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【自己免疫不全】 自己免疫不全の診断について ~その実例と検証(2/3)~

f:id:masami_takasu:20171101152402j:plain撮影&文:高栖匡躬

自己免疫不全に関する前回の記事の続きです。
今回はピーチーを例にとって、自己免疫不全は実は多くの犬たちが、既に罹患および、発症している可能性があることと、その診断方法について書こうと思います。

目次

実は、既に多くの犬が罹患しているかもしれない

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沢山の病気を抱えてしまったピーチー。

その原因である自己免疫不全は、犬の症例は多くありません。しかしそれは、実態とは違うようです。

自己免疫不全の診断はとても難しいが故に報告例が少ないだけで、実態はかなり多くの犬たちにそれが発現しているように思います。何故かというと、ピーチーを見ていてそれを実感したからです。

例えば外耳炎と内耳炎

ピーチーはまだ若い頃から、外耳炎に罹っていて、いつも痒そうにしていました。そして恐らくは内耳炎も発症していたと思われます。推測で書いたのは、医師の見立てがあっただけで、確定診断をしていないからです。

自己免疫不全が判明する2年ほど前から、ピーチーは耳が聞こえづらくなり、1年前にはほぼ聞こえなくなっていました。

その聞こえなくなったはずの耳は何と、劇症肝炎の治療のために行なった、ステロイドと免疫抑制剤の投与と共に治ってしまいました。そして同時に、耳を痒がることもなくなりました。難聴は主治医から「高齢だから仕方がない」と言われ、諦めていたものでした。

もしかすると、多発性関節炎やてんかんも

外耳炎や難聴(恐らくは内耳炎による)は、命に別状がないので、我が家がそうであったように、対処療法で済ませたり諦めたりして、原因を突き詰めるまでは行きません。
多発性関節炎もそうですし、てんかんもそうです。

そして、劇症肝炎

劇症肝炎は多くの場合、原因を突き詰める間もなく犬は亡くなってしまうので、それが自己免疫不全に由来したかどうかは、医師も飼い主も知る術がありません。

つまり、自己免疫不全という原因に行き当たるのは、命を左右する病変が現れ、幸運にもそれを切り抜けた犬だけ という事になるわけです。

これでは実数など掴めるはずもありませんね。

 

自己免疫不全の診断は難しい

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ピーチーが劇症肝炎の治療を行ったのは、DVMs(動物医療センター横浜)という、地域の動物高度医療を担う病院です。そこには各分野の専門医が所属しています。

DVMs獣医師と話をしたところ、自己免疫不全は診断がとても難しいのだそうです。何故かと言えば、自己免疫不全はそれ自体を直接診断する手段が無いからです。

例えば、劇症肝炎の他にピーチーが発症したてんかんですが、これはいまだにその原因は不明です。自己免疫不全が原因である可能性はあるものの、それに由来する脳炎などの病変は、MRIの映像には映らないため、特定する診断方法が無いのです。

唯一の手段は消去法

自己免疫不全は、一つずつ病気の原因を探っていき、消去法で残る最後の選択肢なのだそうです。

病気の原因の特定は、症状から判断し、検査によって該当する抗体の有無を調べます。次にそれに応じた治療を試み、それが効果あったか無かったかで、可能性を1つずつ検証してくのです。

そして、あらゆる治療に効果が無かったときに初めて、自己免疫不の疑いが浮上するということです。

犬には問診ができない

人間の場合は症例も多く、患者から問診ができるのでまだましです。犬の場合は口がきけないので、いつから調子が悪いのか? 治療の結果痛みは改善したのか? などの外からの判断はとても難しく、それが診断を更に難しくしています。

結局犬の場合の治療の有効性は、病気が治ったかどうかという、結果でしか判断が出来ないということです。

劇症性の病気では、一発勝負になる

ピーチーが死の淵に立った、自己免疫介在の劇症肝炎の場合、色々な治療を試している余裕はありません。1つの治療を試し、それがもしも外れていた場合には、リカバーする時間が残されていないのです。すなわちそれは死を意味します。

では、なぜピーチーは自己免疫不全を探り当てることができたのでしょうか?

 

なぜピーチーが自己免疫不全と分かったか

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ピーチーが自己免疫不全と分かったのは偶然でした。しかし、その偶然を引き寄せるための準備段階はありました。

これがピーチーの経過と、対処

ピーチーが発症したのは、まずはてんかん。次に多発性関節炎。そして劇症肝炎の順です。

てんかんは最初、脳腫瘍が強く疑われ、MRIの検査を受けたものの異常なし。そして原因不明のままで対処的な治療が始まりました。
多発性関節炎は、MRIに映った背骨の状態から、当初はヘルニアが強く疑われました。ヘルニアの治療としては絶対安静。散歩はもちろん、部屋の中で歩くことも、可能な限り控えなさいという医師の指示がでました。

てんかんの治療は初めは効果があったものの、段々と薬の効果が無くなって、薬の種類も量も増えていきました。明らかに悪化の一途です。
多発性関節炎も悪化の一途。よろよろと歩く姿は痛々しいの一言でした。

そこに劇症肝炎を発症したのです。救命救急に駆け込んだ翌日には、肝炎に加えて膵炎の兆候が表れ、胆嚢も脾臓にも炎症があるようでした。胆管閉塞を示す値も急上昇していました。

何故切り抜けることができたか

ピーチーが絶体絶命の危機を切り抜けた理由は、皮肉にもピーチーに起きた病変があまりにも多様で、急激に悪化していったからです。

もしも劇症肝炎だけを発症していたら、それに対応するスタンダードな治療(手術による試験的な肝細胞の採取と、それに応じた治療計画の立案)を選択し、恐らくは早々にこの世を去っていたはずです。

ピーチーの体が発しているサインから判断し、我が家では賭けにでました。

獣医師から、他に道が無いと思われていた手術を断り、自己免疫不全に対応する治療に絞って欲しいと願い出たのです。

その時点での獣医師の機転も奏功しました。咄嗟の閃きで、獣医師はピーチーの関節5か所から血液採取を行い、検査を済ませていたのです。その結果、関節炎がウイルス性や細菌性でないことも分かっていましたから、自己免疫不全に的を絞ることに関して、異論はありませんでした。

その時の治療。そして自己免疫不全の特定

ピーチーが自己免疫不全であることが分かったのは、自己免疫不全に対応する治療として、ステロイドの大量投与を行い、それが劇的に症状を改善したという結果からの判断です。

客観的に見れば、とても勝ち目の薄い賭けにでて、幸運にもピーチーと家族は、その賭けに勝った。言い方を変えれば、自己免疫不全の診断をするために、ピーチーは命を賭けたことにもなります。

もう二度と、あんな賭けはしたくないなと心から思います。

 

次回は、獣医師へのインタビューを中心に、自己免疫不全の実際について検証します。

獣医師がシニア犬に対して良く使う言葉、『お歳ですから』も、何でもかんでも歳のせいにしてしまうようで、考え方によったら、意外に深い言葉でもあります。

 

――参考・2015年9月、当時のピーチーの様子です――

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※多分、熱っぽかったのでしょう。いつも玄関の冷たい大理石の上で寝ていました。

 

――自己免疫不全の実例と検証(2/3)・つづく――

文:高栖匡躬
 

――次話――

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週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

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