犬を飼うということ

いつまでも君と……

【葛藤と決心/飼いやすいパピヨンのメス】あの頃は、どうしたら飼えるかも知らなかった ~りくがうちの子になったのは~

f:id:masami_takasu:20181121134325j:plain撮影&文:りくのお姉ちゃん

~うちの子がうちにくるまで No.30 ~

”うちの子がうちにくるまで”とは
愛犬を家に迎えるまでの葛藤を、飼い主自身が、自分の言葉で綴ったエッセイのシリーズです。

私が犬を飼ったのは、もう18年も前のこと。当時私は中学生だった。
小学生の頃、学校の帰り道で近所の犬と遊び始めて、それからぼんやりと犬を飼いたいなあと思っていた私。
そんな私に両親が、「犬を飼ってみる?」と聞いて来た。

実はその頃、私は引きこもりがちだった。だから犬を飼えば、少しは私が元気になるかもしれないと両親は思ったのだろう。

「本当に犬が飼えるの?」

しかしその時、我が家の誰にも、犬に関する知識が無かった。
今となっては笑い話だが、犬がどこで手に入れられるかも知らず、どんな犬を飼ったらいいかも知らなかったのだ。

早速父が色々と調べてくれた。私はその横に座っていたのだが、本当に犬が飼えるなんて、まだ信じられない気持ちだった。

結局、初心者向きで飼いやすいというのが理由で、パピヨンのメスにしようと家族で話しあった。

 

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犬種は決まったのだが――
そう簡単に、犬はうちに来てはくれなかった。
パピヨンのメスは、何故か方々探しても見つからなかったからだ。

――探し疲れて行った、地元のペットショップ――
「オスですけど抱いてみますか?」
お店の方から、そう声を掛けられた。

そこには、来たばかりのパピヨンがいた。
2000年11月3日生まれのパピヨン♂。
今思えば、あまりにも早く親から離された生後1か月半の子だった。

その子は大人しくて、抱っこしてみると私の白いセーターの裾をハムハムと噛んだ。
その光景は、今でもよく覚えている。
「こんな小さなもの、どうやって育てていいのかわからないな」
そう思った――

私はすぐにはその子に決められなくて、少し考えさせてもらうことにした。

 

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たまたまなのだけれど、私の父は1月3日生まれで、兄は8月3日生まれ。
3日という日には妙な縁があった。更にその子の誕生日の1日前、11月2日は大好きだった祖父の命日でもあった。

一晩悩んだ私は、11月3日生まれの、そのオスのパピヨンを迎える事にした。
運命かなって思った。

冒頭にも触れたが、当時の私は家に引き籠もりがち。
その子は、『娘が少しでも外に出るように』と願いを込めた、両親から私へのクリスマスプレゼントになった。

名前はクリスマスの頭文字2つを逆さまにして、“りく”にした。
色んな人にカッコイイ名前ね、と感心してもらってたけど、案外軽いノリでつけた名前だったのはここだけの話だ。

 

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翌日りくは、小さな箱に入ってうちに来た。
私にも家族にも初めての犬――
そして――
私たちは、何の知識もない飼い主になった。

ペットショップで大人しかったりくが、ただ大人しいフリをしていただけだったと分かるのは、それからすぐのこと。

家についたりくは、すぐに本領を発揮し始めた。
抱っこは嫌い、散歩中は人にも犬にも吠えてしまう。
叱っても叱っても治らない。
ボールでガシガシ遊び、たくさん吠えて、たくさん噛んだ。
流血騒ぎなんて、日常茶飯事だった。

 

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りくには、どんなしつけ本も参考にならなかった。
無駄吠え防止の首輪も、拾い食い防止の口輪も、色んなものを試した。
訓練士さんからは「この子はこれ以上難しいかもしれないです」と言われる始末。

それで私たち家族は覚悟を決めた。
りくはもうこのまま、噛みついたり吠えたりする姿で育てていこうと。

私はその頃夢を見た。
亡くなった祖父が、りくに何かを話している夢を――
りくは綺麗にお座りして、真っ直ぐに祖父を見ていた。
その夢で私も遅ればせながら覚悟ができたんだ。りくは家の子なんだって。

今思えばりくの振る舞いは、当たり前の元気さだったように思う。
私たちは犬に対してあまりに無知で、犬のしつけ方がわかっていなかっんだ。

 

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りくはとても元気な子で、公園にいけば沢山の遊び友達がいた。
ロングリードでボール遊びをすれば、いつまでも走りっぱなしだったし、ジョギングに付き合わせれば1時間ずっと並走したものだった。

