨日よりももっと元気になっていました。
面会はまた処置室を使わせていただきましたが、今日はピーチーの元気さを示す行動がありました。
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僕たちが待つ処置室に、看護師さんがピーチーを連れて来て下さったのですが、ピーチーはまず僕たちの方に歩き出し、急に踵を返して、看護師さんにの方に戻っていきました。看護師さんの足元に擦り寄ったのです。それはまるで、看護師さんにお礼を言っているように見えました。
そして、ひとしきりそれをやってから、僕たちの方に、嬉しそうな軽い足取りでやってきました。
自力で歩ける時間が随分と長くなり、放っておくと小走りに駆けだしそうな勢いです。
ただ、やはり肝臓の疾患を抱えていると持久力がないので、その勢いだけは見せますが、すぐにハアハアと息が上がります。
今日、僕と奥さんが見ている前で、ピーチーはウンチをしました。看護師さんを呼ぶと、すぐにそれを片付けてくれたのですが、来て下さった看護師さんが大変な喜びようでした。
実は今日が入院後の、自力での初ウンチだったのです。
”初の行動”はもう一つありました。
今日は看護師さんが僕達のために、面会している部屋に、ピーチーの食べる晩御飯を持ってきてくださいました。
ピーチーはまだ自分からご飯を食べず、口に入れたものを飲み込むだけなので、「飼い主さんの方で、自分から食べるように促してみてください」という説明でした。
あげてみると、匂いは嗅ぐものの、そっぽを向いてなかなか食べません。
そこで手でつかんであげてみました。するとピーチーは美味しそうにそれを食べてくれました。これで食欲のエンジンが掛かったピーチーは、自分から進んで、器からごはんを食べ始めました。
まだ意識障害があるのか、食べ方は上手くありません。器の縁には沢山ごはんが張り付いたまま。
食いしん坊のピーチーは、元気な時はそれを綺麗に舐めとったものです。
しかし贅沢は言えません。自分から食べたのは、大きな進歩です。
自分で口から食べるという行為が、バイタルの数値に大きな影響を与え、それが病魔と闘うエネルギー源になるのだそうです。
ご飯を食べ終わったピーチーは満足そうな顔をしました。
よくやったな、ピーチー。
今日は担当の山○先生がご不在のため、検査の数値は受け取ることができませんでした。それが病院の決まりなのだそうです。しかし看護師さんからは口頭で、黄疸の値はかなり下がったとの報告がありました。炎症の値はまだまだ高いそうですが、光明の一つではあります。
明日は更に元気になっていてくれると嬉しいのですが、しかし予断を許さぬ状態をいうことにはまだ変わりはなく、ぬか喜びをしないよう、油断をしないようにしなければなりません。
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山○先生は、明日は一日病院にいらっしゃるとの事なので、また夕方にはお話を聞きにいくつもりです。
帰り際にうちの奥さんと写真を撮ると、笑ったように口角が上がって、チロリと舌を出しました。
まだまだとは言うものの、回復が目に見えるととても嬉しいです。
――【劇症肝炎】闘病記・つづく――
文:高栖匡躬
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――次話――
ピーチーの状況が改善していくにつれ、心には少しずつ余裕がでてきました。
そこで気になったのが、『自己免疫不全』です。
『自己免疫不全』は、多くの犬猫で生じているようです。
しかしその症状は1つではなく、癲癇とか、各種臓器の炎症、関節の炎症という別々の病気として現れるのでやっかいです。
――前話――
これまでに起きたことを、もう一度整理し、まとめました。
劇症肝炎は、劇的に改善されたように見えます。
「ステロイド投薬の効果が出ているのは、まず間違いないでしょう」
「これから数日はこれで押します」
担当医はそう言いました。
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この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――本連載の第1話です――
この日早朝6時、愛犬ピーチーは救命救急に駆け込みました。
40度を越える高熱。ぐったりとして動けない。
主治医からは、安楽死を勧められるほどの状態。
この日から、命を賭けた闘病が始まったのでした。
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ペットの闘病についてのヒント
闘病の奇跡は呼び込むもの
闘病記を読むと、奇跡的に治るという表現に時々出会います。
しかし奇跡は、待っていて起きるものではありません。
奇跡が起きる確率は、努力で上げることができます。
医師まかせにせず、とにかく情報を集めて分析する事です。
その中に、もしかすると答えがあるかもしれません。
セカンドオピニオンと二次診療
街の獣医師の技術と経験には大きな差があります。知識にも差があります。
なぜなら街の獣医師は、内科医であり、外科医であり、犬や猫だけでなく、ネズミも鳥も診察するのが役割です。病気ごとの専門医ではないのです。
セカンドオピニオンと二次診療は、街の獣医師の足りない部分を埋める、重要な手段と言えます。
高度医療という選択肢
動物にも高度医療があります。
それは人間で実績のある治療を、いち早く動物医療に転用するものです。
医療は日進月歩。昨日治らなかった病気が、今日は直るかもしれません。
高度医療は病気を治す手段としては有効な選択肢です。