れんは、注射よりもクレートが嫌い!
お母さんって?
前回に続き、まずは主治医の先生のお話から。
先生が初めてちぃを診察したときのことです。
「ちぃちゃん、ちぃちゃん。はい、ちょっとお母さんのほうを向いてね」
先生がそんな風に、ちぃに一生懸命話しかけるので、当時犬のことをあまり知らなかった私は心の中で、『ちぃを産んだのは、私じゃないんだけどなあ。先生ったらおかしな言い方をするなあ』などと思ったものです。
犬好きな奥さん
先生の奥さんも、動物看護師として同じ病院で働いており、ちぃが幼かった頃は、いつも背中に赤ちゃんをおんぶしていました。ある日ちぃが、奥さんの背中からぶらさがっていた赤ちゃんの手の先を、べろべろとなめてしまったことがあり、私はあわてて謝ったのですが、奥さんは朗らかに、
「大丈夫ですよー」
と笑って、赤ちゃんの手を拭くことさえしませんでした。
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犬のしつけ本をたくさん買い込んで、頭でっかちになっていた私は、犬の口の中の菌は、人間にとっては有害なものと思っていました。だから内心、『逆の立場だったら、きっと私は自分の赤ん坊の手をすぐに洗ってしまうな』と思いながらも、この人は本当に犬が好きなんだなあと、心が温かくなりました。
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その後、ちぃやれんと暮らすうちに、あのとき先生が、ちぃに話しかけたり、看護師の奥さんが大事な赤ちゃんの手を、ちぃの前では拭かなかった理由が、なんとなくわかるようになりました。
犬は賢い動物です
犬は、私が想像していた以上に、飼い主の言葉をたくさん理解するだけでなく、感情も豊かですね。
れんに、「ボールは?」と聞けば、一生懸命自分のボールを探して持ってきますし、ちぃは、れんが居間の床の上で粗相をしたときには、台所にいる私のところに走ってきて、すごい剣幕で怒りながら私を呼びます。
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相棒の粗相くらいで、そんなに怒らなくても…と思いますが、きれい好きのちぃには、れんの「だらしなさ」が許せないのかもしれません。
ちぃは、私が後始末をしてトイレに流しに行くところまで、きちんと見届けないといけないようで、いつもトイレの前までついてきて、私の仕事ぶりをチェックしてから居間に戻ります。
おとなしく待っていたれん
さて、ここからようやく、れんの予防接種のお話です。
ちぃの予防接種が終わり家に帰ると、れんは吠えもせず、おとなしく待っていました。れんはきっと、「お母さん、随分トイレが長かったね。ちぃ姉ちゃんは、玄関で遊んでたのかなあ?」くらいに思ってくれていたに違いありません。
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テレビ番組の、『犬のしつけ選手権』で優勝していた森田誠さんという人が、「私の犬は、『待て』と言えば軽く3時間は、じっと待ちますよ」と言っていて、信じられなかったのですが、れんも30分くらいなら静かに待てるようになったのかもしれません。
森田さんの犬は立派なもので、指示された場所に「フセ」をしたまま3時間(…ちょっと気の毒?)で、れんの場合は、自分のケージの中をウロウロしながらの30分ですがけれど。
次はれんの番
「さて、次はれんの番!」
れんの予防接種の旅ですが、れんは車の助手席に乗せた途端に、後ろ脚をぶるぶる震えさせ、極度の緊張状態になっていました。まだエンジンもかけていないというのに、びびりすぎです。
れんの背中をゆっくりと撫で、体の震えが止まったのを確認すると、れんは運転席と助手席の間の溝に降り、ぴったりと「フセ」をしたので、これは安全だと思い、そのまま病院へ向いました。
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以前に記事にも書きましたが、れんはクレートに入れられると「ひゅるひゅる」と泣くのですが、この時はおとなしくしていました。ところが、病院に着き、れんが立ち上がると、れんが伏せていたマットが、ものすごくしっとりしていて臭うのです。
タオルを敷いてやらなかったことを後悔しました。
小さな男
れんは、注射はおとなしくされるがままになっていましたが、せっかくいただいたおいしそうなオヤツには目もくれず、会計を待つ間に、他の犬の飼い主さんと目が合うと、なぜかきちんとお座りをしてみせて、ほめられていました。
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帰りの車の中では、まるで「ぬいぐるみ」のように助手席に深くうずくまり、動く床の恐怖に耐えていました。(気の毒すぎ…)
クレートに入っても、入らなくても結局、お漏らしをしてしまう、この小さな男(れん)が、家族でキャンプに行ける日は果たして、やって来るのでしょうか…。
漫画もどうぞ
(おまけ)
――混合ワクチンにまつわるお話(3/3)おしまい――
作:かっぱ太郎、F.zin
▶ 作者の一言
▶かっぱ太郎、F zin:犬の記事のご紹介
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――前話――
1匹ずつの混合ワクチンは、まずは”ちぃ”からです。
寂しがりの弟、”れん”に気付かれないようにそっと外に出て――
その”ちぃ”は病院で、いつも興奮し暴れます。
おやつで気を引きながら、やっと注射を――
たかが予防注射?
色々事情があるのです。
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この記事は、下記のまとめ読みでもご覧になれます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――連載3話の最初の記事です――
毎年秋は、ちぃと、れんに、混合ワクチンを打つ季節
いつもは夫婦で連れていくのですが、今年は夫が娘とお出かけの日。
さて、一人で大丈夫?
2匹と車では、色々と問題を起こすし。
――シリーズの最初の記事です――
誰にも苦手なものがありますが、それが大嫌いのレベルになると、思わぬ問題が起きたりします。
フレブルのちぃちゃんは、爪切りが大嫌い。
家族は「爪切り」の発言もできません。
弟のれん君は、クレートが嫌い。
だから、遠出ができないのです。
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ちぃ と れん を迎えたときのお話
ちぃがうちにくるまで
本当は犬が苦手だった作者。
その作者が偶然、びっくりするほど大きな顔の犬を目撃しました。
哲学者のような振る舞いの犬――
月日がたたち、作者はその不思議な犬の置物に遭遇します。
れんがうちにくるまで
先住犬の”ちぃ”は、どうもよその子に受けが悪い。
このまま犬の友達はできないの?
そんなとき、小さな白い犬を見かけたのです。
「ねえ、友達になってくれる?」
ちぃがうちにきてすぐ
念願の犬は『ちぃ』と命名。
好奇心旺盛で、何でも口に入れるちぃ。
骨付きチキンを飲み込んだ時は、夜間病院へ――
やがて犬が、口で気持ちを伝えることを知る飼い主。
そうやって段々と、お互いが分かり合っていく。
ようこそ、我が家へ、ちぃ
れんがうちにきてすぐ
先住犬『ちぃ』に続いてやってきた子犬。
名前は『れん』になりました。
『ちぃ』がやきもちを焼かないように、出会いを慎重に進めた家族。
その甲斐あって、『ちぃ』は『れん』に優しく接するようになります。
家族が願った通り、『ちぃ』には ”友達” ができたのでした。
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出典
※本記事は著作者の許可を得て、下記のエッセイを元に再構成されたものです。