しかし私が成長すると、そんな風に一緒に遊ぶ事もなくなっていったのだけれど――

りくにとっては、ご飯とボールと散歩がすべてだったと思う。
冷蔵庫の開く音を聞けばとんできて、人が何か食べている時は落ちてくる物を逃すまいと横に待機した。
ボールは常に7個をキープ。寝るときはベッドの周りに全てコレクションしておやすみなさい。
「散歩」の一言で飛び起きて、ジャージを着た私を見て尻尾を振った。

 

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一方でりくは、愛玩犬としてのお仕事は怠惰だった。
撫でられるのは好きじゃない。
寝たいときは勝手に寝室に行って寝る。
抱っこなんて、もってのほか。

りくにはりくの中で決まりがあった。
トイレは綺麗に使う。夜中の暗闇でも1匹でトイレに行って定位置で。
外では足をあげるけど、家ではあげない。
汚れたトイレシーツは嫌だから、終わった後は飼い主がトイレシーツを変え始めるまで黙ってトイレ横で待機。

食べ物が欲しいときは黙って人の横にいて、時折顎か肉球を人の腕に乗せる。
要求吠えはせず、待ては上手に忠実に。そしたら食べ物かボールが降ってくる。
ピンポンに吠えるのは飼い主がいる時だけ。飼い主がいない時は吠える必要なし。
そのうち近所の人に、在宅状況がバレるようになった。

 

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それでも時折は、愛玩犬っぽさも出してきたっけ。
撫でられるのは嫌だけど、たまに黙って人の方に背中を差し出してきて、『撫でさせてやっても良いよ』って言ってきた。こっちがなかなか撫でないと、鼻で催促してきた。

1人で寝床に行っちゃうくせに、その前に一応皆にお伺いをたててた。
『一緒に寝ませんか?寝ません?じゃあ先に行きますね』

いたずらは見えないところでした。
外出中テーブルの食べ物は消えて足跡もたくさんあるのに、りくがテーブルに乗ってるのを見た事は1回しかない。帰宅時に凄く良い顔をしてたら、りくがいたずらした証拠だった。

たくさんの運動と、たくさんのご飯で、りくは5キロに成長した。
どすこいパピヨン。しかも耳の毛はチロチロしかないから、出来損ないパピヨンって言ってからかったものだった。

 

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段々と大人になっていった私――
それとともに私の関心は、りく以外のものに沢山向いて行った。
私が飼いたいといった犬なのに、りくを置いて海外に留学したり、家をでて一人暮らしをしたり。

私は家に帰ったら、いつでもりくに会えると思っていた。
それが当たり前だと思っていた。

犬に寿命があるってことを、すっかり忘れてた。
いや、頭ではわかってはいたんだ。
でも、心ではわかっていなかった。

やがてりくは、大人しく撫でられるようになっていった。
そして――、私は実家に帰った――

りくの最期の面倒を見たかった。

 

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りくはそれからも生きてくれた。
17歳になる年には、長寿表彰をもらった。

私はりくの18歳までの日々を記録しようと、Twitterをはじめた。

りくが亡くなったという連絡を受けたのは、通勤電車の中だった。
すぐに母親へ電話した私は、泣きながら開口一番こう言った。
「ねぇ、私はちゃんとりくにお別れできてたかな?」
その日の朝「おはよう」は言ったけれど、「行ってきます」は言わなかったような気がしたんだ。りくが老犬になってから、私は毎日りくに、声を掛けてから出掛けていたのにね。

 

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りくの18歳のお誕生日は、一緒に迎えられなかった。
あと10日だったのだけれど。

後悔はいっぱいあるよ。
でも、りくはきっと幸せだったよね。
りくの話をすると、家族皆に笑顔があふれるんだよ。
りくが皆に笑ったみたいにね。

ありがとう、りく。
たまには遊びにきなね。

 

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――りくがうちの子になったのは――

~うちの子がうちにくるまで No.30~
犬の名前:りく
犬種:パピヨン
飼主:りくの家族

~犬や猫と暮らすあなたへ~

『うちで飼えるかな?』
『きちんと面倒を見られるかな?』

犬や猫を、”はじめて”飼う時、ほとんどの方はこう思ったことでしょう。平均年齢でいえば15年も生きる小さな命を預かるのだから当然ですね。その葛藤を乗り越えて、我々は犬や猫と暮らします。

毎日が楽しいですか?
――きっと楽しいですよね。
だって、犬を飼うこと、猫を飼うことは、喜びに満ちていることだから。

どうか忘れないでほしいのです。その楽しさを手に入れる前に、我々はものすごく大きな決心をしたのだということを。

そして、どうか自信を持ってほしいのです。
その決心が、ずっと我々を支え続けてくれるのだと。
いつか、その子を送るときが来たとしても。

【飼えるかなより

――うちの子がうちにくるまで・次話――

――うちの子がうちにくるまで・前話――

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

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