うちの子がうちにくるまで|No.28 - 1
作者宅の先住犬 ”ちぃ”は、どうもよその子に受けが悪い。
ちぃの方では仲良くしたくても、相手からすると、ちぃ は妙に近寄ってくる変な奴。
このまま犬の友達はできないの?
そんなとき、作者は小さな白い犬を見かけたのです。
「ねえ、友達になってくれる?」
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さみしくないかな?
先住犬のちぃが、わが家に来てからもうすぐ一年となったころ、散歩のたびに気になることがありました。ちぃは、ご近所の散歩犬と行き会い、挨拶をかわすとき、なんとなく相手の犬に嫌がられているようなのです。
ちぃ本人は、フレンドリーに相手に近づき、仲良くしたい様子なのですが、相手の犬から見えるちぃはきっと、「がにまたで、前のめりでゼーゼーいいながら、必要以上に接近してくる大きなこわい顔の、なれなれしいやつ」なのでした。
ちぃに悪気はないはずですが、鼻先が短いため、ものすごく相手の顔に密着しなければ、においかぎの挨拶ができないのです。
鼻先の長い犬同士ならば、お互いの目の位置は、数十センチの距離を保つことができますが、ちぃの場合はその距離が半分になってしまい、威嚇と思われ、ときには吠えられてしまうのでした。
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「ちぃは、このまま友だちと遊ぶこともなく、一生を終わるのだろうか…?」
「犬は、群れを成す動物のはずだけれど、さみしいとは思わないのかなぁ?」
そんな不安が私に、犬のしつけ本を買いあさらせました。
買ってきた本はどれを見ても「犬は飼い主の愛情を独占したいと思っている」とか、「犬を2匹飼えば、飼い主の愛情は半分ずつになってしまい、犬にはストレスが溜まる」と書かれていました。
ある本の中には、「先住犬と相性の悪い犬を2匹目として迎え入れた場合、2匹を同時にケージから出して遊ばせることはできない」などという恐ろしい例もありました。
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「先住犬がおっとりしている場合、2匹目の迎え入れは比較的うまくいく」
という説もありましたが、ちぃはかなり神経質な犬です。
うちに来てしばらくの間は、ひざの上で眠ることもなく、人に体をさわられることも嫌がり、特に、頭を撫でられそうになると、獅子舞の獅子のように頭を振り、撫でようとした手をかわす子いぬでした。
ねぇ、ちぃの友だちになってくれる?
そんなある日ことです。
勤め帰りにいつものペットショップに寄ると、白っぽい子いぬが目に入りました。
その子の誕生日は3か月前。しかしとてもそうとは思えないほど体が小さく、胴が魚みたいにうすっぺらです。
しかしとても元気で、若い女性店員さんがペットシーツを取り替えようとショーケースの扉を開ると、そのひざの上にぴょんと飛び乗り、はしゃいでいました。
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掃除が終わったショーケースに戻された子いぬにそうっと近寄った私は、心の中で、「…ねぇ、うちに来て、ちぃの友だちになってくれる?」
と話しかけてみました。
「ちぃって誰さ?…オレ、行ってやってもいいけどさ。」
子いぬは、ちょっとなまいきな白黒の顔でわたしをじっと見て、そう言っているようにも見えました。
私は思わず、女性店員さんに、
「この子いぬの、写真を撮ってもいいですか?」
と話しかけてしまいました
その夜、ペットショップで撮らせてもらった子いぬの写真を夫に見せ、飼ってもいいかどうかをたずねてみました。
実はそれまでは、ちぃが『ともだち』と遊ぶ姿を見てみたいという私の願いは、私という人間のエゴにしか思えず、夫には黙っていたのです。
「いいんじゃない?二匹のほうが、ちぃも楽しいよな?」
夫は、二人目の子どもができたときと同じように喜び、即答してくれました。
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だめだと言われたら諦めようと思っていた私は、何の反対もしない夫に、ちょっと拍子抜けしました。
しかし心の中は、その返事ほど簡単なものではありません。
人間の子どもたちとは違って一生自立せず、その最期を必ず看取ってやらなくてはいけない命をもうひとつ預かるのですから、お互いに、口には出しませんが、相当な覚悟の上でのことです。
翌日、私は仕事帰りに、新しい子いぬを迎えにペットショップへ行きました。
子いぬは薄っぺらな胴体からあばら骨が透けていましたが、昨日と変わらず元気でした。若い女性店員さんは「ごはんを食べるのが速くて、数秒で食べちゃいますよ。」と言って笑いました。
しかし私は内心で、「ここで大きく育ってしまって、買い手が見つからないと大変だから、きっとちょっぴりしか餌をもらえないんだろうなぁ…」と、育ちそびれた子いぬに同情したのでした。
――れんがうちにくるまで(1/2)つづく――
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――うちの子がうちにくるまで・次話――
子犬の箱を受けとり電車に乗った作者。しかし事故のために大混雑。
優しい老夫婦の助けで、なんとか満員の車中を過ごします。
家へと急ぐ作者。迎える家族。
君は手荷物でうちに来たんだよ。
――うちの子がうちにくるまで・前話(2話構成です)――
本当は犬が苦手だった作者。
その作者が偶然、びっくりするほど大きな顔の犬を目撃しました。
哲学者のような振る舞いの犬――
月日がたたち、作者はその不思議な犬の置物に遭遇します。
念願叶い、哲学者のような犬に対面した作者。
いざその子を迎えるとなると、急に不安が頭をもたげます。
――本当に面倒を見られるかな?
そして遂に、哲学者が家にやってきます。
家族それぞれの思いは?
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この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――うちの子がうちにくるまで、第1話です――
昔からいつかはワンを飼いたいと、ずっと夢見ていたんです。
でも、夢と現実の差はでっかいですよね。結局はずっと、実現できずじまい。
――そんな夢を叶えた飼い主さんのお話。
犬との出会いは運命に似ています。
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おすすめの、うちの子がうちにくるまで
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虹の橋の詩を、をより深く味わうために
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出典
※本記事は著作者の許可を得て、下記のエッセイを元に再構成されたものです